コネクト・フロム・アイアン・エイジ

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第11話 『作戦』

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打倒を掲げた3人は隠れ家の地下室にて鴉への対策を練るべく、話し合いをしていた。 

「なあ、カミラ。お前は奴らの大群をどうやって1人で捌いてたんだ ? 」 

「奴らは飛び道具を持たないの…したがって基本遠距離からの狙撃よ。2、3体撃ち抜くたびにポイントを変えて位置を気取られないようにしてたわ」 

「…なるほど。数の多い敵に対して正面からやり合うのは分が悪いからな」 

「ええ。でも、回り込まれて挟み撃ちにあって、仕方なく多数との近接戦になることもよくあった。この傷はそのときにね」 

カミラは自身の体についた傷痕をさすりながらそう言った。 

「挟み撃ちか…奴ら…言葉を介さずとも統率が取れているようだな」 

「ええ、あれだけの数を一度にね。一体どうやって…」


大群を一度に動かしている奴らの統率方式が気になったエイジは、過去の研究によって身に付いている知識を元に考察を始めた。
そして、知っているいくつかのパターンを他の2人に共有すべく話しだした。 

「…複数体のアンドロイドが統率を取るために用いる方式はいくつかある。まず、1つ目」 

そう言って指を1本立てた彼はアイビスの方を向いた。 

「アイビス、元気か ? 」 

「はい。システム良好。異常ありません」 

いきなり当たり障りのない会話を2人は交わした。 

「…今のアイビスのように、言葉をマイクが拾い、それをプログラムが分析することによってコミュニケーションをとるパターンだ」 

カミラが首を振りながら言う。 

「奴らは言葉を話さないわ」 

「ああ、だからこれは除外する」 

彼は2本目の指を立てる。 

「次に2つ目。内部通信を互いが送り合うパターン。ただ、この方式には欠陥がある」 

「…欠陥 ?」 

「ああ。同じ通信方式のアンドロイドが一度に近くで大量の通信を送り合うと、混信して誤作動が起きることがあるんだ。そうすると、統率が乱れるどころか、その場をぐるぐる回ったりとか訳の分からない動きをする個体が現れるんだが、なにか見覚えはないか ? 」



カミラは頭の中で今までの奴らとの戦いを振り返ったが、戦闘に手一杯なことが多く、余裕を持って見渡す機会が少なかった。 

「ごめん、分からないわ。じっくり観察する余裕はなかったから…」 

「…そうか……まあ、一旦保留としよう」 

そして彼は3本目の指を立てる。 

「3つ目。1つの親機が近くの複数の子機に指示を送るパターンだ。この方式は親機から子機への単純な一方通行の通信になるため、2つ目の欠陥だった混信が起きることがない。ただし、親機が潰された途端に全体が一気に統率を失うデメリットもあるがな…」 

ひとしきり説明を終えたエイジは持ってきていた水を飲み、沢山喋ったおかげで乾いた喉を潤した。 

「ふぅ…他にも方式はあるにはあるが、どれも滅多に使われないものだ、考えなくていい。恐らく2つ目か3つ目だ。そのどっちかが分かれば対策を考えれるんだが……早速行き詰まってしまったな…」


