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特別な人
特別な人 第2話
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虎君の笑い顔に心が温かくなる。僕はふよふよと顔が緩むのを我慢できずに笑っていて、そんな僕を見て虎君はまた笑顔を深くしてくれた。
「な、なに?」
「んー。何もないよ」
恥ずかしくてしどろもどろになりながら尋ねれば、虎君は目を伏せてコーヒーに口を付ける。
それはとっても大人っぽくて、虎君なのに虎君じゃない気がしてちょっとだけ落ち着かなかった。
「葵、好きだよね」
「え? す、好き? 何が?」
「ここのココア。昔から冬になるといつもそれだろ?」
ファストフード店なら他にもたくさんあるのに、冬になるとここのココアが飲みたいからと言ってほぼ毎日通ってる。
そう言って笑う虎君の笑顔はとっても穏やか。仕方のない弟だって思われてるのかな?
僕はその言葉にマグカップに視線を落として鼻腔をくすぐる甘い匂いにちょっとだけドキドキした。
「うん……。すごく、好き……」
火傷をしないように気を付けながら口を付けてココアを口に含めば、香りに違わぬ甘さが口いっぱいに広がった。
「美味しい?」
「うん。美味しいよ」
穏やかな声と表情。僕は小さく頷いて笑い返す。
「虎君も飲んでみる?」
「いいの?」
「当たり前でしょ?」
すっごく美味しいよ! ってマグカップを渡したら、コクリと一口それを口に含む虎君。
それを見守っていた僕は「美味しいでしょ?」と尋ねる。
でも、虎君は「うん」って笑うだけで僕にマグカップを返してくれる。
「……美味しくない?」
「え? そんなことないよ?」
美味しくないなんて言ってないよね?
そう尋ね返してくる虎君。だけど、物心つく前から一緒にいた僕にはわかるよ。美味しくないって思ってないけど、でも美味しいとも思ってないよね?
「あー……、ごめん、葵」
嘘つかないでよ。って睨めば、虎君は苦笑いを浮かべて謝ってくる。甘すぎて美味しいとか分からなかった。と。
「なんで嘘つくの? ちゃんとそう言ってくれたらいいのに」
「ごめん。葵の好きなものだから苦手って言い辛かった」
唇を尖らせて不満を露わにしたら、虎君はちゃんと謝ってくれる。
手が伸ばされ、この手は何? と視線だけを向ければ、分かってるだろ? って笑われる。
僕はおずおずと手を伸ばして虎君の手に自分の手を重ねた。と、ぎゅって握り締められて……。
「実は、最近甘いものがちょっと苦手になったんだ」
「そうなの?」
「うん。コーヒーに砂糖とミルク入れるのめんどくさくてブラックに変えた頃から味覚が変わったっていうか……」
昔は好きだったけど、今は全然。
そう苦笑する虎君。僕は握られた手を握り返して「全然知らなかった……」とまた拗ねてしまう。
「……匂いは、大丈夫?」
「もちろん。それに、美味しそうにココア飲む葵を見るのが好きだからこれからも気にせず飲んでいいから、な?」
匂いもダメだったら虎君の前ではもう飲まないから。
そんな僕に虎君が見せるのは一段と優しい笑顔。お願い。って言葉つきで。
(なんか、最近の虎君、カッコいい……)
ううん。昔から虎君はかっこよかったけど、でも、なんていうか、大学入ってからますますかっこよくなったっていうか……。
視線を向ければ虎君は目を細めて微笑んでて、僕は反射的に顔を背けてしまう。
「あ、今の態度は傷ついた」
「! ご、ごめんっ」
軽口のように零れた言葉。でも、なんでだろう? 虎君の本音のような気がした。
僕は慌てて視線を虎君に戻して謝るんだけど、それに虎君は僕の手を放して「嘘だよ。嘘」ってコーヒーを口に運んだ。
「虎君……」
「そういえば、さっき一人で笑ってたけど、どうして?」
僕がどう反応していいか困っていたら、会話をさりげなく変えてくれる虎君。そういう気遣いや優しさに、やっぱり虎君は年上の大人の男の人なんだと思った……。
「な、なに?」
「んー。何もないよ」
恥ずかしくてしどろもどろになりながら尋ねれば、虎君は目を伏せてコーヒーに口を付ける。
それはとっても大人っぽくて、虎君なのに虎君じゃない気がしてちょっとだけ落ち着かなかった。
「葵、好きだよね」
「え? す、好き? 何が?」
「ここのココア。昔から冬になるといつもそれだろ?」
ファストフード店なら他にもたくさんあるのに、冬になるとここのココアが飲みたいからと言ってほぼ毎日通ってる。
そう言って笑う虎君の笑顔はとっても穏やか。仕方のない弟だって思われてるのかな?
