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大切な人
大切な人 第10話
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「ほら、もうそんなに怒らないの。今回は誰彼構わず当たり散らしてる慶史君の自業自得なんだからね?」
「俺だって好きで不機嫌になってるわけじゃないんですけど!?」
「それはそうだろうけど、せめて今日ぐらい我慢しなよ。せっかく葵君がお家に招待してくれたんだから」
怒りの籠った足音と共にようやく慶史がリビングに顔を出す。
その隣には恐らく瑛大と慶史の喧嘩を止めようとしていたであろう朋喜が苦笑いを浮かべていて、僕と悠栖はまだお冠な慶史ではなく朋喜に喧嘩は収まったのかと尋ねた。
「お兄さんが結城君を止めてくれてようやく、ね。慶史君はお兄さんにまで喧嘩を売ろうとしたけど」
「! ちょっと朋喜!」
それはナイショって言っただろう!
そう声を荒げる慶史だけど、僕だって馬鹿じゃない。慶史が虎君に不機嫌をぶつけることぐらい想定の範囲内だ。
僕は苦笑を浮かべながらもこれからの虎君もちゃんと見て欲しいとお願いする。
今まで僕が知らないところで慶史が辛い目に遭っていたことは虎君の幼馴染である海音君から聞いたから、慶史が虎君を好きじゃないという気持ちは理解できる。
でも虎君は、これからは慶史に対して酷い態度を取らないと約束してくれたし、むしろ僕の大事な親友として大切にすると言ってくれた。
僕は虎君のその言葉を信じているから、できれば慶史にはこれからの虎君をちゃんと見て欲しいと思うんだ。
「葵には悪いけど、俺、人間そう簡単に変われないって思ってるから」
「うん。そうだね。でも虎君は僕と約束してくれたから、僕は虎君の言葉を信じたいよ」
頑なな慶史。
普通の人よりもずっとずっと辛い過去を持つ慶史が言った言葉には重みがある。
僕はそれがとても悲しくて、これまでにどれだけの人に傷つけられてきたんだろうと思い、笑い顔が引き攣ってしまった。
「……そんな顔しないでよ」
「ごめん。ごめんね、慶史……」
「あのねぇ、葵は何も悪くないでしょ。俺をいびってたのは葵じゃなくて―――」
「俺だよな」
「! っ、そうだよ! あんただよ!!」
落ち込む僕を宥めるように駆け寄ってくる慶史の心配そうな顔を見て、たくさん傷つけて人を信じられなくなっているはずなのにこんなにも優しい親友を僕はやっぱり大事にしたいと思った。
僕は悪くないと言ってくれる慶史。
そして、そんな慶史の言葉を遮り、自分が諸悪の根源だと言ったのはリビングに戻ってきた虎君だった。
「あんたのせいで葵が落ち込んだんだぞ! どうしてくれるんだよ!!」
「いや、今回はお前のせいだろ」
「! 煩い! 悠栖は関係ないんだから口を挟むな!」
気が立っている今の慶史には全員が敵に見えているのかもしれない。
僕は慶史が自分を傷つける言葉を口にする前に止めないとダメだと使命感を覚えた。
「慶史、慶史」
「何!?」
怒りの形相で振り返るから、ちょっとびっくりした。
でも僕はすぐに気持ちを持ち直して慶史の手を握ると、いつか必ず僕の言葉が本当だったって言わせるからそれまでどうか僕の友達でいて欲しいと訴えた。
これは優しい慶史がその言葉に何と答えるか分かっていての訴え。
卑怯な言い方だと分かっていたけど、慶史が勢いで大切な友達を傷つける前にどうしても気持ちを落ち着かせて欲しかったから仕方ない。
「そんな嫌な言い方しないでよ」
「ごめんね。でも僕、慶史とも虎君とも一緒にいたいんだもん。ワガママだって分かってるけど、許してくれる?」
「葵君に此処まで言わせて『嫌だ』なんて言わないよね? 慶史君は」
「だよな。マモ第一だもんな!」
訴えかける僕の後押しをしてくれるのは、朋喜と悠栖だ。
二人の茶化したようなおどけた口調は先の慶史の理不尽な八つ当たりは気にしていないよと言っているようだった。
「―――っ、分かったよ! 分かりました! 俺が折れたらいいんでしょ!」
「ありがとう、慶史!」
大切な大切な僕の親友。
嬉しくて抱き着いて喜べば、慶史は僕を抱き留め、頭を撫でてくれる。
「言っときますけど、これは不可抗力ですからね!」
「別に何も言ってないだろ?」
僕を抱きしめたまま、慶史が発した言葉は誰に向けたものか?
