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特別な人
特別な人 第127話
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冷静になった思考に僕が考えるのは、今から何をするべきか。
僕は顔を上げて枕元に転がった携帯に手を伸ばすと、今何時なのか確認する。
視界が利くといってもまだ部屋は暗いし、きっと外だってそうだ。
夜明け前ということはわかっているけど、後どれぐらい時間があるか把握しておかないと部屋を出るに出れなくなってしまう。
(3時半、か……。この時間なら、みんなまだ寝てるし、起きてこないよね……?)
ディスプレイを灯して画面に表示される時刻に安心した僕は、 早く証拠を隠滅しないとって起き上がってベッドから降りた。
動きに合わせて肌にくっつく冷たさに腰が引けるけど、洗面所までは我慢しないと。
物音を立てないように、足音も立てないように、僕は忍び足で歩く。
ドアの開閉も音が響かないように注意して、階下を目指して息も潜めた。
時折、廊下や階段が軋む音を響かせるから、その度に心臓をドキドキさせて辺りをうかがった。
早くこの下着を何とかしたいって焦る。でも、焦って大きな音を立てたらみんなが起きちゃうから、逸る心を押し殺して慎重に歩いた。
(夜明け前でよかった)
階段を一段一段降りながら、目が覚めたのが真夜中だったことを感謝した。これが不幸中の幸いってことなんだろうなって。
もう少し遅かったら、誰かは目を覚ましていただろう。その場合、僕がどんなに取り繕っても怪しまれるに決まってる。僕は朝がすごく弱いんだから。
(母さん達なら『葵が早起きするなんて!』って騒いで体調とか心配するだろうし、そうなったら絶対バレちゃうもん)
大切な家族に心配をかけたくないから、そうなった場合僕は自分で全部話しちゃうってわかってる。それがどんなに恥ずかしくても、きっと。
となるとその後どうなるかなんて、想像するまでもない。恥ずかしがる僕を他所に、みんな僕の成長を大喜びして騒ぐに決まってる。
『今夜はお赤飯ね!』とか満面の笑顔で言ってくるだろう母さんを思い浮かべるところまで想像して、僕は真顔になる。
(父さんとか茂斗なら平気だけど、母さん達には絶対知られたくない)
同性なら、恥ずかしいけどまだ平気。必要ならちゃんと話すこともできる気がする。
でも、異性である母さんや姉さんには絶対に秘密にしておきたい。目の前で青ざめた顔で心配されない限り、問い詰められても話したくない。
(けど、これが普通だよね? そもそも話せるならこんなコソコソしないし)
悪いことをしているわけじゃないけど悪いことをしてる気持ちになるのはどうしてだろう?
僕はなるべく階段を軋ませることがないよう気を付けて一歩一歩慎重に下に降りながら、早くバスルームへ行きたいと気持ちを焦らせた。
でも、後数段で階段を降りきると思って一瞬気持ちを緩ませた僕が顔を上げた時、そこには僕の表情を凍りつかせるイベントが待っていた。
「ひ、陽琥さん……」
そう。階段を降りきった先にあるリビングへのドアの前に、まだ眠っているはずの陽琥さんがたっていた。
誰も起きていないと安心しきっていた頭は真っ白になって、僕は数秒間固まってしまった。
どうして硬直したのが『数秒』だけだったか。それは簡単な理由で、陽琥さんが動いたから。
「こんな時間にどうした?」
近づいてくる陽琥さんは、眠れないのか? って心配そうな顔をする。
その声と動きに僕は我に返ると、反射的に「そんな感じ」って空笑いを返した。
「大丈夫か?」
「だ、大丈夫。全然大丈夫。でも陽琥さんこそ、どうしたの? 早起きしすぎじゃない?」
頭は全然働かないし、冷静でもない。でも、階段でお喋りするのはダメだって判断はできた。
僕は足早に階段を降りきると、そのまま陽琥さんの隣を通りすぎてリビングへと逃げた。
(ど、どうしよう……。陽琥さんがいるとか、想定外すぎるよっ)
ついさっきまで『同性だったら話せるかも』って思ってたのはどこの誰だったのか。
僕は正直に話すどころか必死に誤魔化す方法を考えていた。
「早起きもなにも俺は寝てないからな」
「そ、そうなの?」
「ああ。犯罪者は夜の方が活動的なんだ。連中からお前達を守るのが俺の仕事なんだから当然だろう」
起きている理由を教えてくれる陽琥さんには申し訳ないけど、今の僕にはその話を聞いていても全然理解できなかった。
極力不自然じゃないように「大変だね」って言葉を返すのが精一杯の相槌だった。
「? 葵?」
打開策を考えていた僕に延びてくる、陽琥さんの手。
その手を拒絶したことなんて今まで一度もなかったのに、今の自分の状況が『いつも通り』を奪ってしまう。
「! ご、ごめんなさいっ!」
不快感を覚える下肢を知られるのが怖くて、恥ずかしくて、気がつけば僕は陽琥さんの手を振り払っていた。
もちろんすぐに我に返ったし、『しまった』って後悔もした。
らしくない態度にびっくりしてる陽琥さんの視線は僕に釘付けで、その目から『秘密』を隠すように背を向けると僕は自分の悪態を謝った。
僕は顔を上げて枕元に転がった携帯に手を伸ばすと、今何時なのか確認する。
視界が利くといってもまだ部屋は暗いし、きっと外だってそうだ。
夜明け前ということはわかっているけど、後どれぐらい時間があるか把握しておかないと部屋を出るに出れなくなってしまう。
(3時半、か……。この時間なら、みんなまだ寝てるし、起きてこないよね……?)
