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特別な人
特別な人 第17話
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あれからどれぐらい泣いていただろう。
僕は感情のまま泣きじゃくって涙がもう出ないぐらいまで泣いて、泣き疲れて漸く冷静な思考が戻ってきた気がした。
「落ち着いた……?」
「うん……、ありがとう、虎君」
スンって鼻を啜る僕に、大丈夫? って顔を覗き込んでくる虎君はずっと僕を抱きしめ、僕が泣き止むのを辛抱強く待ってくれていた。
いったいどれぐらい泣いてたんだろうって壁に掛かってる時計に目をやって、驚いた。
「ご、ごめん虎君っ、僕、自分の事ばっかりでこんなに時間経ってる思わなくて……」
「ん? 何が?」
慌てて虎君の膝の上から退こうとするんだけど、虎君は「どうしたんだ?」って僕の行動にびっくりしてるみたいだった。
暴れたら落ちるぞ。って僕が膝から降りようとするのを止める虎君。でも、一時間以上膝の上を占拠してたなんて、いくら僕でも申し訳ないって思うに決まってる。
「も、もう大丈夫だからっ!」
「こらこらこら。すぐばれる嘘までついてどこ行くんだよ」
制止を無視して何とか膝から降りようとするんだけど、虎君はそんな僕をさらに無視して落ち着けって抱きとめてきた。
嘘じゃないって反論するんだけど、何年幼馴染してると思ってるんだって聞いてくれない。
確かに嘘だけど、でも全部嘘ってわけじゃない。半分ぐらい、……3分の1ぐらいは大丈夫って思ってるから、嘘じゃないってことにしておく。
「本当に大丈夫だからっ」
「こういう時の葵の『大丈夫』は全然大丈夫じゃないからダメだ」
強がってるのはお見通し。いいからもう少し大人しくしとけってあやされたら、静かに膝の上に座ってる選択肢しか残されていない。
僕は仕方ないから大人しく虎君の言葉に従ってその肩に頭を預ける。っと、背中をポンポンって一定のリズムで叩く手。
(心配、かけちゃったな……)
心地よい振動に目を閉じるのは無意識の事。でもそれは仕方ない。虎君の傍にいるととても安心するから。
いっぱい泣いて疲れたせいか、今のこの状況は眠気を誘う。でも呑気に寝るわけにはいかない。だって虎君にすごく心配かけてるんだから。
泣くだけ泣いて、落ち着いたから寝ます。なんて、いくら優しい虎君でも怒りそう。……ううん。怒るっていうか呆れられそう。まぁどっちにしても虎君に悪く思われることには間違いない。
だから、僕は全力で眠気と戦う。せめて虎君の膝から降りるまでは……。と。
「……ごめんな」
「ふぇ……?」
襲い来る眠気に抗っていたら、かけられる声。それは虎君の声だったけど、いつもよりもずっとずっと頼りない。
僕はその声を聞き間違いかと思った。トーンもそうだけど、何より『ごめん』って虎君が謝る意味が分からなかったから。
「虎君?」
「本当にごめん。俺が気づかなかったせいで葵に嫌な思いさせた……」
また謝る虎君は僕の背中を叩く手を止めて、代わりにギュって抱きしめてくる。その腕はいつもより力が込められててちょっとだけ苦しかったけど、僕は虎君の肩に頭を預けたまま首を横に振った。
「なんで虎君が謝るの? 虎君は何も悪くないのに」
力なく笑う僕は、虎君が責任を感じることなんて何もないよ? って目を閉じた。
誰も、本当に誰も気づかなかったんだから。半年以上お手伝いさんとして働いてくれていた人がまさかあんなことするなんて。
「姉さんが帰ってきたらお礼言わないとね」
「そうだな……」
いち早く気づいてくれた姉さんのおかげで被害は最低限に抑えられた。
それには虎君も同意みたいで、僕の言葉に頷きを返してくれた。ちょっとだけ難しい顔してるのは、きっと姉さんとの関係のせいだろうな。
昔は仲良しだった虎君と姉さんがこれを機にまた元通りの関係になればいいなぁ。って思うのは、僕が呑気だからかな……?
「喧嘩吹っ掛けないように気を付ける……」
「!? なんで喧嘩!?」
頑張って我慢する。って、だからなんで?!
