愛してると言いたかった

アタラン

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咲の娘

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「桜疲れただろう?ハイツに帰るのはどうかと思うけど。」

「そうだよ。一人は駄目だよ。」

忍と登は、必死にどちらかの家に来たらいいと桜を説得している。

桜は、少し困った顔だが笑顔になり二人に抱きついて「ハイツに帰る!」と言い切った。

その姿は、昔から言い出したら聞かない強情だった咲を彷彿とさせる。

咲は、昔から自分で決めた事は譲らない性格で、俺はやめろと止めた浮気彼氏突撃事件を思い出す。

浮気した彼氏の家に自分と違う女がいると解っているのに、現場突撃して男に何かを言われて傷ついて帰ってきた事があった。

「だから言っただろう。」と慰めながらもココに連れてきて今桜が座っている席で向かい合って説教した事があった。


咲は「馬鹿男!」って言いながら泣くから俺は、二人に連絡をして結局四人で咲の失恋慰め会が飲み会になって飲み潰れて朝に帰るという事が一度でなく何度もあった。

思った事をやらないと気が済まない咲と同じなら言い出したら引かない性格だろうと俺は思った。

「いいじゃないか。桜は、一人でお母さんと話がしたいんだろ?」

俺が桜にそう言うと目をパチパチさせて「なんでわかるの?」と驚いていた。

「そう言えばね、凱さんはどんな人なのかお母さんに聞いた事があったの。三人の親友の話をお母さんから聞いていたから。凱さんは何でもわかるエスパーみたいな人だとお母さんが言っていた。」

咲は、なんて説明をしてるんだ?エスパーってどういう意味だよ。

たまに咲は、俺には理解できない表現や感覚を持ってはいたが・・。

ハイツに一人で帰ると言ったがさすがに俺達三人とも一人で夜道を歩かせるわけはなく俺達は、時間も遅いしここでお開きにして桜を送る事にした。

マスターに会計をしてくれと俺は、カードを渡そうとしたが「今日は俺の奢りだ。」と受け取ってはもらえなかった。

店を出て桜と登は、自然に手を繋いで歩いて忍は二人の少し後ろを歩いていたから「おーい。待て」と言いながら俺は後を追った。

忍に追いついた俺は、前を歩く二人の会話を聞きながら四人で歩いた。歩いている場所が昔俺達が通っていた中学校の近くで急に俺達が中学生の頃の記憶が蘇ってきた。

その記憶は、夏休みだったか夜に施錠されていない運動場に入り込み四人で花火をしたなと。

俺達の中学は、裏が山になっていて学校への入口が三か所あったその一つがいつも施錠されて
いなかったからそこから入り込んで花火をした。

近くに海があるのだから海岸に行けばいいのだが、咲が夜の海が怖いと言うから学校にコソコソ入り込み花火をする。

しかし、花火のゴミは忍がキッチリ掃除していたし俺達も忍に言われて証拠隠滅を完璧にしたから見つかって叱られたりはしなかった。

「花火したよな。」

そう俺がつぶやくと・・「後の掃除が大変だったよな。」と言うからやっぱり大変だと思っていたんだなと笑った。

花火は、十代の頃の遊びで大人になってからはしなくなったよな、夏祭りの花火を見に行く事はあっても自分達ではしなくなったという話をした。

俺達三人が懐かしい話をしていると桜が驚いた顔をして「今なら大問題だよ。」と言うからその当時でもバレたら親呼び出しだよと俺達が言うと桜は「不良?」と言うから「違うよ、イタズラ」と俺達が言うと物は言いようだねと笑った。

「最近は花火はどこでするんだ?」

「そう言えば花火ってした事ないかも・・見るものじゃないの?」

「そうか桜はやったことないのか?」

俺が二人に聞くと二人は同時に「「火傷したらどうするんだ!」」と言うから

過保護な二人だなと思うが俺もよく考えたらそうだなと思うから同類だ。

桜を見ながら歩いていると、中学生の時に四人でワイワイ言いながらココを歩いた事を思い出すし、同時に時が戻ったような変な感覚になる。

錯覚に似たような感覚で歩いていると海岸からは少し離れているが海が見える場所に目的地があった。

桜はポケットからキーホルダーのついた鍵をだして玄関扉の鍵穴にさして扉を開けた。

桜は玄関に入ると脱いだ靴をキッチリ揃えて玄関に上がると「ありがとう。」と俺達に言った。

俺たちは、桜を一人にするのは本音を言えば不安だったがここで何を言っても桜は、聞かないだろうと判断して明日の朝に来るとだけ伝えて帰る事にした。

俺は、歩きながら聞きたくても聞けなかった事を二人に聞いた。

「桜の父親って?」

二人は、思えば当然の事だが家で話そうと言ってその夜はハイツからも案外近い忍の家に向かう事にした。

その道すがら誰も話はしなかった、お互いに考えを巡らせていたのだろうと思うただ黙って懐かしい道を歩く。

あったはずの駄菓子屋がコンビニになっていたり、レンタルビデオのショップが無くなって本屋になっていたり変わらないと思った町は少しずつ変化していた。

大きく見れば変化のない懐かしいこの町も小さな変化があってその積み重ねが大きな変化になるのかもしれないなと漠然と思いながら俺は歩いていた。

その間に桜と咲の違いを探して桜の父親が誰なのかを推理しょうとした。

桜は、母親の咲より5㎝ほど身長が高い、体系は似ているようで桜の方が手足が長く細身だ髪は黒髪は同じだが少し毛の質が違うように思う。

咲は二重は二重だが奥二重なのに桜は完全な二重で目が大きい。

桜が男の子なら男親の特徴がわかりやすいのかもしれないが、女の子で咲と桜が似すぎていてまったく解らない。

そんな事をツラツラ考えていると忍の家に到着していた、もう少しで通り過ぎるところだった俺をみて忍が「俺の家を忘れたのか?」と
苦笑いだった。

忘れてもおかしくないほどの年月が経っているのは確かだが忘れはしない幼馴染の家だ。


忍の家は、二世帯住宅になっていて忍の両親が長男の忍の為に二世帯住宅に建て替えたが当の本人は現在も結婚もしていない。

おばさんが前に電話で「先に家を用意したのは間違いだった。」と嘆いていた。

忍に言わせれば、医者になるのだから20代での結婚はないと言っても聞かずに何かあって焦るのは嫌だとかいって強引に家を建て替えたのはもう17年も前になるのだから時が経つ早さを感じる。

「桜の物か?」

桜の物だろうぬいぐるみや本が置いてある場所がリビングにある。

「そうだよ、部屋もある。」

そう言ってリビング横の部屋は勉強机とベッドがあり確かに女の子の部屋だ

ここで桜が生活をしていると聞いてもなるほどと思えるくらいに揃っていた。

「俺の部屋もよく似た感じかな。」

登までそう言うから驚きだ。

この二人のどちらかが父親なのか・・勝手な妄想をしながら忍が冷蔵庫から

出してきたビールを「飲むか?」と聞いてきたから「ああ。」と返事をしたがおそらくえらく気の抜けた返事だったと思う。

「変な事を考えているようだが、桜は俺達の子じゃないぞ。知ってるだろう?咲は俺達とは付き合っていないし、男女の仲になった事もないよ。」


登も頷き違うと否定した、だとしたら桜の父親は誰なんだ?


確かなのは二人は桜の父親ではないという事だ。







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