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闇の賊との対決編
第34話 賢者の島
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「うーん……」
アイラはゆっくりと目を開く。
ぼんやりとした視界の中、自分が布団の中にいることに気づいたアイラはハッとして飛び起きる。壁一面に本がズラリと並んでいる本棚が目にとまる。見覚えのない場所にいることに気がついたアイラは首を傾げる。
(あれ……? 確か空からディール島に帰る途中で竜巻に巻き込まれて、意識を失ったんだよね。ここはどこだろう。部屋の中……みたいだけど。ディール島の宮殿の中なのかな?)
アイラはふと横を見る。自分の隣にもベッドがあり、そこには――――眠っているサルマの姿があった。
(サ、サルマさん⁉ なんでサルマさんもここに……? わたしが意識を失ってた間に、一体何が起こったんだろう……)
アイラはサルマの方に駆け寄り、声をかける。
「サルマさん、サルマさん!」
「……うん……?」
サルマはアイラに揺り起こされて、目をこすりながらゆっくりと体を起こした後、ハッとした表情でアイラを見る。
「アイラ‼ 無事だったか‼」
サルマは興奮した様子でアイラの両肩に手を置き、アイラの体を勢いよく揺らす。アイラはサルマのなすがままにされていたが、サルマが手を離すと口を開く。
「サルマさん。一体何があったの? ここ、どこだかわかる?」
サルマはそれを聞いて辺りを見渡し、眉間に皺を寄せる。
「……さっぱりわからねぇ。オマエを追って竜巻に飲まれてから今、目を覚ますまでは、全く意識がなくてな……」
「……え? サルマさんもしかして……わたしを追って竜巻に飛び込んだの⁉」
アイラはサルマの言葉を聞いて目を見開く。サルマはハッとした様子でアイラから目をそらす。
「そ、そりゃあ……オマエ一人竜巻ん中に残しておくわけにもいかねぇだろ。オマエがいなけりゃ、俺はお宝を見つけ出すことができねぇんだからな」
(でも、そんなことしたらサルマさんだって危険な目にあうのに……。あのサルマさんが、そこまでするなんて……)
アイラはそう思いながら、アイラと目を合わせまいとしているサルマをじっと見つめる。
ガチャリ。
部屋の扉が開き、真っ白い髪をした男性の老人が部屋に入ってくる。
老人といっても背筋がしゃんとしており、ヒゲも生やしておらずさっぱりとして若々しい印象を受ける。白色の丈の長いローブを着ており、全体的に小綺麗な格好をしている。
老人はサルマとアイラが起きているのを見ると、目を見開く。
「お、気がついたようだね。どうだい、具合の方は」
「あ、あのう……ここはどこですか?」
アイラがおずおずと尋ねると、老人はにっこりと微笑む。
「賢者の島だよ」
「け、賢者の島⁉」
(確かアンが言ってた……! 本がたくさんあって、勉強するのにいい島だって。どうしてそんなところに……)
老人は穏やかな口調で話を続ける。
「そうだよ。ところで君たちは、一体どこから来たんだい?」
「えっと……ディール島」
アイラがそう言うと、老人は驚いた様子を見せる。
「ずいぶん遠いではないか! 君たち、意識を失ったままこの島の海辺に流れ着いていたんだよ。一体何が起こったんだい?」
「えーと、ディール島のそばで黒い色の竜巻に飲み込まれて、その時意識を失ったみたいで……何が起こったのか全くわからないの」
「黒い竜巻……! それに運ばれてやってきたというのか? しかしこんな遠いところまで……」
老人が何やらぶつぶつと呟いているのを見て、サルマがぶしつけに言う。
「で、オマエは誰なんだよ」
「おっと、自己紹介がまだだったな。私はこの島の賢者、ロシールだ。賢者というのは、この島の学者たちをまとめている者のことだ」
「ロシールさんがわたしたちを助けてくれたの?」
アイラが尋ねると、ロシールは頷く。
「まあ、そうなるかな。見つけたのは私の弟子たちだけどね」
