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特別な人
特別な人 第55話
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当時の悠栖はクライストの風習が凄く嫌で早く彼女が欲しいってずっと言ってた。でも寮と学校の往復に出会いは全くなくて、週末に街に出かけても女の子達は悠栖じゃなくて悠栖の友達に好意を持って、結果彼女ができたことは一度もなかった。
そんな矢先に開催されたクリスマスパーティーに悠栖が飛びつかないわけもなく、マリア女学院の女の子に積極的に声を掛けて何とか恋愛に発展させようとしていた。
見ていた僕達は、相手が好きだから恋愛するんじゃなくて彼女が欲しいから誰かと恋愛したい悠栖に正直呆れてた。だって、そんな気持ちじゃ相手に失礼だから。
でも僕達の注意なんて聞く耳持たずに突っ走った悠栖。綺麗で可愛い見た目に少年らしさを持ち合わせた悠栖は確かにクリスマスパーティーではすっごくモテてた。
けど、女の子といい感じになる前に親友の上野君が登場して、男らしい上野君に女の子は心変わり。それが何度も続いて怒った悠栖が故意に邪魔する理由を問い詰めたら、返ってきたのが、悠栖が好きだから邪魔したって言葉だったらしい。
「『悠栖とどうこうなりたいわけじゃないけど、本気で好きな人以外と付き合う悠栖を見たくない』だっけ?」
「え? 『誰のモノにもならないでほしい』じゃなかった?」
慶史と朋喜が悠栖に確認するのは、上野君が告白した時に告げた想い。
上野君は悠栖が同性の恋愛に否定的な事を知っていたから、応えて欲しいわけじゃないしギクシャクするのも嫌だから次の日には忘れて欲しいって言ってたらしい。
それが凄く切なくて、当時話を聞いた僕は落ち込む悠栖には申し訳ないけど、上野君を応援したいって思っちゃったっけ。まぁでも悠栖は「男と恋愛なんて死んでも嫌だ!」って豪語してたし、思っただけで留めておいたけど。
それから1年。悠栖から上野君に関する相談を受けてないから、僕達は終わった話だと思ってた。けど、それはどうやら違ったようで……。
「どっちも言われた……。てか、ヒデの奴自分で『友達でいさせてくれ』って言っといてなんなんだよ。マジで……」
「『やっぱり友達じゃ無理』って言われたの?」
「俺が気持ち知ってるのにマジ全然態度が変わらないから辛いんだってさ……」
僕の言葉に悠栖は「そう言われた方がマシだった」って机に突っ伏す。
告白する前と変わらない態度で上野君と遊んでた悠栖を知ってるからか、慶史は「あー……」って納得してる感じだった。
「『変えるな』って言ったのはヒデのくせに、それが理由で『もう無理』って言われた俺はどうしたらいいんだよ……」
流石に泣きそう……。
そう言葉を零す悠栖は、この3年間で友達を7人すべて同じ理由で失くしてる。
みんな悠栖の人となりに惹かれて同性って分かってても好きになってくれるんだけど、悠栖に好きになってもらいたいって頑張って、頑張っても進展しない仲に心が疲れて去ってしまう。それの繰り返し。
「付き合う振りでもすりゃよかったのかなぁ……」
「! それはダメだよっ」
「そうだね。相手に失礼だよね」
友達を失う位なら恋人ごっこに付き合ってやればよかった。って、いくら参ってるからってその言葉は聞き流せない。
でも、僕と朋喜が注意したら、悠栖は「他に何かいい案あるのかよ……」って恨めしそうな顔を見せる。
「どうせ気の迷いとか好奇心なんだし、飽きるまで適当に付き合っとけば友達失くさずに済むじゃん……」
「相手見下しといて友達って笑えること言うよな、悠栖は」
