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恋しい人
恋しい人 第97話
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「葵、行こう?」
手を伸ばしてくる虎君の笑顔は優しい。僕はその手を取り、虎君に手を引かれるままリビングに向かうために足を進めた。
「何処から聞いてた?」
「え?」
「俺と茂斗の話、聞いてたんだろ?」
そう尋ねてくる虎君の表情は笑顔のままだったけど、僕は立ち聞きしていたことがバレていたと青褪めてしまう。
幻滅されたかもしれないと恐怖のあまりすぐに謝る僕。でも虎君は笑いながらどうして謝るのかと言ってきて……。
「だ、だって、盗み聞きなんて、呆れたでしょ? 僕のこと、嫌いに―――」
「愛してるよ。葵は理由なく盗み聞きする性格じゃないってちゃんと知ってるから」
僕の言葉を遮って愛を告げてくれる虎君は階段の前で足を止めると、「話題が話題だったからな」って少し恥ずかしそうに笑ってみせた。本当に僕の心も行動も虎君には全部お見通しみたいだ。
僕は小さく頷くと一歩足を踏み出し、虎君にくっついた。
「虎君、大好きだよ……」
「俺も大好きだよ。心から愛してる」
チュッと髪に落ちてくるキス。僕は繋いでいた手をほどくと、そのまま抱き着いてしまう。虎君はそんな僕を拒むことなく抱きしめてくれて、耳に届く心臓の音でも僕を想ってくれていると伝わってきた。
(虎君も凄くドキドキしてる……)
こうやってくっつくことは昔から幾度となくあったし、恋人同士になってからももう何度も抱き合っている。でも、それでも虎君は僕にドキドキしてくれていて、くすぐったくてちょっぴり恥ずかしくて堪らなくなった。
「こら、そんな可愛い顔しない」
顎に添えられた大きな手。その手は僕に上を向くよう促してきて、溢れる想いに苦しくなっている僕は縋るように虎君を見つめてしまう。
虎君は困ったように破顔すると、身を屈めチュッと唇に触れてきた。
「可愛い顔は、俺だけの前でして?」
「なら二人きりになれるところに連れて行ってよ」
低く甘い声で囁かないでよ。下に降りずに二人きりになりたいって思っちゃうじゃない。
僕は虎君を見つめ、虎君に触りたいと、触って欲しいと強請ってしまう。
虎君が見せるのは濃い苦笑い。いやらしい僕の願いに戸惑いを隠せない様子だ。
(僕だって分かってるもん。でも自分がこんなにやらしい奴だったなんて今まで知らなかったんだもん……)
歯止めが利かない欲に羞恥が込み上がってくる。僕はそれに耐えられず、「バカなこと言ってごめん」って虎君の腕から逃げようとした。でも―――。
「それがどういう意味かちゃんと分かっていってるか……?」
虎君は離れようとする僕を抱き締め、耳元で囁いてくる。恋人同士が『二人きりになりたい』と願う意味を理解しているのか? と。
僕にだって欲はあるし、大人になろうとしている自分の身体と心が何を求めているか分からない程無知じゃない。
だから僕は分かっていると頷いて虎君に抱き着き返した。
「……葵」
「何……?」
「俺と、……俺とセックスしたいって思ってくれてる?」
明確な言葉で尋ねられると、やっぱり恥ずかしい。でも、ここで恥ずかしがっていたら本気だとは伝わらないだろう。
僕は顔から火が出そうなほど恥ずかしいと思いながら、大きく頷いた。昨日からずっと言ってるでしょ? と。
「僕は虎君に触りたいよ……」
はしたないって分かってる。でも、これが紛れもない自分の望みだから偽れない。
僕は虎君を見つめ、尋ね返した。虎君は僕に触りたいって思ってくれないの? と……。
「俺も昨日も言っただろ? 葵に触りたいし、めちゃくちゃセックスしたいって思ってるよ」
「ほ、ほんとに?」
「本当に。……葵を部屋に閉じ込めて四六時中愛したいって思ってるんだからな?」
何度抱き潰したい衝動を耐えたと思っているんだ。
そう困ったように笑う虎君。僕はぎゅっと抱き着くと、抱き潰して欲しいと大胆な言葉を口にした。
恥ずかしいけど、心からの望みだからはしたなくても強請ってしまう僕。
すると虎君は熱っぽい吐息交じりの声で『約束』をくれた。
「明日、俺の部屋に連れて行っていい?」
「! うんっ!」
少し恥ずかしそうな虎君。でも、真剣な表情にドキドキしすぎて心臓が止まっちゃいそうだ。
僕は嬉しいと喜びが抑えられず頬を綻ばせる。
「ダメだ……。葵が可愛すぎて明日まで我慢するのも辛くなりそうだ……」
そう言いながらぎゅーって抱きしめてくる虎君の腕は、いつもより力強くて苦しい。でもそれが僕を愛しているからこそだと分かっているから、その苦しさも喜びに変わってしまうというものだ。
