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特別な人
特別な人 第93話
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「瑛大は拗ねてるんだよ」
「「え?」」
狼狽えてる瑛大に眉を顰めてたんだけど、虎君の声に思わず振り返る。何故か瑛大も一緒に。
「そうだよな? 瑛大」
笑顔で応えを促す虎君。
すると瑛大はハッとしたように目を見開いて、そして「そう! そうそう!! そうなんだよ!!」って僕の肩を掴んできた。
「虎兄が葵ばっかり構うからつい頭にきてさ! 俺だって虎兄の『弟』なのに! って!!」
「ちょ、瑛大、痛い」
「だからさっきのはただの八つ当たりだから気にすんな! な!?」
力いっぱい掴まれた肩は痛いし、必死の形相で詰め寄られたら、怖い。
思わず後ずさる僕だけど、瑛大は後ずさった分詰め寄ってきて、『分かった』って言ってくれって目が訴えてた。
(なんだか分からないけど、言ってあげた方がよさそうだよね……?)
「わ、『分かった』、よ……?」
「本当に? 今まで通り虎兄に甘え―――、頼るか!?」
「えっと、でも自立した方が良いでしょ……?」
返答に表情を輝かせる瑛大だけど、これからは虎君に頼らないように頑張るって言ったら真っ青な顔をしてて、忙しそうだった。
「ダメだ! 自立なんていつでもできるし、甘えられるときに甘えとくべきだと思うぞ!?」
だからこれからも変わらずにいてくれ!!
そう懇願されて、本当、意味が分からない。
「でも―――」
「! 虎兄だってそう思うよな!?」
詰め寄ってくる瑛大の必死さに困惑しながらも、でも自立しないと……って言おうとした僕。
すると僕の言葉を遮って虎君に話を振る。
梟みたいに180度首を回す瑛大につられて僕も虎君を見たら、虎君は僕を見て笑った。
(って、自意識過剰だよね。『僕だけ』見てるなんて)
虎君の視界に瑛大は存在してないだなんて、僕の独占欲は常軌を逸してるって言われても仕方ない。
(あ。そっか。僕が虎君を独占してるからか)
その時、『瑛大が拗ねてる』って言葉がストンと落ちてきた。そして瑛大の悪態の理由も、納得できた。
(大好きな『お兄ちゃん』を僕が独占してるから、瑛大、僕に冷たかったんだ)
優しい虎君は一番手のかかる『弟』の僕につきっきり。それが羨ましくて堪らなかったんだろうな。
(なーんだ。瑛大も虎君に甘えたかったんだ!)
僕に『自立』しろって言ったのは、ただの『ヤキモチ』に違いない。
しっかり者の瑛大だけど、案外子供っぽくて可愛いところがあるんだって思ったら、嬉しくなった。
「瑛大、飲み物取ってきてくれるか?」
「え? 今?」
「そう。今。……嫌か?」
「! まさか! 行ってくる!!」
笑顔の虎君の言葉に忠犬さながらの聞き分けの良さを見せる瑛大は、大慌てで部屋を出て行ってしまう。
虎君がもう怒ってないって分かって浮かれてるのかな?
僕は瑛大が出て行った部屋のドアを振り返って、くすくすと笑った。
「葵」
「! 何?」
ついつい昔に戻ったみたいって懐かしんでたら、名前を呼ばれる。
振り返ったら虎君が手を伸ばしてて、『こっちのおいで』って促されてるみたいだ。
僕は引き寄せられるように踵を返すと、その手を取って虎君を見上げた。
「……自立するの、もう少し待ってくれる?」
「ああ。もちろん」
「絶対、……絶対、いつかはちゃんと自立するから、もう少しだけ」
ずっとじゃないから、お願い。
そう願ったら、虎君は僕の手を握り締めて「ずっとでもいいよ」って目じりを下げてくれた。
「言わなかったっけ? 葵を甘やかすのが俺の生きがいなんだって」
「! そんなこと言わないでよ。……甘えたくなるでしょ?」
虎君の優しさがくすぐったい。
言葉通り『ずっと』甘えられたら困るのは虎君だよ? ってはにかんだら、虎君から返ってくるのは「全然困らないよ」って笑い顔。
「「え?」」
狼狽えてる瑛大に眉を顰めてたんだけど、虎君の声に思わず振り返る。何故か瑛大も一緒に。
「そうだよな? 瑛大」
笑顔で応えを促す虎君。
すると瑛大はハッとしたように目を見開いて、そして「そう! そうそう!! そうなんだよ!!」って僕の肩を掴んできた。
「虎兄が葵ばっかり構うからつい頭にきてさ! 俺だって虎兄の『弟』なのに! って!!」
「ちょ、瑛大、痛い」
「だからさっきのはただの八つ当たりだから気にすんな! な!?」
力いっぱい掴まれた肩は痛いし、必死の形相で詰め寄られたら、怖い。
思わず後ずさる僕だけど、瑛大は後ずさった分詰め寄ってきて、『分かった』って言ってくれって目が訴えてた。
(なんだか分からないけど、言ってあげた方がよさそうだよね……?)
