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大切な人
大切な人 第11話
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(だって慶史ってば虎君の言葉をすぐに悪い方に捉えちゃうし……)
毎回毎回虎君の優しい笑い顔を『胡散臭い』って切り捨ててる慶史だから、もしかしたら今の虎君の言葉にも在りもしない『裏』を見ようとするかもしれない。
そう僕が不安を覚えたものの、慶史が漏らすのは溜め息だけだった。
(慶史……?)
「ムカつく。マジで態度違い過ぎでしょ」
それは小さな声で呟かれた言葉だったけど、慶史に抱き着いていた僕にはよく聞こえた。
僕は慶史から少し身体を離すと、今の言葉はどういうことかと尋ねるように親友を見つめた。
「……今までみたいに目が笑ってないってことが無いんだよ、あの人」
「え?」
「今までは顔は笑ってても目が全然笑ってなかったんだよ。むしろ『葵に近づくな』って殺気しか感じなかったし。……でも、今はそれが全然ないってこと」
ここまで露骨に変わるとむしろ不気味なんだけど。
そう悪態を漏らす慶史は僕から虎君に視線を移して、
「でもまぁ圧は相変わらずみたいですけど!」
そんな挑発するような言葉を投げかける。
僕がそれを窘めるように言葉を呼ぶも、慶史は言葉を撤回せず虎君を見据えていて……。
「牽制する必要は無くなっても嫉妬はするだろ。お前は葵の『親友』なんだから」
「『親友』に嫉妬するとか付き合いはじめなのに余裕なさすぎじゃないですかぁ?」
「葵に関して余裕なんて生まれてこのかた一度も持ったことないけど?」
刺々しい言い方に虎君は苦笑いを浮かべる。
でも僕は言い合いをする二人よりも虎君の言葉に引っ掛かりを感じてしまった。
「葵が他の誰かに奪われたら俺は生きていけない。……そのことを藤原達はもう知ってるだろう?」
それは暗に僕がこの先虎君以外の誰かを好きになる可能性に怯えていると言っているようだった。
つまり、僕は虎君と恋人になれて浮かれていたけど、虎君はその間もずっと不安を抱いていたということ。
僕は、それが堪らなく悲しかった。
自分の気持ちを疑われたことよりも、虎君がずっと本当の意味で幸せじゃなかったと知って辛かった……。
「だから、そろそろ葵を返してくれるかな?」
「葵は物じゃないんですけど?」
「そんなこと分かってるよ。……でも、それでも葵は俺の『宝物』だから」
だから、俺が嫉妬で狂う前に早く。
そう言って手を伸ばしてくる虎君。
慶史は僕に視線を向けてくると、最初が肝心だからここでガツンと一発言ってやれ! なんて言ってくる。
僕は慶史から離れ、虎君の手を取って……。
「! うわぁ!」
「葵っ」
「ラブラブ、だな」
友達の前だなんて関係ない。
僕は虎君の手を取るとそのまま引き寄せられるがまま抱き着いて頬を摺り寄せ甘えた。
包み込むように抱き締めてくれる虎君の腕の中、僕は小さな声で「ずっとずっと大好きだからね?」と伝えた。この想いは、何があっても変わらないからね。と。
「ああ。不安にさせてごめんな? ちゃんと葵のこと、信じてるから……」
さっき言ったことは起こりえない未来だってちゃんと分かってる。
そう言ってくれる虎君は、やっぱり優しい。
その言葉が、僕がこれ以上悲しい思いをしないようにと虎君がついてくれた嘘だってこと、僕、ちゃんと分かってるよ……。
だから僕はその嘘を受け入れて、よかったと笑う。
僕が他の人を好きになるなんて絶対にあり得ない。と、口で言うことは簡単。
だけど、それでは虎君の不安を払拭することはできない。
きっとどんな言葉を告げても結果は一緒だろう。
だから、言わない。
(そのかわり、こうやってずっとずっと虎君の傍にいるからね?)
