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特別な人
特別な人 第188話
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わけが分からない僕の耳に聞こえるのは三人の溜め息だった。
わざとらしく大袈裟な素振りで首を振る朋喜と悠栖。慶史に至っては舌打ちまで響かせてくれて、そんなに怒るならどうして家に来たんだと思ってしまう。
(ああ、もう……。僕って本当、嫌な奴だ……)
心配して駆けつけてくれた友達に対して逆ギレするとかすごく自己中心的考えだ。って、理性的になればそう思えるのに、理性よりも感情が勝っている今は悔しくて唇を噛みしめて三人を恨めしいと思ってしまう。
そして、そんな僕に更に自己嫌悪を覚えさせるのは、三人が此処にいる本当の理由だった。
「僕達が怒ってるのは、葵君にじゃなくて、幼馴染のお兄さんにだよ」
「え……。虎君に……?」
「そうだよっ! あのクソ野郎にだよっ!!」
『なんで?』って聞こうとしたけど、怒りを押し殺せていない慶史の荒げられた声が耳に届いた。
慶史を見れば、階段を昇り終えた慶史も僕を振り返った。
「け、けい―――」
「あんな奴を少しでも信頼してた自分に反吐が出るぐらい腹が立ってるから喋らないで」
「え? でも―――」
「喋らないでっ!」
荒げられた声に、思わず身体が竦む。
慶史の怒りに怯える僕を見かねてか、朋喜が僕の肩に手を乗せ首を振って見せる。今は言うとおりにした方が良いよって言いたげに。
僕は助言に従って口を噤むと、三人を部屋へと誘導した。
部屋に入ると慶史はベッドに座って足を組むと、苛立ちに折り合いをつけようと組んだ腕の上でしきりに指を動かした。
ここまで機嫌の悪い慶史には逆らってはいけないと本能的に感じているのか、それとも慶史と同じぐらい苛立っているからか、いつもは賑やかな悠栖も口数が極端に少なくて居心地が悪い。
「葵君、週明けまで寮に泊まる準備しよう?」
「で、でも、いきなりいいのかな……? 僕寮生じゃないし、泊まるなら手続きとかあるんじゃないの?」
「大丈夫。昨日の夜に慶史君が寮父さんと寮長とたたき起こして承認貰ってるから」
「! たたき起こしたって―――」
「葵、急いで」
聞きたいことは沢山ある。けど、慶史は早く寮に戻りたいのか僕達のお喋りを制してくる。
朋喜は肩を竦ませて何か手伝えるかと尋ねてきて話題を止めた。
「だい、じょうぶ……。急いで荷物纏めるね」
申し訳なさそうな朋喜に返せるのは苦笑い。
僕は神妙な面持ちでドアの前に立つ悠栖と苛立ちをなおも募らせている慶史を横目に外泊の準備を進めた。
僕が必要最低限の着替えと荷物をカバンに詰め終えたとほぼ同時に、全てを見透かしていたのか慶史が立ちあがる。
「準備できたよね?」
「う、うん。とりあえず着替えとか最低限の物だけは入れたけど……」
「それで充分でしょ。足りない物は売店か通販で買えばいいし」
しれっと言い切る慶史だけど、朋喜が僕の耳元で寮の規則で通信販売の利用は禁止されていることを教えてくれたから、売店で買えなかったら最悪敷地外のコンビニまで足を伸ばさなければならないみたいだ。
(でもまぁ寮に居ていいのは3日が限度だろうし、大丈夫か……)
心の整理をするために貰った猶予は3日間。それまでに僕は虎君の『弟』に戻らないといけない。
僕はたった3日間でこの想いを吹っ切れるか不安を覚える。
でも、気落ちするよりも先に慶史に手首を掴まれ、思考はそこで止めらえた。
「け、慶史、痛いよ……」
「―――っ、もう大丈夫だからね、葵」
思い詰めすぎて怖い顔。けど、僕の声に慶史は弾かれた様に動き、僕をぎゅっと抱きしめてきた。
未だかつてないほど強い力で僕を抱き締める慶史の肩は震えていて、涙こそ見せないけど泣いているように思えた。
(あぁ……、心配かけちゃった……)
昨日理由も碌に告げず電話口で泣きじゃくったせいで、慶史の中ではきっと物凄く悪いシナリオが出来上がってしまったのだろう。
いや、失恋して僕が期待を抱いた虎君の言動は全部勘違いだったっていう事実は僕的には最悪のシナリオなんだけど、たぶん慶史はもっとずっと僕が考え付かない怖いシナリオを頭に浮かべている気がする。
僕は早く慶史を安心させてあげないとと思う。……思うのに、でも口が開かないのはどうしてだろう……?
