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恋しい人
恋しい人 第73話
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姫神君に凄む慶史は無表情で、整った顔立ちだからか正直怖い。
僕は今自分がどう立ち振る舞うべきなのか分からずただオロオロしているだけ。本当、みんなに比べて僕って頼りないにも程がある。
「なんで黙ってんの? 男同士の恋愛が理解できないならさっさとどっか行くかしてくれない? 目障りだから」
「! 慶史っ!」
それは流石に言い過ぎだよ!?
慶史は姫神君の過去を知らない。だからただ単純に『同性愛に嫌悪感を抱く人』って思ってるから敵意を剥き出しにしているのだろう。
でも、姫神君は『普通だから』という理由で同性愛を否定しているわけじゃない。だって姫神君こそ、その『普通』に傷つけられた人なんだから。
虎君が僕に姫神君と距離を保って付き合うよう言ったのは、姫神君が同性愛を否定していると知っていたからじゃない。『おそらく』同性愛に酷い嫌悪感を抱いているだろうから、という推測から。
何故虎君がそんな推測をしたのか。それは姫神君が初等部の頃から同級生からいじめを受けていたから。姫神君の家庭環境が『普通』と違っていると、酷い嫌がらせを受けていたから……。
姫神君の家族は、お父さんが二人。お母さんは、いない。姫神君は男性の同性カップルに育てられているのだ。
それは世間からすると『異質』な家族の形だと言われてしまって、親達の陰口を聞いた子供は悪意を持って姫神君を攻撃し、結果姫神君はやり場のない怒りを両親にぶつけるしかできなかったのだろう。両親が同性カップルだから自分はこんな辛い思いをするんだ。と。
姫神君の同性愛嫌悪は、きっと過去の傷による過剰反応。理不尽過ぎる仕打ちに、同性愛を憎まずにはいられなかったのだろう。そうしないと、姫神君の心が保てなかったのだろう……。
僕は昨日の夜感じた辛さを思い出し、鼻の奥が熱くなる。
(だって姫神君、本当は同性愛を否定したくないはずだもん……)
「―――っ、わ、るかったよっ」
僕が泣きそうになっていたら、慶史の圧に耐えれず立ち上がる姫神君。おそらく慶史に言われた通り、この場から離れようとしているのだろう。
このままでは、姫神君と二度と仲良くなれない。
僕はそれに血の気が引く思いをした。だって、こんな仲違いのしかたは絶対に嫌だったから。
「行っちゃダメっ!!」
「! 三谷……?」
「葵、何引き留めてんの!? こいつの暴言聞いただろ!?」
僕の手は、姫神君の手首を掴んでいた。
驚く姫神君と、怒る慶史。
僕は慶史に「ちょっと黙ってて!」と声を荒げ、姫神君に立ち去るのは僕の話を聞いてからにして欲しいと懇願した。
「……いいのかよ……」
「え?」
「俺、深町のこと思い切り傷つけたんだぞ……?」
親友を傷つけられたのに怒ってないのかよ?
姫神君はそう尋ねてくる。頼りない眼差しで。
「最初から傷つける気があったなら、そりゃ怒るよ。でも、姫神君、知らなかったんだよね? 朋喜のこと。それに、……それに、僕のことも」
「! 三谷のこと『も』って……」
「僕の好きな人は姫神君が言った通り虎君だよ。……もっと仲良くなってから話すつもりだったから、黙っててごめん」
姫神君を騙すつもりじゃなかった。でも、結果的に騙すような形になってしまった。僕は、その点については謝った。
姫神君は僕の告白に目を見開いて驚いた顔をしている。でも、その表情に嫌悪感は見られない。それどころか戸惑いすら見える。
僕は「座って話そう?」と姫神君に提案する。姫神君はその提案にやっぱり拒否を示すことはなく、黙って再び座ってくれた。
「……」
「……」
複雑な面持ちの姫神君と仏頂面の慶史。慶史が相当怒っていることは分かっていたけど、フォローは後からさせてもらおうと僕は短く息を吐くと姫神君を呼んだ。
「な、んだよ……」
「姫神君。姫神君、さっき同性愛を『頭がおかしい』って、『気持ち悪い』って言ったけど、それって本心じゃないよね?」
「! な、なんでっ―――、本心に決まってるだろっ」
ああ、やっぱり。明らかに動揺しているその姿に僕は、自分に言い聞かせるための言動だったんだと確信した。
僕は嫌いだと吐き捨てる姫神君に「嘘が下手だね」と苦笑いを見せた。
「なっ……」
「葵、どういうこと?」
言葉を失う姫神君の表情には恐怖の色が浮かんでいて、慶史も何かおかしいと感じたのか、僕に説明を求めてきた。
「最初から違和感があったんだよね。姫神君は同性愛に否定的なのに、『ゲイ』って言ったよね?」
「そ、それがなんだよっ」
「本当に否定的な人って、『ホモ』って言うんだよね」
嫌悪感を抱いている人は、男性同性愛者のことを『ゲイ』とほとんど言わない。そう呼ぶことすら知らない人がほとんどだから。
たとえ知っていても『ゲイ』と呼ぶことはない。圧倒的に『ホモ』と呼ぶ。軽蔑と侮蔑を込めて。
僕は今自分がどう立ち振る舞うべきなのか分からずただオロオロしているだけ。本当、みんなに比べて僕って頼りないにも程がある。
「なんで黙ってんの? 男同士の恋愛が理解できないならさっさとどっか行くかしてくれない? 目障りだから」
「! 慶史っ!」
それは流石に言い過ぎだよ!?
