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特別な人
特別な人 第117話
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僕にとって、瑛大も慶史もかけがえのない大切な友達。それは今でも変わらないし、これからも変わらないと思う。
でも、僕にはどうしても話すことのできない『秘密』がある。
その『秘密』を慶史とは共有しているのに瑛大とは共有できない理由は他でもなく、その『秘密』が僕のモノではないから。
だから僕は絶対に『秘密』を他者に語るわけにはいかない。たとえそれが家族や大切な友達であったとしても、絶対に喋るわけにはいかないし、喋りたくない。
そんな僕の想いを汲み取ってくれていた父さん達には感謝だし、追及しようとしてた茂斗達を止めてくれた虎君はやっぱり僕の一番の理解者だって思った。
そして、本当は知りたくて堪らなかったのにずっと我慢し続けてくれていた瑛大には申し訳なさを覚えた……。
(ごめん、瑛大……。でも、これだけはどうしても言えないんだ……)
もし僕が瑛大の立場だったら?
ふと考えてしまった『もしも』の話。
もし同じことを信じてた人にされたら、僕はどう感じるだろう……?
(どうしよう……。すごく、すごく悲しいし、辛い……)
頭に浮かんだのは、虎君の笑い顔。
虎君が僕以外の誰かと『秘密』を共有していたら、僕は瑛大のように耐え続けることができるのだろうか?
もしその相手が、僕が良く知る相手――たとえば茂斗だったらどうだろう?
(やだ……、絶対、やだ……)
たとえ『仲間外れ』じゃなくても、『理由』があったとしても、疎外感を覚えてしまうのは当然。
そしてその疎外感を抱えたまま何年もずっと傍にいるなんて、どう考えても無理だ。
(! だから瑛大、僕達から離れて行ったんだ……)
漸く、本当に漸く理解した。3年前、瑛大が僕と慶史から離れて行った『理由』を、今。
「そんな顔すんなよ」
「どう、しよ……僕、瑛大になんて言ったらいいの……? なんて謝ったら……」
「なんも言う必要ねぇーよ。……謝る必要もねぇー」
どれほど瑛大を苦しめていたか知って取り乱す僕に、茂斗は「落ち着け」って言いながら宥めてくれる。僕は何もしちゃダメだって。
友達を傷つけておいて、その理由を理解して、それなのにどうして何もしちゃダメなの?
せめて謝らないと……って僕が食い下がったら、茂斗は僕を窘めるように名前を呼んだ。
「『秘密』を打ち明けられるのか? もし無理なら、辛いかも知んねぇけど耐えろ。それが今お前にできる精一杯だ」
「で、でも……」
「『秘密』は言えない。でも謝らせて欲しい。――それはお前のエゴだ。……葵に謝られたら、瑛大は許さないとダメだろうが」
ああ、僕って本当、短慮だ。考え無しで愚かで、何処までも自分のことしか考えられない子供だ……。
茂斗の言葉が刺さって痛い。でも、これは僕が受け止めなくちゃいけない痛みだ。
「お前が『秘密』を打ち明けられる時に、瑛大に謝ればいい」
頭に乗せられた手。
僕は小さく頷くものの、茂斗の言葉の意味を、真意を理解して辛くなった。
(もしもその時が来たとして、瑛大は僕を許してくれるかな……)
もしかしたら、その時はもう手遅れになってるかもしれない。
瑛大は、僕の顔も見たくないと思ってるかもしれない。
でも、でも―――。
(それは僕が選んだ『未来』だから受け入れないと……)
想像するだけでどうしようもないほど悲しいけれど、僕だけ楽になるのはフェアじゃない。
瑛大を傷つけた分、僕もこの辛さを受け入れないと。
「あんまり思い詰めんなよ」
「うん……。分かってる……」
瑛大の事はなるようにしかならねぇーし、いざとなったら俺と虎がなんとかしてやるから。
そう言ってくれる茂斗に、僕は泣きそうになりながらも笑った。僕って愛されてるね。って。
「今頃気づいたのか? お前は昔から俺らの『お姫様』だっただろ?」
「そうだね。本当、その通りだよ……」
茶化す茂斗の言葉に、何とか朗らかな声を返す。
けど、気を抜いたら泣きそうだ。
「……虎、呼ぶか?」
「いい。……虎君も今日は疲れただろうし、ゆっくり休んで欲しいから」
瑛大を寮まで送った後、もう一度家に寄ってもらおうかと言ってくれる茂斗。
その申し出に心が揺れたけど、これは僕が一人で乗り越えるべき事だからと遠慮した。瑛大へのせめてもの償いのつもりで。
(でも本当は、虎君に会いたい……)
虎君に会って、不安を聞いてもらって、『大丈夫だよ』って抱きしめて背中を擦って欲しい。
自分だけ楽になっちゃダメだって分かっているのに気を抜くとこうやって虎君を求める自分がいて、僕はいつまで『お姫様』なんだろうって悲しくなった。
でも、僕にはどうしても話すことのできない『秘密』がある。
その『秘密』を慶史とは共有しているのに瑛大とは共有できない理由は他でもなく、その『秘密』が僕のモノではないから。
だから僕は絶対に『秘密』を他者に語るわけにはいかない。たとえそれが家族や大切な友達であったとしても、絶対に喋るわけにはいかないし、喋りたくない。
そんな僕の想いを汲み取ってくれていた父さん達には感謝だし、追及しようとしてた茂斗達を止めてくれた虎君はやっぱり僕の一番の理解者だって思った。
そして、本当は知りたくて堪らなかったのにずっと我慢し続けてくれていた瑛大には申し訳なさを覚えた……。
(ごめん、瑛大……。でも、これだけはどうしても言えないんだ……)
もし僕が瑛大の立場だったら?
