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恋しい人
恋しい人 第28話
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「何怒ってるんだ。プロに任せた方が安心に決まってるだろうが」
「そうだけど! そうだけど、斗弛弥さんは言い方が悪いんです!」
虎君を貶してるように聞こえます!
そう不満を訴えているのに、斗弛弥さんは愉快そうにクスクスと笑っていて全然応えてくれない。
斗弛弥さん相手に何を言っても無駄だってことはよく知っている。だから黙って不機嫌だけを示す。でも……。
「その顔写真に撮って虎に送ったらアイツどんな顔するかな?」
頬袋に餌を溜めたハムスターみたいだと揶揄され、また笑われる。
(一日に二回もハムスターに喩えられた……。僕、そんなにハムスターみたいなのかな……)
膨れっ面を貫きたいのにしょんぼりしてしまってそれができない。
斗弛弥さんはそれも見越していたのか、僕の頭をポンポンと叩いてきてご機嫌をとられる。
「引き留めて悪かったな。虎が待ってるんだろう? 早く行ってやれ」
「はい……」
「こらこら。そんな顔で合流してくれるなよ? 桔梗が騒いで煩いことになるから」
苦笑を漏らす斗弛弥さんは、虎君相手ならどうとでもなるけど姉さん相手だとあしらうこともできず困るんだと言っている。
(なんで姉さん相手だと困るんだろう?)
そんな疑問を持つのは当然だ。
「そう言えば斗弛弥さんって姉さんに優しいよね。どうして?」
「桔梗に限らず、女子供相手には優しいだろう?」
質問したら、質問が返ってきた。
確かに斗弛弥さんは姉さんだけじゃなくて僕にも優しい。けど、女の人と子供に優しいって言うなら、虎君や茂斗にも優しいってことだよね?
(アレって優しい、のか……?)
「なんだ、微妙な顔して」
「だって斗弛弥さん、虎君と茂斗に対しては厳しくない? 僕には優しいけど……」
「ああ。ダブルジュニアは別だ。あいつらは打たれて強くなるタイプだって信じてるからな」
守るべきものがある奴は子供であろうが一人の男として扱う。
そう言った斗弛弥さんは虎君と茂斗に厳しいのは自分なりの愛情の証だと笑う。
「『守るべきもの』?」
「葵と凪のことだろ。何キョトンとしてるんだ、お前は」
「! ぼ、僕だって虎君のこと守りたいって思ってます!」
苦笑を漏らす斗弛弥さんの言ってる意味を理解して、慌てて反論。
僕は虎君に守って欲しいと願っているわけじゃない。僕だって虎君を守りたいと思ってる。だから僕にもちゃんと『守るべきもの』がある。
それなのに斗弛弥さんは虎君と茂斗のことだけ一人の男の人として扱っている。これは聞き逃すことができないことだ。
「僕のことも一人の男として扱ってください!」
「それは無理な話だな」
「どうして!?」
「自分の身は自分で守る。それができてこそ相手を守れるってもんだろ?」
自分の身すら守れない奴を一人の男として扱うことはまだできない。
斗弛弥さんはそう言うと腕時計を気にして「そろそろ中等部に戻るから」と踵を返して歩き出してしまった。
「と、斗弛弥さん!」
「気を付けて帰りなさい」
振り返らずに手を振られ、呼び止めることは叶わなかった。
僕は斗弛弥さんの言葉に受けたショックをそのままにトボトボと昇降口へと歩き出す。
上履きから履き替え校舎を後にすれば、「葵!」と嬉しそうな高い声が耳に届く。この声、姉さんだ。
俯き加減だった顔を上げれば、此方に走り寄ってくる姉さんの姿。
きっとその後ろには虎君と陽琥さんがいるんだろうけど、近づいてくる姉さんに視界の大半が奪われてしまって二人の姿は見つからなかった。
「葵、入学おめでとうー!」
「ぅぷ……、あ、ありがとう、姉さん」
走り寄ってくる勢いのまま抱きしめられ、姉さんの胸に顔が埋まってしまう。長身な姉さんと成長しない自分の身長差が恨めしい。
そもそも高校一年生の弟を躊躇いもなく抱きしめてくる大学生の姉って世間的にはどうなんだろう?
