67 / 92
第十四章【全ての始まりの地】
第六十七節 導きの蛍花
しおりを挟む
亜麻色の髪を風になびかせ、ビアンカはオルフェーヴル号を走らせていた。
ビアンカの目の前には――、南の砦付近にあるリベリア公国とカーナ騎士皇国との間に存在する石垣で組まれた国境線が広がっている。
リベリア公国とカーナ騎士皇国は、近年になってカーナ騎士皇国が不穏な動きを見せ始め――、リベリア公国とは国境付近で小競り合いのような牽制の取り合いをしている状態が長く続いていた。
そのため――、本来であれば、明確な線引きをされた国境線の存在しない“境界領域”という概念しかなかった両国の間には、目に見える形――石垣で組まれた国境線が作られていたのだった。
その国境線にある石垣と石垣の間、門柱が大きく口を開けている先――、カーナ騎士皇国領への入り口へと向かい、ビアンカはオルフェーヴル号の腹を蹴り、更にオルフェーヴル号の走る足を加速させる。
「おいっ!! お前、止まれ――っ!!」
門の付近にいた二人の憲兵が、駆けてくる馬に気付き声を上げた。
(憲兵は――二人……。いける……っ!)
今、リベリア公国領側の国境の警備は手薄だった。
ビアンカは――、そのことを見越していた。
ビアンカが国境付近の警備が手薄だろうと予測していた理由は――、“リベリア解放軍”が起こした反乱のためである。
南の砦に詰めていた騎士や兵士も、国境の警備に就いていた憲兵たちも、その多くが“リベリア解放軍”の反乱制圧のためにリベリア公国へと戻っていっていた。
ビアンカの目の前にいる二人の憲兵は、リベリア公国が滅びたことを知らず、自身の職務を全うするために動きを見せる。
静止の声に従わないビアンカを見とめた憲兵は国境の門柱――、その両端に立ち、手に持っていた槍を馬の足を止めさせようという意図で、門柱との間に交差させるように重ね合わせた。
「ここより先はカーナ騎士皇国領だっ!! 許可なき者は何人たりとも通ることはまかり成らんぞっ!!」
憲兵の一人がビアンカに向かい、大きく声を張り上げ忠告の言葉を口にする。
だが――ビアンカは、オルフェーヴル号の足を止めさせなかった。
「――オルフェーヴル号……、飛んでっ!!」
ビアンカは馬上で身を伏せ、オルフェーヴル号に指示をする。
オルフェーヴル号はビアンカの指示を聞き、鼻を鳴らして返事をしたかと思うと、駆け足を自ずと速めていく。
「お、おい――っ!!」
馬の足を緩めさせる気のないビアンカを見て、憲兵は慌てた様子を見せる。
限界まで加速をしたオルフェーヴル号は、慌てる憲兵が門の前に交差させ重ね合わせた槍の上を――、地面を力一杯に蹴り上げて跳躍していた。
そうして――、カーナ騎士皇国領の地に、土埃を巻き上げながら見事に着地する。
軽々と足止めの槍を飛び越えられた憲兵たちは呆気に取られ、そして困惑していた。
カーナ騎士皇国領内に入られてしまっては、リベリア公国の憲兵である自分たちでは追いかけることが不可能なためである。
ビアンカは、そのことを分かっており――、オルフェーヴル号の踵を返させ、憲兵へと目を向けた。
「ごめんなさい。私は……、行かなければいけない場所があるの……」
ビアンカは、申し訳なさげに謝罪の言葉を口にする。
そして――、一巡何かを考える様を見せ、意を決したように再度口を開いた。
「――リベリア公国は……、あなたたちの守るべき国は滅びたわ。もう……、ここを守る必要もない。生まれた地が――、リベリア公国以外に帰る故郷があるのなら、戻った方が良い……」
「は……?」
ビアンカの言葉に――、二人の憲兵は顔を見合わせ怪訝な表情を見せていた。
だがしかし、そのビアンカの言葉が意味することを推し量った憲兵の一人が顔色を変える。
「それって……まさか、“リベリア解放軍”が……?」
憲兵は顔色を青くし、ビアンカに問い掛ける。
しかし、ビアンカは憲兵からの問い掛けに――何も答えなかった。
「もう、行かないといけないから……。ごめんなさい……」
ビアンカはオルフェーヴル号の手綱を引き、オルフェーヴル号の踵を返させる。
(――まさか……、本当のことなんか言えるわけないわ……)
“リベリア解放軍”がリベリア公国を荒廃させたのは事実ではあった。
だが――、本当にリベリア公国自体を滅ぼしたのはビアンカ自身である。
しかしながら、そのようなことをビアンカが語ったところで、憲兵たちも信じることはないであろうことは容易に想像もつき、ビアンカ本人も語りたくないものだった。
憲兵たちから顔の見えなくなったビアンカの表情は――、酷く苦渋に満ちたものを浮かべていた。
「お、おい。待て……っ!」
背を向けたビアンカに、憲兵が答えの続きを促そうとする声を投げ掛ける。
