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特別な人
特別な人 第99話
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「なるほどな……」
怯えながらも説明を終える瑛大に虎君が零したのは深い溜め息で、言葉にしなくても『呆れてる』って伝わってきた。
「瑛大、お前は叔父さんに感謝しとけ」
「うっ……。ご、めん……」
息を吐ききった後、虎君が瑛大に向けて言い放った言葉の意味が僕には分からない。
でも瑛大は理解できたみたいで、しゅんと肩を落として小さくなっていた。
(やっぱり、やだな……。僕だって居るのに……)
二人しか分からない話、しないで欲しい。
疎外感を感じて気持ちが落ち込む上に心臓まで痛くなってきて、辛い。
楽しそうな虎君と瑛大を見たくなくて、気づいたら視線はつま先まで落ちていた。
「葵」
「! ……何?」
このまま楽しそうな会話が続いたら泣いちゃいそうだって思ってたら、僕の名前を呼ぶ虎君の声。
たったそれだけのことなのに気持ちが浮上するから、本当、僕って虎君が大好きなんだなぁ。
けど、放っておかれて凄く寂しかったのも本当だから、完全に浮上はできてない。だからすごく微妙な態度を返しちゃったってことは自覚してる。
(こういうところが子供っぽいって分かってるんだけどなぁ)
まだ中学生だし大人みたいに振る舞えるとは思ってないけど、それでも少しぐらい余裕を持ちたいところだ。
自分のダメな部分を目の当たりにしてまた落ち込みそうになる僕。
だけど次の瞬間、もやもやが全部吹き飛ばされた。
「! と、虎君……?」
それは本当に突然の事だった。
落としていた視線に突然虎君の手が入ってきて、そしてそのまま虎君は僕の腕を掴んで僕を引き寄せてきた。
あっという間の出来事で、気が付けば僕は虎君の腕の中にまた納まっていた。
「そんな顔しなくても大丈夫だから。……さっき瑛大に言ったのは『従兄弟でよかったな』ってことだから」
「! ……分かった……」
さっきまでとは全然違う声は僕の耳元に落とされる。その甘く優しい音に、心がムズムズしちゃった。
僕が疎外感を感じてるって察してフォローを入れてくれるだけじゃなく安心させてくれる虎君。
胸に居座っていたもやもやは跡形もなく消えていて、素直に頷きを返せた。
「葵、ありがとう」
「何が?」
「俺の為に怒ってくれたんだろ? 相手は瑛大なのに」
機嫌は直ったけど離れがたくて虎君にギュっとしがみついていたら、何故かお礼を言われてびっくりした。
でも、何に対する『ありがとう』か尋ねるために顔を上げたら、凄く嬉しそうな虎君と目が合って……。
「そ、そんなの当然でしょ? 虎君の事悪く言われたら誰が相手でも怒るよ!」
「桔梗相手でも?」
「もちろん!」
「茂さんや樹里斗さんでも?」
「関係ないよ。父さんと母さん相手でも怒るに決まってるでしょ?」
虎君を悪く言う人は誰であろうと許せない。だって、虎君は誰よりも優しいから。
たとえ瑛大が言ったように優しいが故の暴力性を持っていたとしても、虎君はその『暴力性』をむやみに振りかざすことはしないって僕は信じてる。
「信じてくれてありがとう、葵。……でも、葵も知ってるだろ? 茂さんが止めてくれたから、俺はまだ『優しい兄貴』でいてられるんだよ」
「それは違うよ! 父さんは助言しただけで選んだのは虎君だよ? 虎君が虎君の意思で選んだから、僕の自慢の『お兄ちゃん』なんだよ?」
自分は優しくないって言う虎君。僕はその言葉を否定した。
助言に耳を貸さない人は沢山いるし、激情に任せて行動する人も沢山いる。
でも、虎君はそうしなかった。怒りを抑えてくれた。どうしても許せないって言ってたのに……。
「それは―――。それは、葵が望んだから、だよ」
僕が怒りを抑えることを望んだから我慢したって言う虎君は、「俺は優しくないよ」って笑った。
その笑顔がとても悲しそうで、僕は手を伸ばしてその頬っぺたに触れた。
「虎君は優しいよ? だって僕の為に我慢してくれたんでしょ? ……優しくない人は誰かのために自分を抑えることなんてしないよ?」
「葵っ……」
自分の事を卑下しすぎだって笑ったら、虎君は僕を抱きしめてくる。
