321 / 552
恋しい人
恋しい人 第36話
しおりを挟む
さっきまで交わしていたキスよりもずっとずっと荒々しいそれに、とても息がしずらくて、苦しい。
僕は必死に虎君からのキスに応えながらも、さっきまで僕に合わせてくれていたんだとちょっぴり複雑な思いだ。
合わせてくれていたのは、僕のためだってことは分かってる。分かっているけど、僕のように『夢中』ではなかったんだと悲しくなるのは仕方ない。
でも、今虎君は僕を本当の意味で求めてくれている。
僕の呼吸を奪いつくすようにキスを繰り返され、僕のか虎君のか分からない唾液が唇から零れる。
「んっ、んぁ……、ぁく、ん……」
激しいキスの合間に、虎君の名を呼ぼうと思ったけど全然言葉にならない。
口内を撫でまわす虎君の舌の動きに合わせて背筋がゾクゾクする。
呼吸し辛くて、酸欠状態。頭はさっきよりもずっとボーっとしていて、思考が次第に鈍っていくのが分かった。
鈍化する思考回路で唯一ハッキリしているのは、虎君とのキスがやっぱり気持ちよくて堪らないってことだけ。
(キス、気持ちいぃ……。舌を舐められるのも、頬っぺたをなぞられるのも気持ちいいけど、でも、上顎を舐められるの、すごく、すごくきもちぃ……)
舌が暴れまわる度、唾液を混ぜるようなちゅくちゅくという音が響いて、耳からも気持ちよさが僕を包んだ。
身体を巡る快楽に、無意識に毛布を握り締めてしまう僕。快楽が行き着く先に脚をもじもじさせていたみたいだけど、この時の僕はまだ気づいていなかった。
(僕、このキス、大好き……)
おなかがぞわぞわするけど、それは嫌な感じじゃなくて、その逆。
この感覚が何と呼ぶべきものか分からなくて困るけど、虎君から齎されているものだから、この感覚も全部愛しいと思う。
熱くなる一方の体躯。僕が虎君のこと以外考えられなくなってどれぐらい時間が経ったのか分からないけど、この荒々しいキスにも随分慣れたと思う。
ぎゅっと目を閉じて虎君の舌の動きを鮮明に感じていれば、ぞわぞわしていたおなかに何かが触れる感触が。
それが虎君の手だと気付くまでに時間がかかったのは、僕の思考回路が熱に溶け切っていたせいだ。
掌を押し当てられ、指でなぞるように触れられ、こそばゆいようなそうでないような感覚が身体を襲う。
制服の上からなぞられるその感覚に、どうしようもないほどもどかしさを覚えた。
(もっと、もっと触って欲しい……もっと、ちゃんと……)
虎君に触れられたい。その大きな手で、愛しさを隠さない触れ方で、僕を求めて欲しい……。
僕の欲の高まりを察してか、虎君の手が僕の服の下に潜り込んできたのはそれからすぐの事だった。
少し体温の低い手は、僕が大好きな虎君のそれ。
(どうしよ……、心臓、止まっちゃいそうなほどドキドキしてる……)
キスが齎す頭が痺れるような快楽と、指先が齎す鮮明な快楽。
意識全てが快楽に支配されているような感覚。僕はその快楽に体躯を追い込まれながら、これから虎君と結ばれるのだと自分でも驚くほど期待してしまっていた。
虎君の指が僕のおなかをなぞる。たったそれだけのことなのに、思考全てを奪われるぐらい気持ちよくなってしまう……。
おなかから身体のラインを伝い、虎君の指が僕を撫でる。その指先が這う感覚に身体を震わせ、キスも吐息交じりになる。
虎君の指はなおも愛しげに僕の身体を滑り、僕の欲を、期待を大きくさせる。
(もっと、もっと触って……。虎君、もっと僕のこと、欲しがって……)
これ以上ドキドキしたら死んじゃいそうだって思ってるのに、もっともっとドキドキすることを望んでしまう。
僕はもう、虎君の一番傍に居たくて、それ以外考えられなくなっていた……。
「! ぁっ……」
虎君の指の動きに感覚が過敏になっていたからか、胸に触れられた瞬間、意図せぬ声が口から零れた。それはいつもの僕の声とは全然違っていて、甘ったるく上擦った声。