ふと考えてしまった『もしも』の話。
もし同じことを信じてた人にされたら、僕はどう感じるだろう……?
(どうしよう……。すごく、すごく悲しいし、辛い……)
頭に浮かんだのは、虎君の笑い顔。
虎君が僕以外の誰かと『秘密』を共有していたら、僕は瑛大のように耐え続けることができるのだろうか?
もしその相手が、僕が良く知る相手――たとえば茂斗だったらどうだろう?
(やだ……、絶対、やだ……)
たとえ『仲間外れ』じゃなくても、『理由』があったとしても、疎外感を覚えてしまうのは当然。
そしてその疎外感を抱えたまま何年もずっと傍にいるなんて、どう考えても無理だ。
(! だから瑛大、僕達から離れて行ったんだ……)
漸く、本当に漸く理解した。3年前、瑛大が僕と慶史から離れて行った『理由』を、今。
「そんな顔すんなよ」
「どう、しよ……僕、瑛大になんて言ったらいいの……? なんて謝ったら……」
「なんも言う必要ねぇーよ。……謝る必要もねぇー」
どれほど瑛大を苦しめていたか知って取り乱す僕に、茂斗は「落ち着け」って言いながら宥めてくれる。僕は何もしちゃダメだって。
友達を傷つけておいて、その理由を理解して、それなのにどうして何もしちゃダメなの?
せめて謝らないと……って僕が食い下がったら、茂斗は僕を窘めるように名前を呼んだ。
「『秘密』を打ち明けられるのか? もし無理なら、辛いかも知んねぇけど耐えろ。それが今お前にできる精一杯だ」
「で、でも……」
「『秘密』は言えない。でも謝らせて欲しい。――それはお前のエゴだ。……葵に謝られたら、瑛大は許さないとダメだろうが」
ああ、僕って本当、短慮だ。考え無しで愚かで、何処までも自分のことしか考えられない子供だ……。
茂斗の言葉が刺さって痛い。でも、これは僕が受け止めなくちゃいけない痛みだ。
「お前が『秘密』を打ち明けられる時に、瑛大に謝ればいい」
頭に乗せられた手。
僕は小さく頷くものの、茂斗の言葉の意味を、真意を理解して辛くなった。
(もしもその時が来たとして、瑛大は僕を許してくれるかな……)
もしかしたら、その時はもう手遅れになってるかもしれない。
瑛大は、僕の顔も見たくないと思ってるかもしれない。
でも、でも―――。
(それは僕が選んだ『未来』だから受け入れないと……)
想像するだけでどうしようもないほど悲しいけれど、僕だけ楽になるのはフェアじゃない。
瑛大を傷つけた分、僕もこの辛さを受け入れないと。
「あんまり思い詰めんなよ」
「うん……。分かってる……」
瑛大の事はなるようにしかならねぇーし、いざとなったら俺と虎がなんとかしてやるから。
そう言ってくれる茂斗に、僕は泣きそうになりながらも笑った。僕って愛されてるね。って。
「今頃気づいたのか? お前は昔から俺らの『お姫様』だっただろ?」
「そうだね。本当、その通りだよ……」
茶化す茂斗の言葉に、何とか朗らかな声を返す。
けど、気を抜いたら泣きそうだ。
「……虎、呼ぶか?」
「いい。……虎君も今日は疲れただろうし、ゆっくり休んで欲しいから」
瑛大を寮まで送った後、もう一度家に寄ってもらおうかと言ってくれる茂斗。
その申し出に心が揺れたけど、これは僕が一人で乗り越えるべき事だからと遠慮した。瑛大へのせめてもの償いのつもりで。
(でも本当は、虎君に会いたい……)
虎君に会って、不安を聞いてもらって、『大丈夫だよ』って抱きしめて背中を擦って欲しい。
自分だけ楽になっちゃダメだって分かっているのに気を抜くとこうやって虎君を求める自分がいて、僕はいつまで『お姫様』なんだろうって悲しくなった。
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