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モフモフマリモの説得はしつこく粘って頑張った。
助けた場合のメリット、助けなかった場合のデメリットを懇切丁寧にプレゼンして、このままじゃ正気でいられないのだと力説した。
それでもなかなか聞いてくれず。
三度目のイベントをボイコットし続けるという根競べになり。
とうとう私が勝利した。
よっしゃ! と喜んだのはほんの束の間。
ここからの二人を助けるための裏方作業&モフモフマリモが許すギリギリを探りながらの正規イベントの数々には、相当参った。大変だった。
特に、ヘイツとウラガが亡くなる正確な場所や時間を知るための情報集めはきつかった。
確認のために最低一回は彼らの死を目撃しなければならないなどの精神的きつさもあったし、体力的にも……。
途中から一人じゃ到底無理だと気付き、ギブアップ寸前にまで陥ったが、フスタフの置いて行った使妖精が手伝ってくれたことで何とかなった。
回線を切った使妖精は、他の使妖精の持つ情報を共有出来ない代わりに、誰にもばれることなく、私的に使える利点がある……と、疲れ切ってぐったりしている私に、使妖精本人が教えてくれた。
使妖精は、旅人が多い酒屋や、上流階級御用達の服屋さんなど、その場に応じた姿に変身して、効率的に聞き込みしてくれた。
救出手段については、当然一人では思いつかず。
いろいろやっているうちに、本筋はエーゼンに相談するようになった。
エーゼンは物語を読むだけでなく、書くのも好きらしく、結構なアイデア持ちだった。中にはありえないアイデアもあったが、私にはそれを実行するに適した謎の力があって、しかも何度も試すことが出来る。
もちろんミーキアにも相談した。
彼女は、その器用さで、救出に使う小物作りを手伝ってくれたり、その使用法を教えてくれたり。落ち込んだときには励まして貰ったりもした。
ときどきふいに現れるオルレシアンには、こっそり外出する方法と、そこまでの道程と、案内人などを紹介してもらった。
私は、もしもこうだったらということで話を切り出しては案を聞き、ときには恋のキューピットになるためだと嘘をつき、しかし割とすぐに怪しまれ、なかったことにするというのを繰り返した。
何度も何度も。
二人を助けようと決めてからというもの、嘘をつく回数が増えた。しかし、罪悪感は以前より薄かった。
「……って前ふりしてる場合じゃないよね。ヘイツとウラガのことを考えなきゃ」
聖都へ向かうと思われる馬車の中。私はひたすら思考を巡らせた。
フスタフの言っていたことなんてやっぱり信じられない。そんな恋愛的要素は欠片もなかったと言いきれる……が、一応、念のため、ヘイツとウラガ……二人とどういうやりとりをしていたか思い出そうとした。
二人っていうか、一人づつ片していこうか。
じゃあまずはヘイツ。
『ヘイツは自殺じゃなかったんだよね』
ヘイツは人買いに売られた後、山奥の孤児院に居た。
孤児院……というのは表向きで、そこは、子供たちを買い集め、裏の仕事をさせるための訓練施設だった。裏っていうと具体的には、ヤバイものを運んだり、はたまた暗殺ということもあったらしい。
ヘイツの死後、生きているかもしれないという一縷の望みを持って私兵隊を送りこんだヘイツ母は、大層落胆しただろうけれど。その私兵隊の後を使妖精につけさせることで、施設の場所を知ることが出来たのだから、決して無駄ではなかったのだと教えてあげたいと思ったけどもちろんできませんでした。
『ヘイツは自殺じゃ……』
ヘイツが死んだのは、その山奥にある施設の裏の崖だ。
『ヘイツは……』
もうっわかってるよもうっ。なんというかもうこれ……ほんとあれなんだけれども。
ヘイツが死んだ原因の一端は私にあった。
というのも……というのも。
『施設の裏山で訓練していたヘイツは、風に飛ばされたリボン……リリが巻いてあげたリボンを追いかけて、そのまま崖から転落した』
あのリボンを……まさか良かれと思ってやったことが彼の死に繋がるとは思いもよらず。よらずすぎて気絶しそうだった。
彼を死なせないってだけなら、リボンを渡さなければいいかもしれない。しかし、もしかしたらだけど、このリボンのことがなかったら、本当に自殺してしまうかもという可能性も大いにある。
それに、後のイベントのためには死んだことにする必要があったし。
後から追いかけて来た監視にも、諸事情あって落ちたと思わせなければならなかった。これは後付けだけど。
結果オーライってことにしてほんと。
『うん。そだね』
よし。……じゃなくて。
そこで練りに練り上げた案が、ヘイツ空中キャッチロープで壁走り作戦だ。
『あれは大変だったね。落ちてくるタイミングが掴めなくて、何回も落ちていくヘイツ見なきゃならなくて』
そうだよ。成功したとき思わずガッツポーズしてひゃっほーって声だしちゃって結局監視に見つかっておじゃんになって、そんときはさすがに己の頬をぶっ叩いたわ。痛かったしイタかったわ。
『あ。リリを好きになったってんなら、助けた瞬間だったんじゃない?』
え……いやでもあんなに必死の形相だったのに?
