268 / 552
大切な人
大切な人 第19話
しおりを挟む
「え、何この状況」
「ああ、電話終わったの? 慶史君。ご両親はどうだった?」
「久しぶりに会えると思ったのにってボヤかれたけど、まぁ葵が相手なら仕方ないって納得はしてくれたよ」
僕をもみくちゃにしている悠栖とそれを見て笑っている朋喜の姿に、実家への電話を終えて戻ってきた慶史が肩を竦ませ「あんまり葵を苛めないでよ」っと僕を気遣ってくれる。
優しい慶史に僕達は視線を合わせ笑って、それに慶史は何故笑っているのか分からずちょっぴり不機嫌な顔をする。
「慶史ってマジでマモ大好きだよな。そりゃ先輩に嫉妬されるわ」
「は? 何? バカ悠栖は俺に喧嘩売ってるの?」
「いや、事実を述べただけだろ? もし俺が先輩の立場だったら、やっぱ面白くねぇーって思うわぁ」
「ふざけんな! 俺は一度だって葵をあんな穢れた目で見たことねぇーからな!! あの変態と一緒にすんな!!」
悠栖の胸ぐらを掴んで威嚇する慶史。
僕と朋喜は二人をまた頑張って引き離すことになる。
「もう! なんで不用意なこと言うの? 本当、悠栖ってデリカシーゼロなんだから!!」
空気ぐらい読んでよね!!
そう怒りを露わにする朋喜は勢い余って悠栖の首を絞めていて、しっかり腕が首に入っちゃってる。
物凄く苦しそうな表情の悠栖は朋喜の腕を叩いて意識が落ちそうだと訴えている。
僕はそれを見ながら、可愛いけどやっぱり朋喜も男の子なんだなぁなんて思ったり。
「何騒いでんだ。お前等」
「! 茂斗、降りてきたんだ?」
騒いでたわけじゃないけど、この場に入ってきたばかりの茂斗からすればどう見ても騒いでじゃれてるようにしか見えないだろう。
僕は慶史が落ち着いたことを確認して茂斗に駆け寄ると、さっきの悪態を反省する意味を込めて謝った。
「さっきはごめんね、茂斗」
「……お喋り虎に全部聞いたみたいだな」
「! うん。聞いた」
僕は申し訳なさそうな顔をしていたと思う。
だから茂斗も僕の誤解が解けて謝っていると分かったみたいで、それはそれで腹が立つと言わんばかりに顔を顰めた。
意地悪な言い方に正直ムッとしたけど、茂斗の置かれてる状況を考えると八つ当たりをしたくなる気持ちも分からなくもないからグッと我慢。
「シゲちゃん、マモちゃんと喧嘩したの……?」
「……してねぇーよ。そんな心配そうな顔すんなよ、凪」
茂斗の機嫌も悪いままかとため息を吐きそうになった僕。
それを助けてくれるのは凪ちゃんで、心配そうに僕達を見つめる。
凪ちゃんに弱い茂斗が凪ちゃんの不安な眼差しをそのままにするわけもなく、小さく溜め息を吐くと次の瞬間笑って凪ちゃんの髪を撫でて見せた。
「悪いな、葵。単なる八つ当たりだから気にすんな」
「ん、分かった」
苦笑いの茂斗に、僕は頷きを返す。
見れば凪ちゃんは茂斗の手を握り締め寄り添っていて、これで付き合っていないのか……とやっぱり驚きを隠せない。
「……海音兄と虎は?」
「あ、さっき出かけたよ。何か用だった?」
「いや、用ってか、いるもんだと思ってたのに居ないから聞いただけ」
僕の意味深な視線を感じたのか、茂斗はこっちを見ろと言わんばかり。
怒らせちゃったかな……って心配しながら愛想笑いを浮かべれば、今度は分かり易く溜め息を吐かれてしまった。
「……で、藤原の機嫌はなおってねぇーの?」
「! ちょっと! ばっちり聞こえてるけど? そういうのは聞こえないように聞くもんでしょ?」
「全然なおってねぇーじゃん。……瑛大も居ないのに何カリカリしてんだよ、藤原」
「だから! カリカリしてないってば!」
お前の神経を逆撫でする奴は此処にはいないだろうが。
そう悪戯な口調で慶史を茶化す茂斗。
慶史はそんな茂斗を睨みつけると、「相変わらずな性格だな! お前も!」って怒りを露わにする。
「精神安定剤が居るのに喧嘩吹っ掛けてくんな!」
「お前の減らず口も相変わらずだな。葵に移すなよ。虎が煩いから」
「! なんだとっ――――」
「落ち着け、慶史。あいつの言う通り、お前イライラしすぎだぞ」
止めに入ってくれる悠栖の言葉に声を詰まらせる慶史は、まだちょっと落ち着かない様子。
イライラの原因はもう取り除いたと思っていたけど、まだ残ってるのかな……?
