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恋しい人
恋しい人 第152話
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僕のことをずっと愛してくれていたのにどうして他の人とエッチしようとしたの?
そう嗚咽交じりに虎君を責める僕。付き合う前のことを責める資格なんてないって分かってるけど、どうしても責めずにはいられなかった。
「『他の人と』って……、そういうことか」
「! なんで笑ってるのっ!? 浮気したくせに!! 嘘吐いたくせに!!」
「ごめん。ちゃんと説明するから、まずは落ち着いて」
僕がこんなに苦しんでるのに笑うなんて酷い!
そう言って何度も虎君の胸に拳を叩きつける僕。本当にこれは完全に八つ当たりだ。でも虎君はその八つ当たりを全て受け止めるように僕を抱き締め、説明を端折り過ぎたと謝ってきた。
背中を擦り、時折ぽんぽんと叩いて僕をあやしてくる虎君。
暫く泣いて愚図っていた僕だけど、虎君のその手には結局勝てなくて、物の数分で大人しくなる。
泣きべそをかいて鼻を啜る僕に虎君はあやす手を止めないまま「落ち着いた?」と優しい声で尋ねてくる。
僕はまだぐすぐすと鼻を啜りながらも頷きを返し、ぎゅっと虎君に抱き着いた。
「ごめんな。いきなり知らない奴が出てきてビックリしたよな?」
「ん……、びっくりした……」
「最初からちゃんと説明するから、聞いてくれる?」
『聞きたくない』と思ったことが伝わったのか、虎君は大丈夫だと言って笑顔のまま前髪にキスを落としてくる。葵が悲しむようなことは全くないから。と。
その言葉は嘘じゃない? と目だけで問いただせば、虎君は「嘘じゃないよ」と今度は涙に濡れた目尻にキスしてきた。
「わかった……」
「ありがとう、葵」
擦り寄るように甘えれば、優しく抱き締めてもらえる。
虎君のぬくもりを感じて、この腕を、この愛を少しだって他の人に分けたくないと顔を出す醜い感情が辛い……。
でも虎君はそれを知ってか知らずか、ドロドロした感情ごと僕を包み込んでくれた。
「雲英っていうのは、海音が5、6年前にゲイバーの前で知り合った奴なんだ」
「……なんでゲイバーなの? 海音君、女の子が好きだよね……?」
「ああ。海音の恋愛対象は女だよ。ゲイバーにいたのは、ただのお節介の結果かな」
「『お節介』って?」
「俺が葵を愛してるってはっきり伝えたら『親友の恋愛を理解できないなんて絶対言えねぇ!』とか思ったらしくて、俺を『理解する』ためにゲイに話を聞きたかったんだと」
当時を思い出して苦笑する虎君は、確かに葵は男だし俺は一般的にはゲイってことになるけど葵以外は男も女もダメだからゲイって言っていいか微妙だよな? なんて僕に聞いてくる。
それはとても嬉しい言葉だったけど、まだぐちゃぐちゃになったままの感情では笑い返すことができなくて、僕は何も応えることができず、ただ虎君にぎゅっと抱き着いた。
(でも虎君なら、ちゃんと分かってくれるよね……?)
