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特別な人
特別な人 第125話
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『葵、気持ちいい?』
『わ、かんない……』
僕に触れながらまたキスをくれる虎君。
何故か鮮明にならないその唇の感触に焦れる想いが胸に膨らんで苦しい。
でも、ありのままを伝えるのは気恥ずかしくて、裏腹な言葉しか返せない。
『分かんない、か』
『とらくん……?』
僕を見下ろして薄く笑うその姿に、おなかの奥がぎゅってなる。
初めて覚える感覚。ムズムズするんだけど、でも痒いとかそういう感じじゃなくて、ただただ無性に虎君に触れて欲しいって欲が湧き上がってくる。
(なに、これ……。なんだか身体、おかしい……)
心臓の鼓動がさっきよりもずっとずっと早くなって、息苦しい。
おなかの奥の違和感ももっともっと鮮明になって、自制ができない。
『な、やだ、虎君、怖いっ』
『葵?』
『触っちゃだめぇ』
僕に触れる虎君の手は、さっきまでと変わらず優しい。
それなのに僕の身体はさっきまでとは全然違って、もっと鮮明な熱を求めてるみたいだった。
下腹部から背筋を伝って頭に上がってくる、違和感。僕はこの違和感が怖くて、虎君に助けを求めた。
なんとなくだけど、虎君の手が身体から離れたら違和感もなくなる気がしたから、触らないで欲しいって訴える僕。
でも虎君は僕を見下ろしまま、また笑った。
いつもの優しい笑顔の中に、僕の知らない男の人の眼差し。
それは虎君だけど虎君じゃないみたいで、怖い。
『や、だ。やだぁ……。虎君がいいよぉ……』
今傍にいて欲しいのは、僕の知ってる虎君。
初めての感覚に戸惑っている今の僕には、虎君の新たな一面を受け止める余裕なんてなかった。
すると虎君は『ごめん』って笑う。細められた目はいつもの優しい色を含んでいて、僕は堪らず虎君に抱き着いた。抱き着いて、虎君からのキスが欲しいってねだってた……。
『愛してるよ、葵……』
『僕も……、僕も虎君が大好き……』
望むままに唇に降ってくるキス。でもやっぱり、そのぬくもりも感触も鮮明にならない……。
唯一鮮明なものは、自分の身体じゃないような感覚を覚える下腹部の疼き。
触らないでとお願いしたから、虎君の手は僕に触れていない。
おかげで駆け上る違和感は無くなったけれど、でも何処にも逃げられない重くて熱い何かが下腹部の辺りをグルグル回ってる気がした。
『気になる?』
『! うん……。おなか、すごく変なの……』
額を小突き合わせて尋ねてくる虎君には全部お見通しなのかな?
素直に頷いて、知らない感覚が怖いと伝える僕。
すると虎君は一層優しく笑って僕の耳に唇を寄せると、『楽にしてあげるよ』って囁きを落とした。
耳にかかる吐息交じりの声は、背筋を這って疼きを覚えてる箇所へ降りていく。
それに僕が身体を震わせていたら、虎君はそれを知りながらまた僕に触れてきた。
撫でるように僕の身体に触れる虎君。
まるで身体のラインを確かめるように動くその指に、おさまっていたはずの違和感が暴れだした。
『! とらくっ―――、やっ、だめぇっ……』
下腹部から下の身体の感覚がなくなったような錯覚。
そして、電流が背骨を伝って身体を這いあがってくるような違和感。
僕はいつの間にか掴んでいた虎君の腕を強く握り締めて、それらの感覚に抗おうとした。
けど……。
『我慢しないでいいよ。もうイっていいから……』
僕の耳元に落とされた低い声はさっきの囁きよりも鮮明で、抗おうと必死だった僕の意識を途切れさせてしまう。
虎君の声は僕の意識を遮っただけじゃなく、行き場を求めながら大きく大きく育った違和感に追い打ちをかけた。
そして次の瞬間、