虎君がいつかそんな悲しい不安を抱くことが無くなるよう、僕はこれからずっと虎君の一番傍にいようと決意を改にした。
毎回毎回虎君の優しい笑い顔を『胡散臭い』って切り捨ててる慶史だから、もしかしたら今の虎君の言葉にも在りもしない『裏』を見ようとするかもしれない。
そう僕が不安を覚えたものの、慶史が漏らすのは溜め息だけだった。
(慶史……?)
「ムカつく。マジで態度違い過ぎでしょ」
それは小さな声で呟かれた言葉だったけど、慶史に抱き着いていた僕にはよく聞こえた。
僕は慶史から少し身体を離すと、今の言葉はどういうことかと尋ねるように親友を見つめた。
「……今までみたいに目が笑ってないってことが無いんだよ、あの人」
「え?」
「今までは顔は笑ってても目が全然笑ってなかったんだよ。むしろ『葵に近づくな』って殺気しか感じなかったし。……でも、今はそれが全然ないってこと」
ここまで露骨に変わるとむしろ不気味なんだけど。
そう悪態を漏らす慶史は僕から虎君に視線を移して、
「でもまぁ圧は相変わらずみたいですけど!」
そんな挑発するような言葉を投げかける。
僕がそれを窘めるように言葉を呼ぶも、慶史は言葉を撤回せず虎君を見据えていて……。
「牽制する必要は無くなっても嫉妬はするだろ。お前は葵の『親友』なんだから」
「『親友』に嫉妬するとか付き合いはじめなのに余裕なさすぎじゃないですかぁ?」
「葵に関して余裕なんて生まれてこのかた一度も持ったことないけど?」
刺々しい言い方に虎君は苦笑いを浮かべる。
でも僕は言い合いをする二人よりも虎君の言葉に引っ掛かりを感じてしまった。
「葵が他の誰かに奪われたら俺は生きていけない。……そのことを藤原達はもう知ってるだろう?」
それは暗に僕がこの先虎君以外の誰かを好きになる可能性に怯えていると言っているようだった。
つまり、僕は虎君と恋人になれて浮かれていたけど、虎君はその間もずっと不安を抱いていたということ。
僕は、それが堪らなく悲しかった。
自分の気持ちを疑われたことよりも、虎君がずっと本当の意味で幸せじゃなかったと知って辛かった……。
「だから、そろそろ葵を返してくれるかな?」
「葵は物じゃないんですけど?」
「そんなこと分かってるよ。……でも、それでも葵は俺の『宝物』だから」
だから、俺が嫉妬で狂う前に早く。
そう言って手を伸ばしてくる虎君。
慶史は僕に視線を向けてくると、最初が肝心だからここでガツンと一発言ってやれ! なんて言ってくる。
僕は慶史から離れ、虎君の手を取って……。
「! うわぁ!」
「葵っ」
「ラブラブ、だな」
友達の前だなんて関係ない。
僕は虎君の手を取るとそのまま引き寄せられるがまま抱き着いて頬を摺り寄せ甘えた。
包み込むように抱き締めてくれる虎君の腕の中、僕は小さな声で「ずっとずっと大好きだからね?」と伝えた。この想いは、何があっても変わらないからね。と。
「ああ。不安にさせてごめんな? ちゃんと葵のこと、信じてるから……」
さっき言ったことは起こりえない未来だってちゃんと分かってる。
そう言ってくれる虎君は、やっぱり優しい。
その言葉が、僕がこれ以上悲しい思いをしないようにと虎君がついてくれた嘘だってこと、僕、ちゃんと分かってるよ……。
だから僕はその嘘を受け入れて、よかったと笑う。
僕が他の人を好きになるなんて絶対にあり得ない。と、口で言うことは簡単。
だけど、それでは虎君の不安を払拭することはできない。
きっとどんな言葉を告げても結果は一緒だろう。
だから、言わない。
(そのかわり、こうやってずっとずっと虎君の傍にいるからね?)
虎君がいつかそんな悲しい不安を抱くことが無くなるよう、僕はこれからずっと虎君の一番傍にいようと決意を改にした。
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