慶史は姫神君の過去を知らない。だからただ単純に『同性愛に嫌悪感を抱く人』って思ってるから敵意を剥き出しにしているのだろう。
でも、姫神君は『普通だから』という理由で同性愛を否定しているわけじゃない。だって姫神君こそ、その『普通』に傷つけられた人なんだから。
虎君が僕に姫神君と距離を保って付き合うよう言ったのは、姫神君が同性愛を否定していると知っていたからじゃない。『おそらく』同性愛に酷い嫌悪感を抱いているだろうから、という推測から。
何故虎君がそんな推測をしたのか。それは姫神君が初等部の頃から同級生からいじめを受けていたから。姫神君の家庭環境が『普通』と違っていると、酷い嫌がらせを受けていたから……。
姫神君の家族は、お父さんが二人。お母さんは、いない。姫神君は男性の同性カップルに育てられているのだ。
それは世間からすると『異質』な家族の形だと言われてしまって、親達の陰口を聞いた子供は悪意を持って姫神君を攻撃し、結果姫神君はやり場のない怒りを両親にぶつけるしかできなかったのだろう。両親が同性カップルだから自分はこんな辛い思いをするんだ。と。
姫神君の同性愛嫌悪は、きっと過去の傷による過剰反応。理不尽過ぎる仕打ちに、同性愛を憎まずにはいられなかったのだろう。そうしないと、姫神君の心が保てなかったのだろう……。
僕は昨日の夜感じた辛さを思い出し、鼻の奥が熱くなる。
(だって姫神君、本当は同性愛を否定したくないはずだもん……)
「―――っ、わ、るかったよっ」
僕が泣きそうになっていたら、慶史の圧に耐えれず立ち上がる姫神君。おそらく慶史に言われた通り、この場から離れようとしているのだろう。
このままでは、姫神君と二度と仲良くなれない。
僕はそれに血の気が引く思いをした。だって、こんな仲違いのしかたは絶対に嫌だったから。
「行っちゃダメっ!!」
「! 三谷……?」
「葵、何引き留めてんの!? こいつの暴言聞いただろ!?」
僕の手は、姫神君の手首を掴んでいた。
驚く姫神君と、怒る慶史。
僕は慶史に「ちょっと黙ってて!」と声を荒げ、姫神君に立ち去るのは僕の話を聞いてからにして欲しいと懇願した。
「……いいのかよ……」
「え?」
「俺、深町のこと思い切り傷つけたんだぞ……?」
親友を傷つけられたのに怒ってないのかよ?
姫神君はそう尋ねてくる。頼りない眼差しで。
「最初から傷つける気があったなら、そりゃ怒るよ。でも、姫神君、知らなかったんだよね? 朋喜のこと。それに、……それに、僕のことも」
「! 三谷のこと『も』って……」
「僕の好きな人は姫神君が言った通り虎君だよ。……もっと仲良くなってから話すつもりだったから、黙っててごめん」
姫神君を騙すつもりじゃなかった。でも、結果的に騙すような形になってしまった。僕は、その点については謝った。
姫神君は僕の告白に目を見開いて驚いた顔をしている。でも、その表情に嫌悪感は見られない。それどころか戸惑いすら見える。
僕は「座って話そう?」と姫神君に提案する。姫神君はその提案にやっぱり拒否を示すことはなく、黙って再び座ってくれた。
「……」
「……」
複雑な面持ちの姫神君と仏頂面の慶史。慶史が相当怒っていることは分かっていたけど、フォローは後からさせてもらおうと僕は短く息を吐くと姫神君を呼んだ。
「な、んだよ……」
「姫神君。姫神君、さっき同性愛を『頭がおかしい』って、『気持ち悪い』って言ったけど、それって本心じゃないよね?」
「! な、なんでっ―――、本心に決まってるだろっ」
ああ、やっぱり。明らかに動揺しているその姿に僕は、自分に言い聞かせるための言動だったんだと確信した。
僕は嫌いだと吐き捨てる姫神君に「嘘が下手だね」と苦笑いを見せた。
「なっ……」
「葵、どういうこと?」
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「そ、それがなんだよっ」
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嫌悪感を抱いている人は、男性同性愛者のことを『ゲイ』とほとんど言わない。そう呼ぶことすら知らない人がほとんどだから。
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