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特別な人
特別な人 第90話
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「な、なんでそんな風に笑うのっ」
「別にいつもと一緒だろ?」
反応に困ってつい虎君を責めるような口調になってしまう。顔は真っ赤だろうからそれを隠すために虎君にしがみついて顔を隠すものの、虎君にはバレバレ。
楽しそうに笑いながら僕の髪を撫でてくる手は『いつもと一緒』。仕方のない『甘えたな弟』を宥める『お兄ちゃん』の顔で笑ってるだろう声色も。
(うぅ……、この前からどうしちゃったんだろう、僕)
虎君のこういう優しさに過剰反応してる気がする。
……ううん。気じゃなくて、してる自覚はある。
(だって、だって最近前よりずっとずっと優しいんだもん! 虎君が僕を甘やかすから! だから、虎君が悪いんだ!)
分かってる。これが完全に責任転嫁だってことは分かってる。
でも、でも……!
「虎君、僕の反応見て楽しんでるでしょ……!」
「はは。バレた?」
「当たり前でしょ! こんな風にあからさまなら流石にバレるよ!」
僕が困る事分かっててあえてそう言う雰囲気にして楽しんでる虎君は本当に意地悪だ。
できることなら言い返して虎君に仕返ししたいところなんだけど、絶対に口では勝てないって分かってるから言葉での仕返しは諦める。
けど、すんなり引き下がるのも悔しいから、力いっぱい虎君に抱き着いて細やかな反抗を試みてみる。
「苦しい苦しい。……ごめんって」
あ、これ全然苦しんでないよね? でも『苦しい』って言うってことは、僕の意図もお見通しってこと?
(あーあ。本当、全然虎君に敵わないんだから……)
5歳差って大きすぎるよ……。
反抗の手を緩めてばれないように小さく息を吐いて「どうせ子供っぽいって思ってるんでしょ」って不貞腐れてみる。虎君は否定の言葉を返してくれるって分かってるのにあえて口にしちゃうところがまさに子供だってことは分かってるんだけど。
「『子供っぽい』なんて思ってるわけないだろ?」
(ほら、ね?)
「やっぱり葵は可愛いなって思ってるよ」
「! 虎君!!」
よしよしって頭を撫でる手が優しいのは一緒。でも、なんでだろう? この撫で方はなんていうか……。
(これってペット扱いじゃない?)
「酷いよ! ちゃんと人として扱ってよ!」
「その言い方は傷つくぞ? まるで俺が葵のことを『ペット扱い』してるみたいな口ぶりじゃないか」
「今まさにしてたよね!?」
意地悪しないでよ!!
わざとらしい口調に僕が頬っぺたを膨らませて睨んだら、虎君は「ごめんごめん」って笑いながらまた髪を撫でてくる。
(あ、いつもと一緒だ)
怒ってたはずなのに、ついつい緩む頬っぺたに膨れっ面はおしまい。
優しい笑い顔に僕もつられて笑ってしまった。
「……葵、これだけは覚えておいて?」
「何?」
「周りにどう言われようが、どう思われようが、俺は葵を甘やかす事は止めないから。さっきは瑛大にそれを伝えただけだから、誤解しないでくれよ?」
俺は葵を傷つけるような真似は絶対にしないから。
そう真っすぐ見つめて伝えてくれる虎君の眼差しは優しい。けど、真剣さはいつも以上に伝わってくる。
またぶり返す落ち着かなさに、僕は俯いて虎君の視線から逃げてしまう。
でも、ちゃんと虎君の気持ちは届いてるから、頷いて返事をした。もう誤解しないからね? って。
「さ、掃除再開しようか? そろそろ瑛大も戻ってくるだろうし」
「! うん、そうだね」
騙す様に呼び出してこき使っておいて呼び出した当事者がサボってたら流石に瑛大も怒る気がする。
そう笑う虎君。僕は「それは大丈夫だよ」って笑い返しながらもう一度掃除機に手を伸ばす。
「瑛大にとって虎君は絶対的存在だし、何があっても『怒る』ことはないよ」
「『何があっても』は言い過ぎだろ?」
「言い過ぎじゃないよ。瑛大の『虎君大好き』オーラは僕ですら偶に負けちゃいそうになるもん」
「え?」
「でも僕は虎君の『弟』ナンバーワンの座を譲る気ないし、それを瑛大も分かってるから僕には容赦なく怒るんだよねぇ……」
だから僕がサボってたら絶対零度の目で見下ろされるに決まってるし、早く掃除再開しないと!
「別にいつもと一緒だろ?」
反応に困ってつい虎君を責めるような口調になってしまう。顔は真っ赤だろうからそれを隠すために虎君にしがみついて顔を隠すものの、虎君にはバレバレ。
楽しそうに笑いながら僕の髪を撫でてくる手は『いつもと一緒』。仕方のない『甘えたな弟』を宥める『お兄ちゃん』の顔で笑ってるだろう声色も。
(うぅ……、この前からどうしちゃったんだろう、僕)
虎君のこういう優しさに過剰反応してる気がする。
……ううん。気じゃなくて、してる自覚はある。
(だって、だって最近前よりずっとずっと優しいんだもん! 虎君が僕を甘やかすから! だから、虎君が悪いんだ!)
分かってる。これが完全に責任転嫁だってことは分かってる。
でも、でも……!
「虎君、僕の反応見て楽しんでるでしょ……!」
「はは。バレた?」
「当たり前でしょ! こんな風にあからさまなら流石にバレるよ!」
僕が困る事分かっててあえてそう言う雰囲気にして楽しんでる虎君は本当に意地悪だ。
できることなら言い返して虎君に仕返ししたいところなんだけど、絶対に口では勝てないって分かってるから言葉での仕返しは諦める。
けど、すんなり引き下がるのも悔しいから、力いっぱい虎君に抱き着いて細やかな反抗を試みてみる。
「苦しい苦しい。……ごめんって」
あ、これ全然苦しんでないよね? でも『苦しい』って言うってことは、僕の意図もお見通しってこと?
(あーあ。本当、全然虎君に敵わないんだから……)
5歳差って大きすぎるよ……。
反抗の手を緩めてばれないように小さく息を吐いて「どうせ子供っぽいって思ってるんでしょ」って不貞腐れてみる。虎君は否定の言葉を返してくれるって分かってるのにあえて口にしちゃうところがまさに子供だってことは分かってるんだけど。
「『子供っぽい』なんて思ってるわけないだろ?」
(ほら、ね?)
「やっぱり葵は可愛いなって思ってるよ」
「! 虎君!!」
よしよしって頭を撫でる手が優しいのは一緒。でも、なんでだろう? この撫で方はなんていうか……。
(これってペット扱いじゃない?)
「酷いよ! ちゃんと人として扱ってよ!」
「その言い方は傷つくぞ? まるで俺が葵のことを『ペット扱い』してるみたいな口ぶりじゃないか」
「今まさにしてたよね!?」
意地悪しないでよ!!
わざとらしい口調に僕が頬っぺたを膨らませて睨んだら、虎君は「ごめんごめん」って笑いながらまた髪を撫でてくる。
(あ、いつもと一緒だ)
怒ってたはずなのに、ついつい緩む頬っぺたに膨れっ面はおしまい。
優しい笑い顔に僕もつられて笑ってしまった。
「……葵、これだけは覚えておいて?」
「何?」
「周りにどう言われようが、どう思われようが、俺は葵を甘やかす事は止めないから。さっきは瑛大にそれを伝えただけだから、誤解しないでくれよ?」
俺は葵を傷つけるような真似は絶対にしないから。
そう真っすぐ見つめて伝えてくれる虎君の眼差しは優しい。けど、真剣さはいつも以上に伝わってくる。
またぶり返す落ち着かなさに、僕は俯いて虎君の視線から逃げてしまう。
でも、ちゃんと虎君の気持ちは届いてるから、頷いて返事をした。もう誤解しないからね? って。
「さ、掃除再開しようか? そろそろ瑛大も戻ってくるだろうし」
「! うん、そうだね」
騙す様に呼び出してこき使っておいて呼び出した当事者がサボってたら流石に瑛大も怒る気がする。
そう笑う虎君。僕は「それは大丈夫だよ」って笑い返しながらもう一度掃除機に手を伸ばす。
「瑛大にとって虎君は絶対的存在だし、何があっても『怒る』ことはないよ」
「『何があっても』は言い過ぎだろ?」
「言い過ぎじゃないよ。瑛大の『虎君大好き』オーラは僕ですら偶に負けちゃいそうになるもん」
「え?」
「でも僕は虎君の『弟』ナンバーワンの座を譲る気ないし、それを瑛大も分かってるから僕には容赦なく怒るんだよねぇ……」
だから僕がサボってたら絶対零度の目で見下ろされるに決まってるし、早く掃除再開しないと!
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