「…アンタ、アンドロイドに詳しいのね…」 

彼がアンドロイドの研究者だったことを知らないカミラはその知識量を疑問に思っていた。 

「…ああ、こうなる前はアンドロイドの研究者をやってたからな」


「なるほど。だから白衣なのね」


彼は会話の中でふと研究者をしていたときの記憶を思い出した。 

「…そうだ。カミラ、さっきのメモを見せてくれないか ?」 

「私も見てもよろしいですか ?」 

「ええ……はい、これ。後でアタシにも見せて。いろいろ忘れちゃってるとこもあるし」 

そうして渡されたメモに2人は目を通していった。 

「…研究者だった頃、行き詰まるとよく過去の資料を読み漁ったな…古いものでも、見返してみると新しい発見があったりするもんだ…」



そう過去の話を語りながら次のメモに移ろうとした時、 

「待ってください ! ここの文…」 

とアイビスが1つの文を指差した。
それを読んだエイジの頭に衝撃が走った。 

「おい、待て……分かったぞ ! でかしたアイビス !」 

「え ? 何よ急に」 

「…いける ! これを使えば、奴らを倒せる !」


頭の中にある作戦を思いついたエイジは、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。 

そして、彼は思い付いたそれを他の2人に共有し、持ってきていたアタッシュケースから器材を取り出し、早速ある作業に取り掛かり始めた。









それから彼は休むことなく作業を続け、半日が経った。 

「あら、もうこんな時間。続きは明日にして一度帰りましょ」 

ポケットから出した懐中時計を見て、カミラはそう言った。
時計の針は17時を指しており、これ以上続けると冷えきった夜の砂漠を歩くはめになる。 

「…ああ、そうだな。腹も減ったし、ここらで切り上げるとしよう」 

なにも食べずに作業をしていた彼は、非常に空腹だった。その頭には、昨日村の食堂でご馳走になったシチューが浮かんでいた。
すると、彼は昨日カミラが夕食のときにそこにいなかったことを思い出す。


「そういえば、カミラ。昨日の夕食のとき姿が見えなかったが、皆とは食べないのか?」 

「アタシはいつも1人で食べてるわ。そうすれば父さんに会わずに済むし」


「…そうか。なあ、無理にとは言わないが…よかったら今日は俺達と食堂で食べないか?」 

カミラは、彼が父親との仲を取り持たせようとしているのかと思い、少しむすっとして返す。 

「…遠慮しておくわ。悪いけど、そういうのをお節介っていうのよ」 

「そんなつもりは…俺はただお前と食事をーー」 

「知っていますか?カミラ様…皆で一緒に食べると美味しいのですよ?」 

エイジの言葉を遮って、アイビスはそう言った。 

「…なによそれ。アンタはアンドロイドでしょ?味なんか分かんないじゃないの」 

呆れたといった表情で、カミラはアイビスの方を見て言った。すると、アイビスがまっすぐな目でこちらを見ているのに気が付いた。
そして、あまりの屈託のないその目に見つめられ続け、彼女はついにそれに負けた。 

「はぁ……分かったわよ。アタシも行く…行けばいいんでしょ…」 

「ありがとう、カミラ」


ため息をつく彼女に、エイジは礼を言った。 

そして3人は燭台の火を全て消し、地下室から出て村へと帰るために歩き始めた。 

帰りの道中、3人が砂の丘を登ると、そこには美しい景色と共に自分達の村が見えていた。 

空には青からピンク、そしてオレンジへの光のグラデーションが描かれていて、それに染め上げられた鮮やかなうろこ雲が遠く彼方へと続いている。
そんな空の下には砂漠が広がっていて、地平線の果てまで地表を砂で埋め尽くしていた。
その広大な景色の中にただ1つポツリと佇む夕日に染まる小さな村。太陽の反対側には村の建物の影が砂に落ちていた。 

高層ビルの立ち並ぶ都会では一生見ることがないであろうその美しい自然の1枚絵に、エイジは立ち尽くし感動した。 

「…なんて綺麗なんだ…」 

「…ええ、綺麗ね…」


その景色を見ていると、彼の頭にとある思い出がふとよぎったー-



それは、結婚してすぐのカレンを、夕陽が綺麗だと噂の場所へ連れていったときの記憶だ。
しかし、そこへと向かう途中に天候が悪化し、着いたときには土砂降りで景色を全く楽しむことが出来なかった。
そのせいで落ち込む彼をよそに、カレンはなぜか少し嬉しそうな様子だった。
彼がその理由を聞くと、カレンは答えた。 

「私達はきっと…これからながいなが~い時間を一緒に過ごすの。その時に…こんなこともあったねって思い出して、一緒に笑える思い出が1つ出来たと思うと…嬉しくて…」 

それを聞いた彼はカレンを抱き締め、今度また来よう、そのときは必ず夕陽を見せると約束したのだった。



ーーその幸せな記憶を思い出したエイジ。


「……カレン……カレン………………カレン……」 

彼は彼女のことを想い、ひたすら呟く。
目の前の美しい景色を、カレンにも見せてあげたかった。
しかし、彼女はもうどこにもいない。
その現実を思い出し、心が苦しくなった。


「ちょっとアンタ…ひょっとして泣いてるの?」 

カミラは彼の頬に伝う雫に気づき驚く。 

「あっ…ああ…すまない…つい…」 

「確かに凄く綺麗だけど…泣くほど?」


彼がなぜ涙を流したのか知らないカミラは、目を細め少し引いていた。 

横にいるアイビスは、涙を流す彼をじっと無言で見つめていた。


3人はしばらく景色を眺めたあと、村へと帰った。

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