薄情と言われても生まれつきだから仕方がないよね ~異世界で最も理解できないのは人間でした~

ふぉいや

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第18話

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訓練場の隅っこでのんびりとストレッチをしながら待っていると、恐らく今回の模擬戦相手と評価する人の2人組がやって来た。
1人は武器を一切持っている様子はないが、ガッチガチに防具を身につけており、明らかに動きに支障が出ていそうな男性だ。
恐らく今回の模擬戦の相手だろう。
もう1人は普通のギルド職員の制服を着た男性だ。
戦うような恰好ではないので、評価する人で間違いないだろう。

「……その子供に今から模擬戦をさせるのですか?傭兵ギルドは子供を預かる施設ではないのですが……。」

「相変わらず皮肉しか言わないね~。小型のモンスター相手に震えて動けなくなるあなたよりは強いと思うよ~。ま、公平に評価してよ。」

なんかすごく仲が悪そうだ。
大丈夫かな?
ミーシャさんの推薦だからって、理不尽に不合格になったりしない?
念のため、有無を言わせぬほどボッコボコにボコっておこうかなぁ~……。

「では模擬戦を始めますが、武器を使用しますか?武器を使用するのであれば、あちらの箱に納められている訓練用の武器の中から選んでください。」

……ふむ。
あの箱は武器を入れるための箱だったんだね。

私は箱へと向かい、中から1つの物を手に取って戻り、戦いに備えて構えた。

「……それは訓練用の武器ではないので置いて貰えますか?あとで捨てておきますので。」

……酒瓶は駄目か。
握りやすいし、叩きやすいし、割れたら凶器として優秀な気がしたんだけどなぁ~……。

「じゃあ素手でいい。始めて。」

「……相手をよく見て下さい。全身にしっかりと防具を身につけているんですよ。素手でどうやって戦うのですか?」

「さっさと始めろ~!こっちはもう賭けてるんだぞ~!」

……ミーシャさん賭けが好きだね
ちょっと待って貰ってもいいかな?
私も賭けに参加したい。

「ミーシャさん、賭けの倍率は?」

「ウィル君が30秒以内に倒せば5倍だよ!」

「じゃあ5秒以内に銀貨21枚賭ける。問題ないよね?」

「……殺さないように手加減してあげてね?」

「……前向きに検討しておく。」

向こうでは私の5秒以内宣言で盛り上がっている様だ。
というかいつの間にあんなに集まったんだろ?
さっきまでこの訓練場内には10人もいなかったのになぁ……。

「準備は良いですか?」

まぁ、やることはもう決めてある。
5秒以内と宣言したのだ。
余裕をもって1秒で瞬殺したい……殺しちゃ駄目だけど。

「では……始め!」

合図と共に前に出て、足を払うように蹴り、下がって来た頭を地面へと叩きつける。

「終わった。」

しっかりと終了の宣言もしておく。
感覚的に1秒で倒し、2秒の時点で宣言が出来た。
5秒まで3秒も余裕があったのだ。
賭けは問題なく勝ちだろう。

……誰も、何も言わない。

「……終わってるんだけど?」

「急いで医務室へ運べ!大至急だ!」

「いや駄目だ!ここに先生を呼んで来い!下手に動かすな!」

「ウィ~ル~く~ん。も~少し手加減を覚えた方がいいよ~?はいこれお金。いい感じに盛り上がって、7倍の銀貨147枚だよ。やったね!」

「ミーシャがミーシャみたいなガキを連れてきやがった……。このギルドはお終いだぁ~。」

「お終いなわけあるかば~か。ヤバいモンスターと戦えるやつが増えたんだぞ?この街以上に安全な街はないぜ!」

……急に盛り上がり始めた。
やはり筋力強化を使うと時間の感覚がおかしくなるのだろうか?
倒してから盛り上がるまで、妙にラグがあったね。
母親のタンス貯金とゴロツキ5人から奪ったお金も増えたし、私にとっては良いこと尽くしのイベントだったぜ。
模擬戦の方もガッチガチに防具を身につけた相手を瞬殺(※殺してない)したのだ。
実力で言うのなら合格間違いなしだろう。

