REN~性悪王子と夏色の推理室(アトリエ)~

天那 光汰

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第1話

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 佐藤利香は手元の弁当箱を見つめてにこりと笑った。
 今日の献立は具だくさんな肉じゃがオムレツにアスパラのベーコン巻き、それとプチトマトが二つ。

 真っ赤に色づいたプチトマトをつまみ上げて、利香はふふふと笑みを深めた。

「ほうほう、本日も美味しそうなお弁当ですこと。あたしのパンと交換して欲しいわマジで」
「へへへ、だめー」

 友人の加奈が弁当箱をのぞき込み、いつものやりとりに利香は笑顔で返答した。「ちぇー」と言いつつ、加奈も本気で交換しようなどとは思っていない。
 近所のコンビニで買っていたハムとマヨネーズが乗ったパンの包装を破りつつ、感心したように加奈は小学校からの友人を見つめた。

「けど、ほんと偉いよね利香は。毎日お弁当作って……お父さんの分も利香が作ってるんでしょ?」
「うん。まぁ、お母さん忙しいし。一人分作るのも二人分作るのもあんま変わんないからね」

 利香の家はいわゆる共働きというやつで、しかも母親の方が随分と忙しい。子供の頃から家事の大部分を担ってきた利香を、加奈は「あたしには無理だな」と素直に尊敬している。

「お父さんも手伝ってくれようとはするんだけど……逆に手間増えちゃうんだよね。料理もお掃除も好きだし、全然平気だよ」
「うーん、偉いねぇ利香は。よしよし」

 加奈にわざとらしく頭を撫でられて、利香は照れたように頬を掻いた。けれど満更ではないと、アスパラ巻きの一つを加奈に譲渡する。

「ん! 美味しい! ありがと」
「全然いいよー。……そうだ加奈ちゃん。聞きたいことがあって、この間の美術展でRENって人の絵を見たんだけどさ、加奈ちゃん知ってる?」

 質問に加奈は少し驚いて利香を見つめた。芸術なんて興味もなかった友人から出てくるにしては、少しマイナーだ。

「知ってるけど……いいとこ突いてきたね。なに、なんかいいのあった? ていうか来てたんだRENの絵」
「えっとね、一枚だけあって。それが凄く綺麗だったの」

 あの後、別の絵も飾られてないか隈無く探したから間違いない。結局あったのはあの一枚だけで、要はなにも分からなかったということだ。
 スマホで検索もしてみたが、似た文字列の候補が多すぎるのか、英字ということもあって見つけることはできなかった。

「あっちゃあ、見逃してるなぁ。滅多に見れないから見ればよかったかも」
「有名な人なの?」

 悔しがっている加奈の顔を不思議そうに利香が見やる。公開最終日に見に行ったから、残念ながら次のチャンスを待つしかない。

「有名っていうか……ここ数年だけでいえば一番売れた日本人じゃないかなぁ。あたしもよく知らないけど、確か一枚数千万とかするはずだよ」
「数千万円!?」

 説明に利香は驚いた。芸術はからきしだが、数千万がどれだけ大金かくらいは分かる。それと同時に、自分が魅入ったあの絵にそれだけの価値があると知り、なんだか利香は嬉しくなった。

「でも、とにかく全部が謎な人でね。公言してるのは日本人ってことくらいで、年齢も性別も明かしてないのよ。当然、顔なんかも分かんないってわけ」
「へぇ……RENさんかぁ。どんな人なんだろ」

 想像してみるが、よく分からない。あんな絵を描く人だから、やっぱり見た目も破天荒なのだろうか。いやいや、意外とお淑やかなお姉さんとかかもしれない。
 ともあれ面白そうな画家だと思ったところで、昼休み終了のチャイムが鳴り出す。残りのオムレツを頬張りながら、利香は午後の授業のために
慌ててノートを準備するのだった。

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