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第十五章【禁忌】
第七十三節 ネクロディアの血統
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“喰神の烙印”を受け継ぐ“始祖”のために建てられた家屋――。
その場所にビアンカと共に戻って来ていたルシトは、椅子に腰掛け――、思い出し笑いの表情を微かに浮かべていた。
「――あんた、大した役者だな。里長代理の慌て様、笑いものだったぞ」
「私だって必死だったのよ。あんな風に人を脅したことなんて、今までなかったんだから……」
くつくつと笑うルシトに、テーブルを挟んで対面の椅子に座るビアンカは、顰め面を見せて物言いたげにしていた。
集会所での一連の出来事――、それは全て、ビアンカが受けたルシトからの提案であった。
ルシトは『調停者』という立場故に、“喰神の烙印”を伝承する里で、禁忌とされている“魂の解放の儀”が存在することを認知していた。
そして――、集会所へビアンカを連れて行く道すがら、それを匂わす話をルシトはビアンカにしていたのだった。
ビアンカに対して上手く立ち回りを行えば、禁忌を執り行う許可が下りるであろうことをルシトは、それとなく語っていた。
そのため、ビアンカは里長代理を務める二コラを脅し――、禁忌である“魂の解放の儀”を行うことを許される結果を得ていたのである。
「ねえ、ルシト。里長代理の二コラさんのことだけれど。あの人はなんで、あそこまで決定権を持つ立場に立っているの?」
それは――、二コラとの会合の際に、ビアンカが感じていた素朴な疑問であった。
あの集会所にいた他の里の者たちに慕われる風体、そして抗うことのできないという雰囲気――。
それらを二コラが持ち合わせていたことを、ビアンカは察していた。
「あの里長代理――、二コラはハルの大叔父に当たる、“ネクロディア一族”の血を引く家柄だ。“始祖”だったハルの奴が里を出て行ってからは、あいつの大叔父の血を引く者が代々里長代理を務めてきている」
ルシトはビアンカの疑問に、テーブルに片肘を置き、頬杖を付きながら面倒くさそうな様相を見せ答える。
「もしかすると――、“喰神の烙印”を継承する一族の血を引いていないと、里長代理にもなれない……。そういうこと……?」
ビアンカの更なる問いに、ルシトは頷く。
「本来であれば――、“喰神の烙印”の呪いは、代々“ネクロディア一族”が継承することが慣わしになっている。だから、一応は“ネクロディア一族”の血を引く二コラが、現在の里長代理を務めることになっているようだな」
面倒くさそうにしつつも、ルシトはビアンカの疑問に答えてやっていた。
ルシトの答弁を聞き、ビアンカはフッとあることに気が付く。
「それじゃあ、ハルの本名って……」
「“ハル・ネクロディア”――。正当な“ネクロディア一族”直系の血統を持つ、“喰神の烙印”の継承者となるべき血脈の生まれだったらしい」
「ハル・ネクロディア……」
ルシトの口から出たハルの姓名を、ビアンカは反覆して呟く。
ハルはビアンカと初めて出会った当初、自分自身の姓名を名乗らなかった――。
その時はハル本人が自分は孤児という出自だと語っていたため、名字を持っていないのだと――、ビアンカは思い込んでいた。
だが――、ハルには六百年以上もの間を永く生き続け、“ネクロディア一族”の名を捨てるに至った理由があったのだろう。
そう考え及んだビアンカは瞳を伏し、何かに――思いを馳せる様子を見せていた。
ビアンカの様子を見て、ルシトは「そういえば……」――と、何かを思い出したように口を開く。
「名前の話で、僕も気になっていたことがあるんだけど。ビアンカ――、何故あんたは僕と会った時に自分の姓名を名乗らなかった?」
ルシトはビアンカの様子を目にし、彼女が思い馳せていた事柄の正体に勘付いたのだろう。
考えていたことを見透かされ、単刀直入にルシトに問い掛けられた言葉。その問いに――、ビアンカは驚嘆の色をその顔に窺わせて反応する。
「――ルシトは……、本当に怖いくらい何でもお見通しなのね……」
ビアンカは苦い顔を浮かべ、嘆息を漏らす。