「この後はどうすればいいの?」

「ん~?どうだったかな~?ねぇチョット~!いつまでもボーっとしてないで、次のことを教えろ~!」

評価する人が役に立たないね。
お、模擬戦の相手も意識が戻ったようだ。
これでも一応手加減はしていて、叩きつけた後に圧し潰したりはしてないんだよ?
普通に後頭部を強打したから気絶しちゃったけど、このくらいなら魔法ですぐに治せる範囲でしょ。

「……何が起きたんだ?確か模擬戦があるからここへ来て……もう既に戦ったのか?ミーシャの推薦とはいえ、相手は子供だって話じゃ……。」

……可哀想に……。
頭を強く打ちすぎたせいで記憶障害が発生している様だ。

「なんか使い物にならないし、受付に行ってみようか。」

「そうだね。」

そんな訳で、受付に戻ることにした。
ミーシャさんの言っていた通り、模擬戦は余裕だったね。
たぶん、戦闘で魔法を使えるか使えないかで、桁違いに戦闘力の差が出るんだろうね。

感覚的に、魔法による筋力強化は基本的な身体スペックと掛け算になるのだろう。
ミーシャさんは魔法による筋力強化は私より上手いかもしれないが、魔力の量や出力で言えば私の方が強い様に感じている。
私がミーシャさんに劣っているのは、基本的な身体スペックがボトルネックになっているからだろう。
10×10が100になるのに対して、5×15では75にしかならないのと似たような感じだ。
やっぱり体も大事。
いっぱい食べて、早く大きくならなきゃ……。

「登録が終わったらどうする~?さっそく初仕事行っちゃう~?トスターの街でスタンピードがあったのなら、今のトスターの街周辺は、モンスターをいっぱい狩って稼げるチャンスだよ~!」

「ウィル!」

……この声はまたガリューさんの様だ。
なんだろう……。
遭遇率高くない?
確かに探索ギルドだけではなく傭兵ギルドにも所属しているって言ってたし、この街に来ると言っていたのでここにいてもおかしくはないのだが……。

「あ、ガリューじゃん!ウィル君の知り合いなの?まぁ、同じトスターの街に住んでれば会うこともあるか。トスターの街は崩壊したんだってね。しばらくこっちで仕事するの?」

「……なんでミーシャがウィルと一緒にいるんだ……?」

「才能を感じたから捕獲した。それに可愛かったし……。」

「……ウィル。こいつは少し、頭がイカレてる奴なんだ。間違いなくお前の教育に悪い。あまり関わらない方がいいと思うぞ。」

「ひっど~い!ガリューがピンチになるたびに何度もな~んども助けてあげたはずなんですけど~!ウィルく~ん。こんな恩知らずな奴と仲良くしたら教育に悪いよ!このミーシャお姉さんと一緒に、モンスターをい~っぱい狩って、大金を稼ぎに行こう!」

……ミーシャさんが教育に悪いのは確かだけど、ミーシャさんと一緒の方が絶対に稼げるんだよな~。
言ってること自体は間違ってないもんね。
ちょっとウザイだけで……。
お金を稼ぎまくってるみたいだけど、お金に対して執着とかなさそうだから、一緒に組めば儲けはキッチリ折半してくれそうだし……。

対してガリューさん。
まず戦闘面ではあまり期待できない。
親切で常識もあって正義感も強くて日常生活において非常に頼りになる存在だとは思うけど、強さだけは私の求める基準に全然足りてない。
ついでに私の将来を思って、儲けの中から勝手に貯金とかされそう……。
だから拒否。

