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恋しい人
恋しい人 第122話
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「あいつ馬鹿だろ?」
「ちーちゃん……」
「あんなへなちょこパンチで来須君の腹殴るなんて自分から怪我しに行ってるようなもんだぞ」
ちーちゃんは自分のシャツを捲り上げ、綺麗に筋肉がついて割れた腹筋を見せてきた。俺でこれなんだから。と。
僕は呆然としながらもちーちゃんの腹筋を眺め、物凄く硬そうだとそれに触れてみた。
ちーちゃんのおなかは想像通り物凄く硬くて、確かにこんな硬い腹筋に僕がパンチをしたら逆に僕が怪我をしそうだと思った。
「これ、力入れてるの?」
「入れてねーよ。力入れたらこんな感じ」
「すごい……。押してもビクともしない……」
「まー、擽ってぇーよ」
ケラケラ笑うちーちゃんは、擽るなと言ってくる。
僕は力を込めて圧迫してるつもりだったんだけど、ちーちゃんは苦しむどころか笑い声を上げていて、力の差は歴然のように感じた。
「葵っ!」
くすぐったいと笑うちーちゃん。笑っているのに物凄く硬い腹筋を純粋な思いで凄いと感じながら触っていた僕の耳に届くのは、虎君の声。
その声が何処か焦っているように思えた僕は、ちーちゃんから大好きな人へと視線を巡らせる。すると、こちらに歩いてきてる虎君の姿が確認できた。
(なんで虎君が怒ってるの……?)
いつもの優しい笑顔を浮かべる虎君はそこに居なくて、怒りを抑えている雰囲気が全身から漂っていてちょっと怖い。
でも、何故虎君が怒っているのか僕にはわからない。そもそもこんな風に虎君が僕に怒りを向けた事なんてこれまでほとんどなかったんだから。
(僕、何かした……? 僕のこと、嫌いになった……?)
ぶり返す不安。悠栖が虎君に惹かれたように、虎君も悠栖に惹かれたの? なんて、後から考えればどういう思考回路になればそんな勘違いをするんだと思える考えに囚われてしまう。
虎君の目を見れず、視線を下げてしまう僕。そんな僕の手を強引に引っ張るのは勿論虎君だ。
ぎゅっと僕を抱きしめる腕は力強くて、離さないと言わんばかりに僕をすっぽり胸に閉じ込めてしまう。
(虎君、僕のこと、まだ愛してくれてるよね……?)
この不安を取り除いて欲しいとしがみつく僕。すると虎君は「嫉妬に狂いそうになるからああいうのは無しにして」と苦し気な声で囁いてきた。
その言葉に、さっきの虎君の怒った顔は嫉妬によるものだったと言うことは分かった。でも、何に嫉妬したのかは全く分からない。
僕は虎君を見上げ、僕は一体何をしてしまったのかと尋ねた。知らず知らずのうちに虎君を不安にさせてしまったの? と。
「っ―――、それは、……それは……」
「虎君……?」
僕のお願いに虎君が見せるのは困惑。何度か言葉にしようと口を開くけど、答える言葉が見つからないのかその都度口を閉ざし、結局僕を抱きしめるだけで僕のどんな振る舞いがまずかったのかは教えてもらえなかった。
(僕、何しちゃったんだろ……)
虎君に不安な想いをさせたくない。でも、自分のどんな振る舞いが虎君を不安にさせるのか分からなければ気をつけようもない。
僕はこの先何度も同じことで虎君を不安にさせてしまうかもしれない。それが物凄く怖い。
だって、いくら大好きな人でも不安を与え続けられたら気持ちは離れてしまうと思うから……。
(やだ……。僕、虎君とずっと一緒にいたい……)
虎君がどうして教えてくれないかは分からない。でも、それでも絶対に『何故か』を教えてもらわないと。
この先ずっと二人一緒にいるために。僕達の幸せのために。
そう意気込み、意を決して顔を上げる僕。でも、僕が虎君に問いただすより先に僕の知りたかった『答え』がちーちゃんから与えられた。
「俺相手に嫉妬とか、来須君、相変わらずまーのこと好き過ぎじゃねぇ?」
「お前、絶対分かっててやっただろ」
「えー? 別に腹触らせるぐらい普通だって。男同士だしさぁ」
なんなら来須君も触る? なんておちゃらけた声をかけるちーちゃんに虎君はなんと返すのか?