返されるのは優しい抱擁。やっぱり虎君にはちゃんと伝わったみたいだ。
「まぁそれで海音はゲイバーに乗り込んだわけだけど、義務教育も終えてない未成年がバーに入れてもらえるわけもなく、門前払いを喰らったんだ」
「そっか……5年前でも、15歳? だもんね……」
普通に考えれば当たり前のこと。でも、当時の海音君はそんな当たり前の考えに至らない程虎君のことで頭がいっぱいだったんだろう。
二人がとても仲良しだってことは分かっていたけど、改めて知った海音君の存在の大きさに嫉妬心が顔を出す。
「追い返されたんだからさっさと帰ればいいのに、どうしてもゲイの知り合いが欲しいって店の前で張り込んだらしいから本当、あいつは馬鹿だと思うよ」
「でも、そんな風に必死になるぐらい海音君にとって虎君は大切な人なんじゃないかな……」
「まぁ『親友』らしいからな。俺は認めてないけど」
虎君の嘘つき。僕、虎君も海音君のこと、親友だと思ってるって知ってるんだからね……。
むくむくと大きくなる嫉妬心が心を圧迫して苦しいよ、虎君……。
「その時海音が出会ったのが、さっき話した相音雲英だったんだ」
「あいねきら、さん……」
「ゲイバーに入ろうとしてたから雲英がゲイだってことはすぐに分かったんだろうな。海音の奴、いきなり友達になってくれって頼み込んだんだと。正直、『俺の親友が小学生の男相手に盛ってるから相談に乗って欲しい』って言われたって雲英から聞いた時は海音を海に沈めようかと思ったけど」
笑いながら昔話をする虎君。僕は胸を痛めながらそれを聞いていたんだけど、『小学生の男相手に』って言葉に思わず顔を上げてしまった。
すると虎君は僕を見下ろし、「ごめんな」と謝りながら額にキスしてきた。
「小学生相手に絶対ダメだって頭では分かってたけど、昔からずっと葵だけが欲しかった……」
俺のこと、嫌いになった?
不安気にそう尋ねてくる虎君。僕は首を振って虎君にしがみつくと、小さな声で喜びを伝えた。
「その直後に海音に無理矢理雲英を紹介されて、なんだかんだ今も付き合いが続いてる。……まぁ『友達』って言える関係か微妙な相手だけどな」
「そうなの……?」
「そうだよ。雲英は俺が海音の友達だからつるんでるだけだし、俺は雲英がネコだから後学のため偶に話をしていただけだしな」
「ね、『ネコ』? え? 人じゃないの?」
話の内容的に雲英さんは人間の男の人だと思っていたけど、違ったの? さっき喋ってたって言ってなかった?
どういうことかと僕は混乱してしまう。虎君はそれに「動物の猫じゃなくて」と笑った。
そう嗚咽交じりに虎君を責める僕。付き合う前のことを責める資格なんてないって分かってるけど、どうしても責めずにはいられなかった。
「『他の人と』って……、そういうことか」
「! なんで笑ってるのっ!? 浮気したくせに!! 嘘吐いたくせに!!」
「ごめん。ちゃんと説明するから、まずは落ち着いて」
僕がこんなに苦しんでるのに笑うなんて酷い!
そう言って何度も虎君の胸に拳を叩きつける僕。本当にこれは完全に八つ当たりだ。でも虎君はその八つ当たりを全て受け止めるように僕を抱き締め、説明を端折り過ぎたと謝ってきた。
背中を擦り、時折ぽんぽんと叩いて僕をあやしてくる虎君。
暫く泣いて愚図っていた僕だけど、虎君のその手には結局勝てなくて、物の数分で大人しくなる。
泣きべそをかいて鼻を啜る僕に虎君はあやす手を止めないまま「落ち着いた?」と優しい声で尋ねてくる。
僕はまだぐすぐすと鼻を啜りながらも頷きを返し、ぎゅっと虎君に抱き着いた。
「ごめんな。いきなり知らない奴が出てきてビックリしたよな?」
「ん……、びっくりした……」
「最初からちゃんと説明するから、聞いてくれる?」
『聞きたくない』と思ったことが伝わったのか、虎君は大丈夫だと言って笑顔のまま前髪にキスを落としてくる。葵が悲しむようなことは全くないから。と。
その言葉は嘘じゃない? と目だけで問いただせば、虎君は「嘘じゃないよ」と今度は涙に濡れた目尻にキスしてきた。
