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恋しい人
恋しい人 第27話
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ホームルームが終わり、僕はカバンを手に取り立ち上がる。
隣の席ではまだ座ったままの慶史がニヤニヤ笑っていて、僕は溜め息を吐くと「その顔、嫌い」と軽く睨んだ。
「なんで? 俺はただ笑ってるだけなのに酷くない?」
「『ただ笑ってるだけ』なら、慶史の笑顔、大好きだよ。でも、違うよね? 今楽しんでるよね?」
分かるよ。僕が今すぐにでも虎君に会いに行きたいって思ってるって分かっていてちょっかいを掛けてるんだよね?
「『楽しんでる』だなんて酷いなぁ」
「こら慶史君。葵君を引き留めないの」
ニヤニヤ笑いながらわざとらしい声で傷ついたと言う慶史に呆れていれば、帰り支度を済ませた朋喜が僕の援護射撃に加わってくれる。
朋喜の後ろには姫神君の姿があって「親友苛めか?」と眉を顰めていた。
「だから苛めてないってば。帰るのをちょっと妨害してるだけで」
「三谷、気にせず帰れ。藤原の相手は俺がしといてやるから」
「! 何それ、自分が葵の代わりになれると思ってるの? 図々しくない?」
姫神君は僕にさっさと帰るよう促し、慶史の前の席に座ると「ほら喋れ」と傲慢とも思える態度を見せた。
人に命令されることを嫌う慶史はそれに怒りを露わにして、放って帰ったらまた喧嘩を始めてしまいそうだと心配になる。
僕が帰ることを躊躇していれば、目の前で繰り広げられる悪態の応酬。でも、なんでだろう? 慶史からも姫神君からも険悪な雰囲気は感じ取れない。
ポカンとしていれば朋喜に肩を叩かれ、「大丈夫だよ」と笑われる。喧嘩しそうになったら今度は僕が止めるから。と。
「ほら、お姉さん達待ってるんでしょ?」
「う、うん。でも、本当に帰って大丈夫かな……?」
「大丈夫。僕を信じて」
背中を押して僕を教室から出て行くように促す朋喜は虎君が待っているとは言わず、姉さん達がとぼかしてくれた。同性同士の恋愛に否定的な姫神君にバレないように気を使ってくれているのかもしれない。
僕は喧嘩の心配をしながらも朋喜に従い、帰ることにする。
「ごめんね、お願い」
「任せて。お兄さん達によろしくね」
手を振って見送ってくれる朋喜に手を振り返し、僕は正門で待ってくれているだろう虎君に会うために踵を返した。
下駄箱へと急いでいると、廊下は走っちゃダメだって分かってるけどついつい駆け足になってしまう。
「三谷君、廊下を走らない」
「! 斗弛弥さん!」
急いでいた足を止めるのは、注意してきた先生が斗弛弥さんだったから。
方向転換して斗弛弥さんに駆け寄れば、「入学おめでとう」と頭を撫でられた。僕はそれにびっくりしながらも「ありがとうございます」と笑い返す。
僕と斗弛弥さんはずっと昔からの知り合い。でも、此処では生徒と先生だからお互い適切な距離を保つよう心掛けている。偶にこうやって親戚のお兄さんみたいに関わってくれるんだけど。
「今日は桔梗が来てたみたいだな」
「はい。父さん達が茂斗の方に行ったから絶対に僕の方に行くって」
入学式である意味一番目立ってたぞ。なんて笑う斗弛弥さん。僕はですよねと苦笑を返した。
今日の入学式では二度ざわめきが起こった。二度目は新入生代表の挨拶で姫神君が壇上に上がった時だったが、最初のざわめきは入学式がはじまってすぐの時だった。
講堂に入場してきた新入生の中から僕を探していた姉さんの姿にみんなが感嘆の声を漏らしていた。悠栖の話では姉さんに見惚れて首が180度回りそうな人もいたらしい。
「なるほど。茂が一緒なら樹里斗には護衛は不要だな」
宍戸が居た理由が理解できた。
そう納得する斗弛弥さん。虎だけじゃ心許無いからな。と。
「! 虎君だけで十分です!!」
分かってる。斗弛弥さんは悪気があって言ったわけじゃないって理解してる。
でも、それでも僕は虎君を軽んじる言葉を放っておくことはできない。絶対に。
隣の席ではまだ座ったままの慶史がニヤニヤ笑っていて、僕は溜め息を吐くと「その顔、嫌い」と軽く睨んだ。
「なんで? 俺はただ笑ってるだけなのに酷くない?」
「『ただ笑ってるだけ』なら、慶史の笑顔、大好きだよ。でも、違うよね? 今楽しんでるよね?」
分かるよ。僕が今すぐにでも虎君に会いに行きたいって思ってるって分かっていてちょっかいを掛けてるんだよね?
