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恋しい人
恋しい人 第31話
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「ご、誤魔化そうとしてる……?」
「何を誤魔化すんだよ? 俺が嫉妬深いことはもう知ってるだろ?」
受け取ったキスを疑えば、苦笑が向けられる。葵には全部正直に話すと約束しただろ? って。
僕は虎君の胸に頬を摺り寄せ、「でも虎君は大人だもん」と虎君は子供じゃないと訴えた。僕がこうなりたいと願い憧れる人だよ。と。
すると虎君は僕の髪を撫でながら、それが怖いと言った。
「? 何が?」
「葵の理想から外れてしまわないか、それが心配なんだ。……葵が思い描いている『俺』じゃなくなった瞬間、俺は葵を失うことになるだろ?」
日々理想の『来須虎』で居続けるよう努力していると言った虎君が見せる不安。
それに僕は慌てて虎君から身を放し、「そんなことない!」と否定の声を上げた。
「確かに僕は虎君に憧れてるけどそれは男の人として憧れてるだけで恋人としてじゃないからね!?」
早く伝えたくて一息で言い切ると、虎君の首に腕を巻き付けさっきよりもずっと密着するように抱き着いた。
虎君は何も言わず僕を抱き留め、そのまま優しく抱きしめてくれる。
「僕は、僕は虎君が理想の男の人だから好きになったわけじゃないよ。虎君が『僕の虎君』だから大好きなんだよ」
もし僕が虎君を嫌いになることがあるとすれば――絶対に嫌いにならないけど、でも、もしもその可能性があるとすれば、それはたった一つしかない。
「虎君が僕を嫌いになったら、僕はきっと自分を守るために虎君を嫌いになっちゃうと思うけど……」
「俺が葵を嫌いになるなんて、そんな未来、何が起ころうとも絶対に来ないぞ」
「うん。信じてる。だから、僕が虎君を嫌いになる未来も絶対に来ないよ」
大好きだよ。
そう想いを伝え、虎君に一層強く抱き着く。虎君は僕と同じように強く抱きしめてくれて安心する。
「……葵」
「何……?」
「『信じて欲しい』。この言葉を言っても慰めにしかならないって分かってるけど、言わせて欲しい。俺は何があろうと葵だけを愛してる。この先何があろうと、誰と出会おうと、俺が愛してる人は葵だけだ」
不安になる気持ちは分かると言う虎君。自分も不安だから。と。
でも、それでも虎君は僕の気持ちを必ず信じると言ってくれる。
「葵の口から告げられた言葉だけを信じる。俺の想像で葵を疑いたくないからな」
「! 僕もっ、僕も虎君のこと、疑いたくないっ!」
「ん。なら、少しでも不安に感じたら、ちゃんと言葉にしよう? 不安がなくなるまでちゃんと話をしよう」
頼むから隠さないで欲しいと抱きしめてくる虎君に、僕は何度も頷き、虎君には隠し事をしないと約束した。
「よし。なら、まずは今日の不安を取り除こうか」
ぎゅっと抱き着いていたら、離れるよう促される。
促されるまま虎君の首に腕を巻き付けたまま身を引けば、虎君は僕の身体を軽々と抱き上げ、向かい合うように抱き直して僕の頬っぺたに手を添えてくる。
大好きな大きな手に頬を摺り寄せ、甘える僕。
「俺と桔梗が、って話だけど、葵が不安になることは絶対にないからな?」
「本当に? だって、姉さん、好きな人にフラれたんでしょ? 失恋したばっかりの姉さんの傍に虎君がいるなんて、やっぱり不安だよ……」
失恋して傷ついている時に傍にいてくれた人を好きになる。それって少女漫画や恋愛ドラマではよくあるシチュエーションだよね?