不貞腐れる悠栖に慶史が見せるのは満面の笑み。でもその笑顔に軽蔑が含まれてるってことは僕達には一目瞭然だった。
「な、なんだよっ……。慶史だって似たようなことしてるだろっ!」
「一緒にしないでくれる? 俺は、『本気』の相手と寝たことないしこれからも寝るつもりないから」
誰彼構わずヤってるくせに! って悠栖が声を荒げるのは、痛いところを突かれたからなんだろうな。
暴言を受けた慶史はそれを分かってるのか、「人の『本気』を軽く見てたらいつか周りから『本気』で相手してもらえなくなるからな」って真顔で悠栖を見据える。俺の言いたいこと分かるよね? って圧を感じたけど、それはきっと気のせいじゃない。
現に悠栖は言葉を詰まらせて俯くと、小さな声で「ごめん……」って謝ってきた。
「分かればいいよ。まぁ悠栖がショック受けてるのは分かるし、本心じゃないってことも分かってるし」
「慶史……」
「なんだよ。あ、反省はしといてよ? 二度目があったら、今度は俺が『縁切り』するから」
「! わ、分かったっ。気を付ける」
たとえ本心じゃなかったとしても、二度目は許さない。
そう笑顔で圧をかける慶史だけど、慶史の気持ちは伝わったみたいで悠栖は力いっぱい頷いて気を付けるって約束してくれた。
「で、悠栖はどうすんの? 二週間後のクリスマスパーティーで今度こそ彼女作るの?」
「気分じゃねぇーよ」
場の空気を変えてくれるのはやっぱり慶史。笑いながら悠栖に尋ねるのは、悠栖がこの1年間上野君の想いに応えれない代わりに願いをきいて恋人づくりを自粛していたから。
「縁は切られたけど、でもヒデの言ったことは正しいからな。本気で好きになれる相手は探すけど、前みたいに手あたり次第はもうしない」
「おー。進歩してるじゃん!」
苦笑いの悠栖。そんな悠栖の頭を茶化す様に撫でる慶史。
触れるのが嫌いな悠栖はそれに「やめろよ!」って必死の抵抗。
僕はそんな二人を眺めながら「そんなに嫌がらなくても……」って笑う。好きな人に髪を撫でられるのは気持ちいいよ? って。
そんな矢先に開催されたクリスマスパーティーに悠栖が飛びつかないわけもなく、マリア女学院の女の子に積極的に声を掛けて何とか恋愛に発展させようとしていた。
見ていた僕達は、相手が好きだから恋愛するんじゃなくて彼女が欲しいから誰かと恋愛したい悠栖に正直呆れてた。だって、そんな気持ちじゃ相手に失礼だから。
でも僕達の注意なんて聞く耳持たずに突っ走った悠栖。綺麗で可愛い見た目に少年らしさを持ち合わせた悠栖は確かにクリスマスパーティーではすっごくモテてた。
けど、女の子といい感じになる前に親友の上野君が登場して、男らしい上野君に女の子は心変わり。それが何度も続いて怒った悠栖が故意に邪魔する理由を問い詰めたら、返ってきたのが、悠栖が好きだから邪魔したって言葉だったらしい。
「『悠栖とどうこうなりたいわけじゃないけど、本気で好きな人以外と付き合う悠栖を見たくない』だっけ?」
「え? 『誰のモノにもならないでほしい』じゃなかった?」
慶史と朋喜が悠栖に確認するのは、上野君が告白した時に告げた想い。
上野君は悠栖が同性の恋愛に否定的な事を知っていたから、応えて欲しいわけじゃないしギクシャクするのも嫌だから次の日には忘れて欲しいって言ってたらしい。
それが凄く切なくて、当時話を聞いた僕は落ち込む悠栖には申し訳ないけど、上野君を応援したいって思っちゃったっけ。まぁでも悠栖は「男と恋愛なんて死んでも嫌だ!」って豪語してたし、思っただけで留めておいたけど。
それから1年。悠栖から上野君に関する相談を受けてないから、僕達は終わった話だと思ってた。けど、それはどうやら違ったようで……。
