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特別な人
特別な人 第39話
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限界を超えていたせいで、僕はそのまま夢の中へ落ちへ行く。
心地よい浮遊感と虎君が側にいてくれる安心感のおかげでいい夢を見れる気がした。
「可愛いことして寝落ちしないでくれよ」
夢うつつで聞こえる虎君の声。僕が安心するように頭を撫でてくれる虎君に、僕は「ごめんね」って言葉を返す。
でも、実際に声に出せてたかはわからない。僕の意識は、もうまどろみに落ちていたから……。
今日は本当にいろんなことがあって、たくさん怖い思いをしたし悲しい思いもした。
だから、絶対に嫌な夢を見ると思ってた。どんなに気持ちが浮上しても、心に恐怖は刻まれてしまっているから。
でも僕が見るのは幸せな夢。その夢には西さんの姿もあったけど、不思議と怖いとは思わなかった。
僕の隣には虎君がいて、茂斗と凪ちゃんがいつも通りリビングで勉強してる。
姉さんはめのうのとお遊戯会の練習をしていて、父さんと母さんはめのうの歌声に笑いあってる。
キッチンでは西さんが食事の準備をしていて、部屋の隅っこでその光景を見守ってくれる陽琥さんの姿もあった。
それは昨日まで当たり前にあると思ってた光景で、できればずっと続いて欲しかった僕の家族だった。
『葵、どうした?』
温かくて大好きな家族を眺めている僕に掛けられる声。それは隣に立っている虎君のもので、僕は家族から幼馴染へと視線を巡らせた。
虎君はとても優しい顔で笑っていて、僕のほっぺたに手を添えてくる。その手は笑顔と同じぐらい優しくて、とても安心する。
『何?』
親指で頬を撫でる虎君にくすぐったいと笑う僕。そんな僕に、虎君は一層優しく笑いかけてくれる。
僕は目尻を下げて笑う虎君のこの表情がとても好きだと思う。
(やっぱり僕、虎君の事好きだなぁ……)
大好きな家族と一緒にいるのは楽しいし幸せだし安心する。でも、虎君と一緒にいるとその全部がもっともっと強くなる。
血は繋がってないけど虎君は自慢のお兄ちゃん。だから、もっともっと虎君に近づきたい。
『葵?』
『僕、虎君の事大好きだよ』
普段は照れくさくて言葉にできない言葉だけど、今は何故か素直に口にすることができた。
すると虎君は一瞬驚いた顔を見せるけど、すぐに元の優しい笑顔に戻って、『俺もだよ』って微笑んでくれる。その笑顔は言うなれば、愛しげ。
その笑顔はいつもと同じ笑顔なのに、何故か僕はドキドキして胸が苦しくなる。
『葵は俺の自慢の弟だよ』
『本当?』
『ああ、本当だ』
嬉しいって抱き着いたら、抱き留めてくれる虎君。それが堪らなく幸せで僕は心が満たされる感覚を覚えた。
大好きなお兄ちゃんに同じように大好きだと言ってもらえるなんて、僕は本当に幸せ者だ。
『ちょっと、虎! 何してんのよ!』
『! なんでお前が此処にいるんだよ、桔梗っ!』
抱き合って笑い合ってたら、べりっと虎君から引き離される。振り返ったらそこには姉さんがいて、油断も隙もないわね! って虎君を睨んでいた。
『今何しようとしてたの? 言ってみなさいよ』
言えるものならね。って眼光を鋭くする姉さん。いつもの虎君なら絶対言い返すところ。でも今日の虎君はいつもと違ってて、『悪い……』って頭を抱えて項垂れてた。
らしからぬ様子に僕は『虎君?』って首を傾げる。何かあったの? って。
けど虎君は僕の問いかけに答えてはくれない。それどころか虎君は姉さんに『止めてくれて助かった』ってお礼を言って頭を下げてて、びっくりした。
今まで虎君と姉さんが喧嘩するところは沢山見たけど、こうやって虎君が謝ってお礼を言ったことなんてなかった。だから、今目の前の状況に心底驚いてしまった。
(あ、もしかして僕がいつも仲良くしてってお願いしてるから……?)
やっと虎君に僕の声が届いたんだ!
そう思ったら嬉しくて、僕は姉さんを振り返った。これで仲直りできるね! って。
でも姉さんはそんな僕の声も虎君のお礼と謝罪も完全無視で、『まさか萎らしくしたら見逃してもらえると思ってるの?』って高圧的な態度を見せる。
『姉さん!?』
なんでそんな強情張るの? 姉さんだって本当は虎君と昔のように仲良くしたいんでしょ?