「そうなんだ。ありがとう、ロシールさん! えっと、隣にいるのはサルマさんって人で、わたしはアイラ。メリス島出身なの」
「メリス島」
ロシールがその言葉に反応して呟き、じっとアイラを見つめる。
その様子を訝しげに思ったサルマが声をかける。
「なんだよ、メリス島がどうかしたかよ」
「あ、いや……メリス島といえば、最近闇の賊に襲撃を受けた島だと思ってね。君は……大丈夫だったのかい?」
「……うん。ちょうど隣にいるサルマさんと、旅に出てたから」
「旅……か。もしかして、君は……神のコンパスの持ち主だったりするのかい?」
「「‼」」
それを聞いたアイラとサルマは目を見開く。
「神の……コンパス⁉ ロシールさんの言ってるのと同じものかはわからないけど……わたし、コンパス持ってるよ! 行くべき場所を示す特別なコンパスで、その針の示すとおりに旅をしてるところなの!」
「そう、間違いない。その特別なコンパスのことだよ。それは神の三種の神器の一つ――――神のコンパスだ」
「神器……? これ、本当は神様のものだってこと?」
「そうだよ」
「………………」
アイラは呆気にとられた様子でロシールを見つめている。
サルマはロシールのその話を聞いて、ふとメリス島を出る時のミンスの言葉を思い出す。
――――そのコンパスは……神様からの授かり物だと思っているから、だから……!――――
(いや……まさかそのままの……直接神から授かったって意味ではないだろう。確か、島に来た旅人に貰ったって言ってたし)
サルマはそう考えたあと、ふと尋ねる。
「さっき、三種の神器って言ったな? もしかして、その中に……剣はあるのか?」
「あるよ。退魔の剣と言われるその剣は、眩しいほどに輝く白い光を発しており、その光は闇の賊を打ち払う力があるそうだ」
「退魔の剣‼ それも……わたし持ってるよ!」
ロシールはそれを聞いて、驚いたようにアイラを見る。
「本当かい⁉ もしよければ、見せてもらってもいいかい?」
アイラは荷物から剣を取り出し、ロシールに見せる。ロシールは剣から目を離さないままアイラに尋ねる。
「剣の中身は? 普通の剣だったのかい?」
「うん、銀色の……普通の剣だよ」
アイラはそう言って、鞘から剣を引き抜く。ロシールはそれをじっと見つめて言う。
「ありがとう。また一つ知識が増えたよ」
「……やけに色々知ってるんだな。アイラが神器のコンパスや剣を持ってるってことにもさほど驚いていないようだし。……オマエ、一体何者だ?」
サルマは訝しげにロシールを見る。ロシールはサルマの方を振り返り、それに答える。
「言っただろう、この島の賢者だよ。ただ、私の専門分野は神学なもんでね……。神の伝説だとかそのあたりの話には、誰よりも詳しいつもりだよ」
「そうなんだ! だから色々知ってるんだね」
アイラは目を輝かせてロシールを見る。ロシールはにっこりと笑ってアイラを見、話を続ける。
「ところで、そのコンパスと剣はどこで手に入れたんだい?」
「コンパスは、ミンスさんっていうわたしの親代わりの人から貰ったの。剣の方は、オルクさんって人に……」
「…………! オルク……だと⁉」
それを聞いたロシールの目の色が変わる。アイラは驚いた様子でロシールを見る。
「え、ロシールさん……オルクさんのこと知ってるの⁉」
ロシールは少しの間黙っていたが、ゆっくりと頷く。
「オルクは……私の旧友だよ。昔、この賢者の島で一緒に学んだ仲だ。ここしばらくは会っていないがね」
ロシールはそう言って窓の外を見た後、話を続ける。
「彼がどうやって剣を手に入れたのかは知らないが……なるほど、オルクならわかる気がするよ。彼も神学を学んでいたのだが、優秀なやつだった。ここで学者にならずに、独学で研究をする道を選んでこの島を出て行ったが……もしこの島に残っていれば、彼が私に代わって賢者になっていたかもしれない」
ロシールはアイラの方を見る。
「そういえば、コンパスの針が見えるのは、神のご加護が与えられた一部の人だけだと聞くが……君には針が見えるんだな? そのコンパスも、一度私に見せてはくれないだろうか?」
アイラはそれを聞いて俯く。
