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第六章:領主三年目、さらに遠くへ
すべて世は事もなし
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帰って早々に血縁関係のバタバタで城に帰るのが遅くなった。
「おかえり」
「ただいま」
カレンのキスを受ける。カレンはアウグスティンを抱いていた。また大きくなったんじゃないか?
「大丈夫だった?」
「ビアンカ殿下の方はな。ただ……マリーナに子供ができた」
これは隠すわけにはいかない。きちんとけじめは付けないとな。
「しばらく一緒だったんだから当然ね。もう何人かは大丈夫よ」
寛大な妻でよかった。しかし気になった言葉がある。
「何人かってどういうことだ?」
「町が増えたから。まだ城壁と堀だけなんだけど」
カレンが言うには、俺がシエスカ王国に向かってから、これまでの町の北と東に新しい町を作り始めたそうだ。
「みんなが頑張ってくれたおかげで順調に増えてるわ」
順調に増えているそうだ。町というものは順調に増えるものなのか。言葉的にどうかと思ったが、渡してもらった資料を見ると順調に増えていた。
この盆地は魔獣と魔物が多い。一定範囲にいる魔獣と魔物を駆除したらそこを城壁で囲む。一応これまで町はすべて五キロ四方を基準にしている。その周りに堀を巡らし、さらに魔獣避けを設置して中に入らないようにする。すべてそのようになっている。
最初はドラゴネットしかなかった。それからその北にエルザスキルヒェン、その北にアルマンハイム、さらに北にナターリエンブルクができた。この三つは同時期に造られた。名前から分かるだろうが、それぞれエルザ、アルマ、ナターリエの三人の名前から取った。
しばらくしてからドラゴネットの東にアレティウス、その北にレティシアスドルフができた。アレッタ、そしてレティシアの名前を使っているのは分かるだろう。アレッタは妻にするという話以前に、この領地の北東地域に暮らす水棲種族のために造った町だ。レティシアスドルフはレティシアが自分の名前を冠した町がないということでエルザスキルヒェンの東に造った。一応俺が知っているのはそこまでだ。それがどんどんと北と東に広がり、現在は町の数が一八になっているそうだ。
町を造っても人がいなければどうしようもないが、前のようにいきなり大量の移民が来れば大変なことになる。だから町があるのは助かる。造りすぎな気もするが、このように強引にでも広げなければ領地が広がらないのは事実だ。いまだに使えない土地が大半だからだ。
新しくできた町にはまだ家はほとんど立っていないが、とりあえず土地は確保でき、運河と水路は完成していると書かれている。順番に家も建て始めていると。
「子供の代にはどこまで広くなるか楽しみだな。でも急に増やしすぎじゃないか?」
子供にはできれば楽な暮らしをさせたい。もちろん領主は一人しか無理なわけだが、子供一人につき町を一つくらいならどうにかなるのではないかなどと考えた。だからこそ町を増やしていたわけだが、カレンは常に上を目指していた。住民を増やすために国に陳情書を出したと。
「また移住希望者を集めてくれるって」
「それは助かるが、移住希望者なんてそんなにいないだろう」
「ううん、意外といるそうよ。そこの書類がそうね」
カレンが指した方を見ると、一通の立派な手紙が置かれていた。これは宰相からか。なるほど、衣食住をうちが保証するということで移住希望者を募っていくと。どれだけ集まるんだ?
