贖罪

お粥定食

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任務

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…トートはまんじりとしないまま、朝を迎え身支度をし
バットに朝食の餌を与え自身も朝食を平らげた後、
トート「バット行ってくる。」
バットはバサバサ翼をはためかせながら、鉤爪でトートに仮面を付け忘れている事を伝え、それに気付いたトートは
トート「ああ、ごめんバット忘れてた。」トートは慌てて仮面を付け、バットはトートを見送った。

霧の街
建物は焼け崩れ、ガラスはすべて砕け散り、何処もかしこも炎が上がり生き物の動く気配もない燃え盛る業火に包まれた。
仮面をつけた騎士は町中を歩きながら焦土に変えていった。
トート「……………。」
トートは、一ヶ月前の出来事を思い出していた。

一ヶ月前 雪の街
凍てつくような空気の中、何時もの様に町中を完膚無きまでまでに破壊しつくし生き物達の息遣いも気配もなくなった。
街をトートは、まだ生きて反抗する者がいないか探していた。
トート「………。」
トートは仮面越しから見てかつて活気があり、人々が賑わっていた街を一瞬にして廃墟と化してしまった己の力に畏怖と罪悪感を抱えていた。
トートは胸に突き刺さるような痛みを覚えながら、
早くこの酷い任務を終えようと、息のある者の確認に歩を進めた。
トートが一頻り町中を調べ尽くし、完全に生きている者はいない事をトートは悟りアジトに戻ろうとするが。

郊外の方で何やら子供の泣き叫ぶ声がトートの耳に入ってきた
トートは、何を思ったのか直様声のする方に向かった。

街を出て、木が生い茂り切り立った岩の上に出たトートは
声のする方を隈なく探した。
再び子供の悲鳴が上がり、トートは悲鳴が上がった方を見た。それは、濁流に巻き込まれ何とか岩にしがみついて必死に流れに巻き込まれないようにする子供達の姿だった。

少女「誰かーーーー!助けてーーーーー!!」
少年「流されるーーーーー!!」
子供達は冬真っ只中の荒ぶる川の中、必死に助けを求めていたが、そろそろ限界なのか顔からは生気を感じられなかった。
トート(あれは、ヒト?)
トートは、自身がついさっき消し炭にした生き物たちと同じ姿した。子供達を目撃した。
トート(一体どうする?)
トートは悩んでいた。自身の主であるバシレウス様は『ヒトは見かけたら、絶対に抹殺しろ。』
とバシレウスがトートに対して命令をしていた事をトートは思い出していた。
トートが思い悩んでいる時、川の方で子供達の一際甲高い悲鳴が聞こえてきた。
トートが悲鳴のする方を見てみると子供達は川に流されて、遠くの方へ流れていった。

トートは考えるより先に自身の脚を動かし、子供達を濁流の川の中から外へ引き上げた。
川から引き上げられた子供達は息も絶え絶えに噎せ返っていた。
少女「ゲホッゲホッ!」
少年「ゴホッゴホッ!」
トートは踵を返し、アジトに戻ろうとしたその時、
子供達「ねえ、お兄ちゃん!」
子供達がトートを呼び止め、トートは歩を止めた。
振り向いたトートは、子供達の方を見た。
少女「助けてくれてありがとうございます。私はレモンと言います。ほらユズあんたもこのお兄ちゃんにお礼を言って。」
少女は少年にトートにお礼を言うよう促した。
少年「助けてくれてありがとうございます。」
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