「それが……失くしちゃったの。竜巻に巻き込まれる少し前に……」
ロシールはそれを聞くと目を見開く。そして少し考える素振りを見せ、口を開く。
「そうなのか……。もしコンパスも竜巻に巻き込まれたのなら、君たちが見つかった場所の近くに落ちているかもしれないが……」
「……いや、コンパスは竜巻に飲み込まれてはいないはずだ」
サルマはそう言って、アイラの肩にぽんと手を置く。
「大丈夫だよ。コンパスがディール島に落ちていったのは確認できてるからな。アンとラビに捜索を頼んである。心配するな」
「……そっか。アンとラビが探してくれるなら……きっと見つかるよね」
アイラはそう言ってサルマに少し微笑む。
「ああ。だが、あれがないと次の行き先がわからねぇから、とりあえずまたディール島に戻るしかねぇ。おい、賢者の爺さん。ここからディール島まではずいぶん離れてるって話だが、ここから島の外に向かう船はあるか?」
「そうだな……よし。確認して手配しよう。君たちの旅は、今の世界の危機的状況を打破する鍵となるに違いないからね。私も、できるだけのことはさせてもらうよ」
「あ、ありがとう! ロシールさん!」
アイラはそれを聞いてパッと顔を輝かせる。
「その代わりと言ってはなんだが……君たちの旅の話を詳しく聞かせてもらえないだろうか。あと、君たちがオルクから聞いた話も。きっとこの私もまだ知らない知識があるだろうから、研究の参考にしたいんだ」
ロシールのその言葉にアイラは快く頷く。
「うん! もちろんいいよ。あ、わたしもロシールさんにもっと色々聞いてもいい? 神様のこととか、神器のこととか……知らないことがまだまだいっぱいあると思うから」
「ああ、もちろん。私が知っていることは全て話そう」
ロシールはにこやかな笑顔を見せ、座っていた椅子から立ち上がる。
「では、船の手配をしてくるよ。夕食をごちそうするから、旅の話はその時にでもゆっくり聞かせてもらおう。食事の時間になり次第呼びに行くから、この部屋で待っていてくれるかい?」
「うん、わかった。いろいろありがとう、ロシールさん!」
礼を述べるアイラににっこりと笑って頷き、ロシールは部屋から出て行く。
アイラはゆっくりと目を開く。
ぼんやりとした視界の中、自分が布団の中にいることに気づいたアイラはハッとして飛び起きる。壁一面に本がズラリと並んでいる本棚が目にとまる。見覚えのない場所にいることに気がついたアイラは首を傾げる。
(あれ……? 確か空からディール島に帰る途中で竜巻に巻き込まれて、意識を失ったんだよね。ここはどこだろう。部屋の中……みたいだけど。ディール島の宮殿の中なのかな?)
アイラはふと横を見る。自分の隣にもベッドがあり、そこには――――眠っているサルマの姿があった。
(サ、サルマさん⁉ なんでサルマさんもここに……? わたしが意識を失ってた間に、一体何が起こったんだろう……)
アイラはサルマの方に駆け寄り、声をかける。
「サルマさん、サルマさん!」
「……うん……?」
サルマはアイラに揺り起こされて、目をこすりながらゆっくりと体を起こした後、ハッとした表情でアイラを見る。
「アイラ‼ 無事だったか‼」
サルマは興奮した様子でアイラの両肩に手を置き、アイラの体を勢いよく揺らす。アイラはサルマのなすがままにされていたが、サルマが手を離すと口を開く。
「サルマさん。一体何があったの? ここ、どこだかわかる?」
サルマはそれを聞いて辺りを見渡し、眉間に皺を寄せる。
「……さっぱりわからねぇ。オマエを追って竜巻に飲まれてから今、目を覚ますまでは、全く意識がなくてな……」
「……え? サルマさんもしかして……わたしを追って竜巻に飛び込んだの⁉」
アイラはサルマの言葉を聞いて目を見開く。サルマはハッとした様子でアイラから目をそらす。
「そ、そりゃあ……オマエ一人竜巻ん中に残しておくわけにもいかねぇだろ。オマエがいなけりゃ、俺はお宝を見つけ出すことができねぇんだからな」
(でも、そんなことしたらサルマさんだって危険な目にあうのに……。あのサルマさんが、そこまでするなんて……)
