愛してると言いたかった

アタラン

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思い出の木

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「お母さんは、まるで凱さんに何か思い出せって言っているような感じだよね?」

咲と何かを約束した覚えはないし、最後に会った日は・・・

「父親捜しと言うより、咲とお前の喧嘩の理由に何かあるんじゃないのか?」

こういう時に的を外さない登だが・・俺は別に咲と喧嘩をしていた訳ではない。

「ヒントは「思い出の木」って?何かある?」

忍は、俺に聞くが「思い出の木」というのが解らない。

悩む俺達三人の様子を見ながらクスっと桜が笑って「お母さんなんか三人の様子みて楽しんでそう。」って言う。
確かに咲は、こういう謎かけやイタズラが好きだった。

もし咲がいたら「わからないわからないの?」なんて言いながら早く探したら?なんて言いそうだ。

「桜の父親捜し。」ではなく「思い出の木」捜しに変更になった俺達の謎解きは記憶を呼び起こすところから始まった。

「中学の時に大きな桜の木から落ちなかったか?」

「ああ。あの木か?」

中学の頃にバトミントンの羽が木に引っかかったとかで、咲が取ろうと桜の木に登ったはいいが降りれなくなった事があった。

「でも、あれは落ちたんじゃなく、飛び降りたんじゃなかったか?」

飛び降りたはいいが着にに失敗した咲は足を痛めて忍が保健室に連れて行った記憶が蘇る。

「あの木って中学のグラウンドにあった木だろ?二年前に根本が腐って伐採したよな?」

登が言うには、桜が入学したころに根本が腐っている事がわかり台風などで折れる恐れもあると言う事で伐採が決定したらしい。

花はその伐採決定後も咲いたから反対の声も上がったが危険だという保護者が多かった為に残念ながら今は切り株だけになったらしい。

「そもそもこの手紙は、凱に宛てたものだよな。凱と咲だけの思い出って事はないか?」

忍がもう一度手紙を読んで考えてみろよと言い出した。

そう言われてみればそうだと思って考えてみるが、二人という思い出より四人で一緒の思い出が多すぎて思いつかないでいた。

「ほら、咲が失恋して泣いてお前がバイクでどこかに連れて行った事があったろ?」

そんなことは・・あった!

「行ったのは、海だったから木は無かったと思うけどな・・。」

そう俺が言うと「海ってあれ冬じゃなかった?なのに海に行ってたの?」登が呆れた顔をしたが、俺だって真冬に海になんて行きたいわけじゃない。

「仕方ないだろう?咲が海へ行きたいって言ったんだから。」

彼氏と行った海にもう一度行きたいと言われて海へ行って泣きたいって言ったから連れて行ったんだ。

しかしあの男は、最低な男だったな・・と今思い出しても思う。

「しかし、咲って男を見る目が無かったというか。咲の表面しか見ないで近寄ってきて咲が断るのが下手で付き合ったはいいが裏切られるというパターンが多かったよな。」


登は、思い出して語る横で俺も忍も確かにそうだったと頷くしかない。

俺達のそんな様子を黙って見ていた桜も興味津々になって聞いていた。

「咲は、付き合うと一途になって相手を許し過ぎて裏切られて泣くパターンが多かったな・・・そして俺達が飲みに付き合う慰める感じ。」


「お母さんって恋に生きる女だったの?」

子供だと思っていた桜の発言に戸惑う忍と登。

15歳はもう大人に近いと俺は思うけど赤ちゃんの頃から育てていた二人にしたら桜は子供なんだろう。

「そうじゃないかな。本気で好きでもないのに、相手の押しをかわせないで付き合っているうちに本気になるというより情が移るんだろうな。しかも、無条件で交際相手を信じてしまう事が多かったんだよ。」


俺がまだ十代には難しいかな?と思いながら話すと桜は「恋に恋した女の子的な?」と言ってきた。

「そうだな。男が裏切っていた事がわかるといや~解っていて自分の目で確認して毎回泣くんだよ。」


そんな昔話をしながら俺は、ある事を思い出していた。

ここで今話そうかどうかを迷ったが俺はあえて言わない事にして少し出かけると言った。

「俺少し出てくるわ。2時間くらいで戻るから。」

「ああ、気をつけてな。」

「車借りるぞ。」

そう言って俺はある場所へ向かう事にした。

あの出来事をもし桜が気が付いていたとしたら・・あそこか?


俺は俺達が通っていた高校へ向かう事にした。

20年以上も前なのに建物というのは、時間が止まったようにそのままで俺達が通っていた頃の制服と同じ生徒がいる。


俺は、車を高校の来客用の駐車場に止めて許可証を事務所に取りに行った。

事務所で許可証を申請して受け取って少し校舎の周りを歩いたり、教室を覗いたりしてみるとその何気ない風景がセピア色の思い出がカラーで蘇ってくる。

学食の一番後ろの席は俺達が好んで座っていた席だったな、渡り廊下はよくクラスが違った俺達が待ち合わせした場所だった。

制服姿の女の子とすれ違うと当時の咲が走ってきて「待って~。」と笑いながら走ってきたような・・当時に戻ったような変な感覚に一瞬襲われた。

スリッパのような上履きは雨の日には滑るのにあいつは馬鹿みたいに走って来て、そしてよく転びかけて・・・。

こんな事を考えながら目的の場所に来て目的のものを見上げた。

この場所は、部活の俺達を待っている時に咲が座っていた場所でグラウンド横の大きなイチョウの木・・この木の下?

俺は「思い出の木」がここじゃないかと思った。

「咲、お前ここだとか言わないよな?お前寝てたよな。」

ここは、三年の秋の始まりの頃。

咲が受験勉強で疲れて眠っていた時があったんだよな・・。

「咲?」

声をかけるが起きる気配もなくて顔を覗き込んだら女だと意識していなかったが、しかも寝ている顔なんて何度も見ていたのにその時の咲が可愛く見えて軽くキスをしたんだ。


あいつは、寝ていたから覚えていないはずなんだけどそう思いながらも木の下を見て。

「何も無いよな・・。」

そう思いながらも木の裏側に回った時に発見した木の太い根が変な空洞を作っている場所、その場所だけ木の根の間の土の部分だけに草が生えていない。

その辺に落ちている木の枝を使って掘り起こしてみたらあったんだサブレの空き缶が埋まっていた。

「なんでサブレなんだよ・・なんだよ。」

その空き缶の上にマジックで書かれている文字は確かに咲の字だったがすぐに歪んで見えなくなった・・俺は自分が泣いている事に気がつかなかった。

「なんだよ。ここかよ。」

そう思いながら空き缶をその場で一度開けようと思ったが怖くなった。

何が入っているのか想像もつかない。

俺は、その箱を抱えて車に戻ろうとしたら忍が一人で車の横に立っていた。












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