その投げ掛けられた言葉をビアンカは無視し――、オルフェーヴル号を再び走らせていった。
ビアンカにとって未知の領域である、カーナ騎士皇国領へ向かって――。
◇◇◇
ビアンカがカーナ騎士皇国領に入り込んでから、幸いにもカーナ騎士皇国側の者たちに発見されず、見咎められることなく進むことができていた。
その途中でビアンカは、街道と思しき道を少し離れた場所――、そこでオルフェーヴル号から降り、樹木に寄り掛かり座り込みながら、何かを考えている様子を見せる。
オルフェーヴル号に休憩を取らせながら、ビアンカは自身が目指しているハルの故郷――、“喰神の烙印”の呪いを伝承する隠れ里のことを考えていたのだった。
ハルの故郷である隠れ里に思いを馳せながら、ビアンカは自身の左手の甲を目の前に掲げ――見つめる。
日は陰りを見せ、時間は夕刻を少し過ぎた頃――。
夕陽が、ビアンカの左手の甲に刻まれる“喰神の烙印”の痣を、夕刻の見せる紅で照らす。
(ここから先は……、あなたとハルの導きにかかっているわ。お願いよ……)
ビアンカは心中で、“喰神の烙印”と――、その内に存在しているハルに語り掛ける。
リベリア公国よりも南に下ったカーナ騎士皇国領は広く――、緑生い茂る森の数も多かった。
そのような状況で、ハルの語った『森の中で人目に触れないように隠されて存在していた里』を探すという行為は、“干し草の中の針を探す”と比喩されるほどの至難の業であろう。
それ故に――、ビアンカはオルフェーヴル号を走らせている間も、“喰神の烙印”へと意識を集中させていた。
さようにして、道中にいくつか点在していた森は全て足を踏み入れることはせず、ただひたすらに南へと――カーナ騎士皇国領を更に下っていっていたのである。
「オルフェーヴル号――、休憩は終わりにして……、そろそろ行きましょうか」
ビアンカは立ち上がると、返事の嘶きを上げたオルフェーヴル号に再び跨り、移動を始めた。
(――もう少し南に下った場所にある森の中……、その奥に……、何かを感じる)
ビアンカは――、“喰神の烙印”に導かれるように、何かを感じていた。
まるで、黒い影に手招きをされるように――、南の方角へオルフェーヴル号を走らせていくのであった。
夕刻も過ぎ――、辺りがすっかりと夜闇に包まれた頃だった。
ビアンカは一つの、樹木が鬱蒼と生い茂る森の前に辿り着いていた。
――ここで間違いないはず……。
月明りにぼんやりと照らされる深い森を目にし、ビアンカは確信する。
この森の奥に伝承の隠れ里が存在するはずである――、ということを。
その森には入り口となるような部分や道は存在せず――、ビアンカは仕方なくオルフェーヴル号から降り、その手綱を引き森の中へと足を踏み入れる。
樹木の枝葉の隙間から差し込む月明りの見せる視界だけを頼りにし、ビアンカは歩みを進めていった。
森の中――、辺りは静寂に包まれており、虫の鳴き声は疎か、獣や魔物の類の気配などは一切しなかった。
そのことにビアンカは不思議に思いつつも、“喰神の烙印”から感じる感覚を自覚し、自身の歩んでいる方向に間違いがないことを所信していた。
(――凄く不思議な雰囲気のする森……。オルフェーヴル号が騒ぎ出さないから危険は無いと思うけれど……)
獣や魔物の類の気配がすれば、勘の鋭いオルフェーヴル号が騒ぎ始めるはずである。
そのため、ビアンカは歩みを進めている森に対して、何とも言えない不思議な雰囲気を覚えつつも、この森に危険が無いことを悟っていた。
暫しの間、森の中の様子を窺いながら歩いていたビアンカであったが――、フッとあるものの存在に気が付く。
「――これは……、“蛍花”……?」
ビアンカが目にしたそれは、淡く光を放つ一輪の白い花だった。
蛍花――。
それは、太陽の光を昼間の内に吸収して夜に淡く光る花であり――、理由は不明であるものの、街道沿いや人の通る道沿いに沿って咲くという生態を有しており、『旅人の道標の花』と呼ばれている花である。
――『そういえば、俺の故郷だった里の周りにも咲いていたな』
ファーニの丘で、ハルに蛍花の生態を教えてもらい――、そして、ハルが呟いていた言葉をビアンカは思い出す。
一輪の蛍花を目にし――、ビアンカは森の先の方へ視線を向けた。
すると――、森の奥の方へ向かい、点々と一定の間隔で蛍花が咲き、薄暗い森の中で淡い光を放っていることを見受ける。
「この先に行けば……、ハルの故郷の里がある、のね……」
ビアンカは、蛍花の咲く様を目にして、小さく呟く。
――ハルが、導いてくれている……。
何故だかは分からないが、ビアンカは――そう思い至っていた。
蛍花の放つ淡い光に導かれ――、ビアンカは森の奥へと足を進めていくのだった。