庭付きの家を与える。庭はちょっとした畑くらいは作れる。その畑で作ったものは好きにしていい。そして働く場所も用意する。そのような条件が書かれている。たしかに町を増やせばいい。だが移住希望者がいるから町を造るのではなく、町を造るから移住希望者を募ったのか? まあ鶏が先か卵が先かという問題でしかないかもしれないが、ただ領民を増やせばいいという問題でもないのだが。
「どうせなら一番上を目指さないと」
「それはそうだが、少々問題もあるんだぞ」
貴族が減った結果、俺はほぼ一番上になってしまった。ただここから上を目指そうとすると反逆とか言われかねない。そこだけは心配だ。
「大丈夫。そこはナターリエが上手くやってくれたから」
「ナターリエが?」
たしかに王女だから効き目はあるだろう。
「陳情書を書いたのはナターリエか?」
「そうよ。一番話が通りやすいでしょ?」
「それはな」
娘から頼まれた陛下が宰相に丸投げしたか、あるいはレオナルト殿下を経由したも可能性もあるが、いずれにせよ陛下に迷惑をかけたかもしれない。たが……ここしばらくはそれだけの仕事をしたと思って許してもらおう。
「それで、他に何かあったか?」
「鉱物や木材で新しく見つかったものはそっちの書類。魔道具関係はこっちね」
「意外にあるな」
やはり二か月ほど離れるとかなり違うな。
「しばらくはゆっくりできるんでしょ?」
「そうだな。しばらくは何もすることはないはずだ」
「それなら……ね?」
「ん?」
カレンはアウグスティンを指した。
「二人目か?」
「そう。マリーナのせいでもないけど、少しゆっくりしたからまた欲しくなったかな」
竜は人の姿で子供ができると竜の姿に戻れなくなる。それはストレスになるらしいが……。
「町はまだ増やせるんだったな」
「その気になったらいくらでも増えるわよ。ブルーノが頑張れば」
「それがあいつの仕事だからな」
少しは手加減してくれてもいいんじゃないと文句を言うブルーノの顔が頭に浮かんだ。
「それで、カレンはもう一人でいいのか?」
「みんなの子供を見ていたら五人でも一〇人でもいいかなって」
「それなら今夜から頑張らないとな」
しばらくは王都へは行かない。町を作って子供を作って、町を育てて子供を育てて、広さ的にはこの国一番の領地だが、まだまだ領地としては小さい。アウグスティンが継ぐ前に、できればこの国一番の町にしたい。父もこんな風に思っていたんだろうか。自分はどうでもいい、でも息子には、と。
「おかえり」
「ただいま」
カレンのキスを受ける。カレンはアウグスティンを抱いていた。また大きくなったんじゃないか?
「大丈夫だった?」
「ビアンカ殿下の方はな。ただ……マリーナに子供ができた」
これは隠すわけにはいかない。きちんとけじめは付けないとな。
「しばらく一緒だったんだから当然ね。もう何人かは大丈夫よ」
寛大な妻でよかった。しかし気になった言葉がある。
「何人かってどういうことだ?」
「町が増えたから。まだ城壁と堀だけなんだけど」
カレンが言うには、俺がシエスカ王国に向かってから、これまでの町の北と東に新しい町を作り始めたそうだ。
「みんなが頑張ってくれたおかげで順調に増えてるわ」
順調に増えているそうだ。町というものは順調に増えるものなのか。言葉的にどうかと思ったが、渡してもらった資料を見ると順調に増えていた。
この盆地は魔獣と魔物が多い。一定範囲にいる魔獣と魔物を駆除したらそこを城壁で囲む。一応これまで町はすべて五キロ四方を基準にしている。その周りに堀を巡らし、さらに魔獣避けを設置して中に入らないようにする。すべてそのようになっている。
最初はドラゴネットしかなかった。それからその北にエルザスキルヒェン、その北にアルマンハイム、さらに北にナターリエンブルクができた。この三つは同時期に造られた。名前から分かるだろうが、それぞれエルザ、アルマ、ナターリエの三人の名前から取った。
