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恋しい人
恋しい人 第113話
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「別に金持ちとか関係ないだろ。俺は俺のために成績落としたくないって話だよ」
「あ。悪い。言葉悪かった。俺、この学校にいる連中の殆どが『親の仕事継げばいい』って考えだと思ってたんだよ。だから……。って、これフォローになってないか……?」
「全然なってねぇーよ」
説明しながら気づいたのか、ハッとした表情の姫神君に慶史は目を丸くし、吹き出す。天然かよ。と。
僕もクスクス笑ってしまって、姫神君はバツの悪そうな顔をしていた。
「そんな笑うなよ。三谷まで」
「ごめんごめん。でも姫神君、凄く『しまった』って顔してたからそれが可愛くて……」
なおも笑っている僕に姫神君が見せるのは困ったような笑い顔。そんな笑顔も綺麗なんだけど何処か可愛くてついそのまま口に出してしまう。
姫神君の容姿がいくら綺麗でも、男としてのプライドが誰よりも高いということはこの二日間で十分理解しているつもりだ。だから、『可愛い』とか『綺麗』とか、それらの言葉が誉め言葉にならないと分かっていた。
それでも、分かっていても思わず口に出てしまうほど、可愛かった。
僕はすぐに苦笑交じりに『可愛い』と形容したことを謝る。でも、姫神君は怒るというか呆れ顔で僕を見ていて……。
「姫神君?」
「……可愛いのは三谷だろ。どう考えても」
「え?」
「俺も姫神に同意。お前、見る目あるじゃん」
真面目な面持ちで僕を『可愛い』と言う姫神君と、そんな姫神君に「分かる分かる」と頷く慶史。
僕は二人の言動に顔が引き攣ってしまう。
「三谷?」
「ああ、それ気にしなくていいよ。葵は自分が『可愛い』って言われると毎回そういうリアクションするから」
「なんで? 言われ慣れ過ぎてて『今更』ってことか?」
「違う違う。葵の自己評価の低さはもう説明したでしょ? 自分『なんか』可愛くないって思ってるけど好意を突っぱねることもできなくて、この顔なわけ」
「なんか、難儀な性格だな……。俺からすれば藤原よりよっぽど可愛い顔してると思うけどな」
反応に困っていたら姫神君と慶史のやり取りはどんどん進んでいって、気づいたら綺麗な顔が目の前に。僕は姫神君に顔を覗き込まれていた。
ドアップになる整った顔立ちに、目が眩みそうになった僕は盛大に顔を逸らし、蹲ってしまう。
「え? 三谷? どうした??」
「ははは。いいね。浮気現場目撃しちゃった」
「『浮気』? なになに? マモ、浮気したの? 誰と?」
「雰囲気的に姫神君とじゃない?」
慌てる姫神君の声の後に慶史の楽し気な声が続いて、慶史の声に悠栖と朋喜の声が続いた。僕はまだしゃがみこんだまま。
(一瞬姫神君が女の子に見えてびっくりしただけだもん)
浮気心なんて一切ない。むしろ突然目の前に現れた顔に、虎君じゃなきゃ嫌だって思ったぐらいだ。僕は男とか女とか関係なく、虎君じゃなきゃ嫌だ。って……。
「マジか。これバレたら姫神、先輩に殺されるんじゃね?」
「そうだね……。お兄さん、すっごくヤキモチ妬きだもんね……」
「なぁ、その『ご愁傷様』って顔でこっち見るのやめてくれよ。……三谷もいい迷惑だよな?」
大丈夫か? って手を差し出してくる姫神君に、僕はその手を取って立ち上がると、恥ずかしさを誤魔化すために咳払いをしながら「大丈夫」と返事をする。
イヤな笑顔でこっちを見る慶史に、「浮気なんてするわけないでしょ」ってちょっぴりキツイ口調で睨んでしまう。
「えぇ? でも、姫神にキスされると思ったんじゃないのぉ?」
「! んなことしねぇーよ!」
「姫神にその気が無くても、葵が意識したってことだよ。口は悪いけど姫神、イケメンだもんな」
ニヤニヤ笑う慶史。慌ててる姫神君は少し引き攣った表情で「バカ言ってんな」と僕を見てくる。違うよな? と言いたげに。
僕は苦笑を漏らし、「違うよ」と姫神君の視線に肯定の言葉を返した。
「びっくりさせてごめんね? 急に顔を覗き込まれて驚いただけだから、心配しないで」
「えぇ? ビックリしただけ? 本当に?」
「本当に。むしろ虎君としかキスしたくないから過剰に反応しちゃっただけだから。慶史、絶対分かってるよね?」
性格悪いよ。そう言って睨めば、慶史は悪びれることもなくニヤニヤ笑って「何のこと?」とわざとらしく首を傾げて見せる。
「もういい。……姫神君、ごめんね? 心配してくれたのに自意識過剰な反応しちゃって」
「いや、俺こそごめん。……一応言っとくけど、キスしようとか全く思ってないからな? 三谷は可愛いとは思うけど、でもやっぱり男だし――」
「おい。そんなに言い訳並べるとかえって怪しく聞こえるぞ」
「! ちがっ! これは三谷が気分を悪くしないようにって配慮であって―――」
「だから逆に怪しいって。必死かよ」
「悠栖、あんまり突っついてやるなよ。姫神は『男なんて好きじゃない』って自分の信念が揺らいで困惑してるんだから」
「だーかーら! 違うって言ってるだろうが!!」