ビアンカの目の前には――、南の砦付近にあるリベリア公国とカーナ騎士皇国との間に存在する石垣で組まれた国境線が広がっている。
リベリア公国とカーナ騎士皇国は、近年になってカーナ騎士皇国が不穏な動きを見せ始め――、リベリア公国とは国境付近で小競り合いのような牽制の取り合いをしている状態が長く続いていた。
そのため――、本来であれば、明確な線引きをされた国境線の存在しない“境界領域”という概念しかなかった両国の間には、目に見える形――石垣で組まれた国境線が作られていたのだった。
その国境線にある石垣と石垣の間、門柱が大きく口を開けている先――、カーナ騎士皇国領への入り口へと向かい、ビアンカはオルフェーヴル号の腹を蹴り、更にオルフェーヴル号の走る足を加速させる。
「おいっ!! お前、止まれ――っ!!」
門の付近にいた二人の憲兵が、駆けてくる馬に気付き声を上げた。
(憲兵は――二人……。いける……っ!)
今、リベリア公国領側の国境の警備は手薄だった。
ビアンカは――、そのことを見越していた。
ビアンカが国境付近の警備が手薄だろうと予測していた理由は――、“リベリア解放軍”が起こした反乱のためである。
南の砦に詰めていた騎士や兵士も、国境の警備に就いていた憲兵たちも、その多くが“リベリア解放軍”の反乱制圧のためにリベリア公国へと戻っていっていた。
ビアンカの目の前にいる二人の憲兵は、リベリア公国が滅びたことを知らず、自身の職務を全うするために動きを見せる。
静止の声に従わないビアンカを見とめた憲兵は国境の門柱――、その両端に立ち、手に持っていた槍を馬の足を止めさせようという意図で、門柱との間に交差させるように重ね合わせた。
「ここより先はカーナ騎士皇国領だっ!! 許可なき者は何人たりとも通ることはまかり成らんぞっ!!」
憲兵の一人がビアンカに向かい、大きく声を張り上げ忠告の言葉を口にする。
だが――ビアンカは、オルフェーヴル号の足を止めさせなかった。
「――オルフェーヴル号……、飛んでっ!!」
ビアンカは馬上で身を伏せ、オルフェーヴル号に指示をする。
オルフェーヴル号はビアンカの指示を聞き、鼻を鳴らして返事をしたかと思うと、駆け足を自ずと速めていく。
「お、おい――っ!!」
馬の足を緩めさせる気のないビアンカを見て、憲兵は慌てた様子を見せる。
限界まで加速をしたオルフェーヴル号は、慌てる憲兵が門の前に交差させ重ね合わせた槍の上を――、地面を力一杯に蹴り上げて跳躍していた。
そうして――、カーナ騎士皇国領の地に、土埃を巻き上げながら見事に着地する。
軽々と足止めの槍を飛び越えられた憲兵たちは呆気に取られ、そして困惑していた。
カーナ騎士皇国領内に入られてしまっては、リベリア公国の憲兵である自分たちでは追いかけることが不可能なためである。
ビアンカは、そのことを分かっており――、オルフェーヴル号の踵を返させ、憲兵へと目を向けた。
「ごめんなさい。私は……、行かなければいけない場所があるの……」
ビアンカは、申し訳なさげに謝罪の言葉を口にする。
そして――、一巡何かを考える様を見せ、意を決したように再度口を開いた。
「――リベリア公国は……、あなたたちの守るべき国は滅びたわ。もう……、ここを守る必要もない。生まれた地が――、リベリア公国以外に帰る故郷があるのなら、戻った方が良い……」
「は……?」
ビアンカの言葉に――、二人の憲兵は顔を見合わせ怪訝な表情を見せていた。
だがしかし、そのビアンカの言葉が意味することを推し量った憲兵の一人が顔色を変える。
「それって……まさか、“リベリア解放軍”が……?」
憲兵は顔色を青くし、ビアンカに問い掛ける。
しかし、ビアンカは憲兵からの問い掛けに――何も答えなかった。
「もう、行かないといけないから……。ごめんなさい……」
ビアンカはオルフェーヴル号の手綱を引き、オルフェーヴル号の踵を返させる。
(――まさか……、本当のことなんか言えるわけないわ……)
“リベリア解放軍”がリベリア公国を荒廃させたのは事実ではあった。
だが――、本当にリベリア公国自体を滅ぼしたのはビアンカ自身である。
しかしながら、そのようなことをビアンカが語ったところで、憲兵たちも信じることはないであろうことは容易に想像もつき、ビアンカ本人も語りたくないものだった。
憲兵たちから顔の見えなくなったビアンカの表情は――、酷く苦渋に満ちたものを浮かべていた。
「お、おい。待て……っ!」
背を向けたビアンカに、憲兵が答えの続きを促そうとする声を投げ掛ける。
その投げ掛けられた言葉をビアンカは無視し――、オルフェーヴル号を再び走らせていった。