ビアンカは――、ルシトが口にした通り、自分自身が姓名を名乗らなかったことについて考えていたのだった。
「……私の本当の名前は、ビアンカ・ウェーバー。リベリア公国の将軍――ミハイル・ウェーバーの娘だった」
ビアンカは対面に座るルシトを見据え、静かに語り始める。
「でも、“リベリア解放軍”――反王政派の反乱が国で起こって、王政派だったウェーバー家は……、その血脈を絶たれたわ」
「血脈を絶たれたって……。ビアンカ、あんたがまだ生き残っているじゃないか……?」
ビアンカの話を聞き、ルシトは首を傾げる。
しかし、そのルシトの疑問の問いに――、ビアンカは小さくかぶりを振った。
「“ビアンカ・ウェーバー”は……、“リベリア解放軍”の手で亡き者にされ、もうこの世に存在しないの。――名前も知らない同じくらいの年頃の女の子の亡骸を、私のものだと偽って……。今までの私は殺されてしまったのよ」
「だから、“ウェーバー一族”の名を捨て、姓名を名乗らなかった。――そういうわけか……」
ルシトは納得した様を見せ――、溜息混じりに言葉を零す。
「……流石、ルシトね。察しが早くて助かるわ」
そう言うとビアンカは眉根を下げ、困ったような表情を滲ませた笑みを見せる。
そのビアンカの何とも言えない笑みに、ルシトは眉を顰めていた。
(――こいつも、“喰神の烙印”が持つ、不幸を呼び込む性質に翻弄されているクチか……)
ルシトは――、“喰神の烙印”の呪いの本質を知っているため、そう内心で思う。
そうして永い時を生き、多くの人間を見てきた立場から――、今のビアンカが無理をして明るく振る舞おうとしていることを、ルシトは聡く見抜いていた。
(こういう時だけは……、自分の洞察眼が面倒くさくなるな)
ルシトは思いながら瞳を伏せがちに、腕を組み椅子の背凭れに身を預ける。
「どうかしたの、ルシト?」
急に口を閉ざし苦々しげな面差しを窺わせるルシトに、ビアンカは不思議そうに声を掛けた。
だが、ルシトはビアンカの声掛けに「何でもない……」と、静かな声音で返す。
そんなルシトの態度に、ビアンカは更に不思議そうにして首を傾げていた。
「あんたが本当に“始祖”の立場に就くのなら――、恐らくは“ネクロディア一族”の名を継ぐことになるんだろうな……」
ルシトは――、不意にボソッと呟いた。
不意に紡がれたルシトの言葉にビアンカはキョトンとした顔をし、次には意地悪げな雰囲気を漂わせる笑みを浮かべる。
「……ルシトは、私が本当に“始祖”の立場に就くと思っているの?」
ビアンカが微かに意地の悪さを表情に浮かべ口にした言葉に、ルシトは「ふふ……」――と笑う。
「――まあ、そうだろうなとは思っていたよ」
ルシトはビアンカの思いを、最初から感じ取っていた。
――こいつに“始祖”の立場に就くつもりなど、毛頭ないだろう。
集会所でビアンカが二コラに言った『“始祖”となる代わりに――』と条件として出した言葉も、全てビアンカの嘘だろうと。そうルシトは悟っていた。
可憐な見た目から意思の弱さを想像させるようなビアンカであったが、存外強かな性格をしている――と思い、ルシトは心中で笑ってしまう。
「ねえ、ところで……。“魂の解放の儀”はいつ行うの……?」
先ほどまでの意地悪さを感じさせる面持ちとは打って変わり、ビアンカは真剣な色を顔に出し、ルシトに問う。
“喰神の烙印”の呪いに囚われた魂を解放させる禁忌――、“魂の解放の儀”は、ルシトが『調停者』の名の下で、強い魔力を有する彼が手ずから行う手筈となっていた。
「――早急ではあるけれど、今夜が丁度良いだろう。“喰神の烙印”は死と闇を司り、夜にその力を増す。そして今日の月齢が十七……、――月の暦と占星の具合も悪くはない」
「……それに何か意味はあるの?」
「人間が忌み嫌う数字である“忌数”は知っているだろう。“十七”の数字が意味する言葉――、それは『私は生きている。しかし私は生きることを終えた』――。つまり間接的に“死”を匂わせるものなんだ」
ルシトは言いながら赤い瞳を細める――。
まるでビアンカに対して、「あんたの事情と、その呪いに打ってつけの日だろう」――、と。そう赤い瞳で語るようだった。
