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恋しい人
恋しい人 第63話
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「サボってる不良生徒の相手するより仕事してください。先生」
「生徒のカウンセリングも仕事の内なんだが?」
「仮に悩みがあったとしても、来須先輩と通じてる人にお悩み相談なんて絶対嫌です」
そっぽを向いて強い意思表示をする慶史。斗弛弥さんは「嫌われたものだな」って苦笑を漏らしながら、喋りたくなったらいつでも話しに来ていいって僕達に背を向けた。
仕事に戻る斗弛弥さんの背中に、僕は踏み込まれなくてよかったと安堵の息を吐く。
すると慶史は僕の肩を叩いてきて、振り返れば携帯を見せられた。
(? 『携帯持ってる?』って、どういう事だろ……?)
ディスプレイに打たれた文字を読みながら頭にクエッションマークが発生。
僕はちゃんと持ってるよと思いながら頷きだけ返す。何故か声を出してはいけない気がしたから。
慶史は僕のジェスチャーに携帯を下げると何やら文字を入力する。
程なくして震える僕の携帯。ディスプレイを見れば、慶史からメッセージが届いていると通知が。
今此処で口にできない話なのかと心臓が嫌な意味でドキドキする。
僕はどんなメッセージが送られてきたのかと怯えながら届いたメッセージを確認した。
慶史のアイコンをタップすれば、そこに表示されたのはやっぱりな僕を気遣う内容の文字があって、何故か無性に理不尽な世界に泣きたくなった……。
(『元気がないのは俺のせいだよね。ごめん』なんて、言わないでよ……。慶史が謝る必要なんてこれっぽっちも無いんだから……)
言わなくていい話をしてごめんと続くメッセージ。僕は唇を噛みしめ、涙を堪えて返信した。話してくれない方が辛い。と。慶史が辛い思いをしている時に浮かれていてごめん。と……。
メッセージを送信した後、言葉選びを間違えたと思った。けど、もう既読マークがついていてメッセージは取り消せない。
案の定、慶史からは僕を気遣う内容のメッセージが返ってきて、自己嫌悪だ。
目に見えて落ち込んでしまう僕に、肩を叩く慶史は苦笑交じりだが笑いかけてくれる。
それは自分を責めるなと言わんばかりのタイミング。僕は慶史こそ自分を責めるべきじゃないと思ってしまう。
でも、口を開けばきっと泣いてしまうから伝えられない。携帯を使って伝えようと思ったけど、視線を下げても涙が零れそうだからダメだった。
『葵が幸せでいてくれることが俺にとって唯一の幸せだよ』
僕を泣かせたいのかと思うメッセージを投げてこないで欲しい。必死に涙を堪えているって知ってるくせに……。
潤んでしまっているだろう目で慶史を見れば、凄く穏やかな笑顔とぶつかって驚いた。
「けい―――」
「授業、まだ終わらないのかな?」
きっと僕の声は震えていたに違いない。
でも慶史の少し大きな声にかき消されてしまって、遮られた言葉に続く声は口から出ることはなかった。
「ちょっと葵、退屈だからって欠伸しすぎ! めちゃ涙目になってるよ?」
「二人とも、言っておくが授業をサボって昼寝なんて絶対に許さないからな?」
「! 寝ませんっ」
僕の涙を誤魔化す言葉を続ける慶史。どうしてそんな嘘を? って思ったけど、そうか。斗弛弥さんがいるからだ。
慶史は斗弛弥さんに気付かれないようにしてくれたんだ。
僕が泣いていると知れば、斗弛弥さんは理由を知りたがる。そしてその理由次第では虎君にすべて知られてしまう。
僕はこの涙の理由を斗弛弥さんに話したくないし、虎君にも知られたくない。
だから、慶史のこの判断に僕は斗弛弥さんに聞こえないようにお礼を言うんだ。
「お礼なんていいし。全部自分のためだし」
「! うん。そうだね」
僕以上に、慶史は自分の過去を誰にも知られたくないと思っている。だから、さっきの機転は全部自分自身のため。
慶史の言葉は真実だろうから、僕は素直に同意した。同意して、それでも助かったからと「ありがとう」を重ねた。
「そんな可愛い顔して笑わないでよ。本気であの時背中押したこと後悔するから」
「純粋に感謝してるのにそんな風に嫌味言わないでよ……」
慶史に『可愛い顔』って言ってもらえるのは朋喜や悠栖レベルじゃないと顰蹙を買うこと間違いなしだ。
今ここには僕達と斗弛弥さんしか居ないからいいものの、他の人がいたら何を思われていたか……。
身の程を知れと裏で言われているだろう僕の評判をこれ以上落とさないで欲しいと切に願ってしまう。
「そういうところも腹が立つんだよね、あの人」
「? なんで虎君?」
今虎君が関係するところあった?
