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大切な人
大切な人 第1話
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世界で一番と言っても過言でないほど大好きな人から想いを受け取った僕は、あれから二カ月が経った今もずっと幸せで満たされていた。
多大な迷惑をかけた親友達にはきっとこの先ずっと頭が上がらないだろう。
たくさん謝ってたくさん感謝を伝えた僕に、親友達は怒ることも呆れることもせず、『よかったね』と笑ってくれた。
親友達は、これからは何があっても大好きな人―――虎君とまず話し合うようにと助言してくれたから、僕はその助言にちゃんと従うと頷いた。
だから僕は今まで以上に虎君と話すようにしている。そして虎君も僕にたくさん話をしてくれるようになった。
今まで伝えられなかった分も想いを伝えたい。なんて言ってくれた。
(寝ても覚めても幸せだなんて、僕ってきっと世界一幸せ者だろうなぁ)
リビングで親友達の到着を待っていた僕は、チラッと隣に視線を向ける。
すると、盗み見たつもりだったのに目が合ってしまった。虎君と。
「どうした?」
目尻を下げて笑いかけてくれる虎君に、もう何度胸をときめかせただろう。
僕は視線だけではなく身体ごと虎君へと向き直り、形だけの不機嫌を装った。
「いつからこっち見てたの? 見てるなら見てるって言ってよ」
「『いつから』って、ずっと見てたから言う必要ないって思ったんだけど」
ぷぅっと頬っぺたを膨らませた僕の腰に手を回して引き寄せると、ちゅっと髪にキスを落としてくる虎君。
『幼馴染』から『恋人』に変わった関係は虎君の態度を変えてくれて、今まで虎君のキスなんて超レアだったのに、今では当たり前のようにもらえるようになった。
(まぁ、もらえるようになったと言っても、唇へのキスは偶にしか貰ってないんだけど……)
あの日―――思いが通じ合った日以降、唇へのキスを貰った回数はまだ10回にも満たない。
キスの回数を数えているなんて知られたら『そんなにキスしたいのか』って呆れられそうだから誰にも言わないけど、10回は流石に少ないと思う。
偶にしか唇へのキスが貰えないのはちょっぴり、ううん、凄く残念。でも強請るものでもない気がするから、虎君がもっともっと僕にキスしたいって思ってくれるまで待とうって決めてる。
僕は膨らましていた頬っぺたから息を抜いて、虎君にじゃれるように擦り寄った。
すると虎君は僕の頭に頬を寄せてきて……。
「怒った?」
「怒ってないよ。でも、虎君って偶に大袈裟な言い方するよね?」
「え? 俺がいつ大袈裟な言い方したって言うんだよ?」
そんな大袈裟な言い方しなくてももう虎君の気持ちを誤解したりしないよ?
そう苦笑したら、虎君は大袈裟な言い方なんてしていないって言ってくる。
それどころか、僕が『いつ』、『どの言葉』を大袈裟な言い方だと感じたのかと尋ねてくる。
もしかしなくても、無意識なのかな?
「だから、今言ったよね? 『ずっと見てた』って。別にそんな風に言ってくれなくても僕は虎君が好きだよ?」
僕は苦笑を濃くして、無理に大袈裟な言い方をしないでとお願いした。この先、虎君の言葉を嘘だと思いたくないから。
するとそんな僕に虎君は悲しそうな顔をして、何か言いたげに口を開いた。
でも虎君が喋る前に、おそらく僕達を観察していただろう茂斗が横から口をはさんできた。
「葵、そんな風に言ってやんなよ。お前、虎に嘘ついて欲しいのか?」
「! そんなわけないでしょ? 虎君に嘘ついて欲しくないから言ってるんだよ!」
「だったら、嘘とか決めつけずに信じてやれよ。俺、お前らがそこでいちゃついてるの鬱陶しいって思いながらずっと見てたけど、マジで虎、お前しか見てなかったから」
何気に酷い言葉を浴びせてくる茂斗にイラっとした。正直無視してやろうと思ったぐらい、腹が立った。
けど、続いた言葉に反論したい気持ちをグッと押し殺して、茂斗まで何を言ってるんだと言い返そうとした。
でも、それもまた茂斗に阻まれてしまった。
「その証拠に、虎、気付いてなかっただろ? 俺がお前ら見てたの」
「ああ、全然気づかなかった……」
「だよな。お前の面見て『浮かれてんなー』って思ったし、葵しか目に入ってない感じだったし」
ニヤニヤする茂斗の顔は本当に腹が立つ。
双子とはいえ茂斗に比べてまだまだ子供な僕を茂斗が玩具だと思ってるってことは分かってたけど、此処まであからさまだとムッとするのを抑えられなくなる。
僕が怒ろうと身を乗り出したその時、離れないでと言わんばかりに虎君に抱きしめられた。
「とらく―――」
「頼むから葵の前でカッコ悪いこと言わないでくれ。今挽回中なことはお前も知ってるだろうが」
「知ってる知ってる。でも、胸焼けするほど見せつけられてイラっとしたからつい、な」
振り返ったら、苦笑を漏らして茂斗を見てる虎君の横顔が。
その頼りない表情に思い出すのは二カ月前の虎君の姿だ。
今でこそ『当時は魂の抜け殻だった』と周囲からからかわれている虎君だけど、僕は今もその姿を思い出すと胸が痛くなるし、泣きそうになる。
だから虎君は普段、僕が罪悪感に苦しむと分かっているから自分からこの話を振ることはしない。
でも、今その話題に触れるような言葉を口にした。
それは何故か?