『ああいう顔が好きな人もいるかも』
いないと思う。いないと思う。
『二回言わなくても。とにかくセリエンディに着く前に思いつく限り二人とのこと思い出しといたほうがいいんでない?』
うん。そうしようとしてる最中なの。わかるよねハムスターさん。全部きっちり思い出して、勘違いだってことを証明して、牧場に戻って貰わないとね。
『セリエンディに行きたくないの? みんなに会いたくないの?』
……会いたい……けど。
『けど?』
…………とにかく思い出そう。馬車の車輪が止まる前に。
助けた場合のメリット、助けなかった場合のデメリットを懇切丁寧にプレゼンして、このままじゃ正気でいられないのだと力説した。
それでもなかなか聞いてくれず。
三度目のイベントをボイコットし続けるという根競べになり。
とうとう私が勝利した。
よっしゃ! と喜んだのはほんの束の間。
ここからの二人を助けるための裏方作業&モフモフマリモが許すギリギリを探りながらの正規イベントの数々には、相当参った。大変だった。
特に、ヘイツとウラガが亡くなる正確な場所や時間を知るための情報集めはきつかった。
確認のために最低一回は彼らの死を目撃しなければならないなどの精神的きつさもあったし、体力的にも……。
途中から一人じゃ到底無理だと気付き、ギブアップ寸前にまで陥ったが、フスタフの置いて行った使妖精が手伝ってくれたことで何とかなった。
回線を切った使妖精は、他の使妖精の持つ情報を共有出来ない代わりに、誰にもばれることなく、私的に使える利点がある……と、疲れ切ってぐったりしている私に、使妖精本人が教えてくれた。
使妖精は、旅人が多い酒屋や、上流階級御用達の服屋さんなど、その場に応じた姿に変身して、効率的に聞き込みしてくれた。
救出手段については、当然一人では思いつかず。
いろいろやっているうちに、本筋はエーゼンに相談するようになった。
エーゼンは物語を読むだけでなく、書くのも好きらしく、結構なアイデア持ちだった。中にはありえないアイデアもあったが、私にはそれを実行するに適した謎の力があって、しかも何度も試すことが出来る。
もちろんミーキアにも相談した。
彼女は、その器用さで、救出に使う小物作りを手伝ってくれたり、その使用法を教えてくれたり。落ち込んだときには励まして貰ったりもした。
ときどきふいに現れるオルレシアンには、こっそり外出する方法と、そこまでの道程と、案内人などを紹介してもらった。
私は、もしもこうだったらということで話を切り出しては案を聞き、ときには恋のキューピットになるためだと嘘をつき、しかし割とすぐに怪しまれ、なかったことにするというのを繰り返した。
何度も何度も。
二人を助けようと決めてからというもの、嘘をつく回数が増えた。しかし、罪悪感は以前より薄かった。
「……って前ふりしてる場合じゃないよね。ヘイツとウラガのことを考えなきゃ」
聖都へ向かうと思われる馬車の中。私はひたすら思考を巡らせた。
フスタフの言っていたことなんてやっぱり信じられない。そんな恋愛的要素は欠片もなかったと言いきれる……が、一応、念のため、ヘイツとウラガ……二人とどういうやりとりをしていたか思い出そうとした。
二人っていうか、一人づつ片していこうか。
じゃあまずはヘイツ。
『ヘイツは自殺じゃなかったんだよね』
ヘイツは人買いに売られた後、山奥の孤児院に居た。
孤児院……というのは表向きで、そこは、子供たちを買い集め、裏の仕事をさせるための訓練施設だった。裏っていうと具体的には、ヤバイものを運んだり、はたまた暗殺ということもあったらしい。
ヘイツの死後、生きているかもしれないという一縷の望みを持って私兵隊を送りこんだヘイツ母は、大層落胆しただろうけれど。その私兵隊の後を使妖精につけさせることで、施設の場所を知ることが出来たのだから、決して無駄ではなかったのだと教えてあげたいと思ったけどもちろんできませんでした。
『ヘイツは自殺じゃ……』
ヘイツが死んだのは、その山奥にある施設の裏の崖だ。
『ヘイツは……』
もうっわかってるよもうっ。なんというかもうこれ……ほんとあれなんだけれども。
ヘイツが死んだ原因の一端は私にあった。
というのも……というのも。
『施設の裏山で訓練していたヘイツは、風に飛ばされたリボン……リリが巻いてあげたリボンを追いかけて、そのまま崖から転落した』
あのリボンを……まさか良かれと思ってやったことが彼の死に繋がるとは思いもよらず。よらずすぎて気絶しそうだった。
彼を死なせないってだけなら、リボンを渡さなければいいかもしれない。しかし、もしかしたらだけど、このリボンのことがなかったら、本当に自殺してしまうかもという可能性も大いにある。
それに、後のイベントのためには死んだことにする必要があったし。
後から追いかけて来た監視にも、諸事情あって落ちたと思わせなければならなかった。これは後付けだけど。
結果オーライってことにしてほんと。
『うん。そだね』
よし。……じゃなくて。
そこで練りに練り上げた案が、ヘイツ空中キャッチロープで壁走り作戦だ。
『あれは大変だったね。落ちてくるタイミングが掴めなくて、何回も落ちていくヘイツ見なきゃならなくて』
そうだよ。成功したとき思わずガッツポーズしてひゃっほーって声だしちゃって結局監視に見つかっておじゃんになって、そんときはさすがに己の頬をぶっ叩いたわ。痛かったしイタかったわ。
『あ。リリを好きになったってんなら、助けた瞬間だったんじゃない?』
え……いやでもあんなに必死の形相だったのに?
『ああいう顔が好きな人もいるかも』
いないと思う。いないと思う。
『二回言わなくても。とにかくセリエンディに着く前に思いつく限り二人とのこと思い出しといたほうがいいんでない?』
うん。そうしようとしてる最中なの。わかるよねハムスターさん。全部きっちり思い出して、勘違いだってことを証明して、牧場に戻って貰わないとね。
『セリエンディに行きたくないの? みんなに会いたくないの?』
……会いたい……けど。
『けど?』
…………とにかく思い出そう。馬車の車輪が止まる前に。
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