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特別な人
特別な人 第182話
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「茂斗、知ってたの……?」
茂斗が何か喋ってる事は分かったけど、何を喋っているかは理解できない。
頭をグルグル回るのは羞恥と困惑と怒りで、僕は真相を確かめずにはいられなかった。
「え?」
「虎君と姉さんのこと、茂斗は知ってたの?」
身体を起こして詰め寄る僕に、茂斗はどうしたんだと戸惑いを見せる。
落ち着けと宥めながら僕の問いかけが何に対してのものか探るように「姉貴と虎のことって?」と尋ねてくる。
はぐらかされているのかと疑心暗鬼になる僕。
でも茂斗は本当に心当たりがないのか、「今関係あることか?」なんて更に尋ねてきた。
(あれ……? 茂斗、本当に知らないの……?)
知っていたら、姉さんと虎君の間にある『何か』が僕が泣いている理由だとすぐに結びつくはず。
でも茂斗は全く分からないと眉を顰めていて、点と点が線で繋がっているようには思えなかった。
「葵、何の話だよ? 姉貴と虎が何かあるのか? まさか二人がすげぇ喧嘩でもしたのか? それで怒ってるのか?」
茂斗は自分が考え付く僕の大泣きの理由を口にする。
いつもいつも顔を合わせる度に喧嘩している虎君と姉さん。僕はそんな二人に毎回仲良くして欲しいと訴えていた。
だから茂斗が僕が機嫌を損ねている理由だと勘違いしても無理はない。
僕はそれが理由だったらどんなに良かったかと泣き笑い。
「でも姉貴たちが関係あるんだな?」
僕の肩を掴む茂斗の手には力が篭っていて、痛い。
顔を上げれば険しい顔をした茂斗と目が合って気まずかった。
「し、げと……?」
「マジで何があった? 事と次第によっちゃいくら姉貴でも許さねーぞ、俺は」
何があっても俺は葵の味方だ。
そう言ってくれる茂斗の言葉は、たとえ嘘でも僕の心を軽くしてくれる。
茂斗が姉さんに頭が上がらないって僕は知ってるよ?
でも、それでも姉さんを許さないと言ってくれた双子の片割れの想いは今の僕には何よりも暖かくて、またポロポロと涙が零れてきた。
「あああ、泣くなよっ……! 頼むから、俺の目の前で泣かないでくれっ……」
慌てて僕の涙を服の袖で拭いてくる茂斗に、僕は何度も何度も謝った。
心配かけてごめん。姉さんを疑わせてごめん。と。
「だから謝んなって。……虎はともかく、姉貴は自分が関わってるとか思ってもいねぇーぞ。こんなに葵のこと泣かせてるのに、虎が何かしたんだろうって思ってる程度だぞ。絶対」
「はは……。だよね……」
僕が部屋に鍵をかけて閉じこもったと茂斗に助けを求めたのは虎君。
姉さんはそんな虎君に対して僕に何をしたんだと喰ってかかっていたらしい。
茂斗は、自覚無く弟を傷つけるなんて姉貴じゃねぇ、なんて言ってるし、誤解を解かないとこの後間違いなく姉さんに対して怒りをぶつけちゃう気がする。
「心配かけてごめんね、茂斗。でも、……でも、虎君も姉さんも悪くないから、怒らないであげて……」
「は? そんな大泣きしといて何言ってんだよ?」
なんで庇うんだって詰め寄ってくる茂斗は理解できないって顔してた。
故意じゃないにしろ傷つけられたのならしっかりそれを伝えるべきだ。
そう口調を強める茂斗。僕はそれにそうじゃないんだと首を振った。
(虎君も姉さんも悪くない。もし誰かを悪いと言わなくちゃならないなら、それはきっと、僕だ……)
僕が虎君を好きになっていなかったのなら、僕が虎君の想いを理解していたのなら、こんなことにはならなかったはず。
僕が虎君を好きになってしまったから、僕が虎君の想いを知らなかったから、虎君に焦がれ、姉さんを妬んで塞ぎ込んでしまっている……。
これは全部、僕のせい……。
「葵?」
黙り込む僕は俯いて言葉を探す。
でも、出てくる言葉出てくる言葉全部、喉につっかえて出てこない。
「……ごめん、茂斗……」
やっぱりまだ虎君の想いを口にすることはできない。
言葉に出してしまったら、僕はもう事実と向き合ってこの想いを諦める努力をしなければならないから……。
(虎君、大好きだよ……。本当に、……本当に大好きだよ……)
だからもう少しだけ好きでいさせて……。
茂斗が何か喋ってる事は分かったけど、何を喋っているかは理解できない。
頭をグルグル回るのは羞恥と困惑と怒りで、僕は真相を確かめずにはいられなかった。
「え?」
「虎君と姉さんのこと、茂斗は知ってたの?」
身体を起こして詰め寄る僕に、茂斗はどうしたんだと戸惑いを見せる。
落ち着けと宥めながら僕の問いかけが何に対してのものか探るように「姉貴と虎のことって?」と尋ねてくる。
はぐらかされているのかと疑心暗鬼になる僕。
でも茂斗は本当に心当たりがないのか、「今関係あることか?」なんて更に尋ねてきた。
(あれ……? 茂斗、本当に知らないの……?)