「わかった……」
「ありがとう、葵」
擦り寄るように甘えれば、優しく抱き締めてもらえる。
虎君のぬくもりを感じて、この腕を、この愛を少しだって他の人に分けたくないと顔を出す醜い感情が辛い……。
でも虎君はそれを知ってか知らずか、ドロドロした感情ごと僕を包み込んでくれた。
「雲英っていうのは、海音が5、6年前にゲイバーの前で知り合った奴なんだ」
「……なんでゲイバーなの? 海音君、女の子が好きだよね……?」
「ああ。海音の恋愛対象は女だよ。ゲイバーにいたのは、ただのお節介の結果かな」
「『お節介』って?」
「俺が葵を愛してるってはっきり伝えたら『親友の恋愛を理解できないなんて絶対言えねぇ!』とか思ったらしくて、俺を『理解する』ためにゲイに話を聞きたかったんだと」
当時を思い出して苦笑する虎君は、確かに葵は男だし俺は一般的にはゲイってことになるけど葵以外は男も女もダメだからゲイって言っていいか微妙だよな? なんて僕に聞いてくる。
それはとても嬉しい言葉だったけど、まだぐちゃぐちゃになったままの感情では笑い返すことができなくて、僕は何も応えることができず、ただ虎君にぎゅっと抱き着いた。
(でも虎君なら、ちゃんと分かってくれるよね……?)
返されるのは優しい抱擁。やっぱり虎君にはちゃんと伝わったみたいだ。
「まぁそれで海音はゲイバーに乗り込んだわけだけど、義務教育も終えてない未成年がバーに入れてもらえるわけもなく、門前払いを喰らったんだ」
「そっか……5年前でも、15歳? だもんね……」
普通に考えれば当たり前のこと。でも、当時の海音君はそんな当たり前の考えに至らない程虎君のことで頭がいっぱいだったんだろう。
二人がとても仲良しだってことは分かっていたけど、改めて知った海音君の存在の大きさに嫉妬心が顔を出す。
「追い返されたんだからさっさと帰ればいいのに、どうしてもゲイの知り合いが欲しいって店の前で張り込んだらしいから本当、あいつは馬鹿だと思うよ」
「でも、そんな風に必死になるぐらい海音君にとって虎君は大切な人なんじゃないかな……」
「まぁ『親友』らしいからな。俺は認めてないけど」
虎君の嘘つき。僕、虎君も海音君のこと、親友だと思ってるって知ってるんだからね……。
むくむくと大きくなる嫉妬心が心を圧迫して苦しいよ、虎君……。
「その時海音が出会ったのが、さっき話した相音雲英だったんだ」
「あいねきら、さん……」
「ゲイバーに入ろうとしてたから雲英がゲイだってことはすぐに分かったんだろうな。海音の奴、いきなり友達になってくれって頼み込んだんだと。正直、『俺の親友が小学生の男相手に盛ってるから相談に乗って欲しい』って言われたって雲英から聞いた時は海音を海に沈めようかと思ったけど」
笑いながら昔話をする虎君。僕は胸を痛めながらそれを聞いていたんだけど、『小学生の男相手に』って言葉に思わず顔を上げてしまった。
すると虎君は僕を見下ろし、「ごめんな」と謝りながら額にキスしてきた。
「小学生相手に絶対ダメだって頭では分かってたけど、昔からずっと葵だけが欲しかった……」
俺のこと、嫌いになった?
不安気にそう尋ねてくる虎君。僕は首を振って虎君にしがみつくと、小さな声で喜びを伝えた。
「その直後に海音に無理矢理雲英を紹介されて、なんだかんだ今も付き合いが続いてる。……まぁ『友達』って言える関係か微妙な相手だけどな」
「そうなの……?」
「そうだよ。雲英は俺が海音の友達だからつるんでるだけだし、俺は雲英がネコだから後学のため偶に話をしていただけだしな」
「ね、『ネコ』? え? 人じゃないの?」
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どういうことかと僕は混乱してしまう。虎君はそれに「動物の猫じゃなくて」と笑った。
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