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特別な人
特別な人 第92話
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「えっと……、もしかしなくても俺、地雷踏んじゃった……?」
緊迫した空気を和ませようと空笑いを見せる瑛大だけど、すぐに怯んだその表情に虎君の表情が明るくない事を知る。
「ちょ、そんな怒んないでよっ……!」
「かわい子ぶんな。キモい」
「! そんなハッキリ言わなくてもいいだろっ。てか、顔怖いって!」
普段の瑛大からは想像もできない怯えっぷりに、僕は漸く我に返る。
我に返って、目の前にある虎君の背中に手を伸ばした。もしかしなくても虎君がこんな風に怒ってる理由は僕が関係してる気がしたから。
「虎君、僕は大丈夫だよ」
「葵が大丈夫でも、俺が大丈夫じゃない」
上着を引っ張って、こっちを向いてって促す。でも虎君は僅かに反応を返すだけで振り返ってはくれなかった。
「と、虎兄、葵が心配して―――」
「お前は黙ってろ」
「! はいっ……!」
瑛大は虎君の怒りを何とか宥めたいみたい。でも、口を開いたらすぐに虎君に睨まれたみたいで、またすぐに口を噤んだ。
「虎君、こっち向いて……?」
上着から手を離して今度は手を握る。そんなに怒らないで? って思いを込めて。
すると、きつく握られてた虎君の拳から力が抜けて、僕の手を握り返してくれた。
「虎君、僕は平気だから、ね?」
「……本当に?」
「うん。本当だよ」
問いかけに頷いたら、ゆっくりと僕を振り返ってくれる虎君。その表情は何処か頼りなくて、悲しそうだった。
「……どうしたの?」
僕を見つめる虎君の眼差しに、思わず手を伸ばして頬に触れる。
自分とは違う、体温。
虎君は辛そうに、でも笑って「変なこと考えてない?」って聞いてくる。
(『変な事』って何だろう?)
早く答えないとって思ってるのに、虎君の質問の意図が分からなくて何て答えたら正解か分からない。
でもそんな僕の戸惑いは虎君にはお見通しなのか、笑顔が悲しそうなものに変わった。
「俺に迷惑かけてるとか考えてない?」
「! そ、れは……」
「俺から離れないととか、考えてない……?」
なんでそこまで分かってしまったんだろう。
図星をさされて、『そんなことないよ』って応えないとダメなところなのに固まってしまう。
「……やっぱり、な」
「! ご、ごめんなさいっ」
明らかな落胆を含む声。それに反射的に謝ったら、虎君は僕の髪を撫でてくる。
虎君の手は相変わらず優しくて、『謝らないで』って言われてる気がした。
「……瑛大」
「! ハイ!!」
「どうやって落とし前つけてくれるんだ?」
さっきとは違う声色。もう怒ってないだろうその声に、瑛大の表情が明るくなった。
「葵、悪かったっ!」
「ううん。瑛大の言ったことは本当にその通りだと思うし、僕ももう少し一人で―――」
「いや! 葵は今のままでいいと思うぞ!」
自立しないとダメだって気づかせてくれてありがとう。
そう伝えようとしたら、瑛大は僕の声に声を被せてきて、そのままでいてくれって必死の形相。
(えぇ? どういうこと? さっきまで虎君に甘えすぎだって言ってたのに……)
たった数分で意見を変えられたら僕じゃなくても混乱すると思う。
「でもさっきは『甘えすぎだ』って―――」
「あれは! あれは、その、ほら、あれだ!」
「どれ?」
「えっと、その、なんだ。つまり、えーっと……」
はっきり言ってくれないと瑛大の言いたいこと分かんないよ?
そう首を傾げるも、瑛大は慌てふためいてどもってて全然言いたいことが伝わってこない。
緊迫した空気を和ませようと空笑いを見せる瑛大だけど、すぐに怯んだその表情に虎君の表情が明るくない事を知る。
「ちょ、そんな怒んないでよっ……!」
「かわい子ぶんな。キモい」
「! そんなハッキリ言わなくてもいいだろっ。てか、顔怖いって!」
普段の瑛大からは想像もできない怯えっぷりに、僕は漸く我に返る。
我に返って、目の前にある虎君の背中に手を伸ばした。もしかしなくても虎君がこんな風に怒ってる理由は僕が関係してる気がしたから。
「虎君、僕は大丈夫だよ」
「葵が大丈夫でも、俺が大丈夫じゃない」
上着を引っ張って、こっちを向いてって促す。でも虎君は僅かに反応を返すだけで振り返ってはくれなかった。
「と、虎兄、葵が心配して―――」
「お前は黙ってろ」
「! はいっ……!」
瑛大は虎君の怒りを何とか宥めたいみたい。でも、口を開いたらすぐに虎君に睨まれたみたいで、またすぐに口を噤んだ。
「虎君、こっち向いて……?」
上着から手を離して今度は手を握る。そんなに怒らないで? って思いを込めて。
すると、きつく握られてた虎君の拳から力が抜けて、僕の手を握り返してくれた。
「虎君、僕は平気だから、ね?」
「……本当に?」
「うん。本当だよ」
問いかけに頷いたら、ゆっくりと僕を振り返ってくれる虎君。その表情は何処か頼りなくて、悲しそうだった。
「……どうしたの?」
僕を見つめる虎君の眼差しに、思わず手を伸ばして頬に触れる。
自分とは違う、体温。
虎君は辛そうに、でも笑って「変なこと考えてない?」って聞いてくる。
(『変な事』って何だろう?)
早く答えないとって思ってるのに、虎君の質問の意図が分からなくて何て答えたら正解か分からない。
でもそんな僕の戸惑いは虎君にはお見通しなのか、笑顔が悲しそうなものに変わった。
「俺に迷惑かけてるとか考えてない?」
「! そ、れは……」
「俺から離れないととか、考えてない……?」
なんでそこまで分かってしまったんだろう。
図星をさされて、『そんなことないよ』って応えないとダメなところなのに固まってしまう。
「……やっぱり、な」
「! ご、ごめんなさいっ」
明らかな落胆を含む声。それに反射的に謝ったら、虎君は僕の髪を撫でてくる。
虎君の手は相変わらず優しくて、『謝らないで』って言われてる気がした。
「……瑛大」
「! ハイ!!」
「どうやって落とし前つけてくれるんだ?」
さっきとは違う声色。もう怒ってないだろうその声に、瑛大の表情が明るくなった。
「葵、悪かったっ!」
「ううん。瑛大の言ったことは本当にその通りだと思うし、僕ももう少し一人で―――」
「いや! 葵は今のままでいいと思うぞ!」
自立しないとダメだって気づかせてくれてありがとう。
そう伝えようとしたら、瑛大は僕の声に声を被せてきて、そのままでいてくれって必死の形相。
(えぇ? どういうこと? さっきまで虎君に甘えすぎだって言ってたのに……)
たった数分で意見を変えられたら僕じゃなくても混乱すると思う。
「でもさっきは『甘えすぎだ』って―――」
「あれは! あれは、その、ほら、あれだ!」
「どれ?」
「えっと、その、なんだ。つまり、えーっと……」
はっきり言ってくれないと瑛大の言いたいこと分かんないよ?
そう首を傾げるも、瑛大は慌てふためいてどもってて全然言いたいことが伝わってこない。
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