そう首を傾げて見せれば、慶史は瞳を細め、「あのねぇ……」と口を開いた。
「葵の自己評価が低いところはあの人の糞ヘタレ根性のせいでもあるでしょ!」
もっと自信を持てと言ってくる慶史は、虎君がちゃんとしていれば僕がこんな風に自分を卑下する性格にはならなかったはずだと息巻いた。
「生徒のカウンセリングも仕事の内なんだが?」
「仮に悩みがあったとしても、来須先輩と通じてる人にお悩み相談なんて絶対嫌です」
そっぽを向いて強い意思表示をする慶史。斗弛弥さんは「嫌われたものだな」って苦笑を漏らしながら、喋りたくなったらいつでも話しに来ていいって僕達に背を向けた。
仕事に戻る斗弛弥さんの背中に、僕は踏み込まれなくてよかったと安堵の息を吐く。
すると慶史は僕の肩を叩いてきて、振り返れば携帯を見せられた。
(? 『携帯持ってる?』って、どういう事だろ……?)
ディスプレイに打たれた文字を読みながら頭にクエッションマークが発生。
僕はちゃんと持ってるよと思いながら頷きだけ返す。何故か声を出してはいけない気がしたから。
慶史は僕のジェスチャーに携帯を下げると何やら文字を入力する。
程なくして震える僕の携帯。ディスプレイを見れば、慶史からメッセージが届いていると通知が。
今此処で口にできない話なのかと心臓が嫌な意味でドキドキする。
僕はどんなメッセージが送られてきたのかと怯えながら届いたメッセージを確認した。
慶史のアイコンをタップすれば、そこに表示されたのはやっぱりな僕を気遣う内容の文字があって、何故か無性に理不尽な世界に泣きたくなった……。
(『元気がないのは俺のせいだよね。ごめん』なんて、言わないでよ……。慶史が謝る必要なんてこれっぽっちも無いんだから……)
言わなくていい話をしてごめんと続くメッセージ。僕は唇を噛みしめ、涙を堪えて返信した。話してくれない方が辛い。と。慶史が辛い思いをしている時に浮かれていてごめん。と……。
メッセージを送信した後、言葉選びを間違えたと思った。けど、もう既読マークがついていてメッセージは取り消せない。
案の定、慶史からは僕を気遣う内容のメッセージが返ってきて、自己嫌悪だ。
目に見えて落ち込んでしまう僕に、肩を叩く慶史は苦笑交じりだが笑いかけてくれる。
それは自分を責めるなと言わんばかりのタイミング。僕は慶史こそ自分を責めるべきじゃないと思ってしまう。
でも、口を開けばきっと泣いてしまうから伝えられない。携帯を使って伝えようと思ったけど、視線を下げても涙が零れそうだからダメだった。
『葵が幸せでいてくれることが俺にとって唯一の幸せだよ』
僕を泣かせたいのかと思うメッセージを投げてこないで欲しい。必死に涙を堪えているって知ってるくせに……。
潤んでしまっているだろう目で慶史を見れば、凄く穏やかな笑顔とぶつかって驚いた。
「けい―――」
「授業、まだ終わらないのかな?」
きっと僕の声は震えていたに違いない。
でも慶史の少し大きな声にかき消されてしまって、遮られた言葉に続く声は口から出ることはなかった。
「ちょっと葵、退屈だからって欠伸しすぎ! めちゃ涙目になってるよ?」
「二人とも、言っておくが授業をサボって昼寝なんて絶対に許さないからな?」
「! 寝ませんっ」
僕の涙を誤魔化す言葉を続ける慶史。どうしてそんな嘘を? って思ったけど、そうか。斗弛弥さんがいるからだ。
慶史は斗弛弥さんに気付かれないようにしてくれたんだ。
僕が泣いていると知れば、斗弛弥さんは理由を知りたがる。そしてその理由次第では虎君にすべて知られてしまう。
僕はこの涙の理由を斗弛弥さんに話したくないし、虎君にも知られたくない。
だから、慶史のこの判断に僕は斗弛弥さんに聞こえないようにお礼を言うんだ。
「お礼なんていいし。全部自分のためだし」
「! うん。そうだね」
僕以上に、慶史は自分の過去を誰にも知られたくないと思っている。だから、さっきの機転は全部自分自身のため。
慶史の言葉は真実だろうから、僕は素直に同意した。同意して、それでも助かったからと「ありがとう」を重ねた。
「そんな可愛い顔して笑わないでよ。本気であの時背中押したこと後悔するから」
「純粋に感謝してるのにそんな風に嫌味言わないでよ……」
慶史に『可愛い顔』って言ってもらえるのは朋喜や悠栖レベルじゃないと顰蹙を買うこと間違いなしだ。
今ここには僕達と斗弛弥さんしか居ないからいいものの、他の人がいたら何を思われていたか……。
身の程を知れと裏で言われているだろう僕の評判をこれ以上落とさないで欲しいと切に願ってしまう。
「そういうところも腹が立つんだよね、あの人」
「? なんで虎君?」
今虎君が関係するところあった?
そう首を傾げて見せれば、慶史は瞳を細め、「あのねぇ……」と口を開いた。
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