ディスプレイを灯して画面に表示される時刻に安心した僕は、 早く証拠を隠滅しないとって起き上がってベッドから降りた。
動きに合わせて肌にくっつく冷たさに腰が引けるけど、洗面所までは我慢しないと。
物音を立てないように、足音も立てないように、僕は忍び足で歩く。
ドアの開閉も音が響かないように注意して、階下を目指して息も潜めた。
時折、廊下や階段が軋む音を響かせるから、その度に心臓をドキドキさせて辺りをうかがった。
早くこの下着を何とかしたいって焦る。でも、焦って大きな音を立てたらみんなが起きちゃうから、逸る心を押し殺して慎重に歩いた。
(夜明け前でよかった)
階段を一段一段降りながら、目が覚めたのが真夜中だったことを感謝した。これが不幸中の幸いってことなんだろうなって。
もう少し遅かったら、誰かは目を覚ましていただろう。その場合、僕がどんなに取り繕っても怪しまれるに決まってる。僕は朝がすごく弱いんだから。
(母さん達なら『葵が早起きするなんて!』って騒いで体調とか心配するだろうし、そうなったら絶対バレちゃうもん)
大切な家族に心配をかけたくないから、そうなった場合僕は自分で全部話しちゃうってわかってる。それがどんなに恥ずかしくても、きっと。
となるとその後どうなるかなんて、想像するまでもない。恥ずかしがる僕を他所に、みんな僕の成長を大喜びして騒ぐに決まってる。
『今夜はお赤飯ね!』とか満面の笑顔で言ってくるだろう母さんを思い浮かべるところまで想像して、僕は真顔になる。
(父さんとか茂斗なら平気だけど、母さん達には絶対知られたくない)
同性なら、恥ずかしいけどまだ平気。必要ならちゃんと話すこともできる気がする。
でも、異性である母さんや姉さんには絶対に秘密にしておきたい。目の前で青ざめた顔で心配されない限り、問い詰められても話したくない。
(けど、これが普通だよね? そもそも話せるならこんなコソコソしないし)
悪いことをしているわけじゃないけど悪いことをしてる気持ちになるのはどうしてだろう?
僕はなるべく階段を軋ませることがないよう気を付けて一歩一歩慎重に下に降りながら、早くバスルームへ行きたいと気持ちを焦らせた。
でも、後数段で階段を降りきると思って一瞬気持ちを緩ませた僕が顔を上げた時、そこには僕の表情を凍りつかせるイベントが待っていた。
「ひ、陽琥さん……」
そう。階段を降りきった先にあるリビングへのドアの前に、まだ眠っているはずの陽琥さんがたっていた。
誰も起きていないと安心しきっていた頭は真っ白になって、僕は数秒間固まってしまった。
どうして硬直したのが『数秒』だけだったか。それは簡単な理由で、陽琥さんが動いたから。
「こんな時間にどうした?」
近づいてくる陽琥さんは、眠れないのか? って心配そうな顔をする。
その声と動きに僕は我に返ると、反射的に「そんな感じ」って空笑いを返した。
「大丈夫か?」
「だ、大丈夫。全然大丈夫。でも陽琥さんこそ、どうしたの? 早起きしすぎじゃない?」
頭は全然働かないし、冷静でもない。でも、階段でお喋りするのはダメだって判断はできた。
僕は足早に階段を降りきると、そのまま陽琥さんの隣を通りすぎてリビングへと逃げた。
(ど、どうしよう……。陽琥さんがいるとか、想定外すぎるよっ)
ついさっきまで『同性だったら話せるかも』って思ってたのはどこの誰だったのか。
僕は正直に話すどころか必死に誤魔化す方法を考えていた。
「早起きもなにも俺は寝てないからな」
「そ、そうなの?」
「ああ。犯罪者は夜の方が活動的なんだ。連中からお前達を守るのが俺の仕事なんだから当然だろう」
起きている理由を教えてくれる陽琥さんには申し訳ないけど、今の僕にはその話を聞いていても全然理解できなかった。
極力不自然じゃないように「大変だね」って言葉を返すのが精一杯の相槌だった。
「? 葵?」
打開策を考えていた僕に延びてくる、陽琥さんの手。
その手を拒絶したことなんて今まで一度もなかったのに、今の自分の状況が『いつも通り』を奪ってしまう。
「! ご、ごめんなさいっ!」
不快感を覚える下肢を知られるのが怖くて、恥ずかしくて、気がつけば僕は陽琥さんの手を振り払っていた。
もちろんすぐに我に返ったし、『しまった』って後悔もした。
らしくない態度にびっくりしてる陽琥さんの視線は僕に釘付けで、その目から『秘密』を隠すように背を向けると僕は自分の悪態を謝った。
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