アイラはそう思いながら、アイラと目を合わせまいとしているサルマをじっと見つめる。
ガチャリ。
部屋の扉が開き、真っ白い髪をした男性の老人が部屋に入ってくる。
老人といっても背筋がしゃんとしており、ヒゲも生やしておらずさっぱりとして若々しい印象を受ける。白色の丈の長いローブを着ており、全体的に小綺麗な格好をしている。
老人はサルマとアイラが起きているのを見ると、目を見開く。
「お、気がついたようだね。どうだい、具合の方は」
「あ、あのう……ここはどこですか?」
アイラがおずおずと尋ねると、老人はにっこりと微笑む。
「賢者の島だよ」
「け、賢者の島⁉」
(確かアンが言ってた……! 本がたくさんあって、勉強するのにいい島だって。どうしてそんなところに……)
老人は穏やかな口調で話を続ける。
「そうだよ。ところで君たちは、一体どこから来たんだい?」
「えっと……ディール島」
アイラがそう言うと、老人は驚いた様子を見せる。
「ずいぶん遠いではないか! 君たち、意識を失ったままこの島の海辺に流れ着いていたんだよ。一体何が起こったんだい?」
「えーと、ディール島のそばで黒い色の竜巻に飲み込まれて、その時意識を失ったみたいで……何が起こったのか全くわからないの」
「黒い竜巻……! それに運ばれてやってきたというのか? しかしこんな遠いところまで……」
老人が何やらぶつぶつと呟いているのを見て、サルマがぶしつけに言う。
「で、オマエは誰なんだよ」
「おっと、自己紹介がまだだったな。私はこの島の賢者、ロシールだ。賢者というのは、この島の学者たちをまとめている者のことだ」
「ロシールさんがわたしたちを助けてくれたの?」
アイラが尋ねると、ロシールは頷く。
「まあ、そうなるかな。見つけたのは私の弟子たちだけどね」
「そうなんだ。ありがとう、ロシールさん! えっと、隣にいるのはサルマさんって人で、わたしはアイラ。メリス島出身なの」
「メリス島」
ロシールがその言葉に反応して呟き、じっとアイラを見つめる。
その様子を訝しげに思ったサルマが声をかける。
「なんだよ、メリス島がどうかしたかよ」
「あ、いや……メリス島といえば、最近闇の賊に襲撃を受けた島だと思ってね。君は……大丈夫だったのかい?」
「……うん。ちょうど隣にいるサルマさんと、旅に出てたから」
「旅……か。もしかして、君は……神のコンパスの持ち主だったりするのかい?」
「「‼」」
それを聞いたアイラとサルマは目を見開く。
「神の……コンパス⁉ ロシールさんの言ってるのと同じものかはわからないけど……わたし、コンパス持ってるよ! 行くべき場所を示す特別なコンパスで、その針の示すとおりに旅をしてるところなの!」
「そう、間違いない。その特別なコンパスのことだよ。それは神の三種の神器の一つ――――神のコンパスだ」
「神器……? これ、本当は神様のものだってこと?」
「そうだよ」
「………………」
アイラは呆気にとられた様子でロシールを見つめている。
サルマはロシールのその話を聞いて、ふとメリス島を出る時のミンスの言葉を思い出す。
――――そのコンパスは……神様からの授かり物だと思っているから、だから……!――――
(いや……まさかそのままの……直接神から授かったって意味ではないだろう。確か、島に来た旅人に貰ったって言ってたし)
サルマはそう考えたあと、ふと尋ねる。
「さっき、三種の神器って言ったな? もしかして、その中に……剣はあるのか?」
「あるよ。退魔の剣と言われるその剣は、眩しいほどに輝く白い光を発しており、その光は闇の賊を打ち払う力があるそうだ」
「退魔の剣‼ それも……わたし持ってるよ!」
ロシールはそれを聞いて、驚いたようにアイラを見る。
「本当かい⁉ もしよければ、見せてもらってもいいかい?」
アイラは荷物から剣を取り出し、ロシールに見せる。ロシールは剣から目を離さないままアイラに尋ねる。
「剣の中身は? 普通の剣だったのかい?」
「うん、銀色の……普通の剣だよ」
アイラはそう言って、鞘から剣を引き抜く。ロシールはそれをじっと見つめて言う。