ビアンカはルシトの言葉と仕草の意味を察して頷き――、“魂の解放の儀”に挑むための強い決意を、翡翠色の瞳に宿していた。
その場所にビアンカと共に戻って来ていたルシトは、椅子に腰掛け――、思い出し笑いの表情を微かに浮かべていた。
「――あんた、大した役者だな。里長代理の慌て様、笑いものだったぞ」
「私だって必死だったのよ。あんな風に人を脅したことなんて、今までなかったんだから……」
くつくつと笑うルシトに、テーブルを挟んで対面の椅子に座るビアンカは、顰め面を見せて物言いたげにしていた。
集会所での一連の出来事――、それは全て、ビアンカが受けたルシトからの提案であった。
ルシトは『調停者』という立場故に、“喰神の烙印”を伝承する里で、禁忌とされている“魂の解放の儀”が存在することを認知していた。
そして――、集会所へビアンカを連れて行く道すがら、それを匂わす話をルシトはビアンカにしていたのだった。
ビアンカに対して上手く立ち回りを行えば、禁忌を執り行う許可が下りるであろうことをルシトは、それとなく語っていた。
そのため、ビアンカは里長代理を務める二コラを脅し――、禁忌である“魂の解放の儀”を行うことを許される結果を得ていたのである。
「ねえ、ルシト。里長代理の二コラさんのことだけれど。あの人はなんで、あそこまで決定権を持つ立場に立っているの?」
それは――、二コラとの会合の際に、ビアンカが感じていた素朴な疑問であった。
あの集会所にいた他の里の者たちに慕われる風体、そして抗うことのできないという雰囲気――。
それらを二コラが持ち合わせていたことを、ビアンカは察していた。
「あの里長代理――、二コラはハルの大叔父に当たる、“ネクロディア一族”の血を引く家柄だ。“始祖”だったハルの奴が里を出て行ってからは、あいつの大叔父の血を引く者が代々里長代理を務めてきている」
ルシトはビアンカの疑問に、テーブルに片肘を置き、頬杖を付きながら面倒くさそうな様相を見せ答える。
「もしかすると――、“喰神の烙印”を継承する一族の血を引いていないと、里長代理にもなれない……。そういうこと……?」
ビアンカの更なる問いに、ルシトは頷く。
「本来であれば――、“喰神の烙印”の呪いは、代々“ネクロディア一族”が継承することが慣わしになっている。だから、一応は“ネクロディア一族”の血を引く二コラが、現在の里長代理を務めることになっているようだな」
面倒くさそうにしつつも、ルシトはビアンカの疑問に答えてやっていた。
ルシトの答弁を聞き、ビアンカはフッとあることに気が付く。
「それじゃあ、ハルの本名って……」
「“ハル・ネクロディア”――。正当な“ネクロディア一族”直系の血統を持つ、“喰神の烙印”の継承者となるべき血脈の生まれだったらしい」
「ハル・ネクロディア……」
ルシトの口から出たハルの姓名を、ビアンカは反覆して呟く。
ハルはビアンカと初めて出会った当初、自分自身の姓名を名乗らなかった――。
その時はハル本人が自分は孤児という出自だと語っていたため、名字を持っていないのだと――、ビアンカは思い込んでいた。
だが――、ハルには六百年以上もの間を永く生き続け、“ネクロディア一族”の名を捨てるに至った理由があったのだろう。
そう考え及んだビアンカは瞳を伏し、何かに――思いを馳せる様子を見せていた。
ビアンカの様子を見て、ルシトは「そういえば……」――と、何かを思い出したように口を開く。
「名前の話で、僕も気になっていたことがあるんだけど。ビアンカ――、何故あんたは僕と会った時に自分の姓名を名乗らなかった?」
ルシトはビアンカの様子を目にし、彼女が思い馳せていた事柄の正体に勘付いたのだろう。
考えていたことを見透かされ、単刀直入にルシトに問い掛けられた言葉。その問いに――、ビアンカは驚嘆の色をその顔に窺わせて反応する。
「――ルシトは……、本当に怖いくらい何でもお見通しなのね……」
ビアンカは苦い顔を浮かべ、嘆息を漏らす。
ビアンカは――、ルシトが口にした通り、自分自身が姓名を名乗らなかったことについて考えていたのだった。
「……私の本当の名前は、ビアンカ・ウェーバー。リベリア公国の将軍――ミハイル・ウェーバーの娘だった」
