回廊

お粥定食

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開闢

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時刻 午後12時30分 村はずれの山中の境内にて。
夜が更けて、鬱蒼とした森林を宵と老人の神主は、
風が頬に触れて白装束のみの宵の布越しに突き刺さるような肌寒さを感じた。
宵(うっ…もっとどうにかならなかったのか?)
宵は鳥肌が立っている、両腕で自身の身体を抱え込み神主に導かれるまま、石畳を歩いて行った。
日に照らされていない夜の森の中は、まるで生き物のように風に揺られて蠢いていた。
宵「あの、山内さん。後どれくらいで着くんでしょうか?」
宵は、自身の横にいて歩いて道案内をしている神主にきいてみた。
山内「もう少しで、着きますよ。」
そう言って、山内は指で真っ直ぐ遠くの方を指差した。
山内の指差す方向には、松明に付けられた火が赤々と燃え上がりその先には赤黒い色をした門が松明の火に照らされて、一層おどろおどろしく、現世とは異質な雰囲気を醸し出していた。
宵はあまりの異様な光景に思わず背筋に冷たいものを感じた。
山内はそんな宵を意味深な視線を送っていた。
それから暫く歩いてようやく赤黒い門の前に着いた宵達は
その場で動きを止め、宵の隣りにいる山内が突然宵の後ろに下がった。
宵は驚いて山内にこう尋ねた。
宵「あの、山内さん?」
宵の問に山内は宵にこう言った。
山内「宵さん。此処からは貴方お一人で進んで下さい。」
宵は思わず素っ頓狂な声を出す所だった。
山内「では、私はこれで。鏡の前に着いたらそこで正座をしてしばらく待ってください。」
山内はそのまま宵に踵を返して去っていった。
宵「…本当にこのまま進むのか?」
宵は門を開けて、くぐろうか迷っていたが、全身に打ち付けるような肌寒い風と暗がりで右に横に揺れる木々達のさざめき合いを聞いて、こんな見知らぬ場所に一人でいても心細さを感じ宵は恐る恐る門を開け中に歩を進めた。

数十分後 
宵はしばらく真っ直ぐ歩いて、目的地である屋敷の前まで辿り着いた。
宵(ここか?)
屋敷の外観はまるで、山奥の中を棲家にしている異形の生き物であるかのようにそびえ立っていた。
宵はこの中に入ろうかどうか考え込んだが、意を決して門を開けた。
屋敷の門の先は果てしない、道の脇に灯籠が立っておりゆらゆら石畳の上を薄く照らしていた。
宵(あそこが入り口なのか?)
石畳の道の先には漆塗りの舞良戸が宵の目に飛び込んできた。
宵は凍てつく冬の風に身を強張らせながらも、何とか一歩ずつ眼の前の扉に着いた。
宵(この先に山内さんが言っていた。鏡があるんだな?)
宵は恐る恐る、引き戸の取っ手部分に手をかけ、扉を開けた。
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