そう詰め寄るけど、姉さんは僕を無視して虎君を見下すように見据える。
『そんな都合いい話あるわけないでしょ? 馬鹿虎』
呆れたように溜め息交じりで虎君を罵倒する姉さん。この後どうなるかなんて、僕はよく知ってる。何度も何度も見てきたことだから……。
心地よい浮遊感と虎君が側にいてくれる安心感のおかげでいい夢を見れる気がした。
「可愛いことして寝落ちしないでくれよ」
夢うつつで聞こえる虎君の声。僕が安心するように頭を撫でてくれる虎君に、僕は「ごめんね」って言葉を返す。
でも、実際に声に出せてたかはわからない。僕の意識は、もうまどろみに落ちていたから……。
今日は本当にいろんなことがあって、たくさん怖い思いをしたし悲しい思いもした。
だから、絶対に嫌な夢を見ると思ってた。どんなに気持ちが浮上しても、心に恐怖は刻まれてしまっているから。
でも僕が見るのは幸せな夢。その夢には西さんの姿もあったけど、不思議と怖いとは思わなかった。
僕の隣には虎君がいて、茂斗と凪ちゃんがいつも通りリビングで勉強してる。
姉さんはめのうのとお遊戯会の練習をしていて、父さんと母さんはめのうの歌声に笑いあってる。
キッチンでは西さんが食事の準備をしていて、部屋の隅っこでその光景を見守ってくれる陽琥さんの姿もあった。
それは昨日まで当たり前にあると思ってた光景で、できればずっと続いて欲しかった僕の家族だった。
『葵、どうした?』
温かくて大好きな家族を眺めている僕に掛けられる声。それは隣に立っている虎君のもので、僕は家族から幼馴染へと視線を巡らせた。
虎君はとても優しい顔で笑っていて、僕のほっぺたに手を添えてくる。その手は笑顔と同じぐらい優しくて、とても安心する。
『何?』
親指で頬を撫でる虎君にくすぐったいと笑う僕。そんな僕に、虎君は一層優しく笑いかけてくれる。
僕は目尻を下げて笑う虎君のこの表情がとても好きだと思う。
(やっぱり僕、虎君の事好きだなぁ……)
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血は繋がってないけど虎君は自慢のお兄ちゃん。だから、もっともっと虎君に近づきたい。
『葵?』
『僕、虎君の事大好きだよ』
普段は照れくさくて言葉にできない言葉だけど、今は何故か素直に口にすることができた。
すると虎君は一瞬驚いた顔を見せるけど、すぐに元の優しい笑顔に戻って、『俺もだよ』って微笑んでくれる。その笑顔は言うなれば、愛しげ。
その笑顔はいつもと同じ笑顔なのに、何故か僕はドキドキして胸が苦しくなる。
『葵は俺の自慢の弟だよ』
『本当?』
『ああ、本当だ』
嬉しいって抱き着いたら、抱き留めてくれる虎君。それが堪らなく幸せで僕は心が満たされる感覚を覚えた。
大好きなお兄ちゃんに同じように大好きだと言ってもらえるなんて、僕は本当に幸せ者だ。
『ちょっと、虎! 何してんのよ!』
『! なんでお前が此処にいるんだよ、桔梗っ!』
抱き合って笑い合ってたら、べりっと虎君から引き離される。振り返ったらそこには姉さんがいて、油断も隙もないわね! って虎君を睨んでいた。
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言えるものならね。って眼光を鋭くする姉さん。いつもの虎君なら絶対言い返すところ。でも今日の虎君はいつもと違ってて、『悪い……』って頭を抱えて項垂れてた。
らしからぬ様子に僕は『虎君?』って首を傾げる。何かあったの? って。
けど虎君は僕の問いかけに答えてはくれない。それどころか虎君は姉さんに『止めてくれて助かった』ってお礼を言って頭を下げてて、びっくりした。
今まで虎君と姉さんが喧嘩するところは沢山見たけど、こうやって虎君が謝ってお礼を言ったことなんてなかった。だから、今目の前の状況に心底驚いてしまった。
(あ、もしかして僕がいつも仲良くしてってお願いしてるから……?)
やっと虎君に僕の声が届いたんだ!
そう思ったら嬉しくて、僕は姉さんを振り返った。これで仲直りできるね! って。
でも姉さんはそんな僕の声も虎君のお礼と謝罪も完全無視で、『まさか萎らしくしたら見逃してもらえると思ってるの?』って高圧的な態度を見せる。
『姉さん!?』
なんでそんな強情張るの? 姉さんだって本当は虎君と昔のように仲良くしたいんでしょ?
そう詰め寄るけど、姉さんは僕を無視して虎君を見下すように見据える。
『そんな都合いい話あるわけないでしょ? 馬鹿虎』
呆れたように溜め息交じりで虎君を罵倒する姉さん。この後どうなるかなんて、僕はよく知ってる。何度も何度も見てきたことだから……。
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