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My Everlasting Dear...
My Everlasting Dear... 第11話
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「『駆け引き』なんてみんなやってることだぞ?」
「でも―――」
「分かった。お前が乗り気じゃないならこれ以上言わねぇよ。でも、最後に一個だけ答えろ」
長年殺してきた望みをいきなり認めろと言っても、簡単には認められない。簡単に一歩踏み出せるのなら一〇年近く苦しんだりはしないだろうから。
でも、海音はどうしても虎に一歩を踏み出して欲しかった。『想い』を諦める決断をして欲しくなかった。
だから海音は虎に問いかけた。今からする質問の答えが『ノー』以外なら、もう口出しはしないと虎を見据えた。
「な、なんだよ」
「綺麗事とかそんなもん全部無視して考えろ。お前、葵が他人のモノになっていいのか?」
未だかつて海音に気圧されたことなど一度たりともなかった。だが、今自分を見る海音の表情はいつもの能天気なお調子者ではなく、一人の男のそれだった。
海音は自分と向き合ってくれている。こんなにも真剣に。
虎は海音の本気に背を押され、もうずっと昔に口に出すことを諦めた願いを心の底からすくい上げ、言葉に絞り出した。
「……嫌、だ……。葵が俺以外の奴の隣にいるところなんて見たくない……」
混み上がってくるこの熱は、なんだろう。
虎は目を覆い隠すと、押し殺し続けた想いを吐き出した。
「おれ、は、俺は、葵に愛されたい……」
と。
「いいんだよ。それでいいんだ。大体お前が我慢とか似合わねぇーんだし、それでいいんだよ!」
海音は震える虎の肩に手を回すとそのまま肩を組んで「自己中なドSでこそ俺の幼馴染、『来須虎』なんだからさ!」と笑った。
「っ―――、ドMの変態が馬鹿言ってんなっ」
「変態はお互い様だろ? あ! そうだ! もし葵がお前の事好きになっても、小学生に手を出すのは止めとけよ?」
両想いだとしても小学生とセックスなんて流石に洒落にならないから。
親友が犯罪者にならないよう釘を刺す海音。弱ってる自分を励ますために茶化しているのかと虎が親友に視線を向けると、海音が見せるのは至って真面目な面持ちで、どうやら親友は自分の事を本気で小学生に手を出す鬼畜だと思っているようだ。
「馬鹿野郎が」
「! いってぇ!」
バチンっといい音を立てて虎の掌が海音の顔面に入る。海音は虎からの攻撃に悶絶し、「もろ入ったぞ!」と鼻を抑えて抗議した。
それがあまりにもいつも通りで、虎はこみ上げてくるまま笑った。
「自業自得だ。いくらなんでも小学生相手に盛るかよ。……ちゃんと中学生になるまで待つ理性は残ってるつもりだ」
「! 中学生でもギリギリアウトだけどな!」
軽口を叩いたら、海音はまた満面の笑顔で肩を組んでくる。
犯罪者にならないように見張っててやるよ! と笑いかけてくる海音に、虎は「ならないって言ってるだろうが」と声を出して笑った。
*
「なるほど、つまりこれからはもう『兄』は止めるって事か?」
「止めるつもりはないです。これからは『兄』としてだけじゃなくて葵を愛してる『一人の男』としても傍にいたいんです」
間もなく日付が変わるという深夜、皆が眠りについて静まり返った家のリビングで対峙しているのは虎と、葵の両親、茂と樹里斗だ。虎は茂の目を真っ直ぐ見返すと、「傍にいることを許してください」と頭を下げた。
あの後、海音に背中を押され自分の想いを解放した虎は、仕事から帰宅した第二の父に自分の想いをすべてを打ち明けることを決断した。
自分を信じてくれた二人には隠し事をしたくなかったというのも勿論大きな理由だが、それよりもまず葵を想うが故の決断だった。
「……どうして俺達に話したんだ? 隠しておくことだってできただろう?」
「そうですね。お二人に隠して傍にいることも、正直一瞬だけ頭に過りました」
頭をあげろと促され、虎は言われるがまま顔を上げる。二人は神妙な面持ちでこちらを見ていて、二人の心情を思うと申し訳なさが募った。
(当然、だよな。俺がしてることは茂さん達の好意に唾を吐いたようなものなんだし……)
自分を信じ、愛しい人の傍にいることを許してくれた両親。それなのに自分は今、愛しい人に愛されたいと望んでいると打ち明けた。彼らの大切な息子の心が欲しいと願い出たのだ。
いくら心優しい二人でも、これにはさすがに怒りを覚えたに決まってる。もしかしたら我が子の傍から排除したいと考えているかもしれない。