手を伸ばしてくる虎君の笑顔は優しい。僕はその手を取り、虎君に手を引かれるままリビングに向かうために足を進めた。
「何処から聞いてた?」
「え?」
「俺と茂斗の話、聞いてたんだろ?」
そう尋ねてくる虎君の表情は笑顔のままだったけど、僕は立ち聞きしていたことがバレていたと青褪めてしまう。
幻滅されたかもしれないと恐怖のあまりすぐに謝る僕。でも虎君は笑いながらどうして謝るのかと言ってきて……。
「だ、だって、盗み聞きなんて、呆れたでしょ? 僕のこと、嫌いに―――」
「愛してるよ。葵は理由なく盗み聞きする性格じゃないってちゃんと知ってるから」
僕の言葉を遮って愛を告げてくれる虎君は階段の前で足を止めると、「話題が話題だったからな」って少し恥ずかしそうに笑ってみせた。本当に僕の心も行動も虎君には全部お見通しみたいだ。
僕は小さく頷くと一歩足を踏み出し、虎君にくっついた。
「虎君、大好きだよ……」
「俺も大好きだよ。心から愛してる」
チュッと髪に落ちてくるキス。僕は繋いでいた手をほどくと、そのまま抱き着いてしまう。虎君はそんな僕を拒むことなく抱きしめてくれて、耳に届く心臓の音でも僕を想ってくれていると伝わってきた。
(虎君も凄くドキドキしてる……)
こうやってくっつくことは昔から幾度となくあったし、恋人同士になってからももう何度も抱き合っている。でも、それでも虎君は僕にドキドキしてくれていて、くすぐったくてちょっぴり恥ずかしくて堪らなくなった。
「こら、そんな可愛い顔しない」
顎に添えられた大きな手。その手は僕に上を向くよう促してきて、溢れる想いに苦しくなっている僕は縋るように虎君を見つめてしまう。
虎君は困ったように破顔すると、身を屈めチュッと唇に触れてきた。
「可愛い顔は、俺だけの前でして?」
「なら二人きりになれるところに連れて行ってよ」
低く甘い声で囁かないでよ。下に降りずに二人きりになりたいって思っちゃうじゃない。
僕は虎君を見つめ、虎君に触りたいと、触って欲しいと強請ってしまう。
虎君が見せるのは濃い苦笑い。いやらしい僕の願いに戸惑いを隠せない様子だ。
(僕だって分かってるもん。でも自分がこんなにやらしい奴だったなんて今まで知らなかったんだもん……)
歯止めが利かない欲に羞恥が込み上がってくる。僕はそれに耐えられず、「バカなこと言ってごめん」って虎君の腕から逃げようとした。でも―――。
「それがどういう意味かちゃんと分かっていってるか……?」
虎君は離れようとする僕を抱き締め、耳元で囁いてくる。恋人同士が『二人きりになりたい』と願う意味を理解しているのか? と。
僕にだって欲はあるし、大人になろうとしている自分の身体と心が何を求めているか分からない程無知じゃない。
だから僕は分かっていると頷いて虎君に抱き着き返した。
「……葵」
「何……?」
「俺と、……俺とセックスしたいって思ってくれてる?」
明確な言葉で尋ねられると、やっぱり恥ずかしい。でも、ここで恥ずかしがっていたら本気だとは伝わらないだろう。
僕は顔から火が出そうなほど恥ずかしいと思いながら、大きく頷いた。昨日からずっと言ってるでしょ? と。
「僕は虎君に触りたいよ……」
はしたないって分かってる。でも、これが紛れもない自分の望みだから偽れない。
僕は虎君を見つめ、尋ね返した。虎君は僕に触りたいって思ってくれないの? と……。
「俺も昨日も言っただろ? 葵に触りたいし、めちゃくちゃセックスしたいって思ってるよ」
「ほ、ほんとに?」
「本当に。……葵を部屋に閉じ込めて四六時中愛したいって思ってるんだからな?」
何度抱き潰したい衝動を耐えたと思っているんだ。
そう困ったように笑う虎君。僕はぎゅっと抱き着くと、抱き潰して欲しいと大胆な言葉を口にした。
恥ずかしいけど、心からの望みだからはしたなくても強請ってしまう僕。
すると虎君は熱っぽい吐息交じりの声で『約束』をくれた。
「明日、俺の部屋に連れて行っていい?」
「! うんっ!」
少し恥ずかしそうな虎君。でも、真剣な表情にドキドキしすぎて心臓が止まっちゃいそうだ。
僕は嬉しいと喜びが抑えられず頬を綻ばせる。
「ダメだ……。葵が可愛すぎて明日まで我慢するのも辛くなりそうだ……」
そう言いながらぎゅーって抱きしめてくる虎君の腕は、いつもより力強くて苦しい。でもそれが僕を愛しているからこそだと分かっているから、その苦しさも喜びに変わってしまうというものだ。
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