今回のスタンピードで大事なことを再確認したのだ。
この世界で生きていくためには、モンスターに襲われようと生き延びることが出来るだけの強さが必要なのだと……。
それが無ければ運が悪いと死ぬ。

私を見れば分かるだろう。
母親が死に、家にゴロツキが来たけど、私が強かったから無事だった。
自分達よりも多い数の賊に囲まれ、絶体絶命のピンチっぽい状況になったけど、私やハイドさんが強かったから、死ぬこともなく敵が逃げていった。
モンスターに襲われ、普通なら死んでもおかしくない環境下を歩きまわっていようと、私が強かったから余裕で隣の街へと逃げることが出来た。

今の私にとって、『強さ』は絶対的な要素なのだ。

そんな訳で私はミーシャさんについていく。
間違いなくイカレてるから程々の距離を保ちたいが……やっぱ1人の方がいい気がするな……。
とりあえず今はミーシャさんと行動して、出来るだけ早い段階でソロ活動へと移行する。
これがベストだろう。

「今はミーシャさんと一緒でいい。」

「そ~だよね~!やっぱり私と一緒がいいよね~!」

「……まぁ、ウィルがそう判断するのならなんも言えねぇけどよ……。ヤバくなる前に、ちゃんと逃げ出すんだぞ。」

ガリューさんは心配性の様だ。
なんとなく私の実力に気づいている様な雰囲気を感じるけど、それでも私がまだ子供だから心配してしまうのだろう。
ミーシャさんと一緒にいればなおさら……。
いい人には長生きして欲しいものである。

「ところでウィルはもう傭兵として登録は終わったのか?」

「さっき模擬戦で相手を倒した。その後何も言われなかったから受付に行くところ。」

「……そうか。傭兵の仕事は危険が多いから気を付けるんだぞ。……ミーシャにも気を付けろよ。」

「そうだね。」

ガリューさんとはここで別れ、受付に進んだ。
受付に着くと、全てを察した受付のお姉さんがすぐに登録手続きを始めてくれて、それほど時間はかからずに、傭兵ギルド所属であることを示す認識票を受け取ることが出来た。
書いてあるのは名前の他に、生まれた年と日付、身分証を作った街の名前だけ。
身分証があるってありがたいね~。

「さ~ウィル君!これで君も立派な傭兵ギルドのメンバーだ!一緒にモンスターを狩りに行くよ!」

「……あのぉ~、傭兵ギルドで依頼を受ける際の説明が……。」

「ウィル君は文字は読める?」

「数字と簡単な野菜の名前くらいは……。」

「じゃあ説明はいらないね!」

……なんで?
壁に貼られた依頼書が読めないにしても、依頼の受け方くらいは聞いてもいい気がするけど……。

「大丈夫大丈夫、ウィル君の考えていることは分かるよ~。『依頼書が読めなくても、依頼の受け方くらいは知っておいた方がいいんじゃないか?』って思ってるんだよね?でも正直、依頼なんて直接頼まれたやつ以外受ける必要はないんだよ。あそこに貼られた依頼は簡単な雑用ば~っかり。あれを受けるくらいなら、その辺の雑魚モンスターを狩って持ってきた方が儲かるくらい。モンスターを倒してお金儲けができるウィル君は、あんな雑用をやる必要はないの。ウィル君は『特別』だってことを、今のうちから認識しておいた方がいいよ。」

……なんか語り口が胡散臭い詐欺師っぽいんだよな~。
でも受付のお姉さんを見た感じ、言っていることは間違ってはいない様だし……。

……まぁ、いいか。
説明が必要だと感じたら頼もう。
今は弱いモンスターを倒すことしか出来ないんだし、依頼なんか受けずに、モンスターを狩って持ってくるだけでいいと言っているのだ。
さっそくモンスターを狩ってお金を稼ぐことにしよう。

……ところで、さっき儲けた銀貨147枚はどれだけの価値になるんだろう?
野菜ならたくさん買えそうだけど……。
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