僕はその言葉にマグカップに視線を落として鼻腔をくすぐる甘い匂いにちょっとだけドキドキした。
「うん……。すごく、好き……」
火傷をしないように気を付けながら口を付けてココアを口に含めば、香りに違わぬ甘さが口いっぱいに広がった。
「美味しい?」
「うん。美味しいよ」
穏やかな声と表情。僕は小さく頷いて笑い返す。
「虎君も飲んでみる?」
「いいの?」
「当たり前でしょ?」
すっごく美味しいよ! ってマグカップを渡したら、コクリと一口それを口に含む虎君。
それを見守っていた僕は「美味しいでしょ?」と尋ねる。
でも、虎君は「うん」って笑うだけで僕にマグカップを返してくれる。
「……美味しくない?」
「え? そんなことないよ?」
美味しくないなんて言ってないよね?
そう尋ね返してくる虎君。だけど、物心つく前から一緒にいた僕にはわかるよ。美味しくないって思ってないけど、でも美味しいとも思ってないよね?
「あー……、ごめん、葵」
嘘つかないでよ。って睨めば、虎君は苦笑いを浮かべて謝ってくる。甘すぎて美味しいとか分からなかった。と。
「なんで嘘つくの? ちゃんとそう言ってくれたらいいのに」
「ごめん。葵の好きなものだから苦手って言い辛かった」
唇を尖らせて不満を露わにしたら、虎君はちゃんと謝ってくれる。
手が伸ばされ、この手は何? と視線だけを向ければ、分かってるだろ? って笑われる。
僕はおずおずと手を伸ばして虎君の手に自分の手を重ねた。と、ぎゅって握り締められて……。
「実は、最近甘いものがちょっと苦手になったんだ」
「そうなの?」
「うん。コーヒーに砂糖とミルク入れるのめんどくさくてブラックに変えた頃から味覚が変わったっていうか……」
昔は好きだったけど、今は全然。
そう苦笑する虎君。僕は握られた手を握り返して「全然知らなかった……」とまた拗ねてしまう。
「……匂いは、大丈夫?」
「もちろん。それに、美味しそうにココア飲む葵を見るのが好きだからこれからも気にせず飲んでいいから、な?」
匂いもダメだったら虎君の前ではもう飲まないから。
そんな僕に虎君が見せるのは一段と優しい笑顔。お願い。って言葉つきで。
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ううん。昔から虎君はかっこよかったけど、でも、なんていうか、大学入ってからますますかっこよくなったっていうか……。
視線を向ければ虎君は目を細めて微笑んでて、僕は反射的に顔を背けてしまう。
「あ、今の態度は傷ついた」
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僕は慌てて視線を虎君に戻して謝るんだけど、それに虎君は僕の手を放して「嘘だよ。嘘」ってコーヒーを口に運んだ。
「虎君……」
「そういえば、さっき一人で笑ってたけど、どうして?」
僕がどう反応していいか困っていたら、会話をさりげなく変えてくれる虎君。そういう気遣いや優しさに、やっぱり虎君は年上の大人の男の人なんだと思った……。
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