「『楽しんでる』だなんて酷いなぁ」
「こら慶史君。葵君を引き留めないの」
ニヤニヤ笑いながらわざとらしい声で傷ついたと言う慶史に呆れていれば、帰り支度を済ませた朋喜が僕の援護射撃に加わってくれる。
朋喜の後ろには姫神君の姿があって「親友苛めか?」と眉を顰めていた。
「だから苛めてないってば。帰るのをちょっと妨害してるだけで」
「三谷、気にせず帰れ。藤原の相手は俺がしといてやるから」
「! 何それ、自分が葵の代わりになれると思ってるの? 図々しくない?」
姫神君は僕にさっさと帰るよう促し、慶史の前の席に座ると「ほら喋れ」と傲慢とも思える態度を見せた。
人に命令されることを嫌う慶史はそれに怒りを露わにして、放って帰ったらまた喧嘩を始めてしまいそうだと心配になる。
僕が帰ることを躊躇していれば、目の前で繰り広げられる悪態の応酬。でも、なんでだろう? 慶史からも姫神君からも険悪な雰囲気は感じ取れない。
ポカンとしていれば朋喜に肩を叩かれ、「大丈夫だよ」と笑われる。喧嘩しそうになったら今度は僕が止めるから。と。
「ほら、お姉さん達待ってるんでしょ?」
「う、うん。でも、本当に帰って大丈夫かな……?」
「大丈夫。僕を信じて」
背中を押して僕を教室から出て行くように促す朋喜は虎君が待っているとは言わず、姉さん達がとぼかしてくれた。同性同士の恋愛に否定的な姫神君にバレないように気を使ってくれているのかもしれない。
僕は喧嘩の心配をしながらも朋喜に従い、帰ることにする。
「ごめんね、お願い」
「任せて。お兄さん達によろしくね」
手を振って見送ってくれる朋喜に手を振り返し、僕は正門で待ってくれているだろう虎君に会うために踵を返した。
下駄箱へと急いでいると、廊下は走っちゃダメだって分かってるけどついつい駆け足になってしまう。
「三谷君、廊下を走らない」
「! 斗弛弥さん!」
急いでいた足を止めるのは、注意してきた先生が斗弛弥さんだったから。
方向転換して斗弛弥さんに駆け寄れば、「入学おめでとう」と頭を撫でられた。僕はそれにびっくりしながらも「ありがとうございます」と笑い返す。
僕と斗弛弥さんはずっと昔からの知り合い。でも、此処では生徒と先生だからお互い適切な距離を保つよう心掛けている。偶にこうやって親戚のお兄さんみたいに関わってくれるんだけど。
「今日は桔梗が来てたみたいだな」
「はい。父さん達が茂斗の方に行ったから絶対に僕の方に行くって」
入学式である意味一番目立ってたぞ。なんて笑う斗弛弥さん。僕はですよねと苦笑を返した。
今日の入学式では二度ざわめきが起こった。二度目は新入生代表の挨拶で姫神君が壇上に上がった時だったが、最初のざわめきは入学式がはじまってすぐの時だった。
講堂に入場してきた新入生の中から僕を探していた姉さんの姿にみんなが感嘆の声を漏らしていた。悠栖の話では姉さんに見惚れて首が180度回りそうな人もいたらしい。
「なるほど。茂が一緒なら樹里斗には護衛は不要だな」
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そう納得する斗弛弥さん。虎だけじゃ心許無いからな。と。
「! 虎君だけで十分です!!」
分かってる。斗弛弥さんは悪気があって言ったわけじゃないって理解してる。
でも、それでも僕は虎君を軽んじる言葉を放っておくことはできない。絶対に。
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