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大切な人
大切な人 第18話
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「……何?」
突然の抱擁に慶史の身体は一瞬震えた。
でも、すぐに平静を取り戻したのか、僕の腕を叩くと「痛いんだけど」って苦笑交じり。
「落ち着いた……?」
「ん。……ごめん。……ちょっと嫌なことがあってあの人に八つ当たりしてた……」
素直に自分の非を認めると、慶史はまだ離れない僕に「今日、実家に顔を出すことになってるんだ」とずっとイライラしていた理由を教えてくれた。
僕は内臓をぎゅっと掴まれた感覚に襲われながらも慶史から少し離れると、当初の予定にない予定を口にした。
「泊って行ってくれないの?」
「え……?」
「そのつもりでみんなの部屋、用意してあるのに」
そう伝えれば、悠栖が「マジで!?」と嬉しそうな声を上げた。
「一応外泊届出してきてよかったぁ!」
「葵君、本当にいいの? 3人もお邪魔じゃない?」
「お、俺は家に帰るって―――」
「だーめ! 今日は4人でいっぱい喋るの!」
遠慮してくれる朋喜にゲストルームは四つあるから全然平気だと伝え、遠慮せずにみんなでお泊り会しようと誘う。
純粋に喜んでくれる悠栖と朋喜には少しの罪悪感を覚えたけど、どうしても慶史を家に帰らせたくなかったから仕方ない。
渋々折れてくれる慶史に、悠栖と一緒に大喜びする僕。後で母さん達に上手く伝えないとダメだけど、とりあえずよかった!
「でも、いいの? 先輩、嫌がるんじゃない?」
「もう! 虎君だってちゃんと分かってくれるよ?」
虎君が変わったってことはもう分かってるでしょ?
そう笑えば、「それならいいけど」と苦笑交じりに実家に帰れないと伝えると言ってくれた。
「ありがとね、葵」
「? 何が?」
「嘘までついてくれて」
僕にしか聞こえない声でお礼を言ってくる慶史。何のこと? ってとぼけたけど、「俺に嘘を吐こうなんて100年早いよ」って苦笑いを返されてしまった。
「慶史、さっさと家に電話しろよ! マモんちで大騒ぎするから! って!」
「はいはい。分かった分かった」
仕方ないなぁ……って携帯を取り出す慶史は、そのまま電話をかけてくるってリビングを出て行った。
「手がかかるね。慶史君は」
「朋喜?」
「帰りたくないなら最初から『帰る』なんて言わなければいいのにね?」
「ホントーだよ……。捻くれ女王様には困ったもんだ」
「悠栖……?」
心配そうに慶史を見送った僕の肩に乗せられる朋喜の手。そして逆の肩に悠栖の手。
僕は表情を驚きに変えて二人を交互に振り返った。
「理由は分からないけど、慶史君が実家に帰りたがってないことぐらい寮生ならみんな知ってるよ?」
「盆も正月も何かと理由つけて一切帰らねぇーもんな。3年間それが続いたら嫌でも何かあるんだって思うもんだろ」
「そ、それじゃ、『外泊届出してきた』って―――」
「悠栖、後から連絡入れておいてくれる? 寮長ってサッカー部の先輩だったんでしょ?」
「オッケー。任せとけ」
くれぐれも慶史君にバレないようにね。
そう念を押す朋喜に、悠栖は頼りになる笑みで親指を立てて見せた。
「二人とも……、ありがとうっ!」
「何でマモが『ありがとう』なんて言うんだよ。なぁ?」
「そうだね。その言葉は、いつか慶史君から言ってもらわないとね」
二人は慶史が何か隠していることを知っている。そしてそれが家に関わることだということも気づいている。
でも、二人は慶史が話してくれるまで気長に待つと笑ってくれた。葵君には聞かないから大丈夫だよ。と……。
「悠栖、朋喜……。ごめんねっ、ごめんね……」
「だから、マモが謝ることでもねぇーって」
悠栖はぐしゃぐしゃと髪を乱すように頭を撫でてきて、朋喜はそれを見て笑っていた。
突然の抱擁に慶史の身体は一瞬震えた。
でも、すぐに平静を取り戻したのか、僕の腕を叩くと「痛いんだけど」って苦笑交じり。
「落ち着いた……?」
「ん。……ごめん。……ちょっと嫌なことがあってあの人に八つ当たりしてた……」
素直に自分の非を認めると、慶史はまだ離れない僕に「今日、実家に顔を出すことになってるんだ」とずっとイライラしていた理由を教えてくれた。
僕は内臓をぎゅっと掴まれた感覚に襲われながらも慶史から少し離れると、当初の予定にない予定を口にした。
「泊って行ってくれないの?」
「え……?」
「そのつもりでみんなの部屋、用意してあるのに」
そう伝えれば、悠栖が「マジで!?」と嬉しそうな声を上げた。
「一応外泊届出してきてよかったぁ!」
「葵君、本当にいいの? 3人もお邪魔じゃない?」
「お、俺は家に帰るって―――」
「だーめ! 今日は4人でいっぱい喋るの!」
遠慮してくれる朋喜にゲストルームは四つあるから全然平気だと伝え、遠慮せずにみんなでお泊り会しようと誘う。
純粋に喜んでくれる悠栖と朋喜には少しの罪悪感を覚えたけど、どうしても慶史を家に帰らせたくなかったから仕方ない。
渋々折れてくれる慶史に、悠栖と一緒に大喜びする僕。後で母さん達に上手く伝えないとダメだけど、とりあえずよかった!
「でも、いいの? 先輩、嫌がるんじゃない?」
「もう! 虎君だってちゃんと分かってくれるよ?」
虎君が変わったってことはもう分かってるでしょ?
そう笑えば、「それならいいけど」と苦笑交じりに実家に帰れないと伝えると言ってくれた。
「ありがとね、葵」
「? 何が?」
「嘘までついてくれて」
僕にしか聞こえない声でお礼を言ってくる慶史。何のこと? ってとぼけたけど、「俺に嘘を吐こうなんて100年早いよ」って苦笑いを返されてしまった。
「慶史、さっさと家に電話しろよ! マモんちで大騒ぎするから! って!」
「はいはい。分かった分かった」
仕方ないなぁ……って携帯を取り出す慶史は、そのまま電話をかけてくるってリビングを出て行った。
「手がかかるね。慶史君は」
「朋喜?」
「帰りたくないなら最初から『帰る』なんて言わなければいいのにね?」
「ホントーだよ……。捻くれ女王様には困ったもんだ」
「悠栖……?」
心配そうに慶史を見送った僕の肩に乗せられる朋喜の手。そして逆の肩に悠栖の手。
僕は表情を驚きに変えて二人を交互に振り返った。
「理由は分からないけど、慶史君が実家に帰りたがってないことぐらい寮生ならみんな知ってるよ?」
「盆も正月も何かと理由つけて一切帰らねぇーもんな。3年間それが続いたら嫌でも何かあるんだって思うもんだろ」
「そ、それじゃ、『外泊届出してきた』って―――」
「悠栖、後から連絡入れておいてくれる? 寮長ってサッカー部の先輩だったんでしょ?」
「オッケー。任せとけ」
くれぐれも慶史君にバレないようにね。
そう念を押す朋喜に、悠栖は頼りになる笑みで親指を立てて見せた。
「二人とも……、ありがとうっ!」
「何でマモが『ありがとう』なんて言うんだよ。なぁ?」
「そうだね。その言葉は、いつか慶史君から言ってもらわないとね」
二人は慶史が何か隠していることを知っている。そしてそれが家に関わることだということも気づいている。
でも、二人は慶史が話してくれるまで気長に待つと笑ってくれた。葵君には聞かないから大丈夫だよ。と……。
「悠栖、朋喜……。ごめんねっ、ごめんね……」
「だから、マモが謝ることでもねぇーって」
悠栖はぐしゃぐしゃと髪を乱すように頭を撫でてきて、朋喜はそれを見て笑っていた。
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