「慶史、続きは寮に戻ってからにしようぜ。このままだと俺、殴りに行きそうでヤバい」
「! ゆ、悠栖……」
「僕も同感。殴るのは手が痛そうだから嫌だけど、でも思いっきりひっぱたいてやりたいね」
「朋喜までそんな……」
二人の言葉に狼狽える僕。すると慶史は深く息を吐くと、「俺達が傷害罪に問われる前に行こう」って僕の手を引いて歩き出した。
わざとらしく大袈裟な素振りで首を振る朋喜と悠栖。慶史に至っては舌打ちまで響かせてくれて、そんなに怒るならどうして家に来たんだと思ってしまう。
(ああ、もう……。僕って本当、嫌な奴だ……)
心配して駆けつけてくれた友達に対して逆ギレするとかすごく自己中心的考えだ。って、理性的になればそう思えるのに、理性よりも感情が勝っている今は悔しくて唇を噛みしめて三人を恨めしいと思ってしまう。
そして、そんな僕に更に自己嫌悪を覚えさせるのは、三人が此処にいる本当の理由だった。
「僕達が怒ってるのは、葵君にじゃなくて、幼馴染のお兄さんにだよ」
「え……。虎君に……?」
「そうだよっ! あのクソ野郎にだよっ!!」
『なんで?』って聞こうとしたけど、怒りを押し殺せていない慶史の荒げられた声が耳に届いた。
慶史を見れば、階段を昇り終えた慶史も僕を振り返った。
「け、けい―――」
「あんな奴を少しでも信頼してた自分に反吐が出るぐらい腹が立ってるから喋らないで」
「え? でも―――」
「喋らないでっ!」
荒げられた声に、思わず身体が竦む。
慶史の怒りに怯える僕を見かねてか、朋喜が僕の肩に手を乗せ首を振って見せる。今は言うとおりにした方が良いよって言いたげに。
僕は助言に従って口を噤むと、三人を部屋へと誘導した。
部屋に入ると慶史はベッドに座って足を組むと、苛立ちに折り合いをつけようと組んだ腕の上でしきりに指を動かした。
ここまで機嫌の悪い慶史には逆らってはいけないと本能的に感じているのか、それとも慶史と同じぐらい苛立っているからか、いつもは賑やかな悠栖も口数が極端に少なくて居心地が悪い。
「葵君、週明けまで寮に泊まる準備しよう?」
「で、でも、いきなりいいのかな……? 僕寮生じゃないし、泊まるなら手続きとかあるんじゃないの?」
「大丈夫。昨日の夜に慶史君が寮父さんと寮長とたたき起こして承認貰ってるから」
「! たたき起こしたって―――」
「葵、急いで」
聞きたいことは沢山ある。けど、慶史は早く寮に戻りたいのか僕達のお喋りを制してくる。
朋喜は肩を竦ませて何か手伝えるかと尋ねてきて話題を止めた。
「だい、じょうぶ……。急いで荷物纏めるね」
申し訳なさそうな朋喜に返せるのは苦笑い。
僕は神妙な面持ちでドアの前に立つ悠栖と苛立ちをなおも募らせている慶史を横目に外泊の準備を進めた。
僕が必要最低限の着替えと荷物をカバンに詰め終えたとほぼ同時に、全てを見透かしていたのか慶史が立ちあがる。
「準備できたよね?」
「う、うん。とりあえず着替えとか最低限の物だけは入れたけど……」
「それで充分でしょ。足りない物は売店か通販で買えばいいし」
しれっと言い切る慶史だけど、朋喜が僕の耳元で寮の規則で通信販売の利用は禁止されていることを教えてくれたから、売店で買えなかったら最悪敷地外のコンビニまで足を伸ばさなければならないみたいだ。
(でもまぁ寮に居ていいのは3日が限度だろうし、大丈夫か……)
心の整理をするために貰った猶予は3日間。それまでに僕は虎君の『弟』に戻らないといけない。
僕はたった3日間でこの想いを吹っ切れるか不安を覚える。
でも、気落ちするよりも先に慶史に手首を掴まれ、思考はそこで止めらえた。
「け、慶史、痛いよ……」
「―――っ、もう大丈夫だからね、葵」
思い詰めすぎて怖い顔。けど、僕の声に慶史は弾かれた様に動き、僕をぎゅっと抱きしめてきた。
未だかつてないほど強い力で僕を抱き締める慶史の肩は震えていて、涙こそ見せないけど泣いているように思えた。
(あぁ……、心配かけちゃった……)
昨日理由も碌に告げず電話口で泣きじゃくったせいで、慶史の中ではきっと物凄く悪いシナリオが出来上がってしまったのだろう。
いや、失恋して僕が期待を抱いた虎君の言動は全部勘違いだったっていう事実は僕的には最悪のシナリオなんだけど、たぶん慶史はもっとずっと僕が考え付かない怖いシナリオを頭に浮かべている気がする。
僕は早く慶史を安心させてあげないとと思う。……思うのに、でも口が開かないのはどうしてだろう……?
「慶史、続きは寮に戻ってからにしようぜ。このままだと俺、殴りに行きそうでヤバい」
「! ゆ、悠栖……」
「僕も同感。殴るのは手が痛そうだから嫌だけど、でも思いっきりひっぱたいてやりたいね」
「朋喜までそんな……」
二人の言葉に狼狽える僕。すると慶史は深く息を吐くと、「俺達が傷害罪に問われる前に行こう」って僕の手を引いて歩き出した。
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