きっと茂斗は、虎君が僕の前で格好をつけたがっていると思っただろう。
でも僕はそう思わない。虎君は僕のために敢えて口にしたに違いない。僕の知ってる虎君は、そういう人だから……。
多大な迷惑をかけた親友達にはきっとこの先ずっと頭が上がらないだろう。
たくさん謝ってたくさん感謝を伝えた僕に、親友達は怒ることも呆れることもせず、『よかったね』と笑ってくれた。
親友達は、これからは何があっても大好きな人―――虎君とまず話し合うようにと助言してくれたから、僕はその助言にちゃんと従うと頷いた。
だから僕は今まで以上に虎君と話すようにしている。そして虎君も僕にたくさん話をしてくれるようになった。
今まで伝えられなかった分も想いを伝えたい。なんて言ってくれた。
(寝ても覚めても幸せだなんて、僕ってきっと世界一幸せ者だろうなぁ)
リビングで親友達の到着を待っていた僕は、チラッと隣に視線を向ける。
すると、盗み見たつもりだったのに目が合ってしまった。虎君と。
「どうした?」
目尻を下げて笑いかけてくれる虎君に、もう何度胸をときめかせただろう。
僕は視線だけではなく身体ごと虎君へと向き直り、形だけの不機嫌を装った。
「いつからこっち見てたの? 見てるなら見てるって言ってよ」
「『いつから』って、ずっと見てたから言う必要ないって思ったんだけど」
ぷぅっと頬っぺたを膨らませた僕の腰に手を回して引き寄せると、ちゅっと髪にキスを落としてくる虎君。
『幼馴染』から『恋人』に変わった関係は虎君の態度を変えてくれて、今まで虎君のキスなんて超レアだったのに、今では当たり前のようにもらえるようになった。
(まぁ、もらえるようになったと言っても、唇へのキスは偶にしか貰ってないんだけど……)
あの日―――思いが通じ合った日以降、唇へのキスを貰った回数はまだ10回にも満たない。
キスの回数を数えているなんて知られたら『そんなにキスしたいのか』って呆れられそうだから誰にも言わないけど、10回は流石に少ないと思う。
偶にしか唇へのキスが貰えないのはちょっぴり、ううん、凄く残念。でも強請るものでもない気がするから、虎君がもっともっと僕にキスしたいって思ってくれるまで待とうって決めてる。
僕は膨らましていた頬っぺたから息を抜いて、虎君にじゃれるように擦り寄った。
すると虎君は僕の頭に頬を寄せてきて……。
「怒った?」
「怒ってないよ。でも、虎君って偶に大袈裟な言い方するよね?」
「え? 俺がいつ大袈裟な言い方したって言うんだよ?」
そんな大袈裟な言い方しなくてももう虎君の気持ちを誤解したりしないよ?
そう苦笑したら、虎君は大袈裟な言い方なんてしていないって言ってくる。
それどころか、僕が『いつ』、『どの言葉』を大袈裟な言い方だと感じたのかと尋ねてくる。
もしかしなくても、無意識なのかな?
「だから、今言ったよね? 『ずっと見てた』って。別にそんな風に言ってくれなくても僕は虎君が好きだよ?」
僕は苦笑を濃くして、無理に大袈裟な言い方をしないでとお願いした。この先、虎君の言葉を嘘だと思いたくないから。
するとそんな僕に虎君は悲しそうな顔をして、何か言いたげに口を開いた。
でも虎君が喋る前に、おそらく僕達を観察していただろう茂斗が横から口をはさんできた。
「葵、そんな風に言ってやんなよ。お前、虎に嘘ついて欲しいのか?」
「! そんなわけないでしょ? 虎君に嘘ついて欲しくないから言ってるんだよ!」
「だったら、嘘とか決めつけずに信じてやれよ。俺、お前らがそこでいちゃついてるの鬱陶しいって思いながらずっと見てたけど、マジで虎、お前しか見てなかったから」
何気に酷い言葉を浴びせてくる茂斗にイラっとした。正直無視してやろうと思ったぐらい、腹が立った。
けど、続いた言葉に反論したい気持ちをグッと押し殺して、茂斗まで何を言ってるんだと言い返そうとした。
でも、それもまた茂斗に阻まれてしまった。
「その証拠に、虎、気付いてなかっただろ? 俺がお前ら見てたの」
「ああ、全然気づかなかった……」
「だよな。お前の面見て『浮かれてんなー』って思ったし、葵しか目に入ってない感じだったし」
ニヤニヤする茂斗の顔は本当に腹が立つ。
双子とはいえ茂斗に比べてまだまだ子供な僕を茂斗が玩具だと思ってるってことは分かってたけど、此処まであからさまだとムッとするのを抑えられなくなる。
僕が怒ろうと身を乗り出したその時、離れないでと言わんばかりに虎君に抱きしめられた。
「とらく―――」
「頼むから葵の前でカッコ悪いこと言わないでくれ。今挽回中なことはお前も知ってるだろうが」
「知ってる知ってる。でも、胸焼けするほど見せつけられてイラっとしたからつい、な」
振り返ったら、苦笑を漏らして茂斗を見てる虎君の横顔が。
その頼りない表情に思い出すのは二カ月前の虎君の姿だ。
今でこそ『当時は魂の抜け殻だった』と周囲からからかわれている虎君だけど、僕は今もその姿を思い出すと胸が痛くなるし、泣きそうになる。
だから虎君は普段、僕が罪悪感に苦しむと分かっているから自分からこの話を振ることはしない。
でも、今その話題に触れるような言葉を口にした。
それは何故か?
きっと茂斗は、虎君が僕の前で格好をつけたがっていると思っただろう。
でも僕はそう思わない。虎君は僕のために敢えて口にしたに違いない。僕の知ってる虎君は、そういう人だから……。
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