あまりにも自分とは違うその声に、僕自身ビックリした。
エッチなその声に流石に恥ずかしくて狼狽える僕。でも、僕以上に驚いたのは虎君だった。
虎君は慌てて服から手を退かし、身を起こして両手を見せるように挙げると「ごめんっ」と整わない呼吸で謝ってきた。
「え……?」
「本当にごめんっ、理性、ぶっ飛んでた……」
僕も整わない呼吸のまま虎君を見上げれば青褪めた虎君と目が合った。
熱に浮かされている僕は何故虎君がそんな顔をしているのか分からなくて、荒い息遣いのまま虎君を呼んだ。
「とらく、……どうし、たの……?」
「ごめん、葵……。本当に、ごめん……」
恐る恐る僕の頬に触れる虎君。
僕は虎君の手に頬を摺り寄せ、熱が冷める前にこの身体に燻る熱をもっと高めて欲しいと望んだ。
でも……。
「ごめん。どうかしてた……」
虎君の口から出たのは、僕を求めてくれる行為を止めるといったものだった。
僕は必死に虎君からのキスに応えながらも、さっきまで僕に合わせてくれていたんだとちょっぴり複雑な思いだ。
合わせてくれていたのは、僕のためだってことは分かってる。分かっているけど、僕のように『夢中』ではなかったんだと悲しくなるのは仕方ない。
でも、今虎君は僕を本当の意味で求めてくれている。
僕の呼吸を奪いつくすようにキスを繰り返され、僕のか虎君のか分からない唾液が唇から零れる。
「んっ、んぁ……、ぁく、ん……」
激しいキスの合間に、虎君の名を呼ぼうと思ったけど全然言葉にならない。
口内を撫でまわす虎君の舌の動きに合わせて背筋がゾクゾクする。
呼吸し辛くて、酸欠状態。頭はさっきよりもずっとボーっとしていて、思考が次第に鈍っていくのが分かった。
鈍化する思考回路で唯一ハッキリしているのは、虎君とのキスがやっぱり気持ちよくて堪らないってことだけ。
(キス、気持ちいぃ……。舌を舐められるのも、頬っぺたをなぞられるのも気持ちいいけど、でも、上顎を舐められるの、すごく、すごくきもちぃ……)
舌が暴れまわる度、唾液を混ぜるようなちゅくちゅくという音が響いて、耳からも気持ちよさが僕を包んだ。
身体を巡る快楽に、無意識に毛布を握り締めてしまう僕。快楽が行き着く先に脚をもじもじさせていたみたいだけど、この時の僕はまだ気づいていなかった。
(僕、このキス、大好き……)
おなかがぞわぞわするけど、それは嫌な感じじゃなくて、その逆。
この感覚が何と呼ぶべきものか分からなくて困るけど、虎君から齎されているものだから、この感覚も全部愛しいと思う。
熱くなる一方の体躯。僕が虎君のこと以外考えられなくなってどれぐらい時間が経ったのか分からないけど、この荒々しいキスにも随分慣れたと思う。
ぎゅっと目を閉じて虎君の舌の動きを鮮明に感じていれば、ぞわぞわしていたおなかに何かが触れる感触が。
それが虎君の手だと気付くまでに時間がかかったのは、僕の思考回路が熱に溶け切っていたせいだ。
掌を押し当てられ、指でなぞるように触れられ、こそばゆいようなそうでないような感覚が身体を襲う。
制服の上からなぞられるその感覚に、どうしようもないほどもどかしさを覚えた。
(もっと、もっと触って欲しい……もっと、ちゃんと……)
虎君に触れられたい。その大きな手で、愛しさを隠さない触れ方で、僕を求めて欲しい……。
僕の欲の高まりを察してか、虎君の手が僕の服の下に潜り込んできたのはそれからすぐの事だった。
少し体温の低い手は、僕が大好きな虎君のそれ。
(どうしよ……、心臓、止まっちゃいそうなほどドキドキしてる……)
キスが齎す頭が痺れるような快楽と、指先が齎す鮮明な快楽。
意識全てが快楽に支配されているような感覚。僕はその快楽に体躯を追い込まれながら、これから虎君と結ばれるのだと自分でも驚くほど期待してしまっていた。
