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恋しい人
恋しい人 第99話
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「茂斗が僕の大切な人に酷い態度取るからでしょ。もし僕が凪ちゃんに同じことしたら茂斗も怒るでしょ?」
「んなのいくら葵でもぶん殴るに決まってるだろうが」
「なら僕も同じ気持ちだってこと、分かるよね?」
立場を置き換えたらすぐに分かること。そう言って僕はこのまま虎君に酷い態度をとるなら茂斗を『殴る』ことも辞さないと真っ向から訴える。
すると茂斗は痛いところを突かれたと感じたのか「分かったよ」って僕の言いたいことに理解を示してくれた。
「……虎、覚えとけよ」
「! 茂斗!?」
僕の話ちゃんと聞いていたよね?
そう突っかかれば、茂斗は苦虫を噛み潰したような顔をして見せる。俺の葵はこんなこと言うやつじゃなかった。って。
茂斗の言葉に僕は呆れてしまう。今までこういうことを言わなかったのは茂斗も一緒なのに。
僕がそれを指摘しようと口を開こうとしたらいきなり身体を後ろに引かれ、驚きに言葉は出せなかった。
「『俺の葵』、だと……?」
僕の後ろには虎君しか居ないから僕を引っ張ったのは虎君だってことは分かってた。
でも、頭上から聞こえる声は酷く無機質で感情が伺えないもので、虎君の声なのに虎君の声じゃないように感じてしまった。
(虎君、怒ってる……?)
もしかしなくても怒っているのだろう。けど、なんで? どうしていきなりこんな風に怒ってるの?
怒りは伝わって来るけど理由が分からず目を瞬かしている僕の視界には目を見開いて驚いた顔をしている茂斗がいて、虎君が怒ってる理由を茂斗も分かってないようだった。
「なんだよ。葵と俺は兄弟なんだぞ。別に変なこと言ってないだろうが」
「葵はもう俺のものだ。お前のじゃない」
「!」
「お前、俺相手に今更嫉妬すんなよ……」
抑揚のない声で告げられた言葉に僕は絶句。茂斗は半目になって呆れ顔。
振り返る僕が見たのは茂斗を睨む虎君の表情で、その嫉妬に満ちた眼光に僕の頬っぺたは一気に赤くなってしまう。
「さっきも言ったけど、俺らは兄弟。しかも双子。お前にそんな威嚇される言われはねぇーぞ」
嫉妬されるような感情を抱いたことなど今まで一度もないしこれから抱くことも絶対にない。
そう言い切る茂斗だけど虎君は全然威圧感をひっこめてくれない。これは茂斗が何を言ってもダメなやつだろう。
僕は身をひるがえし、まだ茂斗を睨みつけている虎君にぎゅっと抱きついた。
「! 葵……?」
「心配しなくても、僕は虎君の僕だよ?」
僕の行動に驚いた声。漸く感情が戻った声に安堵しながら僕は虎君を見上げ、笑う。僕の全部、貰ってくれるんでしょ? と。
すると虎君は驚いた顔から一転、目尻を下げて微笑むと「葵の全部、誰にも渡さない」って抱きしめてくれた。
いつも通り優しい虎君の腕の中、僕も虎君のことを誰にも渡さないからね? なんて心の中で呟いたりしてみる。
「……あのさぁ。俺の言葉選びが悪かったのは認めるけど、俺をダシにいちゃつくの止めてくれよ。マジで頼むから……」
本気で居た堪れない。
そう脱力してる茂斗。僕は虎君に抱き着いたまま振り返り、「ごめん」と苦笑い。そして虎君に向き直ると、虎君も謝ろう? と促した。
「悪かった」
「おう。……本当、葵相手には素直だよな。虎って」
ブレなさ過ぎていっそ笑える。なんて言いながら苦笑を漏らす茂斗は、そろそろリビングに行こうぜ。と踵を返した。
僕と茂斗に続くように虎君から一度身を放す。と……。
「! と―――」
肩を掴まれ、気付けばキスされていた。
一瞬のキスだったけど、ビックリして思わず声が漏れてしまう。でも虎君はそんな僕に静かにって人差し指を立てて見せて、その悪戯な笑顔にドキドキしちゃった。
きっと独占欲が我慢できなかったのだろうと解釈した僕は仕方のない虎君に笑ってその腕に抱き着いて寄り添うと、これ以上ない程の愛を貰って幸せを噛みしめる。
「! 葵、大丈夫……?」
幸せに満たされ笑顔でリビングに顔を出せば、帰ってきた時と全然違う僕の様子に姉さんが戸惑い気味に声を掛けてくる。
ソファに腰かけテレビを見ていただろう姉さんの隣には心配そうなめのうがこちらを見ていて、随分心配をかけてしまったようだと自分の振る舞いに反省を覚えた。
「うん。大丈夫。心配かけてごめんね?」
「よかった。いつもの葵だ」
素直に謝れば、姉さんが見せてくれるのは綺麗な笑顔。そしてその隣で「いつものちゃいにぃだ!」と天使のような笑顔を見せてくれるめのう。
二人の様子に、僕は自分が思っていた以上に帰宅直後不機嫌だったようだと深く反省した。
「んなのいくら葵でもぶん殴るに決まってるだろうが」
「なら僕も同じ気持ちだってこと、分かるよね?」
立場を置き換えたらすぐに分かること。そう言って僕はこのまま虎君に酷い態度をとるなら茂斗を『殴る』ことも辞さないと真っ向から訴える。
すると茂斗は痛いところを突かれたと感じたのか「分かったよ」って僕の言いたいことに理解を示してくれた。
「……虎、覚えとけよ」
「! 茂斗!?」
僕の話ちゃんと聞いていたよね?