虎は二人の視線を受け止めて、それでももう自分に嘘を吐けないからと口を開いた。
「お二人の言いたいことは分かっています。『諦められないのなら出ていけ』と言われる覚悟もしています」
今までのように葵の傍にいられなくなるのは辛いが、想いを殺すよりはマシだから。
虎は、自分は本気だと言葉を強くし、できることなら愛されたいと望むことを許して欲しいと訴えた。
「俺達が『出ていけ』と言ったら、どうする気だ?」
「実家に戻るつもりです」
「戻ってどうする? 二度と葵に会わせない事だってできるんだぞ?」
茂の言葉に虎は心臓が痛くなる。覚悟はしていたが、実際言葉として受け取るとその辛さは想像の比ではなかった。
今自分の目の前にいる男性は言葉通り自分を葵から引き離す権力を持っている。茂がその気になれば虎は葵に触れることはおろか、二度と会うことができなくなるということだ。
だがしかし、それでも虎は己の想いを貫いた。
「覚悟はできています。でも、……それでも俺は葵の一番になりたいんです」
認めてもらえるとは最初から思っていない。それでももう想いを隠せないから、自分は現実と向き合うことにしたのだ。
今一度虎は頭を下げ、「信じてくれたのにすみませんでした」と二人の信頼を裏切ったことを謝罪した。
「決意は固い、ってことか……」
ため息とともに聞こえる茂の声に、虎は頭を下げたまま肯定の返事を返す。自分はもうこの家の敷居を跨ぐことは許されないと覚悟して。
だが、覚悟を決めた虎の耳に届くのは、葵の母の声。
「もういいんじゃない? これ以上は可哀想よ」
それは自分に向けられた言葉ではなく、おそらく彼女の夫に向けられたもの。すると妻の声に茂が返したのは「そうだな」という笑い声だった。
(え……?)
頭を下げたままだから二人の表情は分からない。でも、張りつめた空気が一変して和やかなものに変わった気がした。
何が起こっているか分からず戸惑う虎。何故二人の空気が変わったのだろう? と。
「虎、顔上げろ。もういいから」
笑い声に似たトーンで命じられおもむろに顔を上げれば、虎の前に座る二人の表情は笑顔だった。
「あの、これ、どういうことですか……?」
「どういうことも何も、俺らは最初からそのつもりでいると思ってたんだよ」
「! えぇ?」
「本気で愛してるなら当然の事でしょ?」
二人の言葉はあまりにも予想外すぎて、どう頑張っても理解が追い付かない。
呆然と二人を見る虎。すると視線に気づいた樹里斗が優しく微笑み、「気づいてあげられなくてごめんね?」と謝ってきた。
「でも―――」
「分かった。お前が乗り気じゃないならこれ以上言わねぇよ。でも、最後に一個だけ答えろ」
長年殺してきた望みをいきなり認めろと言っても、簡単には認められない。簡単に一歩踏み出せるのなら一〇年近く苦しんだりはしないだろうから。
でも、海音はどうしても虎に一歩を踏み出して欲しかった。『想い』を諦める決断をして欲しくなかった。
だから海音は虎に問いかけた。今からする質問の答えが『ノー』以外なら、もう口出しはしないと虎を見据えた。
「な、なんだよ」
「綺麗事とかそんなもん全部無視して考えろ。お前、葵が他人のモノになっていいのか?」
未だかつて海音に気圧されたことなど一度たりともなかった。だが、今自分を見る海音の表情はいつもの能天気なお調子者ではなく、一人の男のそれだった。
海音は自分と向き合ってくれている。こんなにも真剣に。
虎は海音の本気に背を押され、もうずっと昔に口に出すことを諦めた願いを心の底からすくい上げ、言葉に絞り出した。
「……嫌、だ……。葵が俺以外の奴の隣にいるところなんて見たくない……」
混み上がってくるこの熱は、なんだろう。
虎は目を覆い隠すと、押し殺し続けた想いを吐き出した。
「おれ、は、俺は、葵に愛されたい……」
と。
「いいんだよ。それでいいんだ。大体お前が我慢とか似合わねぇーんだし、それでいいんだよ!」
海音は震える虎の肩に手を回すとそのまま肩を組んで「自己中なドSでこそ俺の幼馴染、『来須虎』なんだからさ!」と笑った。
「っ―――、ドMの変態が馬鹿言ってんなっ」
「変態はお互い様だろ? あ! そうだ! もし葵がお前の事好きになっても、小学生に手を出すのは止めとけよ?」
両想いだとしても小学生とセックスなんて流石に洒落にならないから。
親友が犯罪者にならないよう釘を刺す海音。弱ってる自分を励ますために茶化しているのかと虎が親友に視線を向けると、海音が見せるのは至って真面目な面持ちで、どうやら親友は自分の事を本気で小学生に手を出す鬼畜だと思っているようだ。
「馬鹿野郎が」
「! いってぇ!」
