ドラゴネット興隆記

椎井瑛弥

文字の大きさ
248 / 345
第三章:領主二年目第二部

家系の話

しおりを挟む
「私だけ王女じゃないのね」
「競っても意味がないぞ」
「競うわけじゃないけど、そうだったら面白いことになると思って」

 ドラゴネットに帰ってみんなに報告している。エルザたちから簡単に伝えてもらっているが、俺がその補足をしているという形だ。

 エルザがレティシア王女の双子の姉だということはゴール王国に認められた。死んだことにはされていなかったので、改めて籍を抜き、俺のところに嫁いだことになった。俺はディオン王の義理の息子になってしまった。

「私もパウラも王族ではないが、ローサは王族だから、カレンも関係者であることは間違いない」
「そう言われればそうだな。こじつけっぽいが」
「私も王族になりますので、エルマー様は王族の主人ということになります」
「二人は祖父が同じ再従姉妹はとこだったか。しかしエルフが国王になると王族が多すぎないか?」

 エルフは寿命が一〇〇〇年近く、魔力が多ければ一五〇〇年を超えるそうだ。カサンドラとローサの祖父はとっくに退位したらしいが、二人の祖父なら八〇〇歳くらいにはなるだろう。子孫がどれだけいるのか。

 そう考えれば妻が二〇人、愛人が三〇人というのは意外に少ないように聞こえるのが不思議だな。しかもこれは二人が国を出るまでの話らしいので、現在はもっと増えているかもしれないということだ。一〇〇人や二〇〇人くらいはいるかもしれないな。

 クラースとパウラの娘であるカレンは普通の身分だ。竜が普通かどうかは横に置いておくが、別にどこかの国の王族とかそのようなことはない。クラースの第二夫人であるローサは元国王の孫になる。カレンとローサに血の繋がりはないが、全く無関係でもない。カレンとローサの関係を表す言葉はあるのか?

 そしてローサの再従姉妹はとこであるカサンドラも元国王の孫で、その彼女が今は俺の愛人になる。だから俺も関係なくはない。

「あたしは普通の商家の生まれですから、ここにいるのが恐ろしく場違いに感じます」
「私も同じです。田舎の酒場の娘ですから」
「私も遠方の田舎町育ちです。特に何もない町でした」

 ヘルガは商家の娘、アンゲリカは酒場の娘、アメリアは普通の家だったそうだ。普通はそんなものだろう。王女がゴロゴロいるのがおかしい。

「エルマー様の生まれが普通なのがむしろ不思議じゃないですかっ?」
「うちは父の代で準男爵になったが、それまでは騎士の家柄だった。母は下級貴族の家の出で、親が死んだので友人が引き取ったそうだ。その友人というのがエクムント殿の父上だな。母の実家は今でも不明のままだ」
「あなたのことだから、何が出そうね」
「出ても困るぞ。俺は普通でいい」

 父は代々騎士の家系だった。要するに準貴族だ。貴族ではないが平民からは貴族と思われる。貴族からは見ると貴族ではないが平民の一番上となる。騎士号は子供に継がせることはできないが、貴族に仕えれば与えられるので、実質的には世襲に近い。