そう突っかかれば、茂斗は苦虫を噛み潰したような顔をして見せる。俺の葵はこんなこと言うやつじゃなかった。って。
茂斗の言葉に僕は呆れてしまう。今までこういうことを言わなかったのは茂斗も一緒なのに。
僕がそれを指摘しようと口を開こうとしたらいきなり身体を後ろに引かれ、驚きに言葉は出せなかった。
「『俺の葵』、だと……?」
僕の後ろには虎君しか居ないから僕を引っ張ったのは虎君だってことは分かってた。
でも、頭上から聞こえる声は酷く無機質で感情が伺えないもので、虎君の声なのに虎君の声じゃないように感じてしまった。
(虎君、怒ってる……?)
もしかしなくても怒っているのだろう。けど、なんで? どうしていきなりこんな風に怒ってるの?
怒りは伝わって来るけど理由が分からず目を瞬かしている僕の視界には目を見開いて驚いた顔をしている茂斗がいて、虎君が怒ってる理由を茂斗も分かってないようだった。
「なんだよ。葵と俺は兄弟なんだぞ。別に変なこと言ってないだろうが」
「葵はもう俺のものだ。お前のじゃない」
「!」
「お前、俺相手に今更嫉妬すんなよ……」
抑揚のない声で告げられた言葉に僕は絶句。茂斗は半目になって呆れ顔。
振り返る僕が見たのは茂斗を睨む虎君の表情で、その嫉妬に満ちた眼光に僕の頬っぺたは一気に赤くなってしまう。
「さっきも言ったけど、俺らは兄弟。しかも双子。お前にそんな威嚇される言われはねぇーぞ」
嫉妬されるような感情を抱いたことなど今まで一度もないしこれから抱くことも絶対にない。
そう言い切る茂斗だけど虎君は全然威圧感をひっこめてくれない。これは茂斗が何を言ってもダメなやつだろう。
僕は身をひるがえし、まだ茂斗を睨みつけている虎君にぎゅっと抱きついた。
「! 葵……?」
「心配しなくても、僕は虎君の僕だよ?」
僕の行動に驚いた声。漸く感情が戻った声に安堵しながら僕は虎君を見上げ、笑う。僕の全部、貰ってくれるんでしょ? と。
すると虎君は驚いた顔から一転、目尻を下げて微笑むと「葵の全部、誰にも渡さない」って抱きしめてくれた。
いつも通り優しい虎君の腕の中、僕も虎君のことを誰にも渡さないからね? なんて心の中で呟いたりしてみる。
「……あのさぁ。俺の言葉選びが悪かったのは認めるけど、俺をダシにいちゃつくの止めてくれよ。マジで頼むから……」
本気で居た堪れない。
そう脱力してる茂斗。僕は虎君に抱き着いたまま振り返り、「ごめん」と苦笑い。そして虎君に向き直ると、虎君も謝ろう? と促した。
「悪かった」
「おう。……本当、葵相手には素直だよな。虎って」
ブレなさ過ぎていっそ笑える。なんて言いながら苦笑を漏らす茂斗は、そろそろリビングに行こうぜ。と踵を返した。
僕と茂斗に続くように虎君から一度身を放す。と……。
「! と―――」
肩を掴まれ、気付けばキスされていた。
一瞬のキスだったけど、ビックリして思わず声が漏れてしまう。でも虎君はそんな僕に静かにって人差し指を立てて見せて、その悪戯な笑顔にドキドキしちゃった。
きっと独占欲が我慢できなかったのだろうと解釈した僕は仕方のない虎君に笑ってその腕に抱き着いて寄り添うと、これ以上ない程の愛を貰って幸せを噛みしめる。
「! 葵、大丈夫……?」
幸せに満たされ笑顔でリビングに顔を出せば、帰ってきた時と全然違う僕の様子に姉さんが戸惑い気味に声を掛けてくる。
ソファに腰かけテレビを見ていただろう姉さんの隣には心配そうなめのうがこちらを見ていて、随分心配をかけてしまったようだと自分の振る舞いに反省を覚えた。
「うん。大丈夫。心配かけてごめんね?」
「よかった。いつもの葵だ」
素直に謝れば、姉さんが見せてくれるのは綺麗な笑顔。そしてその隣で「いつものちゃいにぃだ!」と天使のような笑顔を見せてくれるめのう。
二人の様子に、僕は自分が思っていた以上に帰宅直後不機嫌だったようだと深く反省した。
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