『! っ―――、あぁっ……!』
思考も視界も白んで、何も分からなくなってしまった。
『わ、かんない……』
僕に触れながらまたキスをくれる虎君。
何故か鮮明にならないその唇の感触に焦れる想いが胸に膨らんで苦しい。
でも、ありのままを伝えるのは気恥ずかしくて、裏腹な言葉しか返せない。
『分かんない、か』
『とらくん……?』
僕を見下ろして薄く笑うその姿に、おなかの奥がぎゅってなる。
初めて覚える感覚。ムズムズするんだけど、でも痒いとかそういう感じじゃなくて、ただただ無性に虎君に触れて欲しいって欲が湧き上がってくる。
(なに、これ……。なんだか身体、おかしい……)
心臓の鼓動がさっきよりもずっとずっと早くなって、息苦しい。
おなかの奥の違和感ももっともっと鮮明になって、自制ができない。
『な、やだ、虎君、怖いっ』
『葵?』
『触っちゃだめぇ』
僕に触れる虎君の手は、さっきまでと変わらず優しい。
それなのに僕の身体はさっきまでとは全然違って、もっと鮮明な熱を求めてるみたいだった。
下腹部から背筋を伝って頭に上がってくる、違和感。僕はこの違和感が怖くて、虎君に助けを求めた。
なんとなくだけど、虎君の手が身体から離れたら違和感もなくなる気がしたから、触らないで欲しいって訴える僕。
でも虎君は僕を見下ろしまま、また笑った。
いつもの優しい笑顔の中に、僕の知らない男の人の眼差し。
それは虎君だけど虎君じゃないみたいで、怖い。
『や、だ。やだぁ……。虎君がいいよぉ……』
今傍にいて欲しいのは、僕の知ってる虎君。
初めての感覚に戸惑っている今の僕には、虎君の新たな一面を受け止める余裕なんてなかった。
すると虎君は『ごめん』って笑う。細められた目はいつもの優しい色を含んでいて、僕は堪らず虎君に抱き着いた。抱き着いて、虎君からのキスが欲しいってねだってた……。
『愛してるよ、葵……』
『僕も……、僕も虎君が大好き……』
望むままに唇に降ってくるキス。でもやっぱり、そのぬくもりも感触も鮮明にならない……。
唯一鮮明なものは、自分の身体じゃないような感覚を覚える下腹部の疼き。
触らないでとお願いしたから、虎君の手は僕に触れていない。
おかげで駆け上る違和感は無くなったけれど、でも何処にも逃げられない重くて熱い何かが下腹部の辺りをグルグル回ってる気がした。
『気になる?』
『! うん……。おなか、すごく変なの……』
額を小突き合わせて尋ねてくる虎君には全部お見通しなのかな?
素直に頷いて、知らない感覚が怖いと伝える僕。
すると虎君は一層優しく笑って僕の耳に唇を寄せると、『楽にしてあげるよ』って囁きを落とした。
耳にかかる吐息交じりの声は、背筋を這って疼きを覚えてる箇所へ降りていく。
それに僕が身体を震わせていたら、虎君はそれを知りながらまた僕に触れてきた。
撫でるように僕の身体に触れる虎君。
まるで身体のラインを確かめるように動くその指に、おさまっていたはずの違和感が暴れだした。
『! とらくっ―――、やっ、だめぇっ……』
下腹部から下の身体の感覚がなくなったような錯覚。
そして、電流が背骨を伝って身体を這いあがってくるような違和感。
僕はいつの間にか掴んでいた虎君の腕を強く握り締めて、それらの感覚に抗おうとした。
けど……。
『我慢しないでいいよ。もうイっていいから……』
僕の耳元に落とされた低い声はさっきの囁きよりも鮮明で、抗おうと必死だった僕の意識を途切れさせてしまう。
虎君の声は僕の意識を遮っただけじゃなく、行き場を求めながら大きく大きく育った違和感に追い打ちをかけた。
そして次の瞬間、
『! っ―――、あぁっ……!』
思考も視界も白んで、何も分からなくなってしまった。
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