ビアンカは対面に座るルシトを見据え、静かに語り始める。
「でも、“リベリア解放軍”――反王政派の反乱が国で起こって、王政派だったウェーバー家は……、その血脈を絶たれたわ」
「血脈を絶たれたって……。ビアンカ、あんたがまだ生き残っているじゃないか……?」
ビアンカの話を聞き、ルシトは首を傾げる。
しかし、そのルシトの疑問の問いに――、ビアンカは小さくかぶりを振った。
「“ビアンカ・ウェーバー”は……、“リベリア解放軍”の手で亡き者にされ、もうこの世に存在しないの。――名前も知らない同じくらいの年頃の女の子の亡骸を、私のものだと偽って……。今までの私は殺されてしまったのよ」
「だから、“ウェーバー一族”の名を捨て、姓名を名乗らなかった。――そういうわけか……」
ルシトは納得した様を見せ――、溜息混じりに言葉を零す。
「……流石、ルシトね。察しが早くて助かるわ」
そう言うとビアンカは眉根を下げ、困ったような表情を滲ませた笑みを見せる。
そのビアンカの何とも言えない笑みに、ルシトは眉を顰めていた。
(――こいつも、“喰神の烙印”が持つ、不幸を呼び込む性質に翻弄されているクチか……)
ルシトは――、“喰神の烙印”の呪いの本質を知っているため、そう内心で思う。
そうして永い時を生き、多くの人間を見てきた立場から――、今のビアンカが無理をして明るく振る舞おうとしていることを、ルシトは聡く見抜いていた。
(こういう時だけは……、自分の洞察眼が面倒くさくなるな)
ルシトは思いながら瞳を伏せがちに、腕を組み椅子の背凭れに身を預ける。
「どうかしたの、ルシト?」
急に口を閉ざし苦々しげな面差しを窺わせるルシトに、ビアンカは不思議そうに声を掛けた。
だが、ルシトはビアンカの声掛けに「何でもない……」と、静かな声音で返す。
そんなルシトの態度に、ビアンカは更に不思議そうにして首を傾げていた。
「あんたが本当に“始祖”の立場に就くのなら――、恐らくは“ネクロディア一族”の名を継ぐことになるんだろうな……」
ルシトは――、不意にボソッと呟いた。
不意に紡がれたルシトの言葉にビアンカはキョトンとした顔をし、次には意地悪げな雰囲気を漂わせる笑みを浮かべる。
「……ルシトは、私が本当に“始祖”の立場に就くと思っているの?」
ビアンカが微かに意地の悪さを表情に浮かべ口にした言葉に、ルシトは「ふふ……」――と笑う。
「――まあ、そうだろうなとは思っていたよ」
ルシトはビアンカの思いを、最初から感じ取っていた。
――こいつに“始祖”の立場に就くつもりなど、毛頭ないだろう。
集会所でビアンカが二コラに言った『“始祖”となる代わりに――』と条件として出した言葉も、全てビアンカの嘘だろうと。そうルシトは悟っていた。
可憐な見た目から意思の弱さを想像させるようなビアンカであったが、存外強かな性格をしている――と思い、ルシトは心中で笑ってしまう。
「ねえ、ところで……。“魂の解放の儀”はいつ行うの……?」
先ほどまでの意地悪さを感じさせる面持ちとは打って変わり、ビアンカは真剣な色を顔に出し、ルシトに問う。
“喰神の烙印”の呪いに囚われた魂を解放させる禁忌――、“魂の解放の儀”は、ルシトが『調停者』の名の下で、強い魔力を有する彼が手ずから行う手筈となっていた。
「――早急ではあるけれど、今夜が丁度良いだろう。“喰神の烙印”は死と闇を司り、夜にその力を増す。そして今日の月齢が十七……、――月の暦と占星の具合も悪くはない」
「……それに何か意味はあるの?」
「人間が忌み嫌う数字である“忌数”は知っているだろう。“十七”の数字が意味する言葉――、それは『私は生きている。しかし私は生きることを終えた』――。つまり間接的に“死”を匂わせるものなんだ」
ルシトは言いながら赤い瞳を細める――。
まるでビアンカに対して、「あんたの事情と、その呪いに打ってつけの日だろう」――、と。そう赤い瞳で語るようだった。
ビアンカはルシトの言葉と仕草の意味を察して頷き――、“魂の解放の儀”に挑むための強い決意を、翡翠色の瞳に宿していた。
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