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特別な人
特別な人 第234話
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桜の木に小さな蕾が付き始めた頃、僕のもとに高校の合格通知が届いた。
落ちることはないだろうと思っていたけど、それでも合格通知が届くまではドキドキしてたから、明日からようやくゆっくり眠れそうだと安堵した。
受かったと報告した僕に、家族から返ってきた反応は様々。『おめでとう』と純粋に喜んでくれたのは父さんだけで、茂斗は『当たり前だろう』って感じだったし、母さんと姉さんは中等部の頃よりもずっとずっと不安だと難しい顔をしていた。
そんな中、みんなが声を合わせて口にするのは当初の希望と違う進路に対する心配の声で、僕はその言葉を聞く度に苦笑交じりに『大丈夫だよ』と返す羽目になった。
「自業自得とはいえ何回も言われると流石に落ち込んじゃうよ……」
「そんな悲しそうな顔しないでくれよ。俺まで悲しくなってくるだろ?」
ぽかぽか陽気に包まれた自室で合格通知を手に溜め息を吐く僕に返されるのは、虎君の優しい声。
落ち込む僕を慰めるように髪を撫でてくれる虎君に、僕は甘えるようにその肩に頭を預けてもたれかかった。すると虎君は僕の肩を抱いて、チュッと髪にキスをくれる。
貰ったキスにあっという間に気持ちが浮上する現金な僕は虎君を振り返り、「ごめんね?」と上目遣いで謝った。
「何が『ごめん』?」
「虎君にいっぱい勉強見てもらったのに、結局外部受験、できなかったから……」
肩を落として落ち込む僕に、虎君は優しく笑って僕を呼ぶ。
呼ばれた名前に顔を上げたら、今度はチュッと唇にキスされた。
「俺は葵が笑顔で過ごせるなら、何処だっていいよ」
キスをくれた虎君は、僕がどの高校に進学するかよりも、進学した先で楽しく高校生活が送れることの方が大事だと言ってくれる。
僕はそんな虎君の言葉と笑顔に胸を締め付けられ、堪らず合格通知を放り投げてその胸に飛び込んでしまう。
「虎君ってば優しすぎるよっ」
「そうか? 好きな子に優しくしたいって思うのは普通のことじゃないか?」
抱き着く僕を抱き留めてくれる虎君は僕の額に自分の額を合わせると、「もっともっと大事にするから覚悟しといて?」って微笑みを落としてくる。
(今でも凄く大事にしてもらっているのに、これ以上大事にしてもらったら僕、虎君なしじゃ生きられなくなっちゃうよ……?)
大好きな人に疑う余地もないぐらい愛されてる。それがどんなに幸せなことか、どんなに嬉しいことか、僕は知っている。
だから、この奇跡を感じる度、僕はグスッと涙ぐんでしまうんだ。
「ああ、また泣いた」
「だって、幸せなんだもん……」
クスクスと笑う虎君の笑顔が、愛しい。
僕は、嫌なら見ないでと虎君の首に手を伸ばし、顔を隠すように強く強くしがみつく。
虎君はそんな僕の背中をあやすように優しく叩くと、「そんなこと言ってないだろ?」ってまた笑った。
「でも、困ってはいるかな?」
「! ほら! やっぱり!」
「だって仕方ないだろ? 葵にはずっと笑っていて欲しいって思ってるのに、葵の泣き顔が可愛くて偶には泣かせたいって思っちゃうんだし」
我ながら矛盾してるって分かってるけど、葵の全部を独り占めしたいから。
もう……、優しく抱きしめてそんな風に囁かないでよ。虎君になら何をされてもいいって思っちゃうじゃない!
僕は甘い囁きにノックアウト。ギューッと抱き着いて、離れたくないとアピールしてしまう。
「葵、葵。ちょっとだけ力緩めて?」
「やだ……。離れたくないっ」
僕を引き離そうとする虎君に、全力で抵抗。せめてもう少しだけくっついていさせて。と。
でも、絶対に離れないと思っていた僕の心を変えてしまうのは、虎君の魔法の言葉だ。
「そんなにくっついてたら、キス、できないだろ?」
髪を撫で、「キスさせて?」って耳元で囁かれたら、全身から力が抜けてしまうのは仕方ない。
僕はおずおずと虎君にしがみついていた腕を放し、虎君と向き合うように身体を引いた。
「顔真っ赤だ」
「だ、だって……」
僕の顔を覗き込む虎君は意地悪。でも、眼差しも微笑みも優しすぎて、頑張って抑えていた虎君への想いが一気に溢れてしまう。
頬を包み込んでくる大きな虎君の手。その親指が口角に触れ、僕は堪らず虎君の親指にチュッとキスしてしまう。
「こら、キスする場所が違うだろ?」
「なら、なら早くキスしてよ……」
優しさだけを称えた声に、心が蕩けそう。
僕は我慢できないと虎君を誘うようにキスを求めた。望み通り口づけられたのは、それからすぐのこと。
「葵、可愛い……」
唇を離した虎君は、鼻の頭が擦れあうほど近くで僕を見つめ、「愛してる」と言ってくれる。
僕は虎君の手に手を重ね、僕も大好きだと涙声で返した。
僕は、今この幸せが決して当たり前のものじゃないということを知っている。そして同時に、心を言葉に出すことの大切さも、知っている。
心のままに発した言葉は時に人を傷つけてしまうけれど、でも、それでも伝える大切さを僕は学んだから、僕は自分の想いをきちんと言葉で伝えられるように努力しようと思う。
もう二度と、僕の大切な人を悲しませたくはないから。
「虎君、ずっとずっと大好きだよ」
「俺もずっと葵だけを愛してるよ」