ビアンカにとって未知の領域である、カーナ騎士皇国領へ向かって――。
◇◇◇
ビアンカがカーナ騎士皇国領に入り込んでから、幸いにもカーナ騎士皇国側の者たちに発見されず、見咎められることなく進むことができていた。
その途中でビアンカは、街道と思しき道を少し離れた場所――、そこでオルフェーヴル号から降り、樹木に寄り掛かり座り込みながら、何かを考えている様子を見せる。
オルフェーヴル号に休憩を取らせながら、ビアンカは自身が目指しているハルの故郷――、“喰神の烙印”の呪いを伝承する隠れ里のことを考えていたのだった。
ハルの故郷である隠れ里に思いを馳せながら、ビアンカは自身の左手の甲を目の前に掲げ――見つめる。
日は陰りを見せ、時間は夕刻を少し過ぎた頃――。
夕陽が、ビアンカの左手の甲に刻まれる“喰神の烙印”の痣を、夕刻の見せる紅で照らす。
(ここから先は……、あなたとハルの導きにかかっているわ。お願いよ……)
ビアンカは心中で、“喰神の烙印”と――、その内に存在しているハルに語り掛ける。
リベリア公国よりも南に下ったカーナ騎士皇国領は広く――、緑生い茂る森の数も多かった。
そのような状況で、ハルの語った『森の中で人目に触れないように隠されて存在していた里』を探すという行為は、“干し草の中の針を探す”と比喩されるほどの至難の業であろう。
それ故に――、ビアンカはオルフェーヴル号を走らせている間も、“喰神の烙印”へと意識を集中させていた。
さようにして、道中にいくつか点在していた森は全て足を踏み入れることはせず、ただひたすらに南へと――カーナ騎士皇国領を更に下っていっていたのである。
「オルフェーヴル号――、休憩は終わりにして……、そろそろ行きましょうか」
ビアンカは立ち上がると、返事の嘶きを上げたオルフェーヴル号に再び跨り、移動を始めた。
(――もう少し南に下った場所にある森の中……、その奥に……、何かを感じる)
ビアンカは――、“喰神の烙印”に導かれるように、何かを感じていた。
まるで、黒い影に手招きをされるように――、南の方角へオルフェーヴル号を走らせていくのであった。
夕刻も過ぎ――、辺りがすっかりと夜闇に包まれた頃だった。
ビアンカは一つの、樹木が鬱蒼と生い茂る森の前に辿り着いていた。
――ここで間違いないはず……。
月明りにぼんやりと照らされる深い森を目にし、ビアンカは確信する。
この森の奥に伝承の隠れ里が存在するはずである――、ということを。
その森には入り口となるような部分や道は存在せず――、ビアンカは仕方なくオルフェーヴル号から降り、その手綱を引き森の中へと足を踏み入れる。
樹木の枝葉の隙間から差し込む月明りの見せる視界だけを頼りにし、ビアンカは歩みを進めていった。
森の中――、辺りは静寂に包まれており、虫の鳴き声は疎か、獣や魔物の類の気配などは一切しなかった。
そのことにビアンカは不思議に思いつつも、“喰神の烙印”から感じる感覚を自覚し、自身の歩んでいる方向に間違いがないことを所信していた。
(――凄く不思議な雰囲気のする森……。オルフェーヴル号が騒ぎ出さないから危険は無いと思うけれど……)
獣や魔物の類の気配がすれば、勘の鋭いオルフェーヴル号が騒ぎ始めるはずである。
そのため、ビアンカは歩みを進めている森に対して、何とも言えない不思議な雰囲気を覚えつつも、この森に危険が無いことを悟っていた。
暫しの間、森の中の様子を窺いながら歩いていたビアンカであったが――、フッとあるものの存在に気が付く。
「――これは……、“蛍花”……?」
ビアンカが目にしたそれは、淡く光を放つ一輪の白い花だった。
蛍花――。
それは、太陽の光を昼間の内に吸収して夜に淡く光る花であり――、理由は不明であるものの、街道沿いや人の通る道沿いに沿って咲くという生態を有しており、『旅人の道標の花』と呼ばれている花である。
――『そういえば、俺の故郷だった里の周りにも咲いていたな』
ファーニの丘で、ハルに蛍花の生態を教えてもらい――、そして、ハルが呟いていた言葉をビアンカは思い出す。
一輪の蛍花を目にし――、ビアンカは森の先の方へ視線を向けた。
すると――、森の奥の方へ向かい、点々と一定の間隔で蛍花が咲き、薄暗い森の中で淡い光を放っていることを見受ける。
「この先に行けば……、ハルの故郷の里がある、のね……」
ビアンカは、蛍花の咲く様を目にして、小さく呟く。
――ハルが、導いてくれている……。
何故だかは分からないが、ビアンカは――そう思い至っていた。
蛍花の放つ淡い光に導かれ――、ビアンカは森の奥へと足を進めていくのだった。
1
あなたにおすすめの小説
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