「わ、『分かった』、よ……?」
「本当に? 今まで通り虎兄に甘え―――、頼るか!?」
「えっと、でも自立した方が良いでしょ……?」
返答に表情を輝かせる瑛大だけど、これからは虎君に頼らないように頑張るって言ったら真っ青な顔をしてて、忙しそうだった。
「ダメだ! 自立なんていつでもできるし、甘えられるときに甘えとくべきだと思うぞ!?」
だからこれからも変わらずにいてくれ!!
そう懇願されて、本当、意味が分からない。
「でも―――」
「! 虎兄だってそう思うよな!?」
詰め寄ってくる瑛大の必死さに困惑しながらも、でも自立しないと……って言おうとした僕。
すると僕の言葉を遮って虎君に話を振る。
梟みたいに180度首を回す瑛大につられて僕も虎君を見たら、虎君は僕を見て笑った。
(って、自意識過剰だよね。『僕だけ』見てるなんて)
虎君の視界に瑛大は存在してないだなんて、僕の独占欲は常軌を逸してるって言われても仕方ない。
(あ。そっか。僕が虎君を独占してるからか)
その時、『瑛大が拗ねてる』って言葉がストンと落ちてきた。そして瑛大の悪態の理由も、納得できた。
(大好きな『お兄ちゃん』を僕が独占してるから、瑛大、僕に冷たかったんだ)
優しい虎君は一番手のかかる『弟』の僕につきっきり。それが羨ましくて堪らなかったんだろうな。
(なーんだ。瑛大も虎君に甘えたかったんだ!)
僕に『自立』しろって言ったのは、ただの『ヤキモチ』に違いない。
しっかり者の瑛大だけど、案外子供っぽくて可愛いところがあるんだって思ったら、嬉しくなった。
「瑛大、飲み物取ってきてくれるか?」
「え? 今?」
「そう。今。……嫌か?」
「! まさか! 行ってくる!!」
笑顔の虎君の言葉に忠犬さながらの聞き分けの良さを見せる瑛大は、大慌てで部屋を出て行ってしまう。
虎君がもう怒ってないって分かって浮かれてるのかな?
僕は瑛大が出て行った部屋のドアを振り返って、くすくすと笑った。
「葵」
「! 何?」
ついつい昔に戻ったみたいって懐かしんでたら、名前を呼ばれる。
振り返ったら虎君が手を伸ばしてて、『こっちのおいで』って促されてるみたいだ。
僕は引き寄せられるように踵を返すと、その手を取って虎君を見上げた。
「……自立するの、もう少し待ってくれる?」
「ああ。もちろん」
「絶対、……絶対、いつかはちゃんと自立するから、もう少しだけ」
ずっとじゃないから、お願い。
そう願ったら、虎君は僕の手を握り締めて「ずっとでもいいよ」って目じりを下げてくれた。
「言わなかったっけ? 葵を甘やかすのが俺の生きがいなんだって」
「! そんなこと言わないでよ。……甘えたくなるでしょ?」
虎君の優しさがくすぐったい。
言葉通り『ずっと』甘えられたら困るのは虎君だよ? ってはにかんだら、虎君から返ってくるのは「全然困らないよ」って笑い顔。
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