そんな疑問を抱く前に聞こえた虎君の声に、折角治まった慶史の不機嫌が再発しないか少しだけハラハラした。
「俺だって好きで不機嫌になってるわけじゃないんですけど!?」
「それはそうだろうけど、せめて今日ぐらい我慢しなよ。せっかく葵君がお家に招待してくれたんだから」
怒りの籠った足音と共にようやく慶史がリビングに顔を出す。
その隣には恐らく瑛大と慶史の喧嘩を止めようとしていたであろう朋喜が苦笑いを浮かべていて、僕と悠栖はまだお冠な慶史ではなく朋喜に喧嘩は収まったのかと尋ねた。
「お兄さんが結城君を止めてくれてようやく、ね。慶史君はお兄さんにまで喧嘩を売ろうとしたけど」
「! ちょっと朋喜!」
それはナイショって言っただろう!
そう声を荒げる慶史だけど、僕だって馬鹿じゃない。慶史が虎君に不機嫌をぶつけることぐらい想定の範囲内だ。
僕は苦笑を浮かべながらもこれからの虎君もちゃんと見て欲しいとお願いする。
今まで僕が知らないところで慶史が辛い目に遭っていたことは虎君の幼馴染である海音君から聞いたから、慶史が虎君を好きじゃないという気持ちは理解できる。
でも虎君は、これからは慶史に対して酷い態度を取らないと約束してくれたし、むしろ僕の大事な親友として大切にすると言ってくれた。
僕は虎君のその言葉を信じているから、できれば慶史にはこれからの虎君をちゃんと見て欲しいと思うんだ。
「葵には悪いけど、俺、人間そう簡単に変われないって思ってるから」
「うん。そうだね。でも虎君は僕と約束してくれたから、僕は虎君の言葉を信じたいよ」
頑なな慶史。
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僕はそれがとても悲しくて、これまでにどれだけの人に傷つけられてきたんだろうと思い、笑い顔が引き攣ってしまった。
「……そんな顔しないでよ」
「ごめん。ごめんね、慶史……」
「あのねぇ、葵は何も悪くないでしょ。俺をいびってたのは葵じゃなくて―――」
「俺だよな」
「! っ、そうだよ! あんただよ!!」
落ち込む僕を宥めるように駆け寄ってくる慶史の心配そうな顔を見て、たくさん傷つけて人を信じられなくなっているはずなのにこんなにも優しい親友を僕はやっぱり大事にしたいと思った。
僕は悪くないと言ってくれる慶史。
そして、そんな慶史の言葉を遮り、自分が諸悪の根源だと言ったのはリビングに戻ってきた虎君だった。
「あんたのせいで葵が落ち込んだんだぞ! どうしてくれるんだよ!!」
「いや、今回はお前のせいだろ」
「! 煩い! 悠栖は関係ないんだから口を挟むな!」
気が立っている今の慶史には全員が敵に見えているのかもしれない。
僕は慶史が自分を傷つける言葉を口にする前に止めないとダメだと使命感を覚えた。
「慶史、慶史」
「何!?」
怒りの形相で振り返るから、ちょっとびっくりした。
でも僕はすぐに気持ちを持ち直して慶史の手を握ると、いつか必ず僕の言葉が本当だったって言わせるからそれまでどうか僕の友達でいて欲しいと訴えた。
これは優しい慶史がその言葉に何と答えるか分かっていての訴え。
卑怯な言い方だと分かっていたけど、慶史が勢いで大切な友達を傷つける前にどうしても気持ちを落ち着かせて欲しかったから仕方ない。
「そんな嫌な言い方しないでよ」
「ごめんね。でも僕、慶史とも虎君とも一緒にいたいんだもん。ワガママだって分かってるけど、許してくれる?」
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「ありがとう、慶史!」
大切な大切な僕の親友。
嬉しくて抱き着いて喜べば、慶史は僕を抱き留め、頭を撫でてくれる。
「言っときますけど、これは不可抗力ですからね!」
「別に何も言ってないだろ?」
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そんな疑問を抱く前に聞こえた虎君の声に、折角治まった慶史の不機嫌が再発しないか少しだけハラハラした。
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