「! っぶねぇ!」
「避けんなよクソガキ」
「またみぞおち狙っただろ!?」
ふざけんな! と怒鳴り声をあげるちーちゃん。虎君は僕を抱きしめたまま忌々しそうに舌打ちを零した。
「虎君……」
「! ん? どうした?」
親の仇を見るような目でちーちゃんを睨んでいた虎君は僕の声に一転して優しい笑顔を見せてくれる。
その表情の変化に、僕は思わずちーちゃんの「漫画かよ」って呆れ声に心の中で同意してしまう。
でも、ちーちゃんは呆れてるけど、僕は心に残っていた不安が綺麗さっぱり無くなって、虎君が愛しいって気持ちしかなかった。
「ちーちゃん……」
「あんなへなちょこパンチで来須君の腹殴るなんて自分から怪我しに行ってるようなもんだぞ」
ちーちゃんは自分のシャツを捲り上げ、綺麗に筋肉がついて割れた腹筋を見せてきた。俺でこれなんだから。と。
僕は呆然としながらもちーちゃんの腹筋を眺め、物凄く硬そうだとそれに触れてみた。
ちーちゃんのおなかは想像通り物凄く硬くて、確かにこんな硬い腹筋に僕がパンチをしたら逆に僕が怪我をしそうだと思った。
「これ、力入れてるの?」
「入れてねーよ。力入れたらこんな感じ」
「すごい……。押してもビクともしない……」
「まー、擽ってぇーよ」
ケラケラ笑うちーちゃんは、擽るなと言ってくる。
僕は力を込めて圧迫してるつもりだったんだけど、ちーちゃんは苦しむどころか笑い声を上げていて、力の差は歴然のように感じた。
「葵っ!」
くすぐったいと笑うちーちゃん。笑っているのに物凄く硬い腹筋を純粋な思いで凄いと感じながら触っていた僕の耳に届くのは、虎君の声。
その声が何処か焦っているように思えた僕は、ちーちゃんから大好きな人へと視線を巡らせる。すると、こちらに歩いてきてる虎君の姿が確認できた。
(なんで虎君が怒ってるの……?)
いつもの優しい笑顔を浮かべる虎君はそこに居なくて、怒りを抑えている雰囲気が全身から漂っていてちょっと怖い。
でも、何故虎君が怒っているのか僕にはわからない。そもそもこんな風に虎君が僕に怒りを向けた事なんてこれまでほとんどなかったんだから。
(僕、何かした……? 僕のこと、嫌いになった……?)
ぶり返す不安。悠栖が虎君に惹かれたように、虎君も悠栖に惹かれたの? なんて、後から考えればどういう思考回路になればそんな勘違いをするんだと思える考えに囚われてしまう。
虎君の目を見れず、視線を下げてしまう僕。そんな僕の手を強引に引っ張るのは勿論虎君だ。
ぎゅっと僕を抱きしめる腕は力強くて、離さないと言わんばかりに僕をすっぽり胸に閉じ込めてしまう。
(虎君、僕のこと、まだ愛してくれてるよね……?)
この不安を取り除いて欲しいとしがみつく僕。すると虎君は「嫉妬に狂いそうになるからああいうのは無しにして」と苦し気な声で囁いてきた。
その言葉に、さっきの虎君の怒った顔は嫉妬によるものだったと言うことは分かった。でも、何に嫉妬したのかは全く分からない。
僕は虎君を見上げ、僕は一体何をしてしまったのかと尋ねた。知らず知らずのうちに虎君を不安にさせてしまったの? と。
「っ―――、それは、……それは……」
「虎君……?」
僕のお願いに虎君が見せるのは困惑。何度か言葉にしようと口を開くけど、答える言葉が見つからないのかその都度口を閉ざし、結局僕を抱きしめるだけで僕のどんな振る舞いがまずかったのかは教えてもらえなかった。
(僕、何しちゃったんだろ……)
虎君に不安な想いをさせたくない。でも、自分のどんな振る舞いが虎君を不安にさせるのか分からなければ気をつけようもない。
僕はこの先何度も同じことで虎君を不安にさせてしまうかもしれない。それが物凄く怖い。
だって、いくら大好きな人でも不安を与え続けられたら気持ちは離れてしまうと思うから……。
(やだ……。僕、虎君とずっと一緒にいたい……)
虎君がどうして教えてくれないかは分からない。でも、それでも絶対に『何故か』を教えてもらわないと。
この先ずっと二人一緒にいるために。僕達の幸せのために。
そう意気込み、意を決して顔を上げる僕。でも、僕が虎君に問いただすより先に僕の知りたかった『答え』がちーちゃんから与えられた。
「俺相手に嫉妬とか、来須君、相変わらずまーのこと好き過ぎじゃねぇ?」
「お前、絶対分かっててやっただろ」
「えー? 別に腹触らせるぐらい普通だって。男同士だしさぁ」
なんなら来須君も触る? なんておちゃらけた声をかけるちーちゃんに虎君はなんと返すのか?
「! っぶねぇ!」
「避けんなよクソガキ」
「またみぞおち狙っただろ!?」
ふざけんな! と怒鳴り声をあげるちーちゃん。虎君は僕を抱きしめたまま忌々しそうに舌打ちを零した。
「虎君……」
「! ん? どうした?」
親の仇を見るような目でちーちゃんを睨んでいた虎君は僕の声に一転して優しい笑顔を見せてくれる。
その表情の変化に、僕は思わずちーちゃんの「漫画かよ」って呆れ声に心の中で同意してしまう。
でも、ちーちゃんは呆れてるけど、僕は心に残っていた不安が綺麗さっぱり無くなって、虎君が愛しいって気持ちしかなかった。
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