失恋した上に嫌われ、死んでしまった俺は…目が覚めたら彼に愛される世界に居た。

櫻坂 真紀

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「……ありがとう、亮。もう大丈夫。ポメ吉が待ってるから、朝ごはんにしよう。用意してくるから、その間に着替えとか済ませて来てよ。」

「分かった。じゃあ、顔洗って来るな。」

 笑顔になった俺に安心したのか、亮はベッドから降り……そして俺の頬に一つキスを落とし、部屋を出て行った。

 こ、これもドラマでは無かった──!

 俺は真っ赤な顔で亮の後に続き、キッチンへと向かった。

 朝ごはんはまだだけど……何だか、幸せでお腹が一杯になった気がする。

 俺はパンをトーストし、簡単にサラダを作り、目玉焼きとベーコンを焼き……後は亮のお母さん自家製のヨーグルトにフルーツを添えた。

 いい子で待って居たポメ吉には、いつもの大好きなフードを用意してあげた。

※※※

「あ~、腹減った。ポメ吉おはよう、いつも待たせて悪いな。」

「亮、もうパン焼けるから、お皿取ってくれる?」

「OK。俺がいつもの様にジャム乗っけてやるから、座っててな。」
 
 そ、そうなんだ……ドラマではここまでの描写はなかったけど、いつも塗って貰えてるのか。

 「慎」って……羨ましいな。
 好きな人の為に望んでご飯御用意して……でもこうして甘やかしても貰って。
 
 朝から好きな人の寝顔を見れて、好きな人と一緒にご飯を食べられて……こんなふうに、優しく笑いかけて貰えて。

 そういえば、俺が最後に見たリョウの顔は……驚いた顔だったな。

 そしてその前は、俺を冷たい目で見る嫌悪の──。

「慎……?出来たぞ?」

「あ、ありがとう!」

「本当に大丈夫か?体調悪いなら、休む?」

「大丈夫!俺、亮と学校行きたい!」

 亮と離れたくない……この世界が夢なら、いつか終わりが来るから。
 そうなるまで、少しでも一緒に居たい。

「分かった、でも今日は一日無理するなよ?」

「うん。」

 俺は、亮がたっぷり乗っけてくれたジャムトーストに噛り付いた。

 俺、前の世界ではジャムってあんまり食べなかったけど……これが一番の好物になりそう。

「俺さ……慎の焼いてくれる目玉焼きが、一番好きなんだよな。端っこがカリっとしてて、黄身はトロッとしてて絶妙でさ。自分で焼いても、なんか違うんだよな。」

「嬉しい……。俺は、一番の好物は亮の塗ってくれたジャムトーストだよ。」

「ん?お前、カレーって言ってなかった?」

「……ううん、今日からそうなった。」

 そっか、そうだった。
 この世界の慎の好物は、カレーだったな。

 でも俺が……シンによって、今それは変えられた。

 もしかしたら俺が慎になった事で、ドラマの中であるこの世界も、何かが少しづつ変わって行くのかも知れない。
 
 それが良い事か悪い事か、よく分からないけど……俺はただ、今はこの幸せを噛み締めていた──。
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