悠栖と慶史のからかいに律義に反応を返す姫神君はやっぱり優しい。僕はじゃれる三人の様子に『仲良しなんだから』と朋喜と目を合わせ笑った。
「あ。悪い。言葉悪かった。俺、この学校にいる連中の殆どが『親の仕事継げばいい』って考えだと思ってたんだよ。だから……。って、これフォローになってないか……?」
「全然なってねぇーよ」
説明しながら気づいたのか、ハッとした表情の姫神君に慶史は目を丸くし、吹き出す。天然かよ。と。
僕もクスクス笑ってしまって、姫神君はバツの悪そうな顔をしていた。
「そんな笑うなよ。三谷まで」
「ごめんごめん。でも姫神君、凄く『しまった』って顔してたからそれが可愛くて……」
なおも笑っている僕に姫神君が見せるのは困ったような笑い顔。そんな笑顔も綺麗なんだけど何処か可愛くてついそのまま口に出してしまう。
姫神君の容姿がいくら綺麗でも、男としてのプライドが誰よりも高いということはこの二日間で十分理解しているつもりだ。だから、『可愛い』とか『綺麗』とか、それらの言葉が誉め言葉にならないと分かっていた。
それでも、分かっていても思わず口に出てしまうほど、可愛かった。
僕はすぐに苦笑交じりに『可愛い』と形容したことを謝る。でも、姫神君は怒るというか呆れ顔で僕を見ていて……。
「姫神君?」
「……可愛いのは三谷だろ。どう考えても」
「え?」
「俺も姫神に同意。お前、見る目あるじゃん」
真面目な面持ちで僕を『可愛い』と言う姫神君と、そんな姫神君に「分かる分かる」と頷く慶史。
僕は二人の言動に顔が引き攣ってしまう。
「三谷?」
「ああ、それ気にしなくていいよ。葵は自分が『可愛い』って言われると毎回そういうリアクションするから」
「なんで? 言われ慣れ過ぎてて『今更』ってことか?」
「違う違う。葵の自己評価の低さはもう説明したでしょ? 自分『なんか』可愛くないって思ってるけど好意を突っぱねることもできなくて、この顔なわけ」
「なんか、難儀な性格だな……。俺からすれば藤原よりよっぽど可愛い顔してると思うけどな」
反応に困っていたら姫神君と慶史のやり取りはどんどん進んでいって、気づいたら綺麗な顔が目の前に。僕は姫神君に顔を覗き込まれていた。
ドアップになる整った顔立ちに、目が眩みそうになった僕は盛大に顔を逸らし、蹲ってしまう。
「え? 三谷? どうした??」
「ははは。いいね。浮気現場目撃しちゃった」
「『浮気』? なになに? マモ、浮気したの? 誰と?」
「雰囲気的に姫神君とじゃない?」
慌てる姫神君の声の後に慶史の楽し気な声が続いて、慶史の声に悠栖と朋喜の声が続いた。僕はまだしゃがみこんだまま。
(一瞬姫神君が女の子に見えてびっくりしただけだもん)
浮気心なんて一切ない。むしろ突然目の前に現れた顔に、虎君じゃなきゃ嫌だって思ったぐらいだ。僕は男とか女とか関係なく、虎君じゃなきゃ嫌だ。って……。
「マジか。これバレたら姫神、先輩に殺されるんじゃね?」
「そうだね……。お兄さん、すっごくヤキモチ妬きだもんね……」
「なぁ、その『ご愁傷様』って顔でこっち見るのやめてくれよ。……三谷もいい迷惑だよな?」
大丈夫か? って手を差し出してくる姫神君に、僕はその手を取って立ち上がると、恥ずかしさを誤魔化すために咳払いをしながら「大丈夫」と返事をする。
イヤな笑顔でこっちを見る慶史に、「浮気なんてするわけないでしょ」ってちょっぴりキツイ口調で睨んでしまう。
「えぇ? でも、姫神にキスされると思ったんじゃないのぉ?」
「! んなことしねぇーよ!」
「姫神にその気が無くても、葵が意識したってことだよ。口は悪いけど姫神、イケメンだもんな」
ニヤニヤ笑う慶史。慌ててる姫神君は少し引き攣った表情で「バカ言ってんな」と僕を見てくる。違うよな? と言いたげに。
僕は苦笑を漏らし、「違うよ」と姫神君の視線に肯定の言葉を返した。
「びっくりさせてごめんね? 急に顔を覗き込まれて驚いただけだから、心配しないで」
「えぇ? ビックリしただけ? 本当に?」
「本当に。むしろ虎君としかキスしたくないから過剰に反応しちゃっただけだから。慶史、絶対分かってるよね?」
性格悪いよ。そう言って睨めば、慶史は悪びれることもなくニヤニヤ笑って「何のこと?」とわざとらしく首を傾げて見せる。
「もういい。……姫神君、ごめんね? 心配してくれたのに自意識過剰な反応しちゃって」
「いや、俺こそごめん。……一応言っとくけど、キスしようとか全く思ってないからな? 三谷は可愛いとは思うけど、でもやっぱり男だし――」
「おい。そんなに言い訳並べるとかえって怪しく聞こえるぞ」
「! ちがっ! これは三谷が気分を悪くしないようにって配慮であって―――」
「だから逆に怪しいって。必死かよ」
「悠栖、あんまり突っついてやるなよ。姫神は『男なんて好きじゃない』って自分の信念が揺らいで困惑してるんだから」
「だーかーら! 違うって言ってるだろうが!!」
悠栖と慶史のからかいに律義に反応を返す姫神君はやっぱり優しい。僕はじゃれる三人の様子に『仲良しなんだから』と朋喜と目を合わせ笑った。
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