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そこには、俺の手を握り、涙を滲ませる亮がいた。
ここは総合病院の一室で……階段から落ちた俺はすぐにここに運ばれ、三日三晩眠り続け……漸く目を覚ましたのだった──。
「あの、ユ、幸は……?」
「あいつは……居合わせた教師が取り押さえて、その後は警察で事情を聴かれて……今どうしてるかは、詳しくは教えて貰えない。ただ罪を償う為に、然るべき所へ送られるらしい。俺……あいつがお前を階段から突き落した直後、あいつに言われたんだ。これで邪魔者は居なくなった、だからまた、俺を愛してね、って。その時……俺はこの世界がどういう世界で、俺がどんな人間かを全て理解した。」
「この世界って……じゃあ、亮──」
「シン、またお前を傷つける事になって……あいつからお前を守れなくてごめん……!死んだはずのお前の声が聞こえたあの時、俺は必ずお前が居るこの世界に生まれ変わって、次こそはお前を大事にしようと決めたのに……なのに、その事を今まで思い出せずに……!」
「リョウ……!いいんだ……お前が俺にまた会いたいって、そう思ってくれただけで、俺は……!それにな……例え記憶がなくても、お前に今まで一杯大事にして貰えたから──。前世で叶わなかった事、沢山して貰えた。一緒にご飯食べたり、買い物に行ったり……そして、こんなふうに優しく触れて貰えた。」
俺は、リョウに握られた自身の手を見た。
「シン、俺は思うんだ。この世界は、俺とお前がまた出会う為の世界で……俺がお前に大事にされ、愛される世界なんだって──。」
「リョウは……亮としてじゃなくても、俺を大事に、愛してくれるのか……?この世界の亮だから、そうしたいんじゃなくて……?」
「確かにこの世界で俺は亮だけど、俺の心にはちゃんとリョウの気持ちが宿ってる。そのリョウは、お前をもう失いたくないと……お前の事を求めてるんだ。」
「リョ、リョウ……!俺、俺ね……ずっとお前の事が、好きだったんだ。ここに生まれ変わってくる前から、ずっと、お前が……!今まで言えなかったけど、やっと言える……俺は、お前を愛してる。」
俺は涙を流し、リョウに手を伸ばした。
リョウはその手を取ると……俺に、そっと口づけた──。
※※※
あれから俺たちは、前世で出来なかった事を、ただやり直す為だけにこの世界で生きるのではなく、亮と慎として、愛を育み未来に向かって生きて行こうと誓い合った。
そして病院を退院し自宅療養を終えた俺は、久しぶりに亮の家にお邪魔する事になった。
「ポメ吉、久しぶり!」
「キャン!」
「フフ、くすぐったいよ!後でゆっくり遊ぶから、ちょっと待ってて。」
「なぁ慎……本当にこれで良いのか?退院祝い。」
そう言って亮が出してくれたのは……亮がジャムをたっぷり塗ってくれた、ジャムトーストだった。
「いいの。これね、今の俺の大好物なんだ。亮が愛情込めて塗ってくれたんだ……俺の中では、どんな食べ物よりも美味しいんだよ?」
俺の言葉に、亮は顔を赤くし俺を見た。
「お前……あんまり可愛い事言うなよ。」
亮は俺を引き寄せ、キスをくれた。
「俺ね……シンとして生きてた時は、お前への気持ちをずっと隠して、誤魔化し続けて生きてた。でもこれからは、もうそんな事しない。これまで亮がしてくれてたみたいに、俺も言葉や態度でちゃんと愛を伝えて行こうって決めたんだ。」
「そうか……じゃあ俺は、お前のその気持ちを全部受け止めるよ。なぁ慎、前も言ったけど……俺は、お前が俺を好きでいてくれる限り、どんなお前でもずっと好きだ。お前は──?」
そんなの、俺もだよ。
この世界で今の命を終えるまで、俺もずっとお前が好き。
もしかしたらその次だって……俺は、ずっとお前の事が──。
そう言おうとした俺の言葉は、二度目のキスに飲み込まれた──。