「ありがとう。また一つ知識が増えたよ」
「……やけに色々知ってるんだな。アイラが神器のコンパスや剣を持ってるってことにもさほど驚いていないようだし。……オマエ、一体何者だ?」
サルマは訝しげにロシールを見る。ロシールはサルマの方を振り返り、それに答える。
「言っただろう、この島の賢者だよ。ただ、私の専門分野は神学なもんでね……。神の伝説だとかそのあたりの話には、誰よりも詳しいつもりだよ」
「そうなんだ! だから色々知ってるんだね」
アイラは目を輝かせてロシールを見る。ロシールはにっこりと笑ってアイラを見、話を続ける。
「ところで、そのコンパスと剣はどこで手に入れたんだい?」
「コンパスは、ミンスさんっていうわたしの親代わりの人から貰ったの。剣の方は、オルクさんって人に……」
「…………! オルク……だと⁉」
それを聞いたロシールの目の色が変わる。アイラは驚いた様子でロシールを見る。
「え、ロシールさん……オルクさんのこと知ってるの⁉」
ロシールは少しの間黙っていたが、ゆっくりと頷く。
「オルクは……私の旧友だよ。昔、この賢者の島で一緒に学んだ仲だ。ここしばらくは会っていないがね」
ロシールはそう言って窓の外を見た後、話を続ける。
「彼がどうやって剣を手に入れたのかは知らないが……なるほど、オルクならわかる気がするよ。彼も神学を学んでいたのだが、優秀なやつだった。ここで学者にならずに、独学で研究をする道を選んでこの島を出て行ったが……もしこの島に残っていれば、彼が私に代わって賢者になっていたかもしれない」
ロシールはアイラの方を見る。
「そういえば、コンパスの針が見えるのは、神のご加護が与えられた一部の人だけだと聞くが……君には針が見えるんだな? そのコンパスも、一度私に見せてはくれないだろうか?」
アイラはそれを聞いて俯く。
「それが……失くしちゃったの。竜巻に巻き込まれる少し前に……」
ロシールはそれを聞くと目を見開く。そして少し考える素振りを見せ、口を開く。
「そうなのか……。もしコンパスも竜巻に巻き込まれたのなら、君たちが見つかった場所の近くに落ちているかもしれないが……」
「……いや、コンパスは竜巻に飲み込まれてはいないはずだ」
サルマはそう言って、アイラの肩にぽんと手を置く。
「大丈夫だよ。コンパスがディール島に落ちていったのは確認できてるからな。アンとラビに捜索を頼んである。心配するな」
「……そっか。アンとラビが探してくれるなら……きっと見つかるよね」
アイラはそう言ってサルマに少し微笑む。
「ああ。だが、あれがないと次の行き先がわからねぇから、とりあえずまたディール島に戻るしかねぇ。おい、賢者の爺さん。ここからディール島まではずいぶん離れてるって話だが、ここから島の外に向かう船はあるか?」
「そうだな……よし。確認して手配しよう。君たちの旅は、今の世界の危機的状況を打破する鍵となるに違いないからね。私も、できるだけのことはさせてもらうよ」
「あ、ありがとう! ロシールさん!」
アイラはそれを聞いてパッと顔を輝かせる。
「その代わりと言ってはなんだが……君たちの旅の話を詳しく聞かせてもらえないだろうか。あと、君たちがオルクから聞いた話も。きっとこの私もまだ知らない知識があるだろうから、研究の参考にしたいんだ」
ロシールのその言葉にアイラは快く頷く。
「うん! もちろんいいよ。あ、わたしもロシールさんにもっと色々聞いてもいい? 神様のこととか、神器のこととか……知らないことがまだまだいっぱいあると思うから」
「ああ、もちろん。私が知っていることは全て話そう」
ロシールはにこやかな笑顔を見せ、座っていた椅子から立ち上がる。
「では、船の手配をしてくるよ。夕食をごちそうするから、旅の話はその時にでもゆっくり聞かせてもらおう。食事の時間になり次第呼びに行くから、この部屋で待っていてくれるかい?」
「うん、わかった。いろいろありがとう、ロシールさん!」
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