「桔梗が気づいてくれたのは感謝してる。それは嘘じゃない。でも……」
「『でも』?」
「もっと早く気づくとか、せめて俺に相談するとか、色々思うところが、な……」
問い詰める僕の視線から逃げるように顔を背ける虎君は、言葉尻を小さくしながらも教えてくれる。姉さんに喧嘩を吹っ掛けてしまいそうな理由を。
その理由を聞いた僕は、目を丸くしてしまう。
「そんな顔して見ないでよ」
顔が見られないように抱きしめる腕に力を籠める虎君の頬は、ちょっとだけ赤かった。
「大丈夫。葵の前ではちゃんと我慢するから」
「僕の前ではって……。僕が居ないところでも喧嘩しないでよ」
自信なさそうな声に、思わず笑ってしまう。僕は二人には昔みたいに仲良くしてほしいよ? って。
僕は感情のまま泣きじゃくって涙がもう出ないぐらいまで泣いて、泣き疲れて漸く冷静な思考が戻ってきた気がした。
「落ち着いた……?」
「うん……、ありがとう、虎君」
スンって鼻を啜る僕に、大丈夫? って顔を覗き込んでくる虎君はずっと僕を抱きしめ、僕が泣き止むのを辛抱強く待ってくれていた。
いったいどれぐらい泣いてたんだろうって壁に掛かってる時計に目をやって、驚いた。
「ご、ごめん虎君っ、僕、自分の事ばっかりでこんなに時間経ってる思わなくて……」
「ん? 何が?」
慌てて虎君の膝の上から退こうとするんだけど、虎君は「どうしたんだ?」って僕の行動にびっくりしてるみたいだった。
暴れたら落ちるぞ。って僕が膝から降りようとするのを止める虎君。でも、一時間以上膝の上を占拠してたなんて、いくら僕でも申し訳ないって思うに決まってる。
「も、もう大丈夫だからっ!」
「こらこらこら。すぐばれる嘘までついてどこ行くんだよ」
制止を無視して何とか膝から降りようとするんだけど、虎君はそんな僕をさらに無視して落ち着けって抱きとめてきた。
嘘じゃないって反論するんだけど、何年幼馴染してると思ってるんだって聞いてくれない。
確かに嘘だけど、でも全部嘘ってわけじゃない。半分ぐらい、……3分の1ぐらいは大丈夫って思ってるから、嘘じゃないってことにしておく。
「本当に大丈夫だからっ」
「こういう時の葵の『大丈夫』は全然大丈夫じゃないからダメだ」
強がってるのはお見通し。いいからもう少し大人しくしとけってあやされたら、静かに膝の上に座ってる選択肢しか残されていない。
僕は仕方ないから大人しく虎君の言葉に従ってその肩に頭を預ける。っと、背中をポンポンって一定のリズムで叩く手。
(心配、かけちゃったな……)
心地よい振動に目を閉じるのは無意識の事。でもそれは仕方ない。虎君の傍にいるととても安心するから。
いっぱい泣いて疲れたせいか、今のこの状況は眠気を誘う。でも呑気に寝るわけにはいかない。だって虎君にすごく心配かけてるんだから。
泣くだけ泣いて、落ち着いたから寝ます。なんて、いくら優しい虎君でも怒りそう。……ううん。怒るっていうか呆れられそう。まぁどっちにしても虎君に悪く思われることには間違いない。
だから、僕は全力で眠気と戦う。せめて虎君の膝から降りるまでは……。と。
「……ごめんな」
「ふぇ……?」
襲い来る眠気に抗っていたら、かけられる声。それは虎君の声だったけど、いつもよりもずっとずっと頼りない。
僕はその声を聞き間違いかと思った。トーンもそうだけど、何より『ごめん』って虎君が謝る意味が分からなかったから。
「虎君?」
「本当にごめん。俺が気づかなかったせいで葵に嫌な思いさせた……」
また謝る虎君は僕の背中を叩く手を止めて、代わりにギュって抱きしめてくる。その腕はいつもより力が込められててちょっとだけ苦しかったけど、僕は虎君の肩に頭を預けたまま首を横に振った。
「なんで虎君が謝るの? 虎君は何も悪くないのに」
力なく笑う僕は、虎君が責任を感じることなんて何もないよ? って目を閉じた。
誰も、本当に誰も気づかなかったんだから。半年以上お手伝いさんとして働いてくれていた人がまさかあんなことするなんて。
「姉さんが帰ってきたらお礼言わないとね」
「そうだな……」
いち早く気づいてくれた姉さんのおかげで被害は最低限に抑えられた。
それには虎君も同意みたいで、僕の言葉に頷きを返してくれた。ちょっとだけ難しい顔してるのは、きっと姉さんとの関係のせいだろうな。
昔は仲良しだった虎君と姉さんがこれを機にまた元通りの関係になればいいなぁ。って思うのは、僕が呑気だからかな……?
「喧嘩吹っ掛けないように気を付ける……」
「!? なんで喧嘩!?」
頑張って我慢する。って、だからなんで?!
「桔梗が気づいてくれたのは感謝してる。それは嘘じゃない。でも……」
「『でも』?」
「もっと早く気づくとか、せめて俺に相談するとか、色々思うところが、な……」
問い詰める僕の視線から逃げるように顔を背ける虎君は、言葉尻を小さくしながらも教えてくれる。姉さんに喧嘩を吹っ掛けてしまいそうな理由を。
その理由を聞いた僕は、目を丸くしてしまう。
「そんな顔して見ないでよ」
顔が見られないように抱きしめる腕に力を籠める虎君の頬は、ちょっとだけ赤かった。
「大丈夫。葵の前ではちゃんと我慢するから」
「僕の前ではって……。僕が居ないところでも喧嘩しないでよ」
自信なさそうな声に、思わず笑ってしまう。僕は二人には昔みたいに仲良くしてほしいよ? って。
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