さようならの定型文~身勝手なあなたへ
宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」
――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。
額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。
涙すら出なかった。
なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。
……よりによって、元・男の人生を。
夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。
「さようなら」
だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。
慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。
別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。
だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい?
「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」
はい、あります。盛りだくさんで。
元・男、今・女。
“白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。
-----『白い結婚の行方』シリーズ -----
『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。
【完結】冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない
くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、
軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。
言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。
――そして初めて、夫は気づく。
自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。
一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、
「必要とされる存在」として歩き始めていた。
去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。
これは、失ってから愛に気づいた男と、
二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。
――今さら、遅いのです。
欠席魔の公爵令嬢、冤罪断罪も欠席す 〜メイリーン戦記〜
水戸直樹
ファンタジー
王太子との婚約――それは、彼に恋したからでも、権力のためでもなかった。
魔王乱立の時代。
王も公爵も外征に出ている王都で、公爵令嬢メイリーンは“地味な婚約者”として王城に現れる。
だが、王太子は初顔合わせに現れなかった。
にもかかわらず、記録に残ったのは「公爵令嬢の欠席」。
抗議はしない。
訂正もしない。
ただ一つ、欠席という事実だけを積み上げていく。
――それが、誰にとっての不合格なのか。
まだ、誰も気づいていない。
欠席から始まる、静かなるファンタジー戦記。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
辺境伯夫人は領地を紡ぐ
やまだごんた
恋愛
王命によりヴァルデン辺境伯に嫁ぐことになった、前ベルンシュタイン公爵令嬢のマルグリット。
しかし、彼女を待っていたのは60年にも及ぶ戦争で荒廃し、冬を越す薪すら足りない現実だった。
物資も人手も足りない中、マルグリットは領地の立て直しに乗り出す。
戦しか知らなかったと自省する夫と向き合いながら、少しずつ築かれていく夫婦の距離。
これは、1人の女性が領地を紡ぎ、夫と共に未来を作る「内政×溺愛」の物語です。
全50話の予定です
※表紙はイメージです
※アルファポリス先行公開(なろうにも転載予定です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる