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初めての人
初めての人 第9話
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「そんなにセックスしたいんだ?」
「意地悪! もうずっと言ってるでしょ! 僕は『虎君と』エッチしたいって!」
「ごめんごめん。何度でも聞きたいからつい、な」
エッチしたいだけって言い方したの、絶対わざとだよね?
そう言って睨めば、虎君は機嫌を治してと頬にキスを落としてくる。
ちゅっとほっぺたに吸い付く唇を求めて上を向いて目を閉じれば、望むキスをちゃんとくれる優しくて大好きな人。
僕は唇が離れるのを感じながらゆっくりと瞼を持ち上げ、幸せそうに笑う虎君を見つめた。
「愛してるよ、葵」
「僕も愛してるよ」
今度は額に落ちてくるキス。それは目尻にも頬にも落ちてきて、何度も何度もキスをくれる虎君に頬が緩んでしまうのは仕方がないことだった。
再びギューッと抱き着いた僕は、改めていつ雲英さんと話すのか聞いてしまう。本当、必死過ぎて自分に笑ってしまう。
(でも、仕方ないよね? もう四カ月以上焦らされてるんだもん)
できる限り早く愛し合いたいと抱き着く僕に、虎君は近々会えないか聞いてみるって髪にキスしてくれる。
その言葉についつい『電話じゃダメなの?』と思ってしまう僕。
虎君と雲英さんはお友達なんだから会って話そうって思うのは当然なんだけど、でも僕はやっぱり面白くないって思ってしまう。
二人の間に恋愛感情が無いってことはもう何度も聞いてるから分かってるけど、それでも雲英さんが虎君に惹かれないか気が気じゃない。
「そんな顔しなくてもちゃんと海音も呼ぶから大丈夫だよ。もちろん海音には相談の内容は話さないけど」
「それなら電話で聞いたら?」
「んー……。内容が内容だから電話ではなぁ……」
「確かに恥ずかしいのは分かるけど、やっぱり、ちょっと不安……」
内容が内容だから、僕は会って欲しくない。
これまで聞いた話の限り、僕が持ってる雲英さんの印象は『エッチに対してかなり奔放な人』だった。
快楽主義者だって虎君は言ってたし、雲英さんは『愛がなくてもエッチができる人』。
そんな人が虎君は恋愛対象外だと言っているから大丈夫だと言われても、正直信憑性なんて零に等しい。恋愛対象外だとしても、エッチの対象外ということにはならないからだ。
(そもそも海音君が好きなのに他の人とエッチしてるって、そういうの、苦手……)
報われることは絶対に無い。って諦めているからなのかもしれないけど、それでも僕にはやっぱり理解できない。僕は虎君以外の人に触りたいなんて全く思わないから。
もし僕が虎君に想いが通じることが無かった世界で生きていたとしても、虎君以外の人とエッチしたいとは絶対に思わないはずだもん。
「いや、『恥ずかしい』わけじゃなくて、電話だと話てる最中にあいつが葵の姿を想像して興奮したとしても分からないだろ? 顔を突き合わせてたらあいつがちょっとでも変な反応したら締められるし」
想像でも妄想でも他の男が俺の葵をオカズにするなんて我慢できない。
そう言い切った虎君は「それに」とおもむろに口を開き、どうしても会うしかない理由があると僕を見下ろした。
「『理由』って?」
「あいつには海音に会う口実になるんだよ。言っただろ? 二人で会うことはまず無いって」
「それは聞いてるけど、でも―――」
「俺が『海音に聞かれたくない』って話を持ち掛けたら、あいつは『なら他所で話せ』って言うよ。……というか、言われた」
「え……?」
「雲英は葵と面識がないからギリギリ話せるけど、海音は葵をよく知ってるだろ? そんな奴の前でセックスのレクチャーを受けたら、あいつは絶対葵のエロい姿を想像するに決まってる」
話ながらそれを想像したのか、虎君の表情はとても不機嫌なものに変わっていった。本気で他の誰かが僕のそういう姿を想像することすら許せないみたいだ。
隠すことなく露わにされる独占欲。僕はそれにドキドキしながら虎君の腕の中、話の続きを大人しく待った。
「だから最初、海音抜きで話そうって持ち掛けたんだ。でも言ったとたん『別の奴に聞け』の一点張り。食い下がっても『俺は忙しいんだよ!』ってキレられた」
「そ、なんだ……。それで、海音君も……?」
「ああ。仕方ないから連れて行った。流石に話をする時は別の席に移動させたけど」
当時を思い出したのか、難しい顔をしたままの虎君。そんなに腹が立ったんだ? と尋ねれば、他に適任がいれば絶対頼まなかったと仏頂面が返ってきた。
「でも、葵を知らないバリネコのゲイはあいつしか知らないから我慢してる」
「それって、僕のため?」
「いや、俺のため。愛し合うために葵が無理するぐらいなら雲英のご機嫌取った方が100倍マシだからな」
僕が痛い思いをするのも辛い思いをするのも嫌だったって言う虎君だけど、それはやっぱり『虎君のため』じゃなくて『僕のため』だと思う。
けど虎君は違うと頑な。俺が嫌なんだ。って。
(もう。本当、虎君って優しいんだから)
きっと僕が何度『それって僕のためだよ』って言ってもその度『違う』って聞き入れてくれないだろう。
僕のことをこんなに大事にしてくれる人は世界中探したって居ないに決まってる。
「意地悪! もうずっと言ってるでしょ! 僕は『虎君と』エッチしたいって!」
「ごめんごめん。何度でも聞きたいからつい、な」
エッチしたいだけって言い方したの、絶対わざとだよね?
