捨てられた悪しき令息は、花嫁となり邪神様にその身を捧ぐ。

櫻坂 真紀

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『……シエル、お前は何と恐ろしい奴だ。』

『弟をこんな目に遭わせて…お前は最低だ!』

 弟のミゲルを守る様に囲み、俺を糾弾するお父様と婚約者のナイル。

『違うよお父様、ナイル……俺は、ミゲルに何もしてない!』

 俺は二人に、自分には何の罪もない事を必死に訴えたけど……全く聞く耳を持って貰えなかった。

 それどころか───。

『お前みたいな奴は、もう婚約者でも何でもない……これを機に縁を切る!お前は二度とミゲルに近づくな!俺はこの先はミゲルを愛し、支えて行く。俺は……こうして毎日見舞う内に、ミゲルを好きになったんだ。もう俺の心は、完全にミゲルのものだ。』

『そんな……!』

 この国は、同性同士でも婚約や結婚が出来る。
 
 俺とナイルは知り合ってからすぐに仲良くなって……そして恋人同士になり、こうしてせっかく婚約できたというのに──。

『フッ……お前の様な悪人にお似合いなのは、悪魔か邪神じゃしんしかいないな!』

 彼の言葉に、俺はポロリと涙を零した──。

※※※

「シエル、お前はイグニス様の元へとつぐ事になった。今日の昼に迎えが来る、それまでに着替えを済ませ荷物をまとめておけ。」

「……はい、お父様。」

「お前のような男を花嫁にもらってくれるんだ、あの男に感謝する事だな。」

 そう言って、お父様は俺の元を去った。

 お父様……あなたのお顔は、この先もう二度と見る事はないでしょう──。
 良かったですね、俺をこの家から追い出す事ができて。

 持って行く荷物など、ほとんど無い。
 この地下牢ちかろうに入れられた時、ほんの少しの着替えしか持たせてもらえなかったから。

「何が花嫁だ、俺はただの供物くもつと同じじゃないか……。」

 イグニス様……この地の、邪神と言われているお方。

「邪神とつがう悪の令息か……フフッ……可笑おかしくて、涙が出るよ──。」

※※※

「お迎えに上がりました、シエル様。私はイグニス様の付き人、アンブラと申します。」
 
 俺を待っていたのは、眼鏡をかけた優し気な青年だった。

「よろしくお願いします。」

「荷物は……こちらでよろしいでしょうか。」
 
「……はい、お願いします。」

「では、参りましょうか。」

 俺は、迎えの馬車に乗り込んだ。

 結局、俺を見送る者は、誰一人として居なかった──。

「イグニス様本人がお迎えに上がれず、申し訳ありません。」

「……いえ。そうだと思ってましたから、気にしてません。あなたもご存じでしょう?俺の事──。」
 
 弟を呪い病気にさせた、悪しき令息シエル。

 恐ろしい男、愚かな令息…そんなふうに、どれだけ周りからののしられた事か──。
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