バチンっといい音を立てて虎の掌が海音の顔面に入る。海音は虎からの攻撃に悶絶し、「もろ入ったぞ!」と鼻を抑えて抗議した。
それがあまりにもいつも通りで、虎はこみ上げてくるまま笑った。
「自業自得だ。いくらなんでも小学生相手に盛るかよ。……ちゃんと中学生になるまで待つ理性は残ってるつもりだ」
「! 中学生でもギリギリアウトだけどな!」
軽口を叩いたら、海音はまた満面の笑顔で肩を組んでくる。
犯罪者にならないように見張っててやるよ! と笑いかけてくる海音に、虎は「ならないって言ってるだろうが」と声を出して笑った。
*
「なるほど、つまりこれからはもう『兄』は止めるって事か?」
「止めるつもりはないです。これからは『兄』としてだけじゃなくて葵を愛してる『一人の男』としても傍にいたいんです」
間もなく日付が変わるという深夜、皆が眠りについて静まり返った家のリビングで対峙しているのは虎と、葵の両親、茂と樹里斗だ。虎は茂の目を真っ直ぐ見返すと、「傍にいることを許してください」と頭を下げた。
あの後、海音に背中を押され自分の想いを解放した虎は、仕事から帰宅した第二の父に自分の想いをすべてを打ち明けることを決断した。
自分を信じてくれた二人には隠し事をしたくなかったというのも勿論大きな理由だが、それよりもまず葵を想うが故の決断だった。
「……どうして俺達に話したんだ? 隠しておくことだってできただろう?」
「そうですね。お二人に隠して傍にいることも、正直一瞬だけ頭に過りました」
頭をあげろと促され、虎は言われるがまま顔を上げる。二人は神妙な面持ちでこちらを見ていて、二人の心情を思うと申し訳なさが募った。
(当然、だよな。俺がしてることは茂さん達の好意に唾を吐いたようなものなんだし……)
自分を信じ、愛しい人の傍にいることを許してくれた両親。それなのに自分は今、愛しい人に愛されたいと望んでいると打ち明けた。彼らの大切な息子の心が欲しいと願い出たのだ。
いくら心優しい二人でも、これにはさすがに怒りを覚えたに決まってる。もしかしたら我が子の傍から排除したいと考えているかもしれない。
虎は二人の視線を受け止めて、それでももう自分に嘘を吐けないからと口を開いた。
「お二人の言いたいことは分かっています。『諦められないのなら出ていけ』と言われる覚悟もしています」
今までのように葵の傍にいられなくなるのは辛いが、想いを殺すよりはマシだから。
虎は、自分は本気だと言葉を強くし、できることなら愛されたいと望むことを許して欲しいと訴えた。
「俺達が『出ていけ』と言ったら、どうする気だ?」
「実家に戻るつもりです」
「戻ってどうする? 二度と葵に会わせない事だってできるんだぞ?」
茂の言葉に虎は心臓が痛くなる。覚悟はしていたが、実際言葉として受け取るとその辛さは想像の比ではなかった。
今自分の目の前にいる男性は言葉通り自分を葵から引き離す権力を持っている。茂がその気になれば虎は葵に触れることはおろか、二度と会うことができなくなるということだ。
だがしかし、それでも虎は己の想いを貫いた。
「覚悟はできています。でも、……それでも俺は葵の一番になりたいんです」
認めてもらえるとは最初から思っていない。それでももう想いを隠せないから、自分は現実と向き合うことにしたのだ。
今一度虎は頭を下げ、「信じてくれたのにすみませんでした」と二人の信頼を裏切ったことを謝罪した。
「決意は固い、ってことか……」
ため息とともに聞こえる茂の声に、虎は頭を下げたまま肯定の返事を返す。自分はもうこの家の敷居を跨ぐことは許されないと覚悟して。
だが、覚悟を決めた虎の耳に届くのは、葵の母の声。
「もういいんじゃない? これ以上は可哀想よ」
それは自分に向けられた言葉ではなく、おそらく彼女の夫に向けられたもの。すると妻の声に茂が返したのは「そうだな」という笑い声だった。
(え……?)
頭を下げたままだから二人の表情は分からない。でも、張りつめた空気が一変して和やかなものに変わった気がした。
何が起こっているか分からず戸惑う虎。何故二人の空気が変わったのだろう? と。
「虎、顔上げろ。もういいから」
笑い声に似たトーンで命じられおもむろに顔を上げれば、虎の前に座る二人の表情は笑顔だった。
「あの、これ、どういうことですか……?」
「どういうことも何も、俺らは最初からそのつもりでいると思ってたんだよ」
「! えぇ?」
「本気で愛してるなら当然の事でしょ?」
二人の言葉はあまりにも予想外すぎて、どう頑張っても理解が追い付かない。
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