どう頑張っても不安になって当然。
訴えかけるようにジッと見つめれば、虎君は苦笑交じりに「そもそもが間違ってるから」と僕を見つめ返してきた。
「確かに桔梗は失恋したけど、あいつはこれっぽっちも諦めてないからな?」
「え……。でも……」
「フラれて諦めるぐらいなら6年前にとっくに諦めてるよ」
つまり、姉さんには6年以上一途に想い続けている人が居ると言うこと。
全く気付いていなかった僕は驚きを隠せず、かろうじて出た言葉が「そんな前から?」だった。
虎君は頷き、あれから毎年姉さんはその人に告白していると教えてくれた。
「誕生日、バレンタイン、クリスマス。下手したらイベント毎に、な」
フラれると分かっているのに告白して、フラれる度に泣き言を聞かされている。
初めて聞く姉さんの恋模様。もし姉さんが慰めてくれる相手を好きになる人なら、とっくに虎君のことを好きになっているだろう。
「毎回『次ダメだったら諦める』って言いながら6年も告白し続けてるんだよ。桔梗は」
「どうして相手の人は姉さんの気持ち、受け入れてくれないの……? 姉さんが可哀想だよ……」
6年間も、何度も何度も、姉さんは辛い思いをしている。
その事実に僕は嫉妬も不安も忘れて眉を下げてしまう。
「何を誤魔化すんだよ? 俺が嫉妬深いことはもう知ってるだろ?」
受け取ったキスを疑えば、苦笑が向けられる。葵には全部正直に話すと約束しただろ? って。
僕は虎君の胸に頬を摺り寄せ、「でも虎君は大人だもん」と虎君は子供じゃないと訴えた。僕がこうなりたいと願い憧れる人だよ。と。
すると虎君は僕の髪を撫でながら、それが怖いと言った。
「? 何が?」
「葵の理想から外れてしまわないか、それが心配なんだ。……葵が思い描いている『俺』じゃなくなった瞬間、俺は葵を失うことになるだろ?」
日々理想の『来須虎』で居続けるよう努力していると言った虎君が見せる不安。
それに僕は慌てて虎君から身を放し、「そんなことない!」と否定の声を上げた。
「確かに僕は虎君に憧れてるけどそれは男の人として憧れてるだけで恋人としてじゃないからね!?」
早く伝えたくて一息で言い切ると、虎君の首に腕を巻き付けさっきよりもずっと密着するように抱き着いた。
虎君は何も言わず僕を抱き留め、そのまま優しく抱きしめてくれる。
「僕は、僕は虎君が理想の男の人だから好きになったわけじゃないよ。虎君が『僕の虎君』だから大好きなんだよ」
もし僕が虎君を嫌いになることがあるとすれば――絶対に嫌いにならないけど、でも、もしもその可能性があるとすれば、それはたった一つしかない。
「虎君が僕を嫌いになったら、僕はきっと自分を守るために虎君を嫌いになっちゃうと思うけど……」
「俺が葵を嫌いになるなんて、そんな未来、何が起ころうとも絶対に来ないぞ」
「うん。信じてる。だから、僕が虎君を嫌いになる未来も絶対に来ないよ」
大好きだよ。
そう想いを伝え、虎君に一層強く抱き着く。虎君は僕と同じように強く抱きしめてくれて安心する。
「……葵」
「何……?」
「『信じて欲しい』。この言葉を言っても慰めにしかならないって分かってるけど、言わせて欲しい。俺は何があろうと葵だけを愛してる。この先何があろうと、誰と出会おうと、俺が愛してる人は葵だけだ」
不安になる気持ちは分かると言う虎君。自分も不安だから。と。
でも、それでも虎君は僕の気持ちを必ず信じると言ってくれる。
「葵の口から告げられた言葉だけを信じる。俺の想像で葵を疑いたくないからな」
「! 僕もっ、僕も虎君のこと、疑いたくないっ!」
「ん。なら、少しでも不安に感じたら、ちゃんと言葉にしよう? 不安がなくなるまでちゃんと話をしよう」
頼むから隠さないで欲しいと抱きしめてくる虎君に、僕は何度も頷き、虎君には隠し事をしないと約束した。
「よし。なら、まずは今日の不安を取り除こうか」
ぎゅっと抱き着いていたら、離れるよう促される。
促されるまま虎君の首に腕を巻き付けたまま身を引けば、虎君は僕の身体を軽々と抱き上げ、向かい合うように抱き直して僕の頬っぺたに手を添えてくる。
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「俺と桔梗が、って話だけど、葵が不安になることは絶対にないからな?」
「本当に? だって、姉さん、好きな人にフラれたんでしょ? 失恋したばっかりの姉さんの傍に虎君がいるなんて、やっぱり不安だよ……」
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どう頑張っても不安になって当然。
訴えかけるようにジッと見つめれば、虎君は苦笑交じりに「そもそもが間違ってるから」と僕を見つめ返してきた。
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「え……。でも……」
「フラれて諦めるぐらいなら6年前にとっくに諦めてるよ」
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全く気付いていなかった僕は驚きを隠せず、かろうじて出た言葉が「そんな前から?」だった。
虎君は頷き、あれから毎年姉さんはその人に告白していると教えてくれた。
「誕生日、バレンタイン、クリスマス。下手したらイベント毎に、な」
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