ぎゅっと力強く抱きしめられるのは嬉しいけど、でも虎君の胸に顔を埋めてたから、息苦しい。でも離れたくないから、『苦しい』って言いたくなかった……。
怯えながらも説明を終える瑛大に虎君が零したのは深い溜め息で、言葉にしなくても『呆れてる』って伝わってきた。
「瑛大、お前は叔父さんに感謝しとけ」
「うっ……。ご、めん……」
息を吐ききった後、虎君が瑛大に向けて言い放った言葉の意味が僕には分からない。
でも瑛大は理解できたみたいで、しゅんと肩を落として小さくなっていた。
(やっぱり、やだな……。僕だって居るのに……)
二人しか分からない話、しないで欲しい。
疎外感を感じて気持ちが落ち込む上に心臓まで痛くなってきて、辛い。
楽しそうな虎君と瑛大を見たくなくて、気づいたら視線はつま先まで落ちていた。
「葵」
「! ……何?」
このまま楽しそうな会話が続いたら泣いちゃいそうだって思ってたら、僕の名前を呼ぶ虎君の声。
たったそれだけのことなのに気持ちが浮上するから、本当、僕って虎君が大好きなんだなぁ。
けど、放っておかれて凄く寂しかったのも本当だから、完全に浮上はできてない。だからすごく微妙な態度を返しちゃったってことは自覚してる。
(こういうところが子供っぽいって分かってるんだけどなぁ)
まだ中学生だし大人みたいに振る舞えるとは思ってないけど、それでも少しぐらい余裕を持ちたいところだ。
自分のダメな部分を目の当たりにしてまた落ち込みそうになる僕。
だけど次の瞬間、もやもやが全部吹き飛ばされた。
「! と、虎君……?」
それは本当に突然の事だった。
落としていた視線に突然虎君の手が入ってきて、そしてそのまま虎君は僕の腕を掴んで僕を引き寄せてきた。
あっという間の出来事で、気が付けば僕は虎君の腕の中にまた納まっていた。
「そんな顔しなくても大丈夫だから。……さっき瑛大に言ったのは『従兄弟でよかったな』ってことだから」
「! ……分かった……」
さっきまでとは全然違う声は僕の耳元に落とされる。その甘く優しい音に、心がムズムズしちゃった。
僕が疎外感を感じてるって察してフォローを入れてくれるだけじゃなく安心させてくれる虎君。
胸に居座っていたもやもやは跡形もなく消えていて、素直に頷きを返せた。
「葵、ありがとう」
「何が?」
「俺の為に怒ってくれたんだろ? 相手は瑛大なのに」
機嫌は直ったけど離れがたくて虎君にギュっとしがみついていたら、何故かお礼を言われてびっくりした。
でも、何に対する『ありがとう』か尋ねるために顔を上げたら、凄く嬉しそうな虎君と目が合って……。
「そ、そんなの当然でしょ? 虎君の事悪く言われたら誰が相手でも怒るよ!」
「桔梗相手でも?」
「もちろん!」
「茂さんや樹里斗さんでも?」
「関係ないよ。父さんと母さん相手でも怒るに決まってるでしょ?」
虎君を悪く言う人は誰であろうと許せない。だって、虎君は誰よりも優しいから。
たとえ瑛大が言ったように優しいが故の暴力性を持っていたとしても、虎君はその『暴力性』をむやみに振りかざすことはしないって僕は信じてる。
「信じてくれてありがとう、葵。……でも、葵も知ってるだろ? 茂さんが止めてくれたから、俺はまだ『優しい兄貴』でいてられるんだよ」
「それは違うよ! 父さんは助言しただけで選んだのは虎君だよ? 虎君が虎君の意思で選んだから、僕の自慢の『お兄ちゃん』なんだよ?」
自分は優しくないって言う虎君。僕はその言葉を否定した。
助言に耳を貸さない人は沢山いるし、激情に任せて行動する人も沢山いる。
でも、虎君はそうしなかった。怒りを抑えてくれた。どうしても許せないって言ってたのに……。
「それは―――。それは、葵が望んだから、だよ」
僕が怒りを抑えることを望んだから我慢したって言う虎君は、「俺は優しくないよ」って笑った。
その笑顔がとても悲しそうで、僕は手を伸ばしてその頬っぺたに触れた。
「虎君は優しいよ? だって僕の為に我慢してくれたんでしょ? ……優しくない人は誰かのために自分を抑えることなんてしないよ?」
「葵っ……」
自分の事を卑下しすぎだって笑ったら、虎君は僕を抱きしめてくる。
ぎゅっと力強く抱きしめられるのは嬉しいけど、でも虎君の胸に顔を埋めてたから、息苦しい。でも離れたくないから、『苦しい』って言いたくなかった……。
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