「どっちも言われた……。てか、ヒデの奴自分で『友達でいさせてくれ』って言っといてなんなんだよ。マジで……」
「『やっぱり友達じゃ無理』って言われたの?」
「俺が気持ち知ってるのにマジ全然態度が変わらないから辛いんだってさ……」
僕の言葉に悠栖は「そう言われた方がマシだった」って机に突っ伏す。
告白する前と変わらない態度で上野君と遊んでた悠栖を知ってるからか、慶史は「あー……」って納得してる感じだった。
「『変えるな』って言ったのはヒデのくせに、それが理由で『もう無理』って言われた俺はどうしたらいいんだよ……」
流石に泣きそう……。
そう言葉を零す悠栖は、この3年間で友達を7人すべて同じ理由で失くしてる。
みんな悠栖の人となりに惹かれて同性って分かってても好きになってくれるんだけど、悠栖に好きになってもらいたいって頑張って、頑張っても進展しない仲に心が疲れて去ってしまう。それの繰り返し。
「付き合う振りでもすりゃよかったのかなぁ……」
「! それはダメだよっ」
「そうだね。相手に失礼だよね」
友達を失う位なら恋人ごっこに付き合ってやればよかった。って、いくら参ってるからってその言葉は聞き流せない。
でも、僕と朋喜が注意したら、悠栖は「他に何かいい案あるのかよ……」って恨めしそうな顔を見せる。
「どうせ気の迷いとか好奇心なんだし、飽きるまで適当に付き合っとけば友達失くさずに済むじゃん……」
「相手見下しといて友達って笑えること言うよな、悠栖は」
不貞腐れる悠栖に慶史が見せるのは満面の笑み。でもその笑顔に軽蔑が含まれてるってことは僕達には一目瞭然だった。
「な、なんだよっ……。慶史だって似たようなことしてるだろっ!」
「一緒にしないでくれる? 俺は、『本気』の相手と寝たことないしこれからも寝るつもりないから」
誰彼構わずヤってるくせに! って悠栖が声を荒げるのは、痛いところを突かれたからなんだろうな。
暴言を受けた慶史はそれを分かってるのか、「人の『本気』を軽く見てたらいつか周りから『本気』で相手してもらえなくなるからな」って真顔で悠栖を見据える。俺の言いたいこと分かるよね? って圧を感じたけど、それはきっと気のせいじゃない。
現に悠栖は言葉を詰まらせて俯くと、小さな声で「ごめん……」って謝ってきた。
「分かればいいよ。まぁ悠栖がショック受けてるのは分かるし、本心じゃないってことも分かってるし」
「慶史……」
「なんだよ。あ、反省はしといてよ? 二度目があったら、今度は俺が『縁切り』するから」
「! わ、分かったっ。気を付ける」
たとえ本心じゃなかったとしても、二度目は許さない。
そう笑顔で圧をかける慶史だけど、慶史の気持ちは伝わったみたいで悠栖は力いっぱい頷いて気を付けるって約束してくれた。
「で、悠栖はどうすんの? 二週間後のクリスマスパーティーで今度こそ彼女作るの?」
「気分じゃねぇーよ」
場の空気を変えてくれるのはやっぱり慶史。笑いながら悠栖に尋ねるのは、悠栖がこの1年間上野君の想いに応えれない代わりに願いをきいて恋人づくりを自粛していたから。
「縁は切られたけど、でもヒデの言ったことは正しいからな。本気で好きになれる相手は探すけど、前みたいに手あたり次第はもうしない」
「おー。進歩してるじゃん!」
苦笑いの悠栖。そんな悠栖の頭を茶化す様に撫でる慶史。
触れるのが嫌いな悠栖はそれに「やめろよ!」って必死の抵抗。
僕はそんな二人を眺めながら「そんなに嫌がらなくても……」って笑う。好きな人に髪を撫でられるのは気持ちいいよ? って。
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