知っていたら、姉さんと虎君の間にある『何か』が僕が泣いている理由だとすぐに結びつくはず。
でも茂斗は全く分からないと眉を顰めていて、点と点が線で繋がっているようには思えなかった。
「葵、何の話だよ? 姉貴と虎が何かあるのか? まさか二人がすげぇ喧嘩でもしたのか? それで怒ってるのか?」
茂斗は自分が考え付く僕の大泣きの理由を口にする。
いつもいつも顔を合わせる度に喧嘩している虎君と姉さん。僕はそんな二人に毎回仲良くして欲しいと訴えていた。
だから茂斗が僕が機嫌を損ねている理由だと勘違いしても無理はない。
僕はそれが理由だったらどんなに良かったかと泣き笑い。
「でも姉貴たちが関係あるんだな?」
僕の肩を掴む茂斗の手には力が篭っていて、痛い。
顔を上げれば険しい顔をした茂斗と目が合って気まずかった。
「し、げと……?」
「マジで何があった? 事と次第によっちゃいくら姉貴でも許さねーぞ、俺は」
何があっても俺は葵の味方だ。
そう言ってくれる茂斗の言葉は、たとえ嘘でも僕の心を軽くしてくれる。
茂斗が姉さんに頭が上がらないって僕は知ってるよ?
でも、それでも姉さんを許さないと言ってくれた双子の片割れの想いは今の僕には何よりも暖かくて、またポロポロと涙が零れてきた。
「あああ、泣くなよっ……! 頼むから、俺の目の前で泣かないでくれっ……」
慌てて僕の涙を服の袖で拭いてくる茂斗に、僕は何度も何度も謝った。
心配かけてごめん。姉さんを疑わせてごめん。と。
「だから謝んなって。……虎はともかく、姉貴は自分が関わってるとか思ってもいねぇーぞ。こんなに葵のこと泣かせてるのに、虎が何かしたんだろうって思ってる程度だぞ。絶対」
「はは……。だよね……」
僕が部屋に鍵をかけて閉じこもったと茂斗に助けを求めたのは虎君。
姉さんはそんな虎君に対して僕に何をしたんだと喰ってかかっていたらしい。
茂斗は、自覚無く弟を傷つけるなんて姉貴じゃねぇ、なんて言ってるし、誤解を解かないとこの後間違いなく姉さんに対して怒りをぶつけちゃう気がする。
「心配かけてごめんね、茂斗。でも、……でも、虎君も姉さんも悪くないから、怒らないであげて……」
「は? そんな大泣きしといて何言ってんだよ?」
なんで庇うんだって詰め寄ってくる茂斗は理解できないって顔してた。
故意じゃないにしろ傷つけられたのならしっかりそれを伝えるべきだ。
そう口調を強める茂斗。僕はそれにそうじゃないんだと首を振った。
(虎君も姉さんも悪くない。もし誰かを悪いと言わなくちゃならないなら、それはきっと、僕だ……)
僕が虎君を好きになっていなかったのなら、僕が虎君の想いを理解していたのなら、こんなことにはならなかったはず。
僕が虎君を好きになってしまったから、僕が虎君の想いを知らなかったから、虎君に焦がれ、姉さんを妬んで塞ぎ込んでしまっている……。
これは全部、僕のせい……。
「葵?」
黙り込む僕は俯いて言葉を探す。
でも、出てくる言葉出てくる言葉全部、喉につっかえて出てこない。
「……ごめん、茂斗……」
やっぱりまだ虎君の想いを口にすることはできない。
言葉に出してしまったら、僕はもう事実と向き合ってこの想いを諦める努力をしなければならないから……。
(虎君、大好きだよ……。本当に、……本当に大好きだよ……)
だからもう少しだけ好きでいさせて……。
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