「お祖父様の妹でちょっと面倒な人がいるんだけど、その人は真っ赤な髪だったわ」
「まさか母がその血筋だとか言わないよな?」

 世の中はどこで誰と誰が繋がっているか分からないと知ったばかりだ。うちの血筋は異国らしいから、そもそも大陸が違っても不思議ではない。

「絶対ないわよ」
「言いきれるのか?」
「うん。結婚できてないから」
「それなら無理だな」

 妻と愛人を合わせて五〇人以上いる人の妹が結婚していないのか。何か理由があるのかもしれないが、なかなかものだな。

「でもエルマーって純粋な人間じゃない気がするわ。カサンドラから見てどう?」
「そうですね……」

 そう言ってカサンドラが俺の頭を掴む。

「あら? エルマー様、目は昔からそんな感じでしたか?」
「目? 目が何かあるのか?」

 自分の目なんて見ないだろう。鏡は見るが、まじまじと自分の顔を見つめる趣味はない。

「これで確認してみてはいかがですか?」
「ああ、ありがとう」

 ナターリエが鏡を渡してくれたので目を見る。特に何もない。

「カサンドラ、何かおかしいか?」
「はい、先ほど光の具合でしょうか、虹彩の形が違って見えましたので」
「虹彩? 目の中か?」
「そうです。少し光を当てますね」

 カサンドラは右手で光の球を作り、それを俺の顔に近づけた。

「これは蛇……いえ、竜の目ですね」
「竜の目?」

 カレンたちは人と見た目はほとんど同じだが、目だけはほんの少し違うらしい。意識しなければ気づかない程度らしいが。

「ほとんど違いはないのですが、急に眩しくなると人ならこのような形になり、竜はこのようになります」

 カサンドラが絵を描いて見せてくれた。人は瞳孔の中にある虹彩が暗い場所では大きく、明るい場所では小さくなる。これで目に入る光の量を調節するそうだ。一方で竜は、虹彩が二重になっていて、一つは細くなるそうだ。二重なのでよく見ないと気づかないらしい。

 これは火を吐くと眩しいからではないかと言われているそうだ。カーテンを二重にかけるようなものらしい。普段は開けていても問題ないが、眩しすぎると二枚とも閉めると。

「アメリアさんは猫人なので、それに近い形になります」
「確かに驚いた時のアメリアの目も少し違うな」
「あの、あまりじっと見られると恥ずかしいのですが」
「ああ、悪かった」

 竜の目か。カレンに力をもらった時にそうなったのか。もしかしたら俺の血筋のどこかに竜の血が入っていたのか。だが母は病気で亡くなったそうだ。竜の血を引いているなら病気くらい簡単に直ると思うんだが、その考えは間違っているんだろうか。

「俺のことはまあいい。カレンから力をもらったんだから、多少は影響も出るだろう。それで、もうしばらくしたらゴール王国のディオン王がアルマン王国に向かうことになる。その時期になれば俺はまたしばらく王都にいる」
「その時は私も王都に行くことになります。でも出産とどちらが先になるか分からないのが気がかりですね」
「さすがに無理はするなよ。無理なら無理でいい。本来は無理なことだ。普通に移動すれば二週間以上かかる」
「エルマー様もどんどん出世ですねっ」
「俺自身は出世したいと思わなかったんだけどな」
「それならお兄様のせいですねっ」

 俺は苦笑いしつつ、俺を出世させようと頑張ってくれたレオナルト殿下の姿を頭に浮かべた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

『召喚ニートの異世界草原記』

KAORUwithAI
ファンタジー
ゲーム三昧の毎日を送る元ニート、佐々木二郎。  ある夜、三度目のゲームオーバーで眠りに落ちた彼が目を覚ますと、そこは見たこともない広大な草原だった。  剣と魔法が当たり前に存在する世界。だが二郎には、そのどちらの才能もない。  ――代わりに与えられていたのは、**「自分が見た・聞いた・触れたことのあるものなら“召喚”できる」**という不思議な能力だった。  面倒なことはしたくない、楽をして生きたい。  そんな彼が、偶然出会ったのは――痩せた辺境・アセトン村でひとり生きる少女、レン。  「逃げて!」と叫ぶ彼女を前に、逃げようとした二郎の足は動かなかった。  昔の記憶が疼く。いじめられていたあの日、助けを求める自分を誰も救ってくれなかったあの光景。  ……だから、今度は俺が――。  現代の知恵と召喚の力を武器に、ただの元ニートが異世界を駆け抜ける。  少女との出会いが、二郎を“召喚者”へと変えていく。  引きこもりの俺が、異世界で誰かを救う物語が始まる。 ※こんな物も召喚して欲しいなって 言うのがあればリクエストして下さい。 出せるか分かりませんがやってみます。

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

商人でいこう!

八神
ファンタジー
「ようこそ。異世界『バルガルド』へ」

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

~クラス召喚~ 経験豊富な俺は1人で歩みます

無味無臭
ファンタジー
久しぶりに異世界転生を体験した。だけど周りはビギナーばかり。これでは俺が巻き込まれて死んでしまう。自称プロフェッショナルな俺はそれがイヤで他の奴と離れて生活を送る事にした。天使には魔王を討伐しろ言われたけど、それは面倒なので止めておきます。私はゆっくりのんびり異世界生活を送りたいのです。たまには自分の好きな人生をお願いします。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!! お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。 皆様、お気に入り登録ありがとうございました。 現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。 辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。 そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。 そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。   だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。 仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!? そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※お待たせしました。 ※他サイト様にも掲載中

処理中です...