ここは総合病院の一室で……階段から落ちた俺はすぐにここに運ばれ、三日三晩眠り続け……漸く目を覚ましたのだった──。
「あの、ユ、幸は……?」
「あいつは……居合わせた教師が取り押さえて、その後は警察で事情を聴かれて……今どうしてるかは、詳しくは教えて貰えない。ただ罪を償う為に、然るべき所へ送られるらしい。俺……あいつがお前を階段から突き落した直後、あいつに言われたんだ。これで邪魔者は居なくなった、だからまた、俺を愛してね、って。その時……俺はこの世界がどういう世界で、俺がどんな人間かを全て理解した。」
「この世界って……じゃあ、亮──」
「シン、またお前を傷つける事になって……あいつからお前を守れなくてごめん……!死んだはずのお前の声が聞こえたあの時、俺は必ずお前が居るこの世界に生まれ変わって、次こそはお前を大事にしようと決めたのに……なのに、その事を今まで思い出せずに……!」
「リョウ……!いいんだ……お前が俺にまた会いたいって、そう思ってくれただけで、俺は……!それにな……例え記憶がなくても、お前に今まで一杯大事にして貰えたから──。前世で叶わなかった事、沢山して貰えた。一緒にご飯食べたり、買い物に行ったり……そして、こんなふうに優しく触れて貰えた。」
俺は、リョウに握られた自身の手を見た。
「シン、俺は思うんだ。この世界は、俺とお前がまた出会う為の世界で……俺がお前に大事にされ、愛される世界なんだって──。」
「リョウは……亮としてじゃなくても、俺を大事に、愛してくれるのか……?この世界の亮だから、そうしたいんじゃなくて……?」
「確かにこの世界で俺は亮だけど、俺の心にはちゃんとリョウの気持ちが宿ってる。そのリョウは、お前をもう失いたくないと……お前の事を求めてるんだ。」
「リョ、リョウ……!俺、俺ね……ずっとお前の事が、好きだったんだ。ここに生まれ変わってくる前から、ずっと、お前が……!今まで言えなかったけど、やっと言える……俺は、お前を愛してる。」
俺は涙を流し、リョウに手を伸ばした。
リョウはその手を取ると……俺に、そっと口づけた──。
※※※
あれから俺たちは、前世で出来なかった事を、ただやり直す為だけにこの世界で生きるのではなく、亮と慎として、愛を育み未来に向かって生きて行こうと誓い合った。
そして病院を退院し自宅療養を終えた俺は、久しぶりに亮の家にお邪魔する事になった。
「ポメ吉、久しぶり!」
「キャン!」
「フフ、くすぐったいよ!後でゆっくり遊ぶから、ちょっと待ってて。」
「なぁ慎……本当にこれで良いのか?退院祝い。」
そう言って亮が出してくれたのは……亮がジャムをたっぷり塗ってくれた、ジャムトーストだった。
「いいの。これね、今の俺の大好物なんだ。亮が愛情込めて塗ってくれたんだ……俺の中では、どんな食べ物よりも美味しいんだよ?」
俺の言葉に、亮は顔を赤くし俺を見た。
「お前……あんまり可愛い事言うなよ。」
亮は俺を引き寄せ、キスをくれた。
「俺ね……シンとして生きてた時は、お前への気持ちをずっと隠して、誤魔化し続けて生きてた。でもこれからは、もうそんな事しない。これまで亮がしてくれてたみたいに、俺も言葉や態度でちゃんと愛を伝えて行こうって決めたんだ。」
「そうか……じゃあ俺は、お前のその気持ちを全部受け止めるよ。なぁ慎、前も言ったけど……俺は、お前が俺を好きでいてくれる限り、どんなお前でもずっと好きだ。お前は──?」
そんなの、俺もだよ。
この世界で今の命を終えるまで、俺もずっとお前が好き。
もしかしたらその次だって……俺は、ずっとお前の事が──。
そう言おうとした俺の言葉は、二度目のキスに飲み込まれた──。
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