しばらくしてからドラゴネットの東にアレティウス、その北にレティシアスドルフができた。アレッタ、そしてレティシアの名前を使っているのは分かるだろう。アレッタは妻にするという話以前に、この領地の北東地域に暮らす水棲種族のために造った町だ。レティシアスドルフはレティシアが自分の名前を冠した町がないということでエルザスキルヒェンの東に造った。一応俺が知っているのはそこまでだ。それがどんどんと北と東に広がり、現在は町の数が一八になっているそうだ。
町を造っても人がいなければどうしようもないが、前のようにいきなり大量の移民が来れば大変なことになる。だから町があるのは助かる。造りすぎな気もするが、このように強引にでも広げなければ領地が広がらないのは事実だ。いまだに使えない土地が大半だからだ。
新しくできた町にはまだ家はほとんど立っていないが、とりあえず土地は確保でき、運河と水路は完成していると書かれている。順番に家も建て始めていると。
「子供の代にはどこまで広くなるか楽しみだな。でも急に増やしすぎじゃないか?」
子供にはできれば楽な暮らしをさせたい。もちろん領主は一人しか無理なわけだが、子供一人につき町を一つくらいならどうにかなるのではないかなどと考えた。だからこそ町を増やしていたわけだが、カレンは常に上を目指していた。住民を増やすために国に陳情書を出したと。
「また移住希望者を集めてくれるって」
「それは助かるが、移住希望者なんてそんなにいないだろう」
「ううん、意外といるそうよ。そこの書類がそうね」
カレンが指した方を見ると、一通の立派な手紙が置かれていた。これは宰相からか。なるほど、衣食住をうちが保証するということで移住希望者を募っていくと。どれだけ集まるんだ?
庭付きの家を与える。庭はちょっとした畑くらいは作れる。その畑で作ったものは好きにしていい。そして働く場所も用意する。そのような条件が書かれている。たしかに町を増やせばいい。だが移住希望者がいるから町を造るのではなく、町を造るから移住希望者を募ったのか? まあ鶏が先か卵が先かという問題でしかないかもしれないが、ただ領民を増やせばいいという問題でもないのだが。
「どうせなら一番上を目指さないと」
「それはそうだが、少々問題もあるんだぞ」
貴族が減った結果、俺はほぼ一番上になってしまった。ただここから上を目指そうとすると反逆とか言われかねない。そこだけは心配だ。
「大丈夫。そこはナターリエが上手くやってくれたから」
「ナターリエが?」
たしかに王女だから効き目はあるだろう。
「陳情書を書いたのはナターリエか?」
「そうよ。一番話が通りやすいでしょ?」
「それはな」
娘から頼まれた陛下が宰相に丸投げしたか、あるいはレオナルト殿下を経由したも可能性もあるが、いずれにせよ陛下に迷惑をかけたかもしれない。たが……ここしばらくはそれだけの仕事をしたと思って許してもらおう。
「それで、他に何かあったか?」
「鉱物や木材で新しく見つかったものはそっちの書類。魔道具関係はこっちね」
「意外にあるな」
やはり二か月ほど離れるとかなり違うな。
「しばらくはゆっくりできるんでしょ?」
「そうだな。しばらくは何もすることはないはずだ」
「それなら……ね?」
「ん?」
カレンはアウグスティンを指した。
「二人目か?」
「そう。マリーナのせいでもないけど、少しゆっくりしたからまた欲しくなったかな」
竜は人の姿で子供ができると竜の姿に戻れなくなる。それはストレスになるらしいが……。
「町はまだ増やせるんだったな」
「その気になったらいくらでも増えるわよ。ブルーノが頑張れば」
「それがあいつの仕事だからな」
少しは手加減してくれてもいいんじゃないと文句を言うブルーノの顔が頭に浮かんだ。
「それで、カレンはもう一人でいいのか?」
「みんなの子供を見ていたら五人でも一〇人でもいいかなって」
「それなら今夜から頑張らないとな」
しばらくは王都へは行かない。町を作って子供を作って、町を育てて子供を育てて、広さ的にはこの国一番の領地だが、まだまだ領地としては小さい。アウグスティンが継ぐ前に、できればこの国一番の町にしたい。父もこんな風に思っていたんだろうか。自分はどうでもいい、でも息子には、と。
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