モデル体型と称賛されている姉さんだけど胸は大きいから、こうやって抱きしめられたら顔はその胸に埋もれてしまう。
それを、男なら嬉しいシチュエーションだと思うのが普通だろうか?
それとも、姉相手だから鬱陶しいと思うのが普通だろうか?
(嬉しいとも鬱陶しいとも思わないけど、息苦しいんだよな……)
必死に姉さんの胸から逃げようとするも、テンションの上がっている姉さんは遠慮なしに抱きしめてきてままならない。
「そうだけど! そうだけど、斗弛弥さんは言い方が悪いんです!」
虎君を貶してるように聞こえます!
そう不満を訴えているのに、斗弛弥さんは愉快そうにクスクスと笑っていて全然応えてくれない。
斗弛弥さん相手に何を言っても無駄だってことはよく知っている。だから黙って不機嫌だけを示す。でも……。
「その顔写真に撮って虎に送ったらアイツどんな顔するかな?」
頬袋に餌を溜めたハムスターみたいだと揶揄され、また笑われる。
(一日に二回もハムスターに喩えられた……。僕、そんなにハムスターみたいなのかな……)
膨れっ面を貫きたいのにしょんぼりしてしまってそれができない。
斗弛弥さんはそれも見越していたのか、僕の頭をポンポンと叩いてきてご機嫌をとられる。
「引き留めて悪かったな。虎が待ってるんだろう? 早く行ってやれ」
「はい……」
「こらこら。そんな顔で合流してくれるなよ? 桔梗が騒いで煩いことになるから」
苦笑を漏らす斗弛弥さんは、虎君相手ならどうとでもなるけど姉さん相手だとあしらうこともできず困るんだと言っている。
(なんで姉さん相手だと困るんだろう?)
そんな疑問を持つのは当然だ。
「そう言えば斗弛弥さんって姉さんに優しいよね。どうして?」
「桔梗に限らず、女子供相手には優しいだろう?」
質問したら、質問が返ってきた。
確かに斗弛弥さんは姉さんだけじゃなくて僕にも優しい。けど、女の人と子供に優しいって言うなら、虎君や茂斗にも優しいってことだよね?
(アレって優しい、のか……?)
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「だって斗弛弥さん、虎君と茂斗に対しては厳しくない? 僕には優しいけど……」
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そう言った斗弛弥さんは虎君と茂斗に厳しいのは自分なりの愛情の証だと笑う。
「『守るべきもの』?」
「葵と凪のことだろ。何キョトンとしてるんだ、お前は」
「! ぼ、僕だって虎君のこと守りたいって思ってます!」
苦笑を漏らす斗弛弥さんの言ってる意味を理解して、慌てて反論。
僕は虎君に守って欲しいと願っているわけじゃない。僕だって虎君を守りたいと思ってる。だから僕にもちゃんと『守るべきもの』がある。
それなのに斗弛弥さんは虎君と茂斗のことだけ一人の男の人として扱っている。これは聞き逃すことができないことだ。
「僕のことも一人の男として扱ってください!」
「それは無理な話だな」
「どうして!?」
「自分の身は自分で守る。それができてこそ相手を守れるってもんだろ?」
自分の身すら守れない奴を一人の男として扱うことはまだできない。
斗弛弥さんはそう言うと腕時計を気にして「そろそろ中等部に戻るから」と踵を返して歩き出してしまった。
「と、斗弛弥さん!」
「気を付けて帰りなさい」
振り返らずに手を振られ、呼び止めることは叶わなかった。
僕は斗弛弥さんの言葉に受けたショックをそのままにトボトボと昇降口へと歩き出す。
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俯き加減だった顔を上げれば、此方に走り寄ってくる姉さんの姿。
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「ぅぷ……、あ、ありがとう、姉さん」
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そもそも高校一年生の弟を躊躇いもなく抱きしめてくる大学生の姉って世間的にはどうなんだろう?
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それとも、姉相手だから鬱陶しいと思うのが普通だろうか?
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必死に姉さんの胸から逃げようとするも、テンションの上がっている姉さんは遠慮なしに抱きしめてきてままならない。
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