「ああ、電話終わったの? 慶史君。ご両親はどうだった?」
「久しぶりに会えると思ったのにってボヤかれたけど、まぁ葵が相手なら仕方ないって納得はしてくれたよ」
僕をもみくちゃにしている悠栖とそれを見て笑っている朋喜の姿に、実家への電話を終えて戻ってきた慶史が肩を竦ませ「あんまり葵を苛めないでよ」っと僕を気遣ってくれる。
優しい慶史に僕達は視線を合わせ笑って、それに慶史は何故笑っているのか分からずちょっぴり不機嫌な顔をする。
「慶史ってマジでマモ大好きだよな。そりゃ先輩に嫉妬されるわ」
「は? 何? バカ悠栖は俺に喧嘩売ってるの?」
「いや、事実を述べただけだろ? もし俺が先輩の立場だったら、やっぱ面白くねぇーって思うわぁ」
「ふざけんな! 俺は一度だって葵をあんな穢れた目で見たことねぇーからな!! あの変態と一緒にすんな!!」
悠栖の胸ぐらを掴んで威嚇する慶史。
僕と朋喜は二人をまた頑張って引き離すことになる。
「もう! なんで不用意なこと言うの? 本当、悠栖ってデリカシーゼロなんだから!!」
空気ぐらい読んでよね!!
そう怒りを露わにする朋喜は勢い余って悠栖の首を絞めていて、しっかり腕が首に入っちゃってる。
物凄く苦しそうな表情の悠栖は朋喜の腕を叩いて意識が落ちそうだと訴えている。
僕はそれを見ながら、可愛いけどやっぱり朋喜も男の子なんだなぁなんて思ったり。
「何騒いでんだ。お前等」
「! 茂斗、降りてきたんだ?」
騒いでたわけじゃないけど、この場に入ってきたばかりの茂斗からすればどう見ても騒いでじゃれてるようにしか見えないだろう。
僕は慶史が落ち着いたことを確認して茂斗に駆け寄ると、さっきの悪態を反省する意味を込めて謝った。
「さっきはごめんね、茂斗」
「……お喋り虎に全部聞いたみたいだな」
「! うん。聞いた」
僕は申し訳なさそうな顔をしていたと思う。
だから茂斗も僕の誤解が解けて謝っていると分かったみたいで、それはそれで腹が立つと言わんばかりに顔を顰めた。
意地悪な言い方に正直ムッとしたけど、茂斗の置かれてる状況を考えると八つ当たりをしたくなる気持ちも分からなくもないからグッと我慢。
「シゲちゃん、マモちゃんと喧嘩したの……?」
「……してねぇーよ。そんな心配そうな顔すんなよ、凪」
茂斗の機嫌も悪いままかとため息を吐きそうになった僕。
それを助けてくれるのは凪ちゃんで、心配そうに僕達を見つめる。
凪ちゃんに弱い茂斗が凪ちゃんの不安な眼差しをそのままにするわけもなく、小さく溜め息を吐くと次の瞬間笑って凪ちゃんの髪を撫でて見せた。
「悪いな、葵。単なる八つ当たりだから気にすんな」
「ん、分かった」
苦笑いの茂斗に、僕は頷きを返す。
見れば凪ちゃんは茂斗の手を握り締め寄り添っていて、これで付き合っていないのか……とやっぱり驚きを隠せない。
「……海音兄と虎は?」
「あ、さっき出かけたよ。何か用だった?」
「いや、用ってか、いるもんだと思ってたのに居ないから聞いただけ」
僕の意味深な視線を感じたのか、茂斗はこっちを見ろと言わんばかり。
怒らせちゃったかな……って心配しながら愛想笑いを浮かべれば、今度は分かり易く溜め息を吐かれてしまった。
「……で、藤原の機嫌はなおってねぇーの?」
「! ちょっと! ばっちり聞こえてるけど? そういうのは聞こえないように聞くもんでしょ?」
「全然なおってねぇーじゃん。……瑛大も居ないのに何カリカリしてんだよ、藤原」
「だから! カリカリしてないってば!」
お前の神経を逆撫でする奴は此処にはいないだろうが。
そう悪戯な口調で慶史を茶化す茂斗。
慶史はそんな茂斗を睨みつけると、「相変わらずな性格だな! お前も!」って怒りを露わにする。
「精神安定剤が居るのに喧嘩吹っ掛けてくんな!」
「お前の減らず口も相変わらずだな。葵に移すなよ。虎が煩いから」
「! なんだとっ――――」
「落ち着け、慶史。あいつの言う通り、お前イライラしすぎだぞ」
止めに入ってくれる悠栖の言葉に声を詰まらせる慶史は、まだちょっと落ち着かない様子。
イライラの原因はもう取り除いたと思っていたけど、まだ残ってるのかな……?
0
あなたにおすすめの小説
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
かわいい美形の後輩が、俺にだけメロい
日向汐
BL
過保護なかわいい系美形の後輩。
たまに見せる甘い言動が受けの心を揺する♡
そんなお話。
【攻め】
雨宮千冬(あめみや・ちふゆ)
大学1年。法学部。
淡いピンク髪、甘い顔立ちの砂糖系イケメン。
甘く切ないラブソングが人気の、歌い手「フユ」として匿名活動中。
【受け】
睦月伊織(むつき・いおり)
大学2年。工学部。
黒髪黒目の平凡大学生。ぶっきらぼうな口調と態度で、ちょっとずぼら。恋愛は初心。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる