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初めての人
初めての人 第65話
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愛し合うためにたくさん準備してきたけど、よく考えたら僕がこうやって虎君に触るのは初めてだった。
だから、凄くドキドキする。
(すごい……。虎君の、本当に大きい……)
興奮を示すように硬く張り詰めたものに触れながら、僕を欲しいと思うからこうなっているのだと思うとどうしようもない程ドキドキして目が回りそうだ。
虎君のものに触れることはもちろん、自分のだってほとんど触ったことのない僕に技術なんてあるわけがない。
でも、それでも虎君に触りたくて、虎君に気持ちよくなって欲しくて、拙いながらも手を動かした。虎君が僕に触れる時を思い出して。
「っ――、葵っ」
「虎君、大好き……」
僕を引き離そうとする虎君。でもそれを拒むように僕は虎君にすり寄り、キスが欲しいと大好きな人を見上げた。
僕を見下ろすのは、熱に浮かされ苦し気な表情の虎君。普段の余裕なんてまるでないその姿に、心臓が鷲掴まれたような気分だ。
稚拙な手の動きで虎君に触れていた僕は、もっと気持ちよくなって欲しいと更に積極的になる。
下着越しに触れていたものに直接触れようと手を動かす僕。すると虎君はそれに気づいたのか、これ以上は本当にダメだと僕の手首を掴んできた。
「なんで……? 僕、虎君に気持ちよくなって欲しいよ……」
「葵に触られて俺が我慢できるわけないだろっ」
血が沸騰しそうだと荒い息遣いで僕を引き離す虎君は、ベッドから降りて部屋を出て行こうとする。
僕はそれが悲しくて辛くて、行かないでと涙声をあげてしまった。
誰よりも僕を愛してくれている虎君は、僕の悲痛な叫びに足を止め、頭を抱える。
「その声は卑怯だぞ……」
「虎君、やだ、戻ってきてよ……」
僕はベッドに横たわったまま両手を広げ、抱き締めてと虎君を呼ぶ。冷静になれば、我慢している虎君に酷い仕打ちだと分かる言動。でも今の僕にはそこまで頭が回らなかった。
僕を見る虎君は言葉を詰まらせ、視線を逸らす。
「触らないって、約束してくれ」
「やだぁ」
「葵っ! 頼むからっ、……頼むから、せめて今は我慢してくれ……」
もし次葵に触られたら、今度こそ俺は俺を止められない。
そう苦し気に言葉を綴る虎君。その言葉に僕は止まらなくていいのにって思ってしまう。でも虎君が頑なな理由はちゃんと分かっているから、もどかしくなる。
でも、それでも僕はやっぱり虎君と愛し合いたい。窒息するほど虎君の愛を注がれたい……。
「僕、頑張って声、我慢するよ……?」
「嘘吐き。葵はいつも気持ちよくなると声、我慢できてないだろ?」
触って欲しくて、愛して欲しくて、縋るように訴える。虎君は苦しそうな表情で、でも笑ってくれた。
ゆっくりと足を進め、僕のもとに戻ってきてくれる虎君はベッドの前で立ち止まり、僕と目線を合わせるようにしゃがむと笑顔を一層深くした。苦しさの混じるその笑顔は、とてもセクシーだった。
「俺とセックス、したい?」
「したい……。虎君にいっぱい愛されたくて、おなかが切ないよぉ……」
「っ―――、明日、学校をサボる覚悟はある?」
きっと茂さん達はもちろん、友達からも非難されるよ?
そう尋ねてくる虎君は意地悪だ。だって僕の答え、分かってるよね?
僕は何度も頷き、誰に何を言われてもいいと身を捩り虎君に抱き着いた。虎君が僕を愛してくれるなら何があっても平気だよ。と。
「分かった。葵にそこまで言わせて何もしないなんて、恋人失格だよな」
「虎君……?」
「でももう少しだけ我慢してくれるか? 急いで家に帰るから」
僕を抱きしめてくれる虎君は額に口付けを落とし、愛し合うために家に帰ろうって言ってくれた。
「葵、落ちないように掴まって?」
「うん」
軽々と僕を抱き上げる虎君に甘えるように頬を摺り寄せれば、ちゅっと今度は髪にキスが落ちてくる。
これから僕は虎君とエッチするんだと期待に胸を高鳴らせ、夢見心地になる。
部屋から出て廊下を歩き、階段を降りる虎君。早く愛し合いたいと逸る気持ちと、幸せで堪らないと込みあがってくる熱いものに涙ぐみそうになったけど、頑張って我慢した。
「どうした? 具合でも悪いのか?」
わざわざリビングに顔を出した虎君にかけられるのは父さんの心配そうな声。
虎君の腕の中で惚けているだけだけど、傍から見れば体調を崩してぐったりしているように見えなくもないだろう。
僕はどう言い訳をしようかと虎君を見上げた。虎君はそんな僕の視線に気づいて優しく笑い返してくれた。大丈夫だよ。って。
だから、凄くドキドキする。
(すごい……。虎君の、本当に大きい……)
興奮を示すように硬く張り詰めたものに触れながら、僕を欲しいと思うからこうなっているのだと思うとどうしようもない程ドキドキして目が回りそうだ。
虎君のものに触れることはもちろん、自分のだってほとんど触ったことのない僕に技術なんてあるわけがない。
でも、それでも虎君に触りたくて、虎君に気持ちよくなって欲しくて、拙いながらも手を動かした。虎君が僕に触れる時を思い出して。
「っ――、葵っ」
「虎君、大好き……」
僕を引き離そうとする虎君。でもそれを拒むように僕は虎君にすり寄り、キスが欲しいと大好きな人を見上げた。
僕を見下ろすのは、熱に浮かされ苦し気な表情の虎君。普段の余裕なんてまるでないその姿に、心臓が鷲掴まれたような気分だ。
稚拙な手の動きで虎君に触れていた僕は、もっと気持ちよくなって欲しいと更に積極的になる。
下着越しに触れていたものに直接触れようと手を動かす僕。すると虎君はそれに気づいたのか、これ以上は本当にダメだと僕の手首を掴んできた。
「なんで……? 僕、虎君に気持ちよくなって欲しいよ……」
「葵に触られて俺が我慢できるわけないだろっ」
血が沸騰しそうだと荒い息遣いで僕を引き離す虎君は、ベッドから降りて部屋を出て行こうとする。
僕はそれが悲しくて辛くて、行かないでと涙声をあげてしまった。
誰よりも僕を愛してくれている虎君は、僕の悲痛な叫びに足を止め、頭を抱える。
「その声は卑怯だぞ……」
「虎君、やだ、戻ってきてよ……」
僕はベッドに横たわったまま両手を広げ、抱き締めてと虎君を呼ぶ。冷静になれば、我慢している虎君に酷い仕打ちだと分かる言動。でも今の僕にはそこまで頭が回らなかった。
僕を見る虎君は言葉を詰まらせ、視線を逸らす。
「触らないって、約束してくれ」
「やだぁ」
「葵っ! 頼むからっ、……頼むから、せめて今は我慢してくれ……」
もし次葵に触られたら、今度こそ俺は俺を止められない。
そう苦し気に言葉を綴る虎君。その言葉に僕は止まらなくていいのにって思ってしまう。でも虎君が頑なな理由はちゃんと分かっているから、もどかしくなる。
でも、それでも僕はやっぱり虎君と愛し合いたい。窒息するほど虎君の愛を注がれたい……。
「僕、頑張って声、我慢するよ……?」
「嘘吐き。葵はいつも気持ちよくなると声、我慢できてないだろ?」
触って欲しくて、愛して欲しくて、縋るように訴える。虎君は苦しそうな表情で、でも笑ってくれた。
ゆっくりと足を進め、僕のもとに戻ってきてくれる虎君はベッドの前で立ち止まり、僕と目線を合わせるようにしゃがむと笑顔を一層深くした。苦しさの混じるその笑顔は、とてもセクシーだった。
「俺とセックス、したい?」
「したい……。虎君にいっぱい愛されたくて、おなかが切ないよぉ……」
「っ―――、明日、学校をサボる覚悟はある?」
きっと茂さん達はもちろん、友達からも非難されるよ?
そう尋ねてくる虎君は意地悪だ。だって僕の答え、分かってるよね?
僕は何度も頷き、誰に何を言われてもいいと身を捩り虎君に抱き着いた。虎君が僕を愛してくれるなら何があっても平気だよ。と。
「分かった。葵にそこまで言わせて何もしないなんて、恋人失格だよな」
「虎君……?」
「でももう少しだけ我慢してくれるか? 急いで家に帰るから」
僕を抱きしめてくれる虎君は額に口付けを落とし、愛し合うために家に帰ろうって言ってくれた。
「葵、落ちないように掴まって?」
「うん」
軽々と僕を抱き上げる虎君に甘えるように頬を摺り寄せれば、ちゅっと今度は髪にキスが落ちてくる。
これから僕は虎君とエッチするんだと期待に胸を高鳴らせ、夢見心地になる。
部屋から出て廊下を歩き、階段を降りる虎君。早く愛し合いたいと逸る気持ちと、幸せで堪らないと込みあがってくる熱いものに涙ぐみそうになったけど、頑張って我慢した。
「どうした? 具合でも悪いのか?」
わざわざリビングに顔を出した虎君にかけられるのは父さんの心配そうな声。
虎君の腕の中で惚けているだけだけど、傍から見れば体調を崩してぐったりしているように見えなくもないだろう。
僕はどう言い訳をしようかと虎君を見上げた。虎君はそんな僕の視線に気づいて優しく笑い返してくれた。大丈夫だよ。って。
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