願わくば、この幸せがずっと続きますように。
この先もずっと、お互いがお互いの『特別な人』であり続けられますように……。
落ちることはないだろうと思っていたけど、それでも合格通知が届くまではドキドキしてたから、明日からようやくゆっくり眠れそうだと安堵した。
受かったと報告した僕に、家族から返ってきた反応は様々。『おめでとう』と純粋に喜んでくれたのは父さんだけで、茂斗は『当たり前だろう』って感じだったし、母さんと姉さんは中等部の頃よりもずっとずっと不安だと難しい顔をしていた。
そんな中、みんなが声を合わせて口にするのは当初の希望と違う進路に対する心配の声で、僕はその言葉を聞く度に苦笑交じりに『大丈夫だよ』と返す羽目になった。
「自業自得とはいえ何回も言われると流石に落ち込んじゃうよ……」
「そんな悲しそうな顔しないでくれよ。俺まで悲しくなってくるだろ?」
ぽかぽか陽気に包まれた自室で合格通知を手に溜め息を吐く僕に返されるのは、虎君の優しい声。
落ち込む僕を慰めるように髪を撫でてくれる虎君に、僕は甘えるようにその肩に頭を預けてもたれかかった。すると虎君は僕の肩を抱いて、チュッと髪にキスをくれる。
貰ったキスにあっという間に気持ちが浮上する現金な僕は虎君を振り返り、「ごめんね?」と上目遣いで謝った。
「何が『ごめん』?」
「虎君にいっぱい勉強見てもらったのに、結局外部受験、できなかったから……」
肩を落として落ち込む僕に、虎君は優しく笑って僕を呼ぶ。
呼ばれた名前に顔を上げたら、今度はチュッと唇にキスされた。
「俺は葵が笑顔で過ごせるなら、何処だっていいよ」
キスをくれた虎君は、僕がどの高校に進学するかよりも、進学した先で楽しく高校生活が送れることの方が大事だと言ってくれる。
僕はそんな虎君の言葉と笑顔に胸を締め付けられ、堪らず合格通知を放り投げてその胸に飛び込んでしまう。
「虎君ってば優しすぎるよっ」
「そうか? 好きな子に優しくしたいって思うのは普通のことじゃないか?」
抱き着く僕を抱き留めてくれる虎君は僕の額に自分の額を合わせると、「もっともっと大事にするから覚悟しといて?」って微笑みを落としてくる。
(今でも凄く大事にしてもらっているのに、これ以上大事にしてもらったら僕、虎君なしじゃ生きられなくなっちゃうよ……?)
大好きな人に疑う余地もないぐらい愛されてる。それがどんなに幸せなことか、どんなに嬉しいことか、僕は知っている。
だから、この奇跡を感じる度、僕はグスッと涙ぐんでしまうんだ。
「ああ、また泣いた」
「だって、幸せなんだもん……」
クスクスと笑う虎君の笑顔が、愛しい。
僕は、嫌なら見ないでと虎君の首に手を伸ばし、顔を隠すように強く強くしがみつく。
虎君はそんな僕の背中をあやすように優しく叩くと、「そんなこと言ってないだろ?」ってまた笑った。
「でも、困ってはいるかな?」
「! ほら! やっぱり!」
「だって仕方ないだろ? 葵にはずっと笑っていて欲しいって思ってるのに、葵の泣き顔が可愛くて偶には泣かせたいって思っちゃうんだし」
我ながら矛盾してるって分かってるけど、葵の全部を独り占めしたいから。
もう……、優しく抱きしめてそんな風に囁かないでよ。虎君になら何をされてもいいって思っちゃうじゃない!
僕は甘い囁きにノックアウト。ギューッと抱き着いて、離れたくないとアピールしてしまう。
「葵、葵。ちょっとだけ力緩めて?」
「やだ……。離れたくないっ」
僕を引き離そうとする虎君に、全力で抵抗。せめてもう少しだけくっついていさせて。と。
でも、絶対に離れないと思っていた僕の心を変えてしまうのは、虎君の魔法の言葉だ。
「そんなにくっついてたら、キス、できないだろ?」
髪を撫で、「キスさせて?」って耳元で囁かれたら、全身から力が抜けてしまうのは仕方ない。
僕はおずおずと虎君にしがみついていた腕を放し、虎君と向き合うように身体を引いた。
「顔真っ赤だ」
「だ、だって……」
僕の顔を覗き込む虎君は意地悪。でも、眼差しも微笑みも優しすぎて、頑張って抑えていた虎君への想いが一気に溢れてしまう。
頬を包み込んでくる大きな虎君の手。その親指が口角に触れ、僕は堪らず虎君の親指にチュッとキスしてしまう。
「こら、キスする場所が違うだろ?」
「なら、なら早くキスしてよ……」
優しさだけを称えた声に、心が蕩けそう。
僕は我慢できないと虎君を誘うようにキスを求めた。望み通り口づけられたのは、それからすぐのこと。
「葵、可愛い……」
唇を離した虎君は、鼻の頭が擦れあうほど近くで僕を見つめ、「愛してる」と言ってくれる。
僕は虎君の手に手を重ね、僕も大好きだと涙声で返した。
僕は、今この幸せが決して当たり前のものじゃないということを知っている。そして同時に、心を言葉に出すことの大切さも、知っている。
心のままに発した言葉は時に人を傷つけてしまうけれど、でも、それでも伝える大切さを僕は学んだから、僕は自分の想いをきちんと言葉で伝えられるように努力しようと思う。
もう二度と、僕の大切な人を悲しませたくはないから。
「虎君、ずっとずっと大好きだよ」
「俺もずっと葵だけを愛してるよ」
願わくば、この幸せがずっと続きますように。
この先もずっと、お互いがお互いの『特別な人』であり続けられますように……。
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