そう言って睨めば、虎君は機嫌を治してと頬にキスを落としてくる。
ちゅっとほっぺたに吸い付く唇を求めて上を向いて目を閉じれば、望むキスをちゃんとくれる優しくて大好きな人。
僕は唇が離れるのを感じながらゆっくりと瞼を持ち上げ、幸せそうに笑う虎君を見つめた。
「愛してるよ、葵」
「僕も愛してるよ」
今度は額に落ちてくるキス。それは目尻にも頬にも落ちてきて、何度も何度もキスをくれる虎君に頬が緩んでしまうのは仕方がないことだった。
再びギューッと抱き着いた僕は、改めていつ雲英さんと話すのか聞いてしまう。本当、必死過ぎて自分に笑ってしまう。
(でも、仕方ないよね? もう四カ月以上焦らされてるんだもん)
できる限り早く愛し合いたいと抱き着く僕に、虎君は近々会えないか聞いてみるって髪にキスしてくれる。
その言葉についつい『電話じゃダメなの?』と思ってしまう僕。
虎君と雲英さんはお友達なんだから会って話そうって思うのは当然なんだけど、でも僕はやっぱり面白くないって思ってしまう。
二人の間に恋愛感情が無いってことはもう何度も聞いてるから分かってるけど、それでも雲英さんが虎君に惹かれないか気が気じゃない。
「そんな顔しなくてもちゃんと海音も呼ぶから大丈夫だよ。もちろん海音には相談の内容は話さないけど」
「それなら電話で聞いたら?」
「んー……。内容が内容だから電話ではなぁ……」
「確かに恥ずかしいのは分かるけど、やっぱり、ちょっと不安……」
内容が内容だから、僕は会って欲しくない。
これまで聞いた話の限り、僕が持ってる雲英さんの印象は『エッチに対してかなり奔放な人』だった。
快楽主義者だって虎君は言ってたし、雲英さんは『愛がなくてもエッチができる人』。
そんな人が虎君は恋愛対象外だと言っているから大丈夫だと言われても、正直信憑性なんて零に等しい。恋愛対象外だとしても、エッチの対象外ということにはならないからだ。
(そもそも海音君が好きなのに他の人とエッチしてるって、そういうの、苦手……)
報われることは絶対に無い。って諦めているからなのかもしれないけど、それでも僕にはやっぱり理解できない。僕は虎君以外の人に触りたいなんて全く思わないから。
もし僕が虎君に想いが通じることが無かった世界で生きていたとしても、虎君以外の人とエッチしたいとは絶対に思わないはずだもん。
「いや、『恥ずかしい』わけじゃなくて、電話だと話てる最中にあいつが葵の姿を想像して興奮したとしても分からないだろ? 顔を突き合わせてたらあいつがちょっとでも変な反応したら締められるし」
想像でも妄想でも他の男が俺の葵をオカズにするなんて我慢できない。
そう言い切った虎君は「それに」とおもむろに口を開き、どうしても会うしかない理由があると僕を見下ろした。
「『理由』って?」
「あいつには海音に会う口実になるんだよ。言っただろ? 二人で会うことはまず無いって」
「それは聞いてるけど、でも―――」
「俺が『海音に聞かれたくない』って話を持ち掛けたら、あいつは『なら他所で話せ』って言うよ。……というか、言われた」
「え……?」
「雲英は葵と面識がないからギリギリ話せるけど、海音は葵をよく知ってるだろ? そんな奴の前でセックスのレクチャーを受けたら、あいつは絶対葵のエロい姿を想像するに決まってる」
話ながらそれを想像したのか、虎君の表情はとても不機嫌なものに変わっていった。本気で他の誰かが僕のそういう姿を想像することすら許せないみたいだ。
隠すことなく露わにされる独占欲。僕はそれにドキドキしながら虎君の腕の中、話の続きを大人しく待った。
「だから最初、海音抜きで話そうって持ち掛けたんだ。でも言ったとたん『別の奴に聞け』の一点張り。食い下がっても『俺は忙しいんだよ!』ってキレられた」
「そ、なんだ……。それで、海音君も……?」
「ああ。仕方ないから連れて行った。流石に話をする時は別の席に移動させたけど」
当時を思い出したのか、難しい顔をしたままの虎君。そんなに腹が立ったんだ? と尋ねれば、他に適任がいれば絶対頼まなかったと仏頂面が返ってきた。
「でも、葵を知らないバリネコのゲイはあいつしか知らないから我慢してる」
「それって、僕のため?」
「いや、俺のため。愛し合うために葵が無理するぐらいなら雲英のご機嫌取った方が100倍マシだからな」
僕が痛い思いをするのも辛い思いをするのも嫌だったって言う虎君だけど、それはやっぱり『虎君のため』じゃなくて『僕のため』だと思う。
けど虎君は違うと頑な。俺が嫌なんだ。って。
(もう。本当、虎君って優しいんだから)
きっと僕が何度『それって僕のためだよ』って言ってもその度『違う』って聞き入れてくれないだろう。
僕のことをこんなに大事にしてくれる人は世界中探したって居ないに決まってる。
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