虎君の指が僕のおなかをなぞる。たったそれだけのことなのに、思考全てを奪われるぐらい気持ちよくなってしまう……。
おなかから身体のラインを伝い、虎君の指が僕を撫でる。その指先が這う感覚に身体を震わせ、キスも吐息交じりになる。
虎君の指はなおも愛しげに僕の身体を滑り、僕の欲を、期待を大きくさせる。
(もっと、もっと触って……。虎君、もっと僕のこと、欲しがって……)
これ以上ドキドキしたら死んじゃいそうだって思ってるのに、もっともっとドキドキすることを望んでしまう。
僕はもう、虎君の一番傍に居たくて、それ以外考えられなくなっていた……。
「! ぁっ……」
虎君の指の動きに感覚が過敏になっていたからか、胸に触れられた瞬間、意図せぬ声が口から零れた。それはいつもの僕の声とは全然違っていて、甘ったるく上擦った声。
あまりにも自分とは違うその声に、僕自身ビックリした。
エッチなその声に流石に恥ずかしくて狼狽える僕。でも、僕以上に驚いたのは虎君だった。
虎君は慌てて服から手を退かし、身を起こして両手を見せるように挙げると「ごめんっ」と整わない呼吸で謝ってきた。
「え……?」
「本当にごめんっ、理性、ぶっ飛んでた……」
僕も整わない呼吸のまま虎君を見上げれば青褪めた虎君と目が合った。
熱に浮かされている僕は何故虎君がそんな顔をしているのか分からなくて、荒い息遣いのまま虎君を呼んだ。
「とらく、……どうし、たの……?」
「ごめん、葵……。本当に、ごめん……」
恐る恐る僕の頬に触れる虎君。
僕は虎君の手に頬を摺り寄せ、熱が冷める前にこの身体に燻る熱をもっと高めて欲しいと望んだ。
でも……。
「ごめん。どうかしてた……」
虎君の口から出たのは、僕を求めてくれる行為を止めるといったものだった。
0
あなたにおすすめの小説
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
かわいい美形の後輩が、俺にだけメロい
日向汐
BL
過保護なかわいい系美形の後輩。
たまに見せる甘い言動が受けの心を揺する♡
そんなお話。
【攻め】
雨宮千冬(あめみや・ちふゆ)
大学1年。法学部。
淡いピンク髪、甘い顔立ちの砂糖系イケメン。
甘く切ないラブソングが人気の、歌い手「フユ」として匿名活動中。
【受け】
睦月伊織(むつき・いおり)
大学2年。工学部。
黒髪黒目の平凡大学生。ぶっきらぼうな口調と態度で、ちょっとずぼら。恋愛は初心。
リンドグレーン大佐の提案
高菜あやめ
BL
軍事国家ロイシュベルタの下級士官テオドアは、軍司令部のカリスマ軍師リンドグレーン大佐から持ちかけられた『ある提案』に応じ、一晩その身をゆだねる。
一夜限りの関係かと思いきや、大佐はそれ以降も執拗に彼に構い続け、次第に独占欲をあらわにしていく。
叩き上げの下士官と、支配欲を隠さない上官。上下関係から始まる、甘くて苛烈な攻防戦。
【支配系美形攻×出世欲強めな流され系受】
ずっと好きだった幼馴染の結婚式に出席する話
子犬一 はぁて
BL
幼馴染の君は、7歳のとき
「大人になったら結婚してね」と僕に言って笑った。
そして──今日、君は僕じゃない別の人と結婚する。
背の低い、寝る時は親指しゃぶりが癖だった君は、いつの間にか皆に好かれて、彼女もできた。
結婚式で花束を渡す時に胸が痛いんだ。
「こいつ、幼馴染なんだ。センスいいだろ?」
誇らしげに笑う君と、その隣で微笑む綺麗な奥さん。
叶わない恋だってわかってる。
それでも、氷砂糖みたいに君との甘い思い出を、僕だけの宝箱にしまって生きていく。
君の幸せを願うことだけが、僕にできる最後の恋だから。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる