9 / 33
9
しおりを挟む
「無理……このままじゃ、数学と化学は追試だ。」
「亮、まだ試験まで期間があるから頑張ろう?俺もこうして一緒に勉強するし。」
五月に入れば、試験が待って居るが…亮は今から弱気な発言をしていた。
確か亮は、その二教科が苦手だったな。
「お前は凄いよな、どの教科も平均的で。」
「まぁね、特に優秀って訳でもないけど。」
慎の方は、特にこれが苦手っていう事もなく……。
っていうか、ほとんど高校に行けなかった俺が、高校生の授業……しかも三年生からスタートって、付いて行けるか心配だったけど……何故か普通に授業が理解できたし、問題も解けた。
元々の身体が慎だから?
今まで積み重ねて来た学力のおかげって事かな。
よく分からないけど、とにかく助かったよ──。
「これは、この公式を使えばいい。それを理解した上で、この練習問題を解いて……亮?」
気づけば、亮が俺をじっと見ていた。
「慎、教えるの上手くなったな。何か、年上の家庭教師に教えて貰ってるみたいで……少し興奮する。」
亮は俺の身体を引き寄せた。
こ、れ……ドラマでのシーンと似てる。
確か、あの時も亮の家で勉強してて……それで、亮に押し倒されて──。
「……また何か考えてる。なぁ……お前の心に居るのは、誰なんだよ。」
「お、俺の心の中に居るのは、リョ、亮だよ?俺が好きなのは──」
俺が最後まで言いきらない内に、亮は俺の唇を奪った。
「……んッ。」
嘘……亮と俺が、キスしてる─!
ビクリと反応する俺を亮はじっと見つめ、唇を放した。
「俺さ……お前が本当は、別の誰かを好きなんじゃないかって思える時がある。でも勿論、お前が浮気をしてるとは思わない。何でだろうな?よく分からないけど……もやもやして。」
寂しそうに俺から眼を反らす亮に、俺は思わずギュッと抱き着いた。
「俺は、ずっとお前が好きで……でも、その好きは一度捨てた。それでもう一度……もう一回、俺はお前を好きになった。俺はお前のジャムトーストが好物で、お前の真っすぐな愛情表現が嬉しくて……でもそれが幸せすぎて、怖くて。」
俺の意味不明とも思える言葉を、亮はじっと聞いている。
「俺は幸せが壊れるのが辛いんだ。だって、六月になったら……。」
「どうなるって言うんだ?」
「転校生が来る。分かるんだ、俺には……。」
「……何で分かるかは……今は聞かない方が良い?」
俺は、コクリと頷いた。
すると亮は俺を抱き締め返し、そのままゴロリと横になった。
「その転校生が何者かは知らないけど……俺はお前を手放すつもりはない。だから……怖がらなくて大丈夫だ。」
耳元で響く優しく甘い声に、俺の身体は幸せと安心に包まれた。
信じよう、亮の言葉を。
俺には、それしか出来ない───。
「亮、まだ試験まで期間があるから頑張ろう?俺もこうして一緒に勉強するし。」
五月に入れば、試験が待って居るが…亮は今から弱気な発言をしていた。
確か亮は、その二教科が苦手だったな。
「お前は凄いよな、どの教科も平均的で。」
「まぁね、特に優秀って訳でもないけど。」
慎の方は、特にこれが苦手っていう事もなく……。
っていうか、ほとんど高校に行けなかった俺が、高校生の授業……しかも三年生からスタートって、付いて行けるか心配だったけど……何故か普通に授業が理解できたし、問題も解けた。
元々の身体が慎だから?
今まで積み重ねて来た学力のおかげって事かな。
よく分からないけど、とにかく助かったよ──。
「これは、この公式を使えばいい。それを理解した上で、この練習問題を解いて……亮?」
気づけば、亮が俺をじっと見ていた。
「慎、教えるの上手くなったな。何か、年上の家庭教師に教えて貰ってるみたいで……少し興奮する。」
亮は俺の身体を引き寄せた。
こ、れ……ドラマでのシーンと似てる。
確か、あの時も亮の家で勉強してて……それで、亮に押し倒されて──。
「……また何か考えてる。なぁ……お前の心に居るのは、誰なんだよ。」
「お、俺の心の中に居るのは、リョ、亮だよ?俺が好きなのは──」
俺が最後まで言いきらない内に、亮は俺の唇を奪った。
「……んッ。」
嘘……亮と俺が、キスしてる─!
ビクリと反応する俺を亮はじっと見つめ、唇を放した。
「俺さ……お前が本当は、別の誰かを好きなんじゃないかって思える時がある。でも勿論、お前が浮気をしてるとは思わない。何でだろうな?よく分からないけど……もやもやして。」
寂しそうに俺から眼を反らす亮に、俺は思わずギュッと抱き着いた。
「俺は、ずっとお前が好きで……でも、その好きは一度捨てた。それでもう一度……もう一回、俺はお前を好きになった。俺はお前のジャムトーストが好物で、お前の真っすぐな愛情表現が嬉しくて……でもそれが幸せすぎて、怖くて。」
俺の意味不明とも思える言葉を、亮はじっと聞いている。
「俺は幸せが壊れるのが辛いんだ。だって、六月になったら……。」
「どうなるって言うんだ?」
「転校生が来る。分かるんだ、俺には……。」
「……何で分かるかは……今は聞かない方が良い?」
俺は、コクリと頷いた。
すると亮は俺を抱き締め返し、そのままゴロリと横になった。
「その転校生が何者かは知らないけど……俺はお前を手放すつもりはない。だから……怖がらなくて大丈夫だ。」
耳元で響く優しく甘い声に、俺の身体は幸せと安心に包まれた。
信じよう、亮の言葉を。
俺には、それしか出来ない───。
67
あなたにおすすめの小説
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
【完結】王宮勤めの騎士でしたが、オメガになったので退職させていただきます
大河
BL
第三王子直属の近衛騎士団に所属していたセリル・グランツは、とある戦いで毒を受け、その影響で第二性がベータからオメガに変質してしまった。
オメガは騎士団に所属してはならないという法に基づき、騎士団を辞めることを決意するセリル。上司である第三王子・レオンハルトにそのことを告げて騎士団を去るが、特に引き留められるようなことはなかった。
地方貴族である実家に戻ったセリルは、オメガになったことで見合い話を受けざるを得ない立場に。見合いに全く乗り気でないセリルの元に、意外な人物から婚約の申し入れが届く。それはかつての上司、レオンハルトからの婚約の申し入れだった──
【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
【完結】マジで婚約破棄される5秒前〜婚約破棄まであと5秒しかありませんが、じゃあ悪役令息は一体どうしろと?〜
明太子
BL
公爵令息ジェーン・アンテノールは初恋の人である婚約者のウィリアム王太子から冷遇されている。
その理由は彼が侯爵令息のリア・グラマシーと恋仲であるため。
ジェーンは婚約者の心が離れていることを寂しく思いながらも卒業パーティーに出席する。
しかし、その場で彼はひょんなことから自身がリアを主人公とした物語(BLゲーム)の悪役だと気付く。
そしてこの後すぐにウィリアムから婚約破棄されることも。
婚約破棄まであと5秒しかありませんが、じゃあ一体どうしろと?
シナリオから外れたジェーンの行動は登場人物たちに思わぬ影響を与えていくことに。
※小説家になろうにも掲載しております。
【完結】婚約破棄された僕はギルドのドSリーダー様に溺愛されています
八神紫音
BL
魔道士はひ弱そうだからいらない。
そういう理由で国の姫から婚約破棄されて追放された僕は、隣国のギルドの町へとたどり着く。
そこでドSなギルドリーダー様に拾われて、
ギルドのみんなに可愛いとちやほやされることに……。
アプリで都合のいい男になろうとした結果、彼氏がバグりました
あと
BL
「目指せ!都合のいい男!」
穏やか完璧モテ男(理性で執着を押さえつけてる)×親しみやすい人たらし可愛い系イケメン
攻めの両親からの別れろと圧力をかけられた受け。関係は秘密なので、友達に相談もできない。悩んでいる中、どうしても別れたくないため、愛人として、「都合のいい男」になることを決意。人生相談アプリを手に入れ、努力することにする。しかし、攻めに約束を破ったと言われ……?
攻め:深海霧矢
受け:清水奏
前にアンケート取ったら、すれ違い・勘違いものが1位だったのでそれ系です。
ハピエンです。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
自己判断で消しますので、悪しからず。
転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした
リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。
仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!
原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!
だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。
「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」
死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?
原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に!
見どころ
・転生
・主従
・推しである原作悪役に溺愛される
・前世の経験と知識を活かす
・政治的な駆け引きとバトル要素(少し)
・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程)
・黒猫もふもふ
番外編では。
・もふもふ獣人化
・切ない裏側
・少年時代
などなど
最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。
僕を嫌っていた幼馴染みが記憶喪失になったら溺愛してきた
無月陸兎
BL
魔力も顔も平凡な僕には、多才で美形な幼馴染みのユーリがいる。昔は仲が良かったものの、今は嫌われていた。そんな彼が授業